
本稿では、スタジオビジネスグループ CEOを務めるハーマン・ハルスト氏へのインタビューをお届けする。自身が共同創立者に名を連ねるゲリラゲームズを始め、制作スタジオをマネジメントしてきたハーマン氏による“開発側”からの評価や今後の展望をたっぷりと話していただいた。
なお、もうひとりのCEOで、プラットフォームビジネスグループを統括する西野秀明氏へのインタビューは以下で掲載している。合わせてチェックしてほしい。
ハーマン・ハルスト
ソニー・インタラクティブエンタテインメント スタジオビジネスグループ CEO。2001年にGuerrillaの共同創立者およびマネージングディレクターに。その後SIEに加わり、PlayStation Studiosの統括責任者などを経て2024年6月1日より現職。
重要なのはあらゆる層のプレイヤーが楽しめる幅広い種類のゲームを取り揃えることです
また、30年以上にわたり、何千万人もの人々に喜びとエンタテインメント体験を提供してきたSIEの一員であることを、光栄に感じています。これからも世界中のファンの皆さまに、喜びを提供していくことに大きな期待を抱いています。
――PS30周年についてさまざまなことをうかがう前に、まずはCEOに就任されたハーマンさんが現在管轄されているビジネス領域について教えてください。
――CEO就任までの経歴についても、お話しいただけないでしょうか。
私がまだ子どものころ、私の母は玩具店を経営していました。母は新しいテクノロジーを扱うのが得意ではなかったので、お客さんにゲーム機をデモする必要がある場合は、いつも私が呼ばれていました。私にとってはまったく仕事のようには感じていませんでしたし、閉店後のお店に忍び込んでは、当時発売されていたゲーム機“コンピュータビジョン・光速船”で『マインストーム』のハイスコア更新に挑んでいました。とてもよい思い出ですが、思えばこの時期から私の中にゲームに対する確かな情熱が育まれたのだと思います。
学生時代に初めてゲーム業界での仕事を経験し、この世界でキャリアを積むことを志しました。ゲリラゲームズがソニー・コンピュータエンタテインメント(現SIE)に買収されるまでは、同スタジオの共同創立者およびマネージングディレクターとして、クリエイティブかつ経営的な視点から、スタジオおよびすべてのゲームの事業戦略を推進していました。
──30年間の中で、プレイステーションが成長するうえでとくに重要だった作品を挙げるとすると、どのタイトルになるでしょうか?
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それまで、各スタジオのゲームはグラフィック、ストーリー性、ゲームデザインなど、どれかひとつの領域に特化し、強みを競っていました。当時、私は『KILLZONE 3』の制作に取り組んでいて、マーク・サーニーさんがコンサルタントとしてサポートを提供してくれていました。『アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団』を見たとき、私たちはこの作品が、ゲームという概念を根本的に変えてしまうものだと悟りました。
――実際、同作品はゲーム制作にどのような影響を与えていったのでしょうか。
──そのほか個人的に思い入れの深い技術、商品などがありましたら教えてください。
プレイステーションのコントローラーは、つねに最高品質の体験を提供してきました。DUALSHOCKシリーズのコントローラーは、日本のエンジニアと設計者の類まれなる技術力により誕生しました。そして、ハードウェアチームとゲームデザインチームのすばらしいコラボレーションにより、DualSenseが完成しました。先日東京のTeam ASOBIがリリースした『アストロボット』も、この緊密なコラボレーションを通して実現しました。
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また、武器のリロードのアニメーションの長さに注目し、映像としての完成度を追求しながらも、ゲームプレイに支障がでない最適な長さはどのくらいかと、延々と考えていたりもします。
しかし、最高の体験は、こうしたことはすべて忘れ、ゲームの世界に入り込み、純粋にゲームを楽しんでいるときです。2018年にリリースされた『ゴッド・オブ・ウォー』のクレイトスとアトレウスの物語は本当にすばらしかったです。
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ローンチタイトルの開発は非常に難しく、リリース日が確定しているため、通常のプロジェクトより早いターゲットに向けて確実に成果を出す必要があります。同時に、組織全体が一丸となってサポートし合い、ゲームが数多くのイベントで披露されるため、とてもやりがいのあるプロジェクトです。何年もかけ、秘密裏にプロジェクトに取り組んで来た開発チームが注目を浴びる姿を見るのは、本当にすばらしかったです。
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PlayStation Studiosの展望
PlayStation Studiosは、『アストロボット』や『LEGO ホライゾン アドベンチャー』といったゲームを通して、プレイステーションコミュニティーの拡大を目指しており、また今後『Ghost of Yotei(ゴースト・オブ・ヨウテイ)』などのすばらしいタイトルのリリースも予定しています。今後もより多くのプレイヤーに私たちの作品を楽しんでいただきたいと考えています。
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ライブサービス分野も継続的に成長させており、『HELLDIVERS 2(ヘルダイバー2)』は大きな成功を収めました。スタジオビジネスグループは、強力なポートフォリオの形成において、プレイヤーにすばらしい体験を提供するゲームを厳密に選定することを重視しています。また、PlayStation Productionsが制作中の映画版『ゴースト・オブ・ツシマ』など、新しい領域でのIP拡大にも注力しています。
――現在PS Studios全体で、何本くらいのタイトルが開発中なのでしょうか?
――その一方で『CONCORD』は約2週間でサービス終了となり、Neon KoiとFirewalk Studiosの2スタジオの閉鎖が発表されました。コロナ禍が落ち着き、ゲームビジネスも急速な変化をしているかと思いますが、その原因はどのように分析されていますか? また、このスタジオ閉鎖にともない、ライブサービスゲーム、モバイルゲームの戦略は変更があるのでしょうか?
しかし、それによって競争も生まれ、業界内の多くの企業と同様に、より持続可能な運営基盤を固めるために、事業に変更を加える必要がありました。
今後も、プレイヤーの皆さまが求めるストーリー重視のシングルプレイヤータイトルと共に、ライブサービスタイトルの開発にも注力していきます。
SIE内でクオリティーの高いライブサービスタイトルを開発する能力を確立する中で、私たちは多くのことを学んでいます。『HELLDIVERS 2』は、継続的なコンテンツ提供を通して多くのプレイヤーを惹きつけ、ライブサービスタイトルの可能性を裏付ける成果を出しました。
モバイルゲームにおいては、プレイステーションのIPを、コンソールとの相乗効果を最大限に高める方法で展開したいと考えています。そのため、まずは外部の開発スタジオとのコラボレーションに注力します。2023年11月には、NCSOFTとモバイル分野で協業していくための戦略的パートナーシップの締結を発表しました。2024年10月には、NetEase Gamesが開発およびパブリッシュしている、DestinyのIPをベースにしたモバイルゲーム『Destiny: Rising』が発表されました。
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時代に合わせた変化と過去の財産の活用
──2024年は、Team NINJA の『Rise of the Ronin』、SHIFT UPの『Steller Blade』と、PS Studiosではない外部のスタジオによる作品が相次いでリリースされ、好評を博しました。PS Studiosが充実した開発力を持つ一方で、こうした外部スタジオとの取り組みも積極的に進められているのはなぜなのでしょうか。
重要なのは、あらゆる層のプレイヤーが楽しめる、幅広い種類のゲームをポートフォリオに取り揃えることです。プレイステーションのプレイヤーに新鮮な喜びと体験を提供するために、私たちはつねにポートフォリオの内容を精査し、求められているジャンルの拡充や、新しい種類のゲームの導入を検討しています。
私たちの目的は、社内外問わず、世界最高峰のクリエイターによるゲームをパブリッシュすることであり、外部の開発スタジオと密接に連携することで、これまで多くの成功を収めてきました。
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シングルプレイヤーゲームは、プレイステーションプラットフォームの魅力を高める重要な要素であり、タイトルごとに戦略的な販売期間を設定しています。コンソールがコアビジネスであり続ける一方で、PCなどのプラットフォームにも拡大することで、より多くの人々に私たちのゲームを提供することが可能になります。
私たちは、プレイヤーの皆様に最高の体験を提供することをつねに優先しており、その一環として、PCにおけるPSNアカウントの連携も推進しています。
──『LEGO ホライゾン アドベンチャー』が、PS5、PCだけでなく、Nintendo Switchでも発売されたことに驚きました。ゲームのターゲット次第では、今後もNintendo Switchなどのプラットフォームでの同時発売も可能性はあるのでしょうか?
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『アストロボット』は、遊びと楽しさを追求したすばらしい作品で、ゲームコミュニティーから高い評価をいただいています。Metacritic (メタクリティック) のスコアも94点を記録し、幅広いプレイヤーの皆さまが、心から楽しんでくださっていることをたいへんうれしく思っています!<br />
プレイステーションブランドの30年にわたる遊びの歴史が詰まった本作は、発売から9週間で150万本以上を売り上げました。また、ほかのタイトルに比べ、若い年齢層やファミリー層の購入率が高く、コミュニティーの拡大にも大きく貢献しています。
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“最高の遊び場”であり続けるために
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ふたつ目に重要な点は、適切なバランスです。ゲームの世界観を維持することにより、映像を通して、ゲームをプレイしていたときの感覚を感じられることが大切です。同時に、原作に固執しすぎず、ドラマや映画としてのエンタメ性を織り込むことも重要です。
現在、多くのプロジェクトが進行中であり、その完成を非常に楽しみにしています。
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──今後発売予定タイトルの中で、とくに期待しているものはありますか?
──プレイステーションの未来像をどのように描いておられますか? これから取り組んでいくこと、実現させたい大きな目標などがありましたらお聞かせください。
── 日本のゲームファンに向けてメッセージをお願いします。