2025年6月5日、Nintendo Switch 2のローンチソフトとして『 シャインポスト Be Your アイドル! 』(以下、『 シャインポスト 』)がKONAMIより発売された。 発売を記念して、青天国春(なばため はる)役の声優・鈴代紗弓さんにインタビュー! 『シャインポスト』のあれこれを訊いた。 鈴代紗弓 さん(すずしろ さゆみ)
2月4日生まれ。アーツビジョン所属。2017年から活動を開始し、『ハイスコアガール』大野晶役や『ぼっち・ざ・ろっく!』伊地知虹夏役、『逃げ上手の若君』亜也子役など多数の作品に出演する。『シャインポスト』ではアイドルユニットTINGSの青天国春を演じる。
Nintendo Switch 2のローンチタイトルになった『シャインポスト』 ――『シャインポスト Be Your アイドル!』は、4月のニンテンドーダイレクトで初お披露目でした。このときは新ハードの詳細発表ということでかなりたくさんの方がご覧になっていて、取材時点で1200万回再生を突破しています。
鈴代
どれくらいの人がニンテンドーダイレクトを視聴するのか想像しきれていなかったんですけど、1200万人って……とんでもないですよね! ――(笑)。
鈴代
配信の後、仲のいい声優さんからも「『シャインポスト』出るの!? しかもSwitch2で!」みたいな連絡をけっこうな人数からいただいて(笑)。収録現場でも、以前から「『シャインポスト』が好き」と言ってくださっていたスタッフさんからも声を掛けていただいたりして、影響力を実感しました。 ――『シャインポスト』がNintendo Switch 2用のゲームになると聞いたとき、鈴代さんはどのように感じましたか?
鈴代
『シャインポスト』のゲームを待ってくださっている方も多くて、私自身も「いつ出るんだろうなぁ」と楽しみにしていました。 声優として声を吹き込ませていただいた後は制作チームの皆様へお任せなので詳しい進捗は知らない中でも、「まもなく動き出すのかな」という気配はお仕事のなかで感じていたのですが、それがまさか任天堂さんのゲーム機で出るとは思っておらず……! しかも新しいハードと同時発売ってすごいタイミングだなと驚きました。 Switch2というすごく注目されている新しいゲーム機の発売に合わせるためにいろいろ練ってくださっていたんだなと。人目に触れる機会も多いのかなと思うので、たくさんの方に楽しくプレイしていただけたらうれしいですね。
――スマートフォン向けに開発していたころからゲーム性も変更になり、マルチエンディングなどが導入されているそうですね。
鈴代
私が台本で見た限りでは、プレイヤーの選択でアイドルたちが成長していくのが見どころのひとつだと思うんですけど、いろいろと分岐があるなかで正直「いや、そうはならんやろ!?」みたいな展開もあります(笑)。ギャグに振り切ってるんだけど、一周回ってリアルなのかもしれいないっていう。アイドルを、ひとりの人間を導いていく難しさを感じさせられる台本でした。 リアルと感じたのは、人生ってけっこう重い選択ばかりじゃなくて、とくに深い意味がある訳ではない、いわゆる普通の出来事ひとつでも気付きやヒントになって、それ以降に大きな影響を及ぼすこともあるんじゃないかと思わされる選択や展開もあったからです。
――「そんなバカな!?」みたいな切っ掛けで人生が変わってしまうことってじつはありふれているのかも。
鈴代
「この子はお菓子をもらっただけでこんなにモチベーションが上がるんだ」とか。 「春ちゃんそんなことで喜んじゃって大丈夫? チョロすぎない!?」みたいな突っ込みどころも多いかもしれません(笑)。そういう部分も楽しみつつ、コミュニケーションとしてうまくいかなかったと感じたら、また挑戦するとか。いろいろなパターンを楽しんでほしいですね。 いわゆるバッドエンド的な、悲惨な結末は本当に悲惨なので、心が痛くなると思いますけど……。でも、リアルさを突き詰めていくとそんなに珍しくないことなのかもしれませんよね。
――輝けるのはひと握りのアイドルだけということを考えると……。
鈴代
『シャインポスト』ってキラキラしたアイドルを描いているように見えて、かなり泥臭いんですよね。お客さんが本当に少なくて、路上でチケットを手売りするようなところから始まったり、春が挫折したり、芯を折られるような経験も。そういうシビアな部分がゲームだとさらに幅広く描かれるので、「わあ、この展開はキツいなぁ」と思いながら演じたシーンもあります。 ――選択によっては主人公がとてもひどい言動をするので、キャストさんから「主人公を殴りたくなる」なんて言葉も飛び出したと聞きました。鈴代さん的にも殴りたくなるような展開はやはりあったんでしょうか?
鈴代
あったかもしれないです(笑)。でも私にとっては「ハァ?」みたいな感じでも、春ちゃんは健気に受け止めていたりして。同じ選択肢でもアイドルひとりひとりが違った受け取りかたをするので、「この子はどんな言葉を掛けると喜んでくれるんだろう?」というのをプレイヤーさんにはちゃんとその子と真剣に向き合って考えてみてほしいですね。当事者意識を持って(笑)。その選択にみんなの人生が懸かっていますから!
――鈴代さんは『シャインポスト』のアニメが放送されていたころから声の演技だけではなく、現実のアイドル同様のリアルライブ、ステージでのパフォーマンスなども経験されています。声優をやりながら本当にアイドルをやるようなもので、なかなかハードなお仕事なのでは?
鈴代
はい! かなり、はい!! ――(笑)。
鈴代
『シャインポスト』は……本当にアイドルという職業にリスペクトを持って、真摯に向き合っているからこそ、リアルのパフォーマンスで求められる“アイドル度”もかなり高かったと思います。 ライブを見に来てくれた同業の子も、振り付けの細かさや、ころころと変わるフォーメーションに驚いたと言ってくれたり。練習しているときも、たとえば頭のてっぺんから足のつま先まで意識した振り付けを丁寧にご指導いただいたり、振りや歌詞の意味を深掘っていったり……。 少しかもしれませんが、そういったステージでパフォーマンスをするということを経験させていただいたおかげで、改めてアイドルさんたちは「素敵なパフォーマンスができるんだな」と、学ばせていただきました。 ――歌やダンス自体は『シャインポスト』以前にもご経験されていたんですよね?
鈴代
以前にもあったんですけど、正直『シャインポスト』は比にならないくらいたいへんでした(笑)。春ちゃんが所属しているTINGS(ティングス)のライバルにあたるHY:RAIN(ハイレイン)所属のアイドルを演じている芹澤優さんという先輩がいるんですけど……。 ――芹澤優さんは『シャインポスト』シリーズの活動とは別に、以前から声優アイドルユニット、i☆Ris(アイリス)の一員としても活動されていますよね。
鈴代
そうなんです。そんな優さんも「これはたいへんだねぇ!」って。「けっこうガッツリだと思うよ」と仰っていたので、「リアルアイドルさんの目から見ても、『シャインポスト』はやっぱりたいへんなんだな」と思いました。 ――説得力のある証言が得られた(笑)。
鈴代
でも、そういうふうに言われれば言われるほど、「『シャインポスト』ってすごいでしょ!」と、それだけ突き詰めてやっているコンテンツなんだよと思えますし、「私も食らいついていかねば」という気持ちにしてもらえました。 声優としてのお仕事に加えて、ライブやパフォーマンスをやったり歌やダンスのトレーニングをするのはすごくやり甲斐があって、楽しいことばかりじゃなかったんですけど、いち役者として春ちゃんを演じさせていただくにあたって、彼女が実際に積み重ねているであろう努力を一部だけでも体験させてもらえたのにはすごく感謝しています。 要求されるレベルが高いぶん、石原プロデューサーをはじめスタッフの皆さんは私たちがやりやすい環境をすごく手厚く整えてくださったので、不自由なく自分のすべきことに臨めたのもありがたかったですね。
――アニメ版でもゲーム版でも変わらない“青天国春の根っこにあるもの”って何だと思いますか?
鈴代
やっぱり“まっすぐなところ”ですかね。最近改めて「素直ないい子だなぁ」と思うんです。「そんなことで喜んじゃっていいの!?」と感じることもあるんですけど、それだけ言葉の裏にあるものを変に勘ぐったりせず、そのまま受け取れるのが春ちゃんなのかなと。 褒められたときに「いま褒めてくれている、でもこの言葉には何か裏があるんじゃないか?」とか考える子もいると思いますが、春ちゃんはそうではなく、本当に素直に喜べる子だと思うんですよね。ゲームでも春ちゃんのそういう部分は強く印象に残るんじゃないかと思います。 ――アニメでは素直に受け取った結果として、ちょっといびつな葛藤をしてしまう展開もありました。
鈴代
“いい子すぎるがゆえのこじらせかた”だったのかなと個人的には思っています。ゲームでは“拗らせていないときのメンタル”の春ちゃんがプレイヤーさんの選択を素直に受け取っていった結果、どんな結末にたどり着くのかに注目してほしいです。どこまでもアイドルに対してまっすぐな春ちゃんを導いてあげてください。
――今回のゲームでは“AI歌唱”が特徴のひとつになっています。演者として、このテクノロジーを率直にどのように感じましたか?
鈴代
最初に聞いたのは5年くらい前ですから、当時は今ほどAIが大きく話題になったりはしていなくて、どんなものになるか想像が付かなかったというのが正直なところです。「ボーカロイドみたいな感じなのかな?」と思っていたら、そういうことでもなさそうで(笑)。どんなふうになるんだろうと、単純にワクワクしつつ、素材になる声をきちんと提供できるように頑張ろうと。実際にやったこととしては、30~40曲ほど既存の楽曲を歌いました。そのときの歌声をもとにAIが学習した、ということらしいです。 ――完成したAI歌唱はお聴きになったんでしょうか?
鈴代
ちょこちょこ拝聴させていただいているんですけど、最初からかなりすごいなと思っていたら「ここからもっと滑らかになっていきます」と言われてビックリしました。本当に聴くたびによくなっていて、発売されるときにどこまで完成度が上がっているのか楽しみです。 自分の歌唱と比較すると、私が持っている歌い方のちょっとしたクセみたいなものがなくなって、いい意味でフラットになっている印象です。「春ちゃんはこういうふうに歌うんだな」と感じました。私自身が歌唱しているTINGSの楽曲はすでにありますけど、そのとき自分が表現しようとしていた“青天国春の歌”ってこういうことだったのかもしれない、みたいな。声は自分のものなのに歌いかたはなんとなく違うので新鮮でした。 ひとりのキャラクターが存在するのって“自分の芝居だけで成り立っているわけじゃない”と思っているんです。あくまでも私はその子の声帯、“声のお芝居”として春ちゃんを演じさせていただいていますけど、アニメだったらアニメーターさんの“絵のお芝居”だったり、監督さんの演出であったり、ゲームだったらCGだったり、時に“みんなで演じている”という感覚もあるんです。 AI歌唱も単に学習させたんじゃなくて「春はこういう歌いかたをするであろう」みたいなディレクションもあったうえでの表現だと思うので、また新しい意図が見い出せるんじゃないかと思うんです。
――ありがとうございます。最後にゲーム『シャインポスト』がプレイできる日を待っていたファンにひとことお願いします。
鈴代
ついに『シャインポスト Be Your アイドル!』がリリースされました。これまで待っていてくださったファンの方には感謝しかございません。小説やアニメからずっと応援してくださった方には本当にお待たせしましたという感じなのですが、お待ちいただいたぶん以上にいいゲームになるよう、私も収録に臨みましたし、制作陣の皆さんも魂を込めて作ってくださっていると思います。 楽しいと言ってもらえるゲームになっていると思うので、ぜひたくさんプレイして、周囲の方にも布教していただけるとうれしいです(笑)。ゲームで『シャインポスト』を知ってくださった方は、もし気に入っていただけたなら、これを切っ掛けに小説やアニメにもぜひ触れていただけたら幸せです。とってもおもしろくて素敵なので! まだまだ盛り上がり続ける『シャインポスト』をよろしくお願いいたします。
テレビアニメ版『シャインポスト』は期間限定でYouTubeにて順次配信中 VIDEO
第1話・第2話の配信期間:2025年6月12日(木)20時~6月25日(水)23時59分