ひとつの作品にさまざまな魅力が詰め込まれた満漢全席みたいなゲームも楽しいですが、要素の数を絞ることで研ぎ澄まされた“引き算の美学”を持ったゲームにも素晴らしい名作が数多く存在します。

HIKO氏がBitSummit PUNCHに出展中の2Dアクションゲーム『Mount Lomyst ロミスト山のてっぺん』は、上方向への“登山”をモチーフとしたゲームでありながらも、そのゲームシステムからは“ジャンプ”のアクションを排除。
“よじ登り”と“フックショット”を駆使してさまざまな地形を踏破する“引き算のゲームデザイン”によって、“地形を観察し、登る方法を探る”思考のプロセスとアクションの手触りがユニークなタイトルとなっていました。
“よじ登り”のアクションはスタミナ制となっており、対応したボタンを押すたびに一定の高さを、一定のスタミナを消費して登る仕組み。長押しには対応しておらず、長い距離を登るにはそのぶんだけボタンをたくさん押すことが必須です。
少々指が疲れますが、遊び慣れると「あと幾つスタミナを消費するまでにどれくらいの距離を登れるか?」といった計算を肌感覚で出来るようになるあたりが巧みな設計だと感じました。

ここに組み合わせることになるのがフックショット。真横か真上の地形に打ち込めば、その地形のすぐ近くまで瞬時に移動することができます。飛ばせる飛距離には限度があるものの、実際に操作してみると“思っていたより長い距離をカバーできる”といった塩梅で、意外と強引な登山ルートが開拓できます。
基本的にこのたったふたつのアクションの組み合わせで成り立っている本作ですが、地形の作りが秀逸で「あれっ? ここはどうすれば登れるんだ?」と、ほどよい間隔で適度に頭を悩ませてくれます。

フックショットを打てるのが真横、真上のみで、斜めには打てないあたりも絶妙なんですよね。ジャンプがない本作では、登れる壁も、ショットが届く距離に刺せる地形もなければ上へと向かう手段はありません。“あえていったん崖から落ちながらショットを放つ”みたいな、ちょっぴり勇気が必要な状況も。
ちなみに、落下したときすぐ下の地形に着地できないと、けっこうな距離を落下してしまいます。このあたりは『Jump King』っぽいところ。あちらみたいな凄まじい難度ではないにせよ、ドツボにハマってミスをくり返すと絶望感が漂うので、焦らず目の前の地形の踏破方法を冷静に考えるのが重要です。
進み続けると、フックショットを刺して移動した勢いで真上に勢いよく飛び上がるギミック地形なども登場。フックショットが刺せない地形も存在するなど、パズルとしても、アクションとしてもちょっとずつ高度化していきます。けれど、そこまでたどり着いたプレイヤーなら“詰み”に陥ることはきっとないはず!

この“ちょっとずつ難度が上昇して、プレイヤーに「無理」とは思わせない”設計こそが、本作のレベル(地形)デザインの真骨頂。気付けばけっこう高度なことをしているのに、それをプレイヤーに気付かせない――いぶし銀な魅力が光る逸品です。