『Berserk or Die』キーボードを叩きつけて操作するのは「特別じゃないデバイスで誰でも遊べるゲームにしたかった」から。『ヴァンサバ』制作者と出会い、発売にいたる経緯も訊いたインタビュー
 先日開催されたオンラインショーケース“PC Gaming Show 2025”での発表とともに、2025年6月9日にSteamでリリースされた2Dアクションゲーム『Berserk or Die』。

 これまでもファミ通.comでは、40個ものキーボードのキーをバシバシ叩いて敵を撃破するという本作独自の操作方法や、『
Vampire Survivors』の開発元poncle初のパブリッシュタイトルであることをお伝えしてきた。
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 この記事では、開発者であるNao GamesのNao氏と、poncle代表のルカ・ガランテ氏の両名にメールインタビューを実施。オリジナリティー溢れる本作はどうやって生まれたのか、そしてパブリッシャー側からはどう映ったのか……。『Berserk or Die』という尖った作品がリリースされるまでの経緯や今後の展開を、それぞれに語ってもらった。


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Nao 氏(なお)

プロデューサー・開発者。2022年にNao Gamesを設立し、ひとりでゲームを制作している。

Luca Galante 氏(ルカ ガランテ)

『Vampire Survivors』の開発元として知られる、イギリスのゲーム会社poncleの代表。

『Berserk or Die』開発元Nao Games:Nao氏メールインタビュー

「全員持っているもので遊べるといい」

――まずは、自己紹介からお願いします。

Nao 
私は約20年前、ゲーム会社にグラフィックデザイナーとして入社しました。あまり大きな会社ではなかったので、初年度から企画、ディレクターも兼任してプロジェクトを進めていました。さらにプログラマーを担当する機会もあり、かなり珍しい経験ができました。音楽以外は何でもできる経験を活かして約4年前に独立し、ひとりでゲームを制作しています。その後すぐに作成した『Ninja or Die』でiGi(※)の1期生に合格しました。
※indie Game incubatorの略。日本のインディークリエイターのための、無償支援プログラム。

――2024年のBitSummitでponcle社長のLuca氏との出会いがあったとのことですが、当時の状況、声が掛かったときの印象やお気持ちはいかがでしたか?

Nao 
声を掛けていただいたときは、パブリッシングということはお聞きしていなかったので、画像制作のお仕事の依頼だと思っていました。
――よくある操作形態ではなく、キーボード全体を直観的に使った入力方法がとても斬新ですね。この操作方法はどのように発想されたのでしょうか? 発想の当時、および、この入力方法を選んだ意図をお教えください。

Nao 
体感ゲームは特別なハードウェアがないとできないものが多く、そのためあまりプレイしてもらえないことが欠点だと思っています。そこで、全員持っているもので遊べるといいと思ってこのようになりました。しかもキーボードを叩くというインパクトもおもしろいと思いました。

――ただガシャガシャと操作する爽快さだけでなく、なるべくボタンを多く押すほうがいいといった深さもあると思いますが、この操作方法にはどんな魅力がありますか?

Nao 
毎回確実に強力な攻撃を出すことが難しい操作にしています。また、自分のキーボードに合った押しかたを考えたり、さらにはこのゲームの操作方法に合ったキーボードに変えたりと、いままでのゲームにはない楽しみかたができると思っています。
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――ルカ氏とは、当時どのようなお話をされましたか? また、『Vampire Survivors』のクリエイターだと認識されてお話をされていたのでしょうか?

Nao 
BitSummitのブースでお声を掛けていただいたときに作者だと教えていただきました。

――その後、poncle初のパブリッシングタイトルに選ばれたかと思いますが、そのお話が来た当時はどのような印象でしたか?

Nao 
BitSummitが終わった次の日に会えないかというお話をいただきました。そのときにパブリッシングだということを知り、とてもびっくりしました。実際の契約は後になるのですが、poncleと契約しようという気持ちはほぼ決まっていまして、そのときにも実際にお伝えしました。

――poncle初のパブリッシングタイトルが、日本の個人クリエイターの作品になるというのは、同じ日本人にとっても誇らしいです。どのような点が気に入られたと考えていらっしゃいますか?

Nao 
やはりグラフィックと独特な操作だと思います。日本のゲームで私のような画風の2Dゲームはあまりないということも、差別化できたところだと思います。

――開発中は『Last Standing』というタイトルでしたよね? このタイトルが変わって『Berseek or Die』という名前になったのはなぜでしょうか。

Nao 
私からではなくponcleのほうからのアイデアです。『Last Standing』はインパクトがあまりないという理由だったと思います。
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――迫りくる敵を迎撃するだけでなく、お金を拾って自身を強化していくのもおもしろいですね。敵を倒したら直接お金が手に入るのではなく、自身を移動させてお金を拾わせる仕様としているところから、どのようなゲーム性が生まれると考え、こういった仕様にされたのでしょうか?

Nao 
当たり前ですが、買い物をするとお金がなくなってしまいます。そのため、説明なしに自身の状況に合わせて強化する項目を選ばないといけないということが、わかってもらえると思います。
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――ゲームオーバー後はすべてが台無しになるわけではなく、リトライするとショップでより強力な武器が購入可能となるところもユニークですね。このあたりの狙いについてもお聞きしたいです。

Nao 
完全にすべてがなくなってしまうと、くり返し遊ぶ気力がなくなってしまう人も多いと思います。それを防ぐためとゲームの目標を増やすために、そのような仕組みを入れています。

――『Berserk or Die』はSteamタイトルですが、今後、他機種での発売も想定されているのでしょうか? その場合、操作方法はどのようになるのでしょうか?

Nao 
はい、他機種も予定しております。まだ未定なところも多いのですが、各機種ごとのコントローラに合った操作方法にしようとしております。PCとは違った楽しみかたができるように作成中です。

――『Berserk or Die』は『Vampire Survivors』のように、長くアップデートをしていく予定はありますか? 現在想定されているアップデート内容があれば、お教えください。

Nao 
ステージやキャラクター、アイテムを増やしていこうと思っております。追加するもののアイデアはすでにいくつかあり、すぐにでも始めたいです。

――さっそく『Berserk or Die』をプレイ中、または本作を手に取ろうか迷っているゲームファンに向けて、メッセージをお願いします。

Nao 
いままでにないゲームで、プレイしないとわからない楽しさがあります。また、価格も安く(399円[税込])手軽に買っていただけるので、ぜひ皆様遊んでください。

『Berserk or Die』パブリッシャーponcle:ルカ氏メールインタビュー

「情熱と愛、そしてちょっとしたカオスを込めて作られた作品」

――『Vampire Survivors』のponcleによる完全新作ということで注目を集めそうですね。自社でパブリッシングまで手掛けることになった発端や経緯についてお聞かせください。

ルカ 
私は『Vampire Survivors』の成功の経験値とこの幸運を、情熱を持ってゲームを作っているほかのインディーやソロ開発者たちと共有するのが公平だと思ったんです。自社ですべてを管理することで、多くの才能ある開発者と出会い、彼らが必要とするあらゆる支援を提供できますし、ゲームの可視性を高め、デジタルストアへスムーズに進出できるプラットフォームを提供することもできます。それに、個人的な理由もあります。単純にもっとインディーゲームを遊びたいので、インディー開発者を支援したいんです。

――『Vampire Survivors』で世界的に有名となったponcleの自社IP第1弾という重要なタイトルとして、なぜ日本人が開発した本作を選んだのでしょうか?

ルカ 
デモをプレイし、Nao氏と初めて話したときに、すぐにこのゲームがponcleのゲームにとって重要な要素を備えていることがわかりました。それは、「直感的に遊べる」「明確なビジョンを持つ」「ちょっとふつうとは違う」「情熱と楽しさで作られた」ゲームであること。Nao氏の開発者、アーティストとしての才能は、もっと多くのプレイヤーに知ってもらうべきだと思いました。
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――『Berserk or Die』は『Vampire Survivors』と同じくドット絵のグラフィックです。今後もponcleブランドのゲームはドット絵・レトロ調なデザインのものになるのでしょうか。

ルカ 
そういうわけではありません。私たちはアートスタイルに関係なく、「おもしろい」と思うゲームを作り続けます。実際、いくつかの自社プロジェクトでは3Dグラフィックも使っていますよ。

――今後はNao Games以外のデベロッパーとも手を組むことはあるのでしょうか?

ルカ 
はい、すでにほかの開発者とも協力を進めています。いくつかのコラボレーションは今年中に公開される予定です。もちろん、『Berserk or Die』のリリース後もNao Gamesと協力を続けていきますし、ほかのプロジェクトでもいっしょに仕事できたらいいですね。彼との制作は本当に楽しく、すばらしい経験になっています。

――初の自社パブリッシングで苦労されたこと、よかったことなどをお聞かせください。

ルカ 
最大のメリットは、いっさい妥協せずに自由にゲームを世に出せることですね。開発者のビジョンに寄り添い、プレイヤーに誠実にゲームを届けられるのは、とても解放感があります。もっと多くのタイトルを手掛けたいですが、まだプロセスの改善が必要で、負担を軽減しながらよりスムーズな運営を目指しています。たとえば、多くのゲーム提案を受けていますが、まだ全員に返信できていない状態です。

――『Berserk or Die』をプレイ中、または本作を手に取ろうか迷っている『Vampire Survivors』ファンに向けて、メッセージをお願いします。

ルカ 
『Berserk or Die』をプレイしてくれている皆さん、本当にありがとうございます! お気に入りのポイントを教えてくださいね。私たちはいつも返信をチェックしています! 『Vampire Survivors』のプレイヤーへ。『Berserk or Die』はまったく異なるゲームですが、どちらも情熱と愛、そしてちょっとしたカオスを込めて作られた作品です。ぜひプレイしてみてください!
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