
ニトロプラスの虚淵玄氏が、台湾の人形劇“布袋劇”に惚れ込んだことをきっかけに生まれた日台合同映像企画『Thunderbolt Fantasy Project』(以下、『サンファン』)。同プロジェクトが、2025年2月に公開された劇場上映作品『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀 最終章』をもって完結した。
『サンファン』では、原案・脚本・総監修を虚淵氏が務め、ニトロプラスが率いる日本のデザイナーやフィギュアメーカー・グッドスマイルカンパニーが、キャラクター&人形のデザインと監修を担当。そこに、布袋劇を映像化してテレビ放送している霹靂國際多媒體股份有限公司(以下、霹靂社)の技術やノウハウが合わさり、過去に類を見ないエンターテインメントとなった。
これまでに虚淵氏は、『Phantom -PHANTOM OF INFERNO-』や『沙耶の唄』などのゲーム作品、『魔法少女まどか☆マギカ』、『PSYCHO-PASS サイコパス』などのアニメ作品で、企画や脚本などを手掛けてきた。また、小説『Fate/Zero』を手掛けたり、特撮テレビドラマ『仮面ライダー鎧武/ガイム』でメインライターを務めたりと、非常に幅広いエンターテインメント作品に携わり、多数のヒットを生み出している。
そんな虚淵氏にとって、人形劇という未経験のジャンルで、しかも国境を超えるプロジェクトとなった『サンファン』は、どのような存在だったのだろうか。この度、虚淵氏に『サンファン』に関してインタビューする機会を得られたので、布袋劇とほかのエンターテインメントの違いや、シリーズ完結を迎えて思うこと、これから挑戦してみたいエンターテインメントなどについて、たっぷりと語ってもらった。
なお、インタビューの後半には、『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀 最終章』のネタバレが含まれている。最終章を未視聴の方はご注意いただきたい。
『サンファン』では、原案・脚本・総監修を虚淵氏が務め、ニトロプラスが率いる日本のデザイナーやフィギュアメーカー・グッドスマイルカンパニーが、キャラクター&人形のデザインと監修を担当。そこに、布袋劇を映像化してテレビ放送している霹靂國際多媒體股份有限公司(以下、霹靂社)の技術やノウハウが合わさり、過去に類を見ないエンターテインメントとなった。
これまでに虚淵氏は、『Phantom -PHANTOM OF INFERNO-』や『沙耶の唄』などのゲーム作品、『魔法少女まどか☆マギカ』、『PSYCHO-PASS サイコパス』などのアニメ作品で、企画や脚本などを手掛けてきた。また、小説『Fate/Zero』を手掛けたり、特撮テレビドラマ『仮面ライダー鎧武/ガイム』でメインライターを務めたりと、非常に幅広いエンターテインメント作品に携わり、多数のヒットを生み出している。
そんな虚淵氏にとって、人形劇という未経験のジャンルで、しかも国境を超えるプロジェクトとなった『サンファン』は、どのような存在だったのだろうか。この度、虚淵氏に『サンファン』に関してインタビューする機会を得られたので、布袋劇とほかのエンターテインメントの違いや、シリーズ完結を迎えて思うこと、これから挑戦してみたいエンターテインメントなどについて、たっぷりと語ってもらった。
なお、インタビューの後半には、『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀 最終章』のネタバレが含まれている。最終章を未視聴の方はご注意いただきたい。
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虚淵玄(うろぶち げん)
ニトロプラス所属のゲームクリエイター・脚本家・小説家。『魔法少女まどか☆マギカ』、『Fate/Zero』、『PSYCHO-PASS サイコパス』など、数々のヒット作品に携わる。
約10年、ともに歩んできた霹靂社との関係は“以心伝心”
――『サンファン』は台湾の霹靂社との共同プロジェクトになりますが、約10年という長い期間、台湾の方とものづくりをする機会はなかなかないと思います。この10年、霹靂社の皆さんと、どのようなやり取りをしてきたのでしょうか。
虚淵
霹靂社さんとは以心伝心と言いますか、脚本家の意図を汲んで映像にしてくださったので、本当に感謝していますね。霹靂社の会長さんが脚本家ということもあってか、制作現場にも、脚本担当の発言を大事にする土壌があったようです。通常のアニメであれば、脚本を書いたらその後は完全に現場にお任せになるのですが、『サンファン』はラッシュフィルム(※まだ編集が完了していない映像)の確認の連絡を送ってくれたりして。結果的に、総監修なんていう肩書が付くくらい、いろいろなところに口を挟ませてもらえるようになりました。本当にありがたく、珍しい現場だったと思いますね。
――『サンファン』が始まった当初は、ご自身でそこまで映像を確認するとは思っていなかった?
――『サンファン』が始まった当初は、ご自身でそこまで映像を確認するとは思っていなかった?
虚淵
ええ、ほかのアニメといっしょで、「後は監督にお任せ」となるかと思ったら、僕の意見を逐一尊重してくださったので。脚本の意図と違うところは修正してもらったりと、かなり調整させてもらえました。
――台湾とのやり取りには苦労されたのかと思ったのですが、むしろ非常に密な関係を築かれていたのですね。
――台湾とのやり取りには苦労されたのかと思ったのですが、むしろ非常に密な関係を築かれていたのですね。
虚淵
やはり、インターネットの普及は大きかったと思いますね。会議もオンラインで実施できましたし。意見交換は頻繁にできたので、テクノロジーに助けられたと思います。通訳や翻訳に関しては、『サンファン』のプロデューサーのひとりでもある西本有里さんに非常に助けていただいたので、ほぼほぼ不自由はありませんでした。
――『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2 公式ビジュアルファンブック』によると、キャラクターの名前を付ける際、最初のうちはキャラクターをイメージする英単語を霹靂社に伝えて、それをもとに名付けてもらっていたそうですね。凜雪鴉であれば“Glacial Owl”など。
――『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2 公式ビジュアルファンブック』によると、キャラクターの名前を付ける際、最初のうちはキャラクターをイメージする英単語を霹靂社に伝えて、それをもとに名付けてもらっていたそうですね。凜雪鴉であれば“Glacial Owl”など。
虚淵
手探りで作っていたころはそうだったのですが、映像の出来上がりを見れば「脚本の意図は十分に伝わっているな」ということは歴然だったので、プロジェクトの中盤からはいきなり脚本を渡して、キャラクターの性格を飲み込んでもらったうえで、「どんな名前がいいか考えてください」とお任せするようになりました。
――「この漢字を使ってほしい」といったリクエストはしたのですか?
――「この漢字を使ってほしい」といったリクエストはしたのですか?
虚淵
いえ、しなかったですね。名前については、あちらの文化でベストだと思えるものをお願いしました。そのおかげで、日本では読みづらい漢字もけっこう増えちゃいましたけど、それはそれでいいかなと。ちゃんと、中華圏っぽさを出したほうがいいと思ったので。皆さんにはわざわざ辞書登録をしていただくことになって恐縮なんですけど(笑)。
――殤不患の“殤”の字などは、なかなか日本の日常では使わないですからね(笑)。そういえば、ほかのキャラクターが誰かに呼びかけるとき……たとえば殤不患を呼ぶときに「殤」と読んだり「不患」と読んだり、シーンによって変わる場合がありますが、あれはどういった意図なのでしょうか。
――殤不患の“殤”の字などは、なかなか日本の日常では使わないですからね(笑)。そういえば、ほかのキャラクターが誰かに呼びかけるとき……たとえば殤不患を呼ぶときに「殤」と読んだり「不患」と読んだり、シーンによって変わる場合がありますが、あれはどういった意図なのでしょうか。
虚淵
自分が書いた脚本を翻訳されたのを見て、「台湾では、名前の呼びかたが状況によって変わるようだ」ということに、途中で気付いたんですね。親しみを込めて呼ぶときは、意外と下の名前で呼ぶんだな、とか。そういった使い分けを、自分も途中から取り入れるようになりました。情感を込めてじんわり呼ぶときは下の名前で、緊迫した状況で素早く呼ぶときは上の名前で、くらいのものですが。
――日本語と中国語では、同じ意味のセリフでも尺が変わってくるというのも、映像制作に影響がある部分かと思います。アフレコでも苦労された部分ではないかと。
――日本語と中国語では、同じ意味のセリフでも尺が変わってくるというのも、映像制作に影響がある部分かと思います。アフレコでも苦労された部分ではないかと。
虚淵
そうですね。キャラクターの動きが派手になる瞬間と、日本語のセリフの盛り上がりのつじつまをどう合わせるかというのは、声優の皆さんにいろいろな工夫をしてもらいましたね。
――脚本を書く際、映像の尺を計算するのもたいへんだったのでは?
――脚本を書く際、映像の尺を計算するのもたいへんだったのでは?
虚淵
まず、通常のアニメの場合、そもそもコンテですべてが決まるので、脚本の段階ではそこまで厳密に尺を決めないんです。書くだけ書いて、監督に意見をうかがって、あとは脚本のニュアンスを汲んでもらいつつ「自由に調整してください」という感じなので、脚本家としては、そんなに責任感を持たなくて済みます。一方『サンファン』は、セリフがそのまんま採用されるといいますか、監督のほうでセリフの尺度を調整することはほとんどありませんでした。明らかに尺をオーバーするときだけ削ったくらいで、セリフはほぼほぼ生かしてもらいましたね。それはうれしいことでしたが、緊張もしました。責任が重大すぎるというか。
――アニメであればほかの人が調整するところが、自分の手に委ねられていると。
――アニメであればほかの人が調整するところが、自分の手に委ねられていると。
虚淵
ベストと思える言葉で書くということは、アニメと変わりはないんですけどね。いままでの“監督の意向をうかがいながら書く”というやりかたとは違い、自分でいちから考えて完成まで持っていかなければいけなかったので、結果、『サンファン』を通じて僕なりの定型ができたなという感じはありますね。「このくらいのペースで書くと、20分で気持ちよく収まるな」という、脚本のリズムが見えました。
ゲームの脚本の書きかたについては、試行錯誤の真っ最中
――ちなみに、ゲームの脚本を書かれる際は、どういったことを気にしますか?
虚淵
いま、ゲームの脚本というもののメソッド自体を見直している最中なので、なかなか一概には言えませんね。ゲームのシナリオは何が最適解なのかは、ゲームの遊びかた次第ですし。いわゆるテキストノベルみたいなスタイルのゲームであれば、文字を読むのに集中してもらえますが、文字を読むと同時にアクションとさせるとなると、キャラクターにしゃべらせすぎるのもどうなのか……いま、まさに手探りのところです。
――それは、虚淵さんが「ゲームの脚本のメソッドを見直さなければ」と考える契機となった出来事が、最近あったということでしょうか。
――それは、虚淵さんが「ゲームの脚本のメソッドを見直さなければ」と考える契機となった出来事が、最近あったということでしょうか。
虚淵
まさに『Rusty Rabbit(ラスティ・ラビット)』ですね。『Rusty Rabbit』のスタッフの皆さんは、自分のライターとしての経歴を尊重してくださって、自由に書かせていただいたのですが、その結果キャラクターにしゃべらせすぎてしまったかなと。プラットフォーム型の横スクロールアクションとして、あの脚本が最適だったのか、ちょっと悩ましいところだと思っています。それもあって、いま取り組んでいる未発表のタイトルでは、まずは自分が原作小説を書くぐらいのスタンスで脚本を書いて、それをほかのライターの方にゲーム向けにリライトしてもらうという形を採っています。自分が「そうしたい」と希望したわけではないんですが、開発現場の皆さんとやり取りする中で、「そういう形でやるのがいいんじゃないか」という結論になったんですよね。おそらくこれはいい結果になるんじゃないかと思います。
――虚淵さんがこれまでに関わったゲームは、テキストを読むことがメインのゲームが多かったと思いますが、アクションゲームを作るようになって、これまでとは別の手法を検討するようになったのですね。
虚淵
ゲームは、楽しみかたが一様ではないですからね。映像以上に、方法論が難しいかもしれません。
――10年ほど前にニトロプラスが『君と彼女と彼女の恋。』を発売した際に、虚淵さんと下倉バイオさんが対談されていましたが、そこで虚淵さんは「ゲーム作りは本当にブラックボックスが多すぎる」、「自分にはゲーム制作はもう無理かも」といったことを語られていました。ですがいま、『Rusty Rabbit』を作ったり、未発表のプロジェクトに関わったりと、ゲーム制作に積極的に参加されているように見えます。10年前から、何か意識が変わるようなきっかけがあったのですか?
――10年ほど前にニトロプラスが『君と彼女と彼女の恋。』を発売した際に、虚淵さんと下倉バイオさんが対談されていましたが、そこで虚淵さんは「ゲーム作りは本当にブラックボックスが多すぎる」、「自分にはゲーム制作はもう無理かも」といったことを語られていました。ですがいま、『Rusty Rabbit』を作ったり、未発表のプロジェクトに関わったりと、ゲーム制作に積極的に参加されているように見えます。10年前から、何か意識が変わるようなきっかけがあったのですか?
虚淵
Unityのようなツールが普及して、自分でゲームを作れるようになったというのがある種の励ましになりましたね。「こんなゲームを作りたい」と考えたとき、いきなり試作品を作ってみんなと相談できる環境が生まれたので、俄然やる気が出たといいますか、「昔とはぜんぜん違うアプローチでゲームが作れるようになったな」と感じました。
――では、前よりも「ゲームを作りたい」という気持ちが大きい?
――では、前よりも「ゲームを作りたい」という気持ちが大きい?
虚淵
個人的には、軸足をゲームに移している感覚はあります。映像作品のお話もいろいろいただいていますけど、僕のほうから企画を持ち込むとなると、いまは俄然ゲームですね。それは『サンファン』が完結したことが、ひとつの区切りになったからというのもあります。映像作品のライターとしての自分は、ある種やりきったといいますか。昔『Fate/Zero』の小説を書いたときに、小説書きとしては満足がいったのですが、それに近い節目となったかもしれません。
凜雪鴉と殤不患の正体は、どのように決まっていったのか
※『サンファン』最終章のネタバレが含まれます。ご注意ください。――日本と台湾では、『サンファン』の楽しみかたやファン層に違いがあったりするのでしょうか?
虚淵
当たり前のことですが、布袋劇というものへの親しみは、やはり台湾のほうがありますよね。日本との違いを強く感じるほどではないですが、布袋劇が身近なだけあって、台湾のほうが広い層に見ていただけた感はあるかもしれません。グッズの展開は圧倒的で、台湾のお店に行くとすごい数の『サンファン』のグッズが並んでいたりしてうれしかったです。
――数年前に、台湾の三創生活園区というショッピングモールに行ったことがありますが、霹靂社のグッズコーナーが本当に大きくて驚きました。日本でのガンプラぐらいの規模でグッズが展開されていて。
――数年前に、台湾の三創生活園区というショッピングモールに行ったことがありますが、霹靂社のグッズコーナーが本当に大きくて驚きました。日本でのガンプラぐらいの規模でグッズが展開されていて。
虚淵
ええ、すごい規模ですよね。
――日本ですと、グッズを買う方はやはり女性が多いのかなという印象ですが、特撮が好きな男性が『サンファン』にハマるケースもあるようですね。
――日本ですと、グッズを買う方はやはり女性が多いのかなという印象ですが、特撮が好きな男性が『サンファン』にハマるケースもあるようですね。
虚淵
基本的にアクションのお話で、ぶっちゃけ、そんなにラブロマンスとかはないですからね(笑)。女性受けするストーリーラインではなかろうと思うんですけど、なんだかんだ美形は多いので、そこにフックしてくださる女性の方はいたのかなと。
――最終章の劇場上映にともなって、台湾ではネタバレありのトークショーを複数の場所で行ったと聞きました。布袋劇への親しみを持たれている方が、熱心に劇場にも通ったということですよね。
――最終章の劇場上映にともなって、台湾ではネタバレありのトークショーを複数の場所で行ったと聞きました。布袋劇への親しみを持たれている方が、熱心に劇場にも通ったということですよね。
虚淵
ありがたいことに、ほうぼうの劇場で挨拶させていただきました。質問コーナーがすごくシビアだったんですよ。皆さん、核心をついた質問をガンガンしてくるので(笑)。
――日本の『サンファン』のファンも、「私たちも聞きたい!」と思っていたと思うので、ここからは最終章の内容について詳しくうかがいたいと思います。まず全体のストーリーについてですが、よくもまあ90分に収まったな……というくらいぎゅうぎゅうでしたね。
――日本の『サンファン』のファンも、「私たちも聞きたい!」と思っていたと思うので、ここからは最終章の内容について詳しくうかがいたいと思います。まず全体のストーリーについてですが、よくもまあ90分に収まったな……というくらいぎゅうぎゅうでしたね。
虚淵
もともとはシーズン5として展開するつもりだったのですが、事情があって最終章を劇場版にすることに変更したので、わりと強引に90分に詰め込んだんです。そのしわ寄せがシーズン4にもいって、シーズン4も詰め込みまくることになりました。シーズン4と最終章は、予算の都合で同時進行して、撮影のセットも共有したりしていたので、ふたつまとめて1エピソードぐらいの塊になった感じはあります。
――『サンファン』を完結させるにあたって、殤不患の正体をはっきりさせることを決めたとうかがいました。
――『サンファン』を完結させるにあたって、殤不患の正体をはっきりさせることを決めたとうかがいました。
虚淵
まったく明らかにしないままにするという発想もなくはなかったのですが、今回に限っては、消化不良はよろしくないし、「(お話を)畳むならちゃんと畳もう」と考えて構成を組みました。
――まず先に、彼の親のことを決めたのでしょうか、それとも無界閣で修行していたという経歴を決めたのでしょうか?
――まず先に、彼の親のことを決めたのでしょうか、それとも無界閣で修行していたという経歴を決めたのでしょうか?
虚淵
無界閣での修行が先でしたかね。そのギミック(時空を移動していた)を入れるのであれば、劇中の登場人物と血縁関係にしてしまおうと。
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――まさか、あそこが親子になるとは思っていなかったので驚きました……。
虚淵
自分なりに、三角関係を収めるやりかたとしては、これかなと思ったんですよね。誰かが振られて、誰かがくっつくのはちょっとやりにくいなと。『マクロス』とかを見ていても、やきもきしてしまうんですよ。絆そのものはちゃんと維持してほしいという思いもあって、伴侶と血縁という形にすることで、それぞれの絆をつないだという形ですね。
――結果的に、殤が魔族の血を引くことになりましたが、そのおかげで殤は魔界でもガンガン自由に動けるのでしょうか?
――結果的に、殤が魔族の血を引くことになりましたが、そのおかげで殤は魔界でもガンガン自由に動けるのでしょうか?
虚淵
まあ、それは結果オーライというか(笑)。クォーターなので、そこまでのアドバンテージにはならないと思いますけども。
――そうして殤の正体が決まると同時に、凜の正体も固まっていった?
――そうして殤の正体が決まると同時に、凜の正体も固まっていった?
虚淵
むしろ凜はぜんぜん別口で、宝塚さんとコラボさせてもらったときに、なんとなく考えたんですよね。凜雪鴉の“Killer Rouge”バージョンという人形を作ってもらったのですが、その出来がすばらしかったので、「これを魔界の王様にしちゃおう」と。それなら、凜も魔王から派生したキャラクターにしてしまおう、という構想があのときひらめきました。
――凜に関しては、喪月之夜をずっと隠し持っていたことにも驚きました。
――凜に関しては、喪月之夜をずっと隠し持っていたことにも驚きました。
虚淵
あれはね、(最終章の脚本を)書いてる真っ最中に決めたんですよ。本当はもっとね、長い時間をかけてねっちり魔王を追い込んでいくはずだったんですけど、その策略を表現できるだけの尺を用意できなかった。じゃあどうやって決着をつけようと、本当にギリギリまで迷っている中で、「そういえば、喪月之夜のことは、まだはっきりしてなかったな」と思いいたって、あの展開にしたんです。「そうだ、返してなかったことにしよう」と。
――シーズン2ぶりの登場だったので、「まだ持ってたんか!」と驚愕したのですが、もし、当初の予定通りにシーズン5をやることになっていたら、別の展開になっていたかも?
――シーズン2ぶりの登場だったので、「まだ持ってたんか!」と驚愕したのですが、もし、当初の予定通りにシーズン5をやることになっていたら、別の展開になっていたかも?
虚淵
魔王側の巻き返しがあったかもしれませんし、魔宮貴族が思わぬ動きをして策がぶれるということはあったかもしれません。でもけっきょく、決着はチャンバラでつけることにはなります。しかし凜雪鴉はそもそもチャンバラでの決着をそんなに好まないはず。詐欺師の剣士がどうやって勝つか? というところのカタルシスを考えて……「ああー、都合いいものがあったな」って思い出したんですよね。
――なるほど。凜雪鴉はチャンバラが強いですけど、剣で魔王に勝ちたいわけではないですもんね。
――なるほど。凜雪鴉はチャンバラが強いですけど、剣で魔王に勝ちたいわけではないですもんね。
虚淵
そこなんですよね、ええ。
――台湾で行われた『サンファン』のファン感謝祭にて、魔剣目録のレプリカが特典グッズとして用意されましたが、それを見ると、喪月之夜の周辺に羽が描かれているとか。
――台湾で行われた『サンファン』のファン感謝祭にて、魔剣目録のレプリカが特典グッズとして用意されましたが、それを見ると、喪月之夜の周辺に羽が描かれているとか。
虚淵
あれはちょっとお遊びで。グッズとして魔剣目録を作ることになった際、「ここに喪月之夜があるのはおかしくないですか?」とデザイナーの方から指摘があって、「じゃあ、凜が作った偽物が入っていることにしましょう」とひと工夫してもらいました。
――ところで、霹靂社が公開しているYouTubeの映像を見ると、殤と魔王がチャンバラをしているようなシーンがあります。当初の予定では、殤が魔王、もしくは魔王を装った凜と戦うシーンもあったのでしょうか?
――ところで、霹靂社が公開しているYouTubeの映像を見ると、殤と魔王がチャンバラをしているようなシーンがあります。当初の予定では、殤が魔王、もしくは魔王を装った凜と戦うシーンもあったのでしょうか?
虚淵
いえ、台本にはなかったので、たぶん現場で「試しに撮っておこう」という判断をされたんじゃないかと思います。
――では最初から、ラストシーンで、殤と凜を戦わせるつもりはなかったのですね。
虚淵
ハナからなかったです。
――それにしても、どうして殤は、毎回凜の変装を見抜けるのか不思議です。
――それにしても、どうして殤は、毎回凜の変装を見抜けるのか不思議です。
虚淵
一応、あのシーンで説明はしていますけどね。相手がやる気満々になっているところで、「これはおかしい」と感づいたというか。魔王城に飛び移る段階ではわかっていないんですよね。一応、敵討ちのつもりで行ったはいいものの、騙されてしまったと。
――禍世螟蝗との戦いを終えた後、殤には“地上に残って平和に生きる”という選択肢もあり得たと思うのですが、そうはさせなかったのですね。
――禍世螟蝗との戦いを終えた後、殤には“地上に残って平和に生きる”という選択肢もあり得たと思うのですが、そうはさせなかったのですね。
虚淵
やっぱり、殤不患は風来坊として立ち去らせたいという感覚は、どことなくありましたね。どこか違う土地で旅を続けたいという締めかたにしたかった。
――逆に、浪巫謠は腰を落ち着けることになりました。
――逆に、浪巫謠は腰を落ち着けることになりました。
虚淵
彼はまさに“成長していくキャラクター”だったので、落ち着いた大人になって終わってほしかった。劇中では、凜と殤と比べると未成熟な人格で、葛藤と矛盾を抱えて生き様を探していくキャラクターだったので。ちゃんとゴールにたどり着いて終わりにしてほしかったんですね。
――凜と殤と比べると、年齢も下なのでしょうか?
――凜と殤と比べると、年齢も下なのでしょうか?
虚淵
そうですね、凜と殤が30代半ばくらいかな。で、浪巫謠が20歳を超えたくらいかな。そのくらいの年齢差で考えていました。ちなみに丹翡と捲殘雲は10代後半か、20歳に届いたくらいかなと思っています。彼らは未熟なところから成長していくキャラクターたちなので。
――けっこうな年齢差があったんですね。捲殘雲については、いつ死んでしまうのかとヒヤヒヤしていたので、最後まで生き残って本当によかったです。
――けっこうな年齢差があったんですね。捲殘雲については、いつ死んでしまうのかとヒヤヒヤしていたので、最後まで生き残って本当によかったです。
虚淵
劇中で最弱という立ち位置があったからこそ、死なせる理由がなかったというか。うん。自分が弱いことを自覚したうえで立ち回るキャラクターなんで、危ないことはしないんですよね。自分の手が及ぶ範囲でがんばる、っていうポジションだったんで。ちゃんと守るものというか、自分の生活もあるので、引き際みたいなものはちゃんとわきまえてますし。「ここで死んでもいい」みたいな立ち回りはしないので、生き残れたんだと思いますね。
――でも最終決戦で、丹翡のことをかばったときは死を覚悟していそうです。
――でも最終決戦で、丹翡のことをかばったときは死を覚悟していそうです。
虚淵
あ、あのへんは現場のアドリブです。アドリブはけっこうあるんですけど、うまくハマっているので、OKを出しちゃいます。どうしても合わないときはリテイクをお願いしますが。
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/48096/a276a6502ac9b08e15c84f441bc673613.png?x=767)
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――現場のアドリブも多いんですね。禍世螟蝗との最後の戦いも、霹靂社の皆さんが当初の予定よりボリュームをアップさせたと聞きました。
虚淵
あのシーンは、初稿の段階で霹靂社さんから、「ここ、もうちょっとアクション盛りたいです」と言われて、ああいうやり取りになりました。初稿の段階では、本当にもう尺がめちゃくちゃ不安だったので、殤が芙蓉慧刀を手にした時点で空が割れる予定だったんですけど、「白蓮が降りてくるまでのあいだに、アクションを入れたい」というご意見をいただいたので書き直したんですよね。
――あのバトルの撮影では、人間が鎧を身にまとって禍世螟蝗に扮していますよね。
――あのバトルの撮影では、人間が鎧を身にまとって禍世螟蝗に扮していますよね。
虚淵
あれは『サンファン』で出来上がったひとつの成果ですね。“巨大な敵と戦える人形劇”という。あの試みはシーズン2のドラゴンから始まったんですけど、あれで霹靂社さんも味を占めて、ほかの霹靂社さんの作品でもやるようになっています。
――『サンファン』を経て、霹靂社さんの技術もどんどん磨かれていったのですね。最終章の演出も驚きでした。虚淵さんがいちばん、演出に驚いたシーンはありますか?
――『サンファン』を経て、霹靂社さんの技術もどんどん磨かれていったのですね。最終章の演出も驚きでした。虚淵さんがいちばん、演出に驚いたシーンはありますか?
虚淵
やはり凜雪鴉と魔王のバトルですね。いちばん気に入っているのは、床に油がぶちまけられて、剣戟の火花が油に引火して、炎の海の中で戦い始めるという段取りですね。もちろん脚本には書かれていなかったんですが、現場の皆さんに工夫して作ってもらえて、これはすばらしいなと思いました。
最終章の後、あのキャラクターはどうなった?
――そういえば、けっきょく魔王は生きているんでしょうか?
虚淵
生命力が人間とはまた違う種族なので、可能性としてはあるかもしれないです。
――ラストシーンで、凜が「いまや私が魔界の王だ」という主旨のセリフを言っていたと思うので、凜が魔王の力を吸い取ったのかと。
――ラストシーンで、凜が「いまや私が魔界の王だ」という主旨のセリフを言っていたと思うので、凜が魔王の力を吸い取ったのかと。
虚淵
それはね、やってないと思います。あいつは詐術で魔王ぶってるだけです。そのくらいの綱渡りをしないとおもしろがらないので。
――魔王ぶってるだけなんですか(笑)。なんというか、本当に難儀な性格ですよね……。
――魔王ぶってるだけなんですか(笑)。なんというか、本当に難儀な性格ですよね……。
虚淵
自分の詐術と口車で、どこまで魔王を装えるかというゲームを、いままさに続けているんでしょうね。だから、奪ったのは服だけだと思います。服を着替えるくらいはするって感じです。
――最終章の後、凜は楽しい魔界生活を送るわけですが、やっぱり「ひとりよりは、ふたりがいいな」と思って殤を道連れにしたんでしょうか。
――最終章の後、凜は楽しい魔界生活を送るわけですが、やっぱり「ひとりよりは、ふたりがいいな」と思って殤を道連れにしたんでしょうか。
虚淵
ある種の未練はあったんでしょうね。仲間という感覚は、たぶんないと思いますけど。盤上を騒がせるジョーカーの1枚くらいのつもりでゲームに加えたかったんじゃないかと。なんなら足を引っ張ってくれても構わないくらい。
――それぐらいのスリルがあったほうが楽しい、と。なんというか、主人公としては相当ねじ曲がったキャラクターです。
――それぐらいのスリルがあったほうが楽しい、と。なんというか、主人公としては相当ねじ曲がったキャラクターです。
虚淵
霹靂社さんのメインシリーズの主人公である素還真が、本当にまっすぐで王道な、カッコいい主人公なんです。その素還真と凜雪鴉は、コンセプトカラーが白でかぶっているのですが、色がかぶる以上は、「ぜんぜん違うキャラクターにしないと素還真に食われちゃうな」という焦りがあって、あのキャラクターが生まれたんです。
――ちなみに、「丹翡たちのもとに髪飾りを持ってきた商人は、凜雪鴉が変装した姿では?」と考察しているファンもいるのですが、どうなのでしょうか……?
――ちなみに、「丹翡たちのもとに髪飾りを持ってきた商人は、凜雪鴉が変装した姿では?」と考察しているファンもいるのですが、どうなのでしょうか……?
虚淵
いやあ、あの段階では凜雪鴉はそうそう暇じゃないはずなんでね。時間とかがぐちゃぐちゃになっている物語ではあるんで、やろうと思えばできるかもしれませんけど。
――そもそも、主人公をふたりにすることは、最初から決めていたのですか?
――そもそも、主人公をふたりにすることは、最初から決めていたのですか?
虚淵
はい。まず凜雪鴉という、白髪が目を引くキャラクターを、けっこうねじ曲がった性格にしたいというのがあって。それなら、順当に物語を引っ張っていくヒーロー的な主人公がもうひとり必要だな、でないと本当に胸糞な話になっちゃうな、と考えたので、ダブル主人公の形で作らせてもらいました。
――そのふたりの主人公が、片方が魔王になったり、もう片方が魔族の血を引く者になったりするのは、虚淵さんとしても驚きでしたか?
――そのふたりの主人公が、片方が魔王になったり、もう片方が魔族の血を引く者になったりするのは、虚淵さんとしても驚きでしたか?
虚淵
そうですね、設定は後々ふくらんでいきましたから。西幽玹歌までは、本当に行き当たりばったりで作っていたんですよ。だから、退場させてしまったキャラクターを「もったいなかった」と後から思ったりとか。シーズン1とか後先考えずに作っているので、退場するキャラクターも多いです。
――魔宮貴族も、シーズン4でどんどん退場してしまって。
――魔宮貴族も、シーズン4でどんどん退場してしまって。
虚淵
魔宮貴族は、キャラクターを作った後に、シーズン5を劇場上映作品に変更することになってしまって。短い尺で登場させることになってしまったんで、ちょっと悔しいところではありますね。凜と魔王が対立する中で、どちらにつくべきかと策を巡らせる貴族たちというのを描きたかったんですけど。
――刑亥は、最後は仲間になってくれるのかなと思ったんですけども。
――刑亥は、最後は仲間になってくれるのかなと思ったんですけども。
虚淵
彼女はわりと、便利な役回りみたいな動きをかなりさせてしまったので、「このまま便利屋さんで終わらせるんじゃなくて、ちゃんと花道を作って退場させてあげなきゃ」と思ったんですね。敵側としてはいちばん長く居座ったキャラクターです。シーズン1で瓦礫の下敷きになりましたが、霹靂社さんが下敷きになった姿を写さなかったことが、後にうまくつながりました。あれで刑亥が死なないんだから、魔王だってね、捨てられたぐらいでは死なないかもしれません。
――魔王城のてっぺんから落とされたとき、彼は意識は失っているんですよね?
――魔王城のてっぺんから落とされたとき、彼は意識は失っているんですよね?
虚淵
はい、完全に意識を刈り取られています。でもほうっておくと復活するかもしれない。なんせ魔王ですから。
偶然出会った霹靂社が、ベストマッチするパートナーになった
――物語の最後のほうに、秦假仙と蔭屍人が登場します。このふたりは霹靂布袋劇からゲスト出演となるキャラクターですが、それぞれのキャストを、中村悠一さんとマフィア梶田さんにオファーした理由は?
虚淵
まず蔭屍人が、サングラスにスキンヘッドがトレードマークというキャラクターになったので、これはもう梶田さんだなと(笑)。で、相方の秦假仙は、霹靂布袋劇ではかなりのビッグネームなので、ベテランの方にお願いしないといけないなと。そこで、『わしゃがなTV』のおふたりにお願いしようと考えました。
――そういう経緯だったんですね。おふたりの収録はいかがでしたか。
――そういう経緯だったんですね。おふたりの収録はいかがでしたか。
虚淵
本当にセリフは少なかったのですが、スムーズに演じてくださって、さすがでしたね。キャラクターもうまい具合に作ってもらえて。
――そして、虚淵さんご自身も、本当のラストシーンに出演されました。
――そして、虚淵さんご自身も、本当のラストシーンに出演されました。
虚淵
ここまで深く関わることになったシリーズは、『サンファン』が初めてだったので。『仮面ライダー鎧武/ガイム』では途中からほかの人に手伝ってもらったりしたのですが、『サンファン』は全話、4シーズンと最終章をひとりで書きました。ここまで来たならば、最後の最後にちょっと自分も入れちゃおうと。声まで当てたのは、本当に初めての経験です。緊張はしましたけど、セリフは少なかったのでなんとかなりましたね。
――その後のエンドロールを見て、「本当に完結したんだな……」としみじみしました。
――その後のエンドロールを見て、「本当に完結したんだな……」としみじみしました。
虚淵
いままでのキャラクターを、カーテンコール風に登場させてほしい、と思いつきで言ったら真に受けていただけて、見事実現してうれしい限りです。人形がちゃんと残っていたからこそ実現できたことですね。登場するキャラクターと順番については打ち合わせをして、動きは霹靂社さんにお任せしました。
――とはいえ、あの終わりかたならば、まだまだ『サンファン』の物語は続けられるのでは……と思うのですが、今後、外伝などを作る可能性は?
――とはいえ、あの終わりかたならば、まだまだ『サンファン』の物語は続けられるのでは……と思うのですが、今後、外伝などを作る可能性は?
虚淵
機会があればやりたくはありますけどね。お話とお話の隙間もありますから。
――ニトロプラスのほかの方が、布袋劇の脚本を書かれるというのも見てみたいです。劇場版の入場特典を担当された分解刑さんですとか。
――ニトロプラスのほかの方が、布袋劇の脚本を書かれるというのも見てみたいです。劇場版の入場特典を担当された分解刑さんですとか。
虚淵
入場特典の小説は、分解刑がうまくふくらませて書いてくれました。ノベライズ(※)のときから感じていたんですけど、もう、続きは彼に書かせてもいいんじゃないかなと。キャラクターもちゃんと把握してくれていますし、ふくらませるのもうまいし。あのノベライズで、「武侠ファンタジーとしての『サンファン』を作ってくれたな」と思ったので、今後は僕も期待したいところです。
※『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』のノベライズ作品。上下巻が星海社より発売中。――あの入場特典の内容は、虚淵さんが原案を考えたのですか?
虚淵
いえ、全部彼が考えました。そういうふくらませかたが上手ですよね。ノベライズのときも、「アレンジを好きに加えていいからやってみな」と任せたら、ものの見事にいいものが上がってきたので、満足しています。
――それでは最後に、虚淵さんの今後の展望や、新しい企画について教えていただけますでしょうか。
――それでは最後に、虚淵さんの今後の展望や、新しい企画について教えていただけますでしょうか。
虚淵
霹靂社さんとは、新しい企画をやりたいという話はしています。そのほかにも、いろいろ参加させていただいているお話はあって……このあいだ数えたら、12本くらいあったかな。その中には、「このままいくと中止になるかも」というプロジェクトもあれば、はたまた、もうお話は書き終わっていて、あとは収録に立ち会うだけのものもあります。これらがどういう順番でお客さんの目に入ることになるかは、まだわからないですね。
――これまでに、ゲーム、小説、アニメ、特撮、そして布袋劇と、さまざまなジャンルに携わってこられましたが、今後挑戦してみたいものは?
――これまでに、ゲーム、小説、アニメ、特撮、そして布袋劇と、さまざまなジャンルに携わってこられましたが、今後挑戦してみたいものは?
虚淵
チャレンジという意味ではゲームをやりたいですね。ゲームってのはそもそもね、まだジャンルとして固まったものですらない気がするんですよね。ゲームそのものが多岐のジャンルにわたるわけで。たとえばノベルゲームとパズルゲームじゃ、ぜんぜんドラマツルギーが変わっちゃうわけで。いちばん未知のものだからこそ、惹かれるところがあります。この先どう転ぶかわからない媒体だよなって。
――ゲームは幅が広くて、表現方法もどんどん移り変わっていきますから、飽きないですよね。アニメの分野についてはいかがですか?
――ゲームは幅が広くて、表現方法もどんどん移り変わっていきますから、飽きないですよね。アニメの分野についてはいかがですか?
虚淵
アニメで、この先キャリアを伸ばそうと思ったら監督をやるしかなくなるんで。で、さすがに僕はその柄じゃないなって思うんですよね。アニメ監督に必要な 、ある種の完璧主義というか、職人的なこだわりが、自分にはちょっと欠けているなという自覚があるんです。ある程度のところで「うん、いいや、つぎに行こう」となっちゃうところがあるんで、それだと企画を立ててプロットを作るところまでが関の山かなと。自分の責任で、映像をひとつ作り切るのには向いていないという感覚があります。
――では、『サンファン』で総監修を務めたのは、かなりのレアケースだったのですね。
――では、『サンファン』で総監修を務めたのは、かなりのレアケースだったのですね。
虚淵
だと思います。人形のアクションをプロが演じてくれて、画面の中の情報の密度が十分にあるという布袋劇の手法だからこそ、自分はあそこまで深く関わることができたんだろうと。本当に、霹靂社さんというパートナーは、僕にとってベストマッチする相手だったと思います。先ほどお話しした、通訳・翻訳をやってくれる方にも恵まれて、本当に幸運でした。
――そんな霹靂社さんとの出会いは、虚淵さんが台湾に行ったときに、たまたま布袋劇の博覧会に行ったことがきっかけだったとか。
――そんな霹靂社さんとの出会いは、虚淵さんが台湾に行ったときに、たまたま布袋劇の博覧会に行ったことがきっかけだったとか。
虚淵
そうです。だから本当に、人生はどう転ぶかわからない。台湾で『Fate/Zero』のサイン会をすることになって訪台したとき、たまたま霹靂社さんの博覧会が開催されていて、その内容に衝撃を受けて布袋劇のDVD-BOXを買いました。で、その足でとあるメディアのインタビューを受けたら、僕が霹靂社さんの袋を持っている姿が写真に写っていたと。それを見て、霹靂社さんが僕に連絡をしようと思ってくれたそうです。
――すごい偶然と言いますか、人生の分岐点ってどこにあるかわからないということが、そのエピソードからも感じられます。そうやって出会った霹靂社さんとの共同プロジェクトや、『サンファン』の新しい企画が、すぐに……とはいかないかもしれませんが、いつかまた見られるのを楽しみにしています。
――すごい偶然と言いますか、人生の分岐点ってどこにあるかわからないということが、そのエピソードからも感じられます。そうやって出会った霹靂社さんとの共同プロジェクトや、『サンファン』の新しい企画が、すぐに……とはいかないかもしれませんが、いつかまた見られるのを楽しみにしています。
虚淵
それは僕としてもうれしいですね。
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