スパイアクションの金字塔『007』シリーズを題材とする新作ゲーム『007 ファーストライト』。 『ヒットマン』シリーズで知られるIO Interactiveが開発、販売を手掛ける三人称視点のアクションアドベンチャーで、同社独自のゲームエンジン“Glacier”を用いて、若きジェームズ・ボンドが“007”へと成長していく完全オリジナルストーリーが描かれる。ステルスや銃撃戦、ガジェット、カーチェイスなど、『007』らしい要素を盛り込んだゲームプレイも特徴だ。
本稿では、本作の開発を担うIO InteractiveのグローバルブランドマネージャーLaurine Deschamps(ローリーヌ・デシャン)氏、テクニカルディレクターCristina Vega(クリスティーナ・ベガ)氏、そしてイソラ役として出演したNoémie Nakai(ノエミ・ナカイ)さんへのインタビューの模様をお届け。若きボンドをどのように作り上げたのか、キャラクター作りや収録の舞台裏など、さまざまな話を伺った。

左からクリスティーナ・ベガさん、ノエミ・ナカイさん、ローリーヌ・デシャンさん
なお、2026年9月17日~9月21日に千葉県・幕張メッセで開催されている東京ゲームショウ2026(TGS2026)のハピネットブースでは、Nintendo Switch 2版『007 ファーストライト』を試遊可能。ジェームズ・ボンドの等身大フィギュアも展示されているなど、ファン必見の内容となっている。

ボンドファンだらけのスタジオが挑んだ『007』のゲーム化。「本作を通じて映画を知ってほしい」

――『007』のゲーム化は、大きな挑戦だったと思います。改めての質問となりますが『ヒットマン』シリーズを手掛けるIO Interactiveが、『007 ファーストライト』を開発しようと考えた理由を教えてください。
ローリーヌ
スタジオ自体が幅広い世代のジェームズ・ボンドファンで構成されている、というのが非常に大きいです。昔ながらのショーン・コネリー版から最近のダニエル・クレイグ版までのファンがそれぞれいて、ジェームズ・ボンド像も共有できていたので、オリジナルのジェームズ・ボンドを作り上げられるのではないかと思いました。
――スパイになる前の007、つまり若きジェームズ・ボンドを主役にするというのは非常に大胆なアイデアだったと思います。最初からオリジンの物語で行こうと考えていたのでしょうか?
ローリーヌ
そうですね。『007』は長い歴史を持っていますが、それでもそもそも知らない方もいらっしゃるかと思います。そこでIO Interactiveとしてボンドのオリジンを描き、それを楽しんでもらえれば映画、原作小説に興味を持って親しんでもらえるのではと考えました。
小説や映画とは切り離されたゲーム独自の世界ですが、本作をきっかけに『007』ファンになっていただけたらうれしいです。
――本作のジェームズ・ボンドは非常にオリジナリティーに溢れている印象を受けました。歴代のボンド像と被らないよう、どのようなアプローチを取ったのでしょうか?
ローリーヌ
大きなポイントは、彼が“史上もっとも若い27歳のジェームズ・ボンド”であるということでしょう。物語の開始時点では海軍を出たばかりで、MI6のこともまだよくわかっていません。“00(ダブルオー)”の称号もない、いわばダイヤの原石のような存在なんです。
すでに彼独自の魅力やカリスマ性、機転の利くところといったボンドたる資質はありますが、それでも洗練されていません。マティーニの飲みかたも決まってないので「ステアではなくシェイクで」とも言わないし、ボウタイの結びかたもわからない。そこで、そうした“未熟さ”をあえて個性として描きました。フレッシュかつユニークなボンドを作り上げられたと思っています。

――『女王陛下の007』のOP曲が流れるなど、映画好きとしてはさまざまなオマージュもうれしいポイントでした。採用を見送ったオマージュはありますか?
ローリーヌ
シリーズファンがわかるようなものを少しずつ入れてはいますが、“これを入れなければいけない”といった固定観念のようなものは、ガジェットも含めとくにありませんでした。
――そういえばガジェットも『007 ゴールデンアイ』から再現したものがありましたね!
ローリーヌ
ガジェットも映画『007』らしさを象徴する不可欠な要素ですよね。見た目通りの道具ではなく、さまざまな驚きが隠されています。とはいえ現代のスパイものなので、本作ではリアリティーも重視しています。2~3年後の未来に実際にありそうな、SF過ぎないものを採用しました。

『ヒットマン』のノウハウを活かしつつ、“ヒットマン過ぎない”ゲームを目指した開発事情
――IO Interactiveと言えば『ヒットマン』シリーズですが、その知見は本作のゲームデザインに活かされているのでしょうか。
クリスティーナ
私たちが『ヒットマン』で培った“環境を利用した攻略”のノウハウは間違いなく活かされています。目標達成に向けてさまざまなルート、多彩な手段をプレイヤー自身が選択し行動する、といった定番の要素ですね。本作でも、プレイヤーが自身で機転を効かせて自由にルートを選べるようになっています。異国情緒溢れるステージの表現も『ヒットマン』との親和性が高いところだったと思います。
一方で問題点もありました。そういった強みを活かしつつ『ヒットマン』過ぎてはいけないという点です。アイデンティティが崩壊して迷った部分もありました。そこで試行錯誤しながら、“ジェームズ・ボンドとはなにか”というのを自問自答するリストまで作りました。最終的にはIO Interactiveらしさもありながら、よいバランスに落ち着いたと思っています。

画像は『HITMAN World of Assassination』のもの。軸となるステルスメインのアクション要素を始め、さまざまな点で共通点が多い。
――本作を遊んでいると、自分がボンドになったように感じられました。ボンドらしい動きとゲームとしての操作感を両立させるうえで、苦労した点はありますか?
クリスティーナ
ボンドらしさを追求しながら、どうプレイヤーに楽しんでもらうか、どうクリエイティブな要素を取り入れるかが課題でした。本作ではボンド特有の賢さ、魅力を活かす方向性にシフトしています。ふつうのスパイゲームなら敵から隠れますが、ブラフを使って堂々としてみるほうがボンドらしいですよね。そういったようにボンドらしさをゲームに加えていきました。

現代スパイをリサーチして挑んだイソラの演技
――イソラを演じたノエミさんにお聞きします。役作りでとくに意識したことや、準備したことを教えてください。
ノエミ
現実味を大事にしました。個人的には、“ボンドウーマン”というコンセプトを作り上げることよりも、リアリティを持たせることのほうが重要だと考えていたんですね。リアリティを出すために、現代のスパイがどのようなスキルを持っているのか、いろいろ調べて収録に挑みました。

――ノエミさんにとってイソラは魅力的なキャラクターだったのでしょうか?
ノエミ
そうですね、彼女はジェームズ・ボンドを引き立たせるだけの存在ではありません。複雑で奥深く、いいところが滲み出るようなすごく魅力的なキャラクターだったと思います。シナリオライターの方々が試行錯誤して作り込んでくれたおかげですね(笑)。
ローリーヌ
これは、強く独立した女性の活躍を見せたかった、というのもあります。『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』のような(笑)。
――あの映画は、まさに強い女性の理想形でしたからね。イソラも間違いなくクールなボンドウーマンになっていたはずです。それで言うと『007』、しかもボンドウーマンとして出演するというのは役者にとっても大きな事柄だと思うのですが、プレッシャーはありましたか?
ノエミ
じつはそうでもないんです。お話をいただいたときは『007』のゲームだと知ってはいたのですが、“どのキャラクターを担当するか”は知らない状態でしたから。それに本作の収録スタッフは、20人ほどの少人数でした。テレビや映画だと大勢のスタッフに囲まれて演技しますから、そういった意味でもプレッシャーは少なかったと思います。
――ノエミさんは、イソラのフェイスモデル、声に加えて、モーションキャプチャーも担当されていますよね。ふだん関わる映画やドラマでの演技と比べて、とまどったことや印象に残ったことはありましたか?
ノエミ
声の仕事は経験がありましたが、モーションキャプチャーは今回が初めてでした。こういった収録では特殊なスーツを着て、顔にはトラッキング用のドットがたくさんあり、目の前にはつねにカメラがぶら下がっているという……正直、見た目的にはかなりおかしな状況です(笑)。
一方でイソラはエレガントで、いつも余裕があり、洗練された魅力的なキャラクターです。ですが、ボンド役のパトリック・ギブソンさんとも真面目に演技をしようとするんですが、お互いにすごい見た目なので、微妙な感じになってしまったこともありました(笑)。

ゲームに登場するイソラ。ボンドの一歩先をゆく、謎多き女性だ。
ショーン・コネリーは「パトリックのつぎに!」。開発陣&キャストが語る『007』愛
――それではゲームファンに向けたメッセージがほしいのですが……その前に……(ここでライターがバッグに手を伸ばしゴソゴソと漁り出す)。
ノエミ
なにが起きているの?
――これですね(急に『007』のBlu-rayボックスを取り出す)。
ローリーヌ
&
クリスティーナ
&
ノエミ
ワ~オ!(笑)

――いち『007』ファンとして、皆さんの好きな『007』の映画を教えていただいてもよろしいでしょうか?
クリスティーナ
私は第1作目『007 ドクター・ノオ』ですね。初代ボンドウーマンのウルスラ・アンドレスさんが海から上がってくるシーンは印象的ですし、ボンド映画をアイコニックなものにした偉大な作品だと思っています。もちろんほかにも好きな映画あるけど、どれかひとつ挙げるならコレですね。
――やはりショーン・コネリーさんのボンドがお気に入りなんですか?
クリスティーナ
一番はゲームに出てくれたパトリックさんですけどね!(笑)。彼以外ならショーン・コネリーさんがお気に入りです。
ローリーヌ
ダニエル・クレイグさんの世代なので『007 カジノ・ロワイヤル』なども捨てがたいですが、個人的に挙げるなら『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』です! ピアース・ブロスナンさん演じるボンドが非常に好みなんですよね(笑)。
――わかります。ピアース・ブロスナンさんの華やかな雰囲気は、僕もすごく好きです。
ノエミ
ラブストーリーで言えば『007 カジノ・ロワイヤル』。ただ、ジェットパックのような古きよきガジェットもいいですよね。『007 サンダーボール作戦』のサメがいっぱい出てくる水中シーンは、印象的でとても好きな場面です。子どものときは怖かったですけどね(笑)。
――ありがとうございます! 『007』のガジェットは昔からワクワクするものばかりでいいですよね。映画ファンとして満足しました(笑)。それでは改めて、最後にゲームファンに向けたメッセージをお願いします。
クリスティーナ
『007 ファーストライト』は私たちがいろいろな知識と時間を注ぎ込んで作り込んだゲームです。私たちはファンのフィードバックを大事に、そして楽しみにしています。さまざまなプラットフォームで遊べるので、ぜひ楽しんでください! あと映画もね(笑)。
ローリーヌ
このゲームはとても長い時間をかけて作り上げました。みなさんの愛の籠もったフィードバックはとてもうれしく思っています。また、Nintendo Switch 2版が来年2027年にリリースされます。発売日が延びてしまったのは申し訳ないのですが、フォトモード、ヴァルハラプロトコルといった追加要素も用意しています。みなさんが楽しめるよう取り組んでいるので、ぜひプレイして殺しのライセンス“00”(ダブルオー)を受け取ってください。
ノエミ
多くのスタッフが長い時間と愛情を注いで作り上げたゲームです。だからこそ、ファンの皆さんからメッセージやフィードバックが届くたび、とてもうれしく感じています。個人的には任天堂のゲームしかやらない父が、Switch 2でとうとう遊んでくれそうなので、そういった意味でもワクワクしています(笑)。未プレイの方はぜひ遊んで楽しんでみてください。
