『早咲きのくろゆり』とは
本作は“恋と呪い”をテーマにした意欲的な“百合”作品として、発売前のクラウドファンディングで目標金額の800%を超える支持を達成しました。そして、その後リリースされたSteam版では、現在に至るまで高い好評率をあらわす“非常に好評”のステータスを獲得しています。

彼女の助けとなるのが“自由に割り込み、自由に文字を入力する、独自の選択肢システム”。チャート状に分岐していくアドベンチャーでありながらも、カーソルをあわせてセリフを選ぶような従来の選択肢はありません。
ここだと思ったシーンで、プレイヤー自身で考えた言葉を入力する。一見奇抜にも思えるこのシステムが、プレイヤーの“主人公を応援したい気持ち”と深く結びつき、本作特有のゲーム体験を生み出すことに成功しています。
わたしたちの胸を打ち、手折れないよう支えなければ……! と共感を誘うのは、あまりにも痛切な“少女の恋”。そのひたむきな姿を、少しだけ語らせてください。
卒業までの日々がこんなにも息苦しいなんて
ひっこみ思案で自己主張が苦手、恥ずかしがり屋で自信がない。おっとりしていて、少し周囲とズレてるような女の子。まわりの目を気にするような素振りが、同性の同級生からもひんしゅくを買っています。

「高校卒業までの間に、やり残したことをやろう」。物語の本筋となる“思い出づくり”を発案したのも彼女でした。

なぜ“やり残したこと”が減らないのか。なぜ思い出づくりの日々が終わらないのか。主人公・花は、自分が何度も同じ日をくりかえしていることに気づきます。大好きな親友・樹が、目の前で命を落とすあの日を。


彼女が必要としているもの
……そんな紋切り型のフレーズで本作に対する興味を惹くこともできるでしょう。ですがそれだけでは『早咲きのくろゆり』を語る言葉としては芯を外してしまっている。それでは彼女がもつ心の強さを過小評価している。
花は悪夢のなかでたくさんの戸惑いを手にします。悪夢がくりかえされる理由、たとえ抜け出せたとしてもおぼろげな昨日の記憶。その傍らには、芽吹きはじめ、埋めなおされようとしている樹への恋心があります。
あなたが守らなければならないのはこれだ。
彼女のやさしさ、弱さによって閉ざされようとしている、ほかならぬ彼女自身の願い。くりかえされる日常のなかで、はらりと零される本当の想い。そうしたものを書きとめて、途絶えようとしている場面で挿入する――。
あなたはひとこと背中を押すだけでいい。
ほんのわずかな言葉だけでいい。
悪夢に打ち勝つのは、ほかならぬ彼女自身の意志でなければなりません。



誰もが口をふさいだ世界
単純に「彼女の性格だから」というだけでは片付けられない理由が背景にあります。
『早咲きのくろゆり』が構想され、情報公開とともにクラウドファンディングが実施されたのが、2022年の2月。現実世界では新型コロナウイルスが猛威を振るい、一連の騒動のなかでもっとも感染者が急増していた時期でもあります。
作中の舞台に反映されているのが、その爪痕です。
未曾有のパンデミックによって未成年の人口が減少し、政府が人々の営みや恋愛にまで干渉をひろげている未来の日本。勉学と同等に重きを置かれているのが、男女交際のカリキュラムです。また、服役から出所した人間には“矯正”が施され、その遂行能力に制限をかけられているような素振りもあります。


『早咲きのくろゆり』に登場するキャラクターたちはみな、この閉塞感を共有しているようでもあります。国の未来を担う原石として、既定のレールに従うことを約束させられている。だからみな、自分の気持ちを心の奥底に隠して、息とともにせり上がってこないよう押しとどめている。
花だけでなく、樹だってそうです。なぜあんなに熱中していた陸上競技をやめざるを得なかったのか。なぜ学校のなかで時たま姿を消すのか。その真意は友だちにさえ打ち明けられていない。
ふたりとともに思い出づくりに参加し、青春をともに送る二色青にもまた秘密があります。大人びていて、物事の本質を言語化できる彼女でさえ、ひとたび自分事になると言いよどむ瞬間がある。姉妹のようにいつもいっしょにいた幼なじみとは、いつからか距離が生じてしまっています。

だから彼女たちは、言葉の代わりに“想いを形にして残すこと”を選びます。それはレトロな紙の単語帳かもしれないし、花言葉をかたどるアクセサリーや、縁結びの錠前といった願掛けかもしれない。
そうしてモノに託されたわずかな願いが、いつしか思わぬ形で自分に返ってくる。
自分の心に嘘をつき続け本当の気持ちを見失ったとき。あるいは、信じたいはずの大切なひとを受け入れられなくなったとき。あの日モノへと埋め込んだ、遠回りだったはずの想いが、めぐりめぐって還ってくる。そんな循環を本作は描こうとしています。

彼女たちが飲み込んでしまったり、聞き流してしまった“言葉”を拾いあつめ、しかるべきタイミングで手渡すこと。そうすることではじめて、霧散するはずだった想いが楔となり、悪夢のループを抜け出すカギとなるのです。

誰の手にも触れられない想いを
自分の意志を飲み込みつづけた先に待っている結末、宙づりになった言葉が関係性にもたらすズレ。そうした痛みを経て、あなたは次第に気づくでしょう。花がもう、プレイヤーの支えを必要としなくなっていることに。
誰かの力添えがなくとも、自分の気持ちに嘘をつかない強さ。
大切なひとのために、自らの足で歩みだそうとする芯の強さ。
いつの間にか花のなかに大きな根が張っている。誰に何と言われようと変わらない軸が。プレイヤーの手助けがなくとも、彼女はもう大丈夫なのだと気づく瞬間。それはわたしたちにとって寂しく、けれども誇らしくなる瞬間でもあります。
世界に“好き”を否定されたとしても、決して手折れることのなかった彼女の祈り。独り立ちするその時まで、悪夢へと立ち向かうために、どうかあなたの力を貸してあげてください。

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Nintedo Switch版『早咲きのくろゆり』製品概要
- タイトル:早咲きのくろゆり
- ジャンル:ディストピア百合ADV
- 価格:4,378円(税込)
- 発売日:2026年10月29日(木)
- 対応テキスト言語:日本語
- ボイス:フルボイス(日本語のみ)
- CERO:C
- キャラクターデザイン・企画原案:フカヒレ
- 制作/発売元:1000-REKA
- パッケージ版発売元:エビテン[ebten](KADOKAWA Game Linkage)











