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『ゼルダ無双 封印戦記』の開発はコーエーテクモの“AAAスタジオ”。世界中に“正拳突き”のようなド直球のゲームを届けたい。Switch2はスペックアップで、ゲームのおもしろさが一気にアップ

by世界三大三代川

『ゼルダ無双 封印戦記』の開発はコーエーテクモの“AAAスタジオ”。世界中に“正拳突き”のようなド直球のゲームを届けたい。Switch2はスペックアップで、ゲームのおもしろさが一気にアップ
 2025年6月5日に発売を迎えた、新ハード“Nintendo Switch 2”(ニンテンドースイッチツー)。“Nintendo Direct: Nintendo Switch 2 - 2025.4.2”でさまざまな対応ソフトが発表された中のひとつが、『ゼルダ無双 封印戦記』だ。

 本作は、任天堂の『
ゼルダの伝説』シリーズの世界観でコーエーテクモゲームスの“無双”シリーズの爽快感が楽しめる、『ゼルダ無双』シリーズ最新作。『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』の前日譚となる”封印戦争”の戦いを“無双”シリーズのアクションで描くタイトルになっている(発売日は今冬を予定)。

 本作の映像が公開された際、コーエーテクモゲームスのロゴのつぎに“AAA Games Studio”という見知らぬロゴが表示されたことに気づいただろうか。これが、コーエーテクモゲームスの新たな開発スタジオ“AAAスタジオ”のロゴだ。
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 AAAスタジオは、AAAクラス(編注:トリプルエーは大規模な開発予算、人員をかけて制作するゲームを指す用語。AAAタイトルなども同様の意味)のゲームを開発するためのスタジオとして2024年4月に新設。コーエーテクモゲームスの公式サイトや決算発表などで名称は出ていたが、『ゼルダ無双 封印戦記』の発表まで表立った動きは行われてこなかった。

 コーエーテクモゲームスはこれまで、シブサワ・コウ、ω-Force、Team NINJA、ガスト、ルビーパーティー、midasの6ブランドでさまざまなタイトルをリリースしてきたわけだが、ここにAAAスタジオが加わり6ブランド+1スタジオという新体制となっている。

 今回、『ゼルダ無双 封印戦記』の発表を受けて、AAAスタジオの戦略と、新ハードとなるNintendo Switch 2向けの開発について、スタジオ長の早矢仕洋介氏、『ゼルダ無双 封印戦記』プロデューサーの松下竜太氏にお話をうかがった。
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早矢仕洋介氏(写真左)、松下竜太氏(写真右)。

早矢仕洋介氏はやし ようすけ

コーエーテクモゲームス副社長で、AAAスタジオ長。Team NINJA出身で『デッド オア アライブ』シリーズ、『NINJA GAIDEN』シリーズ、『仁王』シリーズなどのプロデューサー、ディレクターを歴任。直近の作品では、2024年3月発売の『Rise of The Ronin』でプロデューサーを務めた。(文中は早矢仕)

松下竜太氏まつした りょうた

コーエーテクモゲームス所属でAAAスタジオプロデューサー。『ゼルダ無双 封印戦記』でもプロデューサーを務める。ω-Force出身で『ゼルダ無双 厄災の黙示録』、『Fate/Samurai Remnant』でディレクターを担当した。(文中は松下)

名は体を表すでAAAクラスの品質を

ーーAAAスタジオの設立の意図、経緯からお聞かせいただけますか?

早矢仕
コーエーテクモゲームス全体として、メインであるゲーム事業をさらに成長させていくために、よりグローバルで多くの方に遊んでいただけるタイトルを増やしていくという大方針があります。

 その中で私自身は、2024年3月に発売された『
Rise of the Ronin』までプロデューサーをやってきたのですが、最近はTeam NINJAやω-Force(オメガフォース)だけでなく、コーエーテクモゲームスの各ブランドのバックアップに近い仕事を担当していたんですね。

 ですが、今後グローバルで勝負できるタイトルを作っていく必要がある中で、さらにコーエーテクモの成長につなげるためには、私自身ももう一度タイトルのプロデューサーとしてタイトルを立ち上げる側になったほうがいいんじゃないか、ということを襟川(襟川陽一氏。コーエーテクモホールディングス代表取締役社長)や鯉沼(鯉沼久史氏。コーエーテクモゲームス代表取締役社長CEO&COO)と話していたんです。

 いまゲーム開発にかかる期間はどんどん長期化していまして、新たにAAAクラスのゲームを作るには3~5年以上かける必要があります。そういった大規模なゲームを開発できるチームを増やすために、私が直接見て、育てていこうという流れになったのが経緯です。

 これが約1年前で、先日、ひとつ目のタイトルとなる『ゼルダ無双 封印戦記』を発表させていただいた、という状況ですね。

ーーそれは早矢仕さんが副社長として経営視点で会社を見ながらも、開発にも注力していくということになるのでしょうか?

早矢仕
そもそも大きいタイトルを作るとなると、会社全体の意思や協力が必要です。開発の現場は多くの才能ある開発者がいまもおもしろい、新しいゲームを創っています。その現場の開発力を最大限引き出して、そして導くために私がスタジオ長という立場に就くことになった、というイメージですね。
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ーーなるほど。そして、スタジオ名がAAAスタジオというなかなか直球な名称になっていますが、この由来は……?
早矢仕
「名前は好きに決めていいよ」と言われて、ひと晩いろいろ考えまして……。このスタジオではどういうことを目指して、どういうゲームをお客様に提供したいのかという意思を名前でわかるようにしたくAAAスタジオとしました。

 皆さんに覚えていただきやすいのと、“AAA品質のゲームを創造する”ということがスタジオの意思としてわかりやすいと思っています。あと、このスタジオ名を冠してヘタなゲームは出せませんから。

ーー名は体を表すと。

早矢仕
それを今後出てくるゲームで証明できるようにがんばります。

ーー期待しています! そして、そのスタジオのメインスタッフとして、松下さんにお声がけをされたのでしょうか?

早矢仕
AAAスタジオとして動き出す前から複数のプロジェクトを立ち上げていたので、松下を含むそのプロジェクトのプロデューサー陣と、さらに新たに社内から応募してくれたメンバーを集めて構成しています。

ーー松下さんはAAAスタジオのお話が来たときはどのように感じましたか?

松下
まず「すごい名前のスタジオだな」と。

ーースタッフとしてはそうなりますよね(笑)。

松下
順番としては、『ゼルダ無双 封印戦記』の立ち上げがあって、その準備段階でAAAスタジオ設立の話をもらったのですが、この名前のスタジオになったことで、やるべきことは明確になったなという想いはありました。変にごまかしたりせず、期待されている仕事にしっかり応えないといけない。スタジオの名前は謙虚ではないのですが、しっかりとしたおもしろさでリリースすることを目指すという点では謙虚に実直に進めていこうと考えています。

早矢仕
じつは、私がテクモ(当時)に入社したばかりのときに、部署名がTeam NINJAとなって、「すごい部署名になったな」と衝撃を受けたんですが、まさか20年以上経って、私が名前を付ける側になって同じ衝撃をくりかえすとは思いませんでした(笑)。

松下
AAAスタジオがすごい名前とは言いましたが、私ももともとω-Forceですからね。名刺に“ω”や“NINJA”が書いてある社会人はなかなかいないので、インパクトという意味ではあまり変わらないのかもしれません(笑)。
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ーーたしかに(笑)。コーエーテクモゲームスとしては、Team NINJAやω-ForceといったブランドでもAAAクラスのゲームを制作されていたわけですが、今回それらのブランドとは別に、AAAクラスだけを作るスタジオとして新設した理由はどういったものがあったのでしょうか?
早矢仕
Team NINJAやω-Forceといったブランドは、長年タイトルを通じてお客様からそのブランドらしいゲームを求めていただいている状況になっています。それは、もともと各チームが得意なゲームを出していって、それをお客様に支持していただくという、その積み重ねがブランドになっていったと思っていまして、その歴史は各ブランドらしいゲームを求めるお客様と、それに応えるブランドとの信頼関係でもあると感じています。

 一方、先ほどお話しをした通り、昨今のゲーム開発は1本あたりの開発期間がとても長期化していて、開発に必要な人数も増えていますから、新しいタイトルを増やしていこうというときに、Team NINJAでもω-Forceでもない新たな動きをメインにするチームを作り、コーエーテクモからより多彩で豊かなタイトルを創造していきたい。それが今回のAAAスタジオにつながったというわけです。

 いい意味でまだ色がついていない、ブランドのような価値になっていないスタジオだからこそ、私たちが考えるおもしろいゲームを突き詰めて開発をしていく。そして、それをお客様に提供して楽しんでいただき、受け入れていただくことで、また新たなブランドになっていく、そんな状況を目指したいと思っています。

ーーなるほど。タイトルのイメージにブランドが引っ張られるのではなく、スタジオが得意とするものを作っていくことでブランド化していくと。

早矢仕
そうですね。ただ、私はもともとTeam NINJA出身ですし、松下はω-Force出身ですし、これまでのノウハウを活かしたものを創ると、そういったブランドの匂いを感じるものになるのかもしれません。いきなりコマンドRPGを作っても、それはお客様が求めていないものになるでしょうし。

 あとは、私自身がとても感じているのが、コーエーとテクモが合併する際に、両社の共通点を意識して探していたんですが、当時の両社の勢いがあるIPとして、コーエー側は『
信長の野望』や『三國志』、『無双』シリーズ、テクモ側は『NINJA GAIDEN』に『デッド オア アライブ』、『零』で、どちらも東洋というか、オリエンタルな文化に根差したゲームだったんですよね。

ーーああ、たしかにそうですね。

早矢仕
当時のゲームの王道と言える世界観は西洋ファンタジーで、その中でオリエンタルな世界観のゲームを出すことはある意味ニッチではありますが、だからこそコーエーテクモゲームスという全社のブランドが活きると思っていました。

 それが、合併から15年以上経ったいまではゲーム市場の拡大にともなってイメージが変化して、中国やアジアにゲーム市場が広がっていくと、西洋ファンタジーがメジャーで、オリエンタルのものがマイナーといった風潮はなくなっていて。東洋の代表的な題材である“侍”、“忍者”、“三国志”、“戦国時代”といった文化や歴史はもちろん、アニメ調といった表現方法も含めて、中国のメーカーさんも多く手掛けるようになって、それらにメジャーかどうかといった意識がなくなって、世界中の多くのお客様にすんなり受け入れられる雰囲気になってきたのではないかと感じています。

 そうなると、私たちコーエーテクモゲームスは立ち位置を変えていないのですが、結果的に我々が得意にしている題材、そのDNAを受け継いだゲームがもっと多くの人に遊んでいただけるチャンスになってきたと考えてます。だからこそ、そこで我々が得意とする直球のゲームを創ることで、いままで超えられなかった壁を超えて、届かなかったより多くのお客様にも遊んでいただくことができるんじゃないかと思っています。

ーーではAAAスタジオとして直球のゲームを作るということで、企画の考えかたなども変わらないのでしょうか?

松下
AAAという言葉は、いわゆるお金を潤沢に使うというビジネスという印象が先行してしまう側面もあると思います。ただ、それが必ずしもお客様の期待に直結しないケースもありますし、かえってイメージへの縛り、方向性の制約が出てしまう恐れも感じています。

 我々が目指すのは、AAAクラスの品質であり、それを新鮮さをもってワールドワイドのお客様に向けて作っていくことであると捉えています。そういう意識で作っていくとなると、ゲーム市場の中で我々コーエーテクモにしかできない正拳突きのようなド直球のゲームを出していくということが、その答えになっていくのではないかと思っています。

早矢仕
このスタジオ名を考えたとき以上に、最近はAAAというワードが一般用語化してきていて、いまではお客様も使うような状況になっているんですが、その使用例の多くは予算規模、お金のかけかたを示しているように感じます。

 でもお客様にとっては、開発側がお金をいくらかけたかというのは正直どうでもいい話で、そのゲームがおもしろいかどうか、そのゲームに満足できるかどうかのほうが重要だと思うんですよね。

 だからこそ我々がAAAスタジオが目指しているのは、“AAA品質のゲーム”であるというのは改めてお伝えしたいです。

松下
できれば、ゲームの作り手がニュースになっているよりも、作品で語ってもらえるほうがうれしいですね。

早矢仕
このインタビュー受けながらその話をするのはすごい(笑)。

松下
すみません(笑)。話題にしていただけるのはありがたいです。『ゼルダ無双 封印戦記』を遊んでとても楽しんでいただいた方の頭に、AAAスタジオの名前がなんとなく残っていて、つぎのタイトルで再会したときにこれも遊んでみたいなと思ってもらえる、というのが理想的だなと思います。

早矢仕
じつは『ゼルダ無双』シリーズ自体、私はずっと関わっていますがタイトル毎に違うブランドが開発していたんです。初代の『ゼルダ無双』はTeam NINJAが、『ゼルダ無双 厄災の黙示録』はω-Forceが、そして本作『ゼルダ無双 封印戦記』はAAAスタジオです。まずは遊んでいただく方々にAAAスタジオを覚えてもらえるようなゲームに仕上げていかないといけませんね。
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ーー開発者先行で認知するのではなく、ゲームで認知してもらいたいと。コーエーテクモゲームス内のほかブランドとの差別化、切り分けなどは考えているのでしょうか?
早矢仕
いえ、無理に差別化しようとは考えていません。開発チームの価値を最大限に発揮できる体制で、世の中に求められているもの、おもしろいと思ってもらえるものをフラットに創っていこうと思っています。

 Team NINJAだと手応えのあるゲームを求められる、ω-Forceだと『無双』シリーズのようなイメージがある、といったお客様からの期待がありますが、AAAスタジオにはまだ色がないので、それがある意味差別化につながっていると思います。

松下「AAAスタジオは何が出てくるかわからないけど、おもしろいゲームを創るスタジオ」と思っていただけたら、それはしっかり期待していただいているということになると思うので、そういうイメージを作りたいですね。

ーーそれこそ爽快なアクション性や手触りの良さといった、これまでのノウハウを活かしながら新しいものを作るイメージでしょうか?

松下
ゲームを作る工程の中では、もちろん新体験のための新しいアイディアを設計に取り入れることは大前提なのですが、実機の中で面白さを実現するために泥臭く試行錯誤するほど、コアとして今までの知見や得意技として培ってきたものが顔を出してくるように感じています。真摯に言い訳抜きで品質に向き合うほど、どうしても真っ直ぐな正拳突きが出てしまう。そういったこれまで培ってきた実績を活かしつつ、新しいものを作るということになると思います。

早矢仕
オリエンタルな雰囲気のゲームを我々の武器にしていこうとしたというお話をしたと思うんですが、いまのゲーム市場でいろいろなメーカーさんがオリエンタルな題材のゲームを開発するようになってくると、今度はその開発チームのパーソナリティーと言いますか、そのチームの人間たちだからこそ創れるものにしないと、世界のお客様に「おもしろそうだ」と、共感をしてもらえなくなってきたなとも思っているんです。

 ですので、松下の言っている正拳突きというのはまさにその通りで、我々が急に西洋ファンタジーのRPGを作ってもお客様はそれを求めていないでしょうし、何よりコーエーテクモゲームスがこれまでに培ってきたDNAと、いま社内にいるスタッフの能力を最大限発揮できると信じることを形にすることこそ、もっとおもしろいゲームが創れる道なのではないかと思っています。
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ーーなるほど。では、AAAスタジオでは新規IPに注力していく、といったこともないのでしょうか?
早矢仕
我々が出すものは新規タイトルかもしれませんが、新規IPという言いかたには私は少しだけ違和感があって。というのもシリーズものではない、新しいタイトルを出したとしても、それはこれまでのコーエーテクモという会社の歴史の流れから生まれているものだったりするので、それは本当の意味で新規IPなんだろうかと。

ーーああ、たとえば『仁王』シリーズがあって、その流れを受け継いだ『Wo Long: Fallen Dynasty』があるような。

早矢仕
そうですね。『Wo Long: Fallen Dynasty』もまぎれもなく新規タイトルですが、あれはコーエーテクモゲームスとして期待をいただいているイメージを具体化したタイトルだと思うんですよね。そういったタイトルを創って、しっかり期待に応えていく。それがコーエーテクモというゲーム会社ファンが増えることにつながるんではないかと思っています。

ーーちなみにAAAスタジオの規模というか、所属スタッフの方の人数は多いんですか?

早矢仕
じつはまだそんなに多くはないです。いまコーエーテクモゲームスは新入社員を含めて、どんどん開発スタッフを増やしている段階ですので、そういった若いゲーム開発者たちが活躍できる場所にしたいと思っています。いま社内にある各ブランドほどタイトル本数も多くないですし、まずは少数精鋭でやって、みんなで経験を重ねてつぎにつなげていきたいなと。

松下
まだ大規模ではないからこそ出る色であったり、フットワークの軽さだったりというのは、いまでしかできない武器だと思います。

早矢仕
コーエーテクモゲームスをよく知るお客様からは、私のイメージとしてTeam NINJAを想像していただくことが多いと思うんですが、松下はずっとω-Forceでやってきた人間なんですよね。その2チーム出身のメンバーがいっしょにやるからこそ創れる、これまでのコーエーテクモゲームスにはなかった価値観を生みたいですね。

ーーコーエーテクモゲームスのほかのチームは、いずれもブランドという区分けにしていて、AAAスタジオだけがスタジオという区分けになっているわけですが、将来的にAAAスタジオの個性が認められればブランドになるということもあるのでしょうか?

早矢仕
ブランドというのは、お客様に価値を感じていただくものだと思いますので、何も提供していない段階でブランドを名乗るのは違和感がありました。コーエーテクモゲームスとしては、6ブランド+1スタジオと、統一感はなくなってしまったんですが(笑)。でも、まずは我々がAAAクラスの品質のゲームを作っていくという宣言も含めてスタジオの名前にしたので、今後はそのスタジオ名でお客様に安心してもらえればブランドに近づくのかなと思います。

Switch2 のマシンパワーでゲームはさらにおもしろく

ーーAAAスタジオのデビュー作がNintendo Switch 2 用ソフトの『ゼルダ無双 封印戦記』になるわけですが、Nintendo Switch 2 向けの開発をされてみて、いかがですか?

松下
前作の『ゼルダ無双 厄災の黙示録』はNintendo Switch用ソフトでしたので、非常にわかりやすくスペックアップを感じています。マシンパワーがあるからこそ、続編としての魅力をまっすぐに伸ばせるようになっていて、とても素直にいいゲームが作りやすいという印象です。
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ーー前作の『ゼルダ無双 厄災の黙示録』は『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』のスピンオフで、『無双』タイトルとして多数のキャラクターを同時に描画するためにグラフィックをうまく間引く必要があったかと思うのですが、今回はNintendo Switch 2 のマシンパワーで『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』のキャラクターをほぼそのまま描きながら、多数のキャラクターを表示できるといったことがあるのでしょうか?
松下
ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』はオープンエアーのゲームだったのに対し、『ゼルダ無双 厄災の黙示録』は『無双』タイトルとしてたくさんの敵や強い敵が攻略対象になるゲームですので、そもそもジャンルが違っていて、ハードのスペックの割きかたもまったく違ったわけです。そういう意味では今回も、Nintendo Switch 2 でスペックアップはしているものの、『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』をそのまま持ってこようということではなく、今作独自の魅力として、敵がたくさん出ることはもちろん、緊張感のあるコンバットが楽しめるようにハードスペックを使っています。

早矢仕
もともと本作のプロジェクトがスタートしたときは、しばらくNintendo Switch用ソフトとして開発していたんですね。それを途中でNintendo Switch 2 向けに変更したんですが、それまで創っていたものをNintendo Switch 2 に載せ替えただけで、敵の出現数やフレームレートも大きく変わって、単純におもしろさが一気に上がったんです。ハードのおかげでこんなにおもしろさが変わるのか、というのは我々も驚いたポイントですね。

松下
この気持ちよさ、感動はお客様にも伝わるだろうなと実感できて、これはいいものになるという確信が感じられた瞬間でしたね。
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ーーゲーム性を変えることなく、敵の出現数やフレームレートが変わるだけで、そんなに変わるものなんですね。
早矢仕
数やフレームレートが変わると、画面の情報量も増えるんです。もともとNintendo Switchで開発していたころはギリギリのスペックで動かしていたので、余裕を持ったスペックになったことで快適になって、さらに我々が考える遊びも詰め込めると。プレイしたときの感覚はぜんぜん違うものになりましたね。

ーーNintendo Directで発表された映像では、たとえばラウルがいたり、ミネルが地下世界で戦っていたりというシーンが確認できますが、前作よりもパワーアップした点はどういったものがあるのでしょうか?

松下
先ほどお話しをしました敵の表示数の増加といった『無双』らしいスペックアップ以外にも、ゲームファンの方に向けて長く工夫して遊べるようになっているのが、続編として意識したポイントです。『ゼルダの伝説』のおもしろさは工夫の余地と言いますか、「こういうことができるかも」と試してみて実際にできたときの喜びなどがあると思うのですが、戦うゲームである『ゼルダ無双』はそれをフィールドに対しての謎解きではなく、敵に対してどんな攻撃で、どう攻略するかという点で工夫できるようにしてきました。今作ではその点についてもパワーアップしています。

 とある敵が出てきたときに、自分の持っているアイテムを使えば有利になるか、もしくは、仲間になったキャラクターの技を使うほうが有利になるか、といった予想をしながら試してみて、それがしっかりとゲーム側で応えてくれる、そういった要素の深さを増しています。
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ーーなるほど。『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』は、自由度の高さが尋常ではないところがあると思うのですが、それを題材にするのはとても難しいような……。
松下
『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』の自由度、懐の深さは多くのユーザーの方が衝撃を受けたと思います。ああいったプレイがそのまま再現できるわけではないのですが、そこで味わった、期待や予想に何かしらゲームが応えてくれて「じゃあつぎはこんなことをしてみよう」と試したくなる、そういう遊びの本質は“無双”というジャンルの中でしっかり昇華して体感できるようにチャレンジしています。

ーーそれはとても楽しみです。そのほか、Nintendo Switch 2 の新しい機能などについてもおうかがいします。Nintendo Switchからのスペックアップだけでなく、ゲームチャットなどの機能追加もありますが、どんな印象をお持ちですか?

松下
いまのゲームユーザーの遊びかたにとてもフィットしているなと。ゲーム機側で遊び場を含めて用意してくれるゲームチャットは、たとえば仕事や学校が終わったあとに、そのグループがそのままスムーズにNintendo Switch 2 タイトルのマルチプレイに移行できるというのがとてもいいなと思いました。

早矢仕
私は“おすそわけプレイ”がとても魅力的だなと思っていて。Nintendo Switchはみんなでリビングに集まったときに、テレビにつないだNintendo Switchでみんなで遊びつつ、同じリビングでひとり離れて携帯モードで別のゲームを遊ぶ、といった状況もありました。

 ですが、おすそわけプレイがあると、テレビで遊ぶグループと、携帯モードで離れて遊んでいる人が同じゲームで遊べるようになる。しかも、それが1個のゲームソフトだけで実現できるというのは、垣根がよりなくなって、リビング中でみんながもっと会話しながら遊べるという、とても任天堂さんらしいイメージのゲーム機だなと思います。おそらく、実際にリビングにNintendo Switch 2 が来たときに、「こんなことできるんだよ」とおすそわけプレイを見せるとみんな驚くと思うので、そういった面でも楽しみですね。
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ーー先ほどNintendo Switchよりもわかりやすくスペックアップしているというお話がありましたが、開発者としては開発がしやすくなった、という点はあるのでしょうか?
松下
そうですね。ハードの移り変わりを実感できて感動しました。ただ、開発者の欲というのは止まらなくて、スペックアップしたぶん、より高いハードルでどこまで魅力を出せるかという、新たなチャレンジがスタートしています(笑)。

ーー永遠のテーマですね(笑)。AAAスタジオとしては、『ゼルダ無双 封印戦記』以外にも、複数のプロジェクトが動いているのでしょうか?

早矢仕
はい。冒頭にお話をしましたように、新しい価値を提供していくということと、私も含めてスタッフが担当したゲームの流れ、これまで培ったノウハウをつぎにつなげていくということをテーマに、複数のタイトルを動かしています。これらを経てAAAスタジオの開発力を上げながら、さらにつぎの展開へとつなげていきたいですね。

ーーでは最後に、AAAスタジオの意気込みを教えていただけますでしょうか。

早矢仕
くり返しになる部分もありますが、AAAスタジオという名前は、我々自身がこういうゲームを創りたいという想いと、自分たちを追い込んででもお客様にAAA品質をお約束したいという想いでつけました。

 2024年にスタジオの名称が世の中に出てからこれまで何のゲームも発表してきませんでしたし、具体的な発信は何もしてこなかったんですが、それでもある程度覚えていただいて、気にしていただいていた方がいらっしゃったことはとてもうれしく思っています。そんな中で今回初めて発表した、この『ゼルダ無双 封印戦記』という最初のタイトルをお客様の期待以上のものとしてお届けして、それで次回作に期待していただけるようにしたいなと考えています。

 コーエーテクモゲームス全体で言いますと、お客様に「つぎのタイトルも遊んでみたい」と思っていただけるタイトルを増やしていこうと、10年先まで見据えて開発体制を拡張している段階です。いま会社全体の開発力としては、いまこの瞬間がコーエーテクモゲームス史上もっとも開発力があって、よりおもしろいゲームが創れる状態だと実感しています。それをよりレベルアップさせていって、3年後、5年後にもっとすごいゲームをもっとたくさん出せる会社にいきますAAAスタジオはその中でAAA品質のゲームを出して、存在感を発揮できるようにしていきますので、まずはその1歩目となるタイトルをぜひ楽しみしていただきたいなと思っています。

松下
AAAスタジオという名前についていろいろと言ってしまいましたが、じつは私も含めて開発メンバーはそこまで気負っていません。やることとしては、おもしろいゲームをしっかり作ってお客様にお届けするということでしかないので、それができればまたつぎにつながって、AAAスタジオの続報を楽しみにしていただける状況になるのではないかと思っています。まっすぐ我々のやるべきことを、謙虚に泥臭くがんばってまいります。
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