スタジオ設立の発表を受けて、SNK東京オフィスにてメディア合同インタビューが実施された。インタビューにはVSスタジオの代表取締役CEO・原田勝弘氏と、CCOを務める米盛祐一氏が登壇。さらに、サポートとしてSNKで日本スタジオを統括する小田泰之氏も同席した。
記事の前半では合同インタビューでの質疑応答をお届けするほか、後半にはファミ通.com独自のインタビューもお伝えしよう。
まずは、発表に合わせて公開されたビデオメッセージをお届けする。
原田勝弘氏(はらだかつひろ)
VSスタジオ・代表取締役CEO。(写真中央・文中は原田)
米盛祐一氏(よねもりゆういち)
VSスタジオ・CCO。(写真左・文中は米盛)
小田泰之氏(おだやすゆき)
SNKプロデューサー。(写真右・文中は小田)
90年代の情熱と好奇心を持って
そこをルーツとして名づけた面もありますし、たとえば“ヴァンガードスピリッツ”みたいないろいろな言葉の省略にもなっています。開発者ならば開発ツールの“Visual Studio”も使いますよね。そういうものたくさん込めて“VSスタジオ”と名付けました。
ただ、やはり世の中にこのお話が発表されたら、皆さん“バーサススタジオ”と呼ぶと思います。もとの開発部からそう言われていて「本当はビデオゲームソフトの略なんだけどなぁ」と思いつつ、バーサスから連想してもらえればいいか、と感じていましたね。

独立性は保っていますが、SNKの東京オフィスと同じ建物にいますから、協力関係にはあります。協力関係として今後何ができるのか、といった部分はまだ決まっていませんが、VSスタジオはできたてのスタジオなので、開発環境がゼロから始まります。
そのため、開発環境を貸していただいたりですとか、SNKのスタッフがVSスタジオに一時的に合流して、技術交流をするですとか。開発の環境を本当にゼロからスタートするのではなく、お互い協力しあってできたらいいなと。「SNKのモーションキャプチャースタジオを貸してください」みたいなこともできるでしょう。
そういうとSNKの社員さんから「え、僕らいいように使われるのか?」と思われてしまうかもしれませんが……(苦笑)。僕たちが持っている考えかたやノウハウなどを共有できたら、より相乗効果が生まれると思っています。
――SNKと提携することになった経緯を教えてください。
SNKのことは昔からいちファンでもありますし、小田さんとも昔から知り合いで、何ならいっしょにコラボレーションして仕事をしたこともありました。世代も近く、今回のスタジオ設立とはまったく関係なく「何かいっしょにやりたいよね」と、漠然としたことは以前からお話していたんですよね。
また、EGDCとも話し、これからの未来へのビジョンをお聞きしました。僕が思っているゲームに対するビジョンと一致しているなと思い、「ぜひやりたいです」とスタジオを設立することになりました。
――SNKと関わる前は、SNKにどのような印象を持っていましたか?
――VSスタジオの体制について、教えてください。
スタジオの規模感についてなど、詳しい部分についてはお話できないのですが、自分の中で実現したいものを実現できるくらいの規模ではあります。今後、僕の立場はVSスタジオの社長、代表取締役となるわけですが、20~30代のころの自分のように、できるだけゲーム制作へ直接関わって、いっしょに開発したいです。ここ10年ぐらいの僕よりももっと開発職に近くなる、原点に帰る形で関わることになると思います。
――どのような環境づくりを目指していますか?
もうあと少ししたら定年退職を迎えてしまうような方でも問題ありません。ベテランパワーと若手の力を組み合わせて、いいものができたらいいなと思っています。あくまで、僕の中の構想ですが。
――スタッフはどのような人材が集いつつあるのでしょうか?
僕が前の会社を退職し、フリーになっていた時期には先輩後輩関わらず、たくさんのお声掛けをいただきました。ずっと連絡が途絶えない状況ですので、そういった部分からも仲間を集められたらいいなと思っています
自分がこれまで培ってきたナレッジや経験を、うまく交換したりシナジーを発揮できるのではないかなと考えています。それを僕自身が期待していますし、小田さんもそれを期待してくださっていると思います。個人的に好きなSNKタイトルはたくさんありますし、「アレを開発してみたいな」と思うことはありますが、じゃあソレを開発するのかと言ったらそうではなくて。
具体的に何かを発表できるものはありませんが、いつかお話できる日が来ると思います。漠然とした答えで申し訳ないですが、きっとおもしろいものができると思います。
――少しお話に出ていましたが、すでにSNKでは『サムライスピリッツ』、『龍虎の拳』の新作が発表されています。今後、原田さんが発売中のものや開発中タイトルに関わることもあるのでしょうか?
――今後、どんなゲームを開発したいと考えているのでしょうか?
人と“対戦”するゲームを追求したいと考えていて、それが格闘ゲームかはわかりませんが、まずは対戦モノを作りたいと思っています。
――タイトルの規模感どれくらいですか? AAA級なのか、それともインディーゲームクラスなのかですとか。
単純に答えるのが難しいんですよね。AAA級タイトルって言いますが、金額を掛ければAAA級タイトルかというとそうではないですし。インディーゲームの定義も曖昧かつ、AAA級タイトルでも取ったことがない章をインディーゲームがもらったりするわけじゃないですか。あれを見るともう、ゲームの規模感って関係ないんだなと。
ゲームを作っている人たちが、本気でゲームが好きで、本当のやる気で作っているゲームがプレイヤーに伝わる時代だと思っていますので、そこで勝負したいと考えています。
――世界でタイトルをヒットさせるために、どう戦おうと考えていますか?
ただ、世界でヒットするゲームというのは単に“いいゲーム”なだけでなく、マーケティングなどで世界に届ける方法やプロモーションなども必要です。こういうゲームならば必ず売れる、とは言えなくて、いろいろな複合要素でヒット作が生まれる難しい時代です。
ですが、ゲームに一本芯が通ってないと、売れないことは間違いないと思います。いったんモノ作りの原点に立ち返り、ネットワーク時代のこの現代で、イチからゲームを作ってヒットさせるにはどうすればいいのか、その再構築をみんなで考えています。
これまでも、自分ひとりの力でヒットさせてきたわけではありません。自分たちのノウハウだけでなく、新しい売りかたなどもSNKといっしょに模索していければと思います。
いままでの経験はベースとしては役立てたいと思っていますが、また新たに勉強していきたい気持ちのほうが強いです。新しい勉強・探求がしたいので、新しい環境でゲーム作りに臨むわけです。ですから、いままで通りの作りかたではなくてこれからの新しい作りかた、そしてゲームファンが何を望んでいるのか、もう一度見つめ直していきたいです。
――『鉄拳』を世界トップに導いた実績がありますが、その経験がどうSNKとシナジーを産むと思いますか?
ひとりになったからこそ、よりその部分を客観的に見られるようになりました。ですので、僕ひとりの力で何もかも引っ張っていけるのかというと、そういうことではないのかなと思います。ただ、いい意味での成功体験は味わっているので、法則やセオリーなどはないのですが、勘所として「ここならいけるんじゃない?」みたいなものは、自分の中にある宝かと思います。
そういった部分は今後共有できたらいいと思いますし、小田さんたちから逆に聞きたいこともあります。よく小田さんと話していた「いっしょにやったら、こうなったらおもしろいよね」が、本当にできたらいいなと。じつはそういう好奇心のほうが重要だったりするんです。このワクワク感って、この年齢層になってから出てくることなんてなかなかないと思います。
――原田さんはX(旧Twitter)でファンたちと交流することもありますが、それは今後も続けていくのでしょうか?
以前ほどの頻度ではないかもしれませんが、なるべくファンコミュニティに触れていきたいなと考えています。
――昨今の対戦格闘ゲームや、eスポーツシーンについてどう見ていますか?
いまも拡大し続けていて、いろいろなチャンスがたくさん産まれています。「ここまできたか」と感慨深い想いもあります。一方で課題も残っています。これはコミュニティ側の課題ではなく、ゲームメーカー側の課題です。たとえば、どのようにコミュニティをサポートしていくのかなどです。単純に金銭面のお話ではなく、どうアプローチしていくのかは今後の課題になるでしょう。
ですので、これからどんなゲームを作るにせよ、ファンコミュニティと協力関係を構築していきたいなと考えています。
――SNKは今後、ほかの日本のスタジオにも投資する予定はあるのでしょうか?
ただ、SNK内だけでもかなり多くのプロジェクトが動いていまして、それぞれのプロジェクトでもたくさんのスタジオと協力開発しています。今後もこういう形で、プロジェクトを進めていくでしょう。
SNKは老舗のゲームメーカーなのに、もう1度会社を起こしているようなイメージです。関わる前からそのイメージで、少し関わるようになってもその感覚は変わりません。ごいっしょしたいな、と考えたのはそこも理由のひとつです。
見ているものが数年後の未来だけを考えてるような、刹那的ではないんですよね。もっと数十年後とかのことを見据えていることを確信できました。ゲームをど真ん中に捉えて、ビデオゲームというもので戦っていく、という気合を感じています。
――原田さんはバンダイナムコエンターテインメントを退職された際、クリエイターとして残された時間は短いというお話をされていました。そこに対する想いや、クリエイターとして最終目標を教えてください。
その積み上げてきたものを、50歳を過ぎて立場ができあがった状態で「それを全部ナシにしたい」とは、世の中できませんよね(笑)。過去の実績の上であぐらをかくのではなく、それは一旦横に置いておいて、あと何本ゲームを作れるのか数えたときに数本しかないなと。
日本の男性の平均寿命って約80歳なんですよ。ですから、僕はもう50歳を過ぎているから、人生の半分は生きたわけです。しかも健康寿命を考えると、働けなくなる時間はもっと早いかもしれません。それを考えたときに、僕に残された時間はある意味で短いんだなと感じて、そのときにすごく考えました。
心身ともに健康で、ゲームが作れるうちに“だったら”と、「これだけは自分でやってみたい、実現したい!」と考えて退職し、現在にいたります。
――『餓狼伝説 City of the Wolves』はド派手なコラボが連発していますが、原田さんの感想を教えてください。
その後もいろいろなタイトルとコラボして、格闘ゲーム業界以外から連れてくることも多々ありました。ですから、コラボ参戦を仕掛けてきた側なんですよね僕は。
だから『餓狼伝説 City of the Wolves』で多数ゲストが参戦しているのを見て、ようやくみんなやるようになったんだと、自分のやってきたことに安心したりしています(笑)。そしておもしろいことに、ここまで何でもアリのゲストだと「『餓狼伝説 City of the Wolves』って、つぎ誰が来るんだ!?」と、もう予想できないですよね。これはすごいことだなと。
もちろん心理的抵抗があったりする面もわかります。ただ、それも慣れてきて、だんだんワクワク感のほうが勝ってきているように感じています。
僕自身もワクワクしていて、とくに前回『北斗の拳』のケンシロウが参戦したときにはビックリしました。よく以前から冗談で「ケンシロウ出せたらいいよね!」みたいな話はしていたのですが、それを本当に実現してしまうとは。イチファンとして、今後も楽しみにしています。
いままでも自分が育てたとまでは言いませんが、自分はゲームセンターでバチバチにゲームを遊んでいる人ですとか、ハイスコアラーのプレイヤーを、開発現場に多数スカウトしてきました。ゲームに対する情熱が深く、興味を持ち続けるその好奇心って、すごく重要なんです。たまに“ゲームを知らない人のほうが視点が優秀”みたいな話もありますが、僕の経験上ではそれはないのかなと。
もちろん開発スキルも重要なのですが、その優先順位は2番か3番目くらいにあると考えています。この情熱が強い人は年齢関係なく、すごく武器になると思うんです。つまりは、情熱と好奇心が強い人をたくさん集めたいと考えているというワケです。
また、若いスタッフもたくさん集うとうれしいです。さらに、ベテランスタッフたちもぜひ加入してほしいと考えています。いまも開発に関わっている40~50代くらいのスタッフって、本当にすごい力を持っているんですよ。
20~30代ぐらいのころって、ゲーム開発者はよくケンカするんですよ(笑)。プログラマー、アーティストなどとよく言い合いになるんですが、年齢を重ねるといい意味で丸くなって、実のある会議がしやすくなります。ですから、ベテランスタッフは高い技術を持ちながら、人間性も丸くなってる、すごくいい人材なんです。
肉体的な部分では無理はできなくて、昔ほどの馬力は出せないかもしれません。ですが、自分の頭の中にあるものを最後に絞り出すためにも、ぜひベテランの皆さんにも協力してほしくて、積極的に採用したいと考えています。業界歴が長くても情熱が残っている人は、ぜひ採用させてほしいです。僕個人にX(旧Twitter)でお声掛けしてもらっても大丈夫ですよ!
【ファミ通.com独自インタビュー】ワクワク感を求めて
そんな妄想していたシナリオの、メインシナリオ級の扱いで考えていた夢物語に、いま近い形で実現している最中なんです。ですので、小田さんといっしょに発表するまでずっとニヤニヤしていました。
――SNK側から、原田さんに助言を求めたりすることも今後あるのでしょうか?
そういういろいろなオファーをいただく中で、たくさんの選択肢がありました。ただずっと心の中にあったのは、ゲーム開発の原体験です。「1990年代がよかった」という話をしたいわけではないのですが、あのポリゴン黎明期の当時ピュアにゲーム開発だけに集中して取り組んでいたとき。あの情熱と好奇心をどう形にするのか、全員で取り組んでいたときの仲間たちの顔が頭に浮かぶんですよ。
そんな仲間たちと、もう一度集まれる場所を死ぬまでに作りたいなと。そのイメージがスタジオなのか会社なのかは決まっていなくて、僕は“箱”と呼んでいましたが、そういう場がほしいなってずっと考えていたんですよ。
SNKから声が掛かる前は、ゲーム業界ではあるけれどもちょっと別の道に行こうかなとも考えていました。そのときSNKとEGDCから今回の話をいただきました。ゲームについてどう考えているのか聞いたときに、先ほどお答えしたように、本当にゲームをど真ん中に捉えていて、ビデオゲームというものでこれだけ長いビジョンを見ていることがわかりました。
1990年代のゲーム会社は、ピュアにゲーム開発に取り組んで、ゲームを売るということだけで、とにかく競い合っていました。その当時のスピリットを感じたので、「ぜひやりたいです」とお答えしたんです。
そこから僕がSNKに関わると決まったならば「原田がSNKに入社すればいいのでは」と思われるかもしれません。ですが、先ほど言った“箱”のビジョンが僕の中にあったので、我々が培ってきた作りかたや文化をそのまま独立性を保ちつつ、うまく相互作用しないだろうかと。
まあ、僕の都合のいいように言っている感じですが、そこにSNKもEGDCにも共感してもらえたため、今回VSスタジオの設立が決まりました。
――では、その“箱”を作るために、長年いっしょに開発してきた米盛さんにもお声掛けしたわけですね。
そんな人間に、このワクワク感を伝えたわけです。「俺たちが1990年代で開発していた、あのチームのスピリットに戻らないか?」と。時代も環境も当然違うので作りかた、やりかたは現代に沿ったものであるべきですが、スピリットだけは変わらないはずです。「そんな情熱でもう一度ゲーム開発に取り組めるとしたら、どうだ!?」と誘ったんですよ。
この話でワクワクしてくれる人ってどれくらいいるのだろうか。この年齢層の開発者で、果たして共感してもらえるのだろうかと、不安な部分もあったんです。ですが、米盛はすごく共感してくれて、付いてきてくれることをすごい速さで決断してくれたんですよ。
「このワクワク感をみんな求めているんだ!」と、すごく自信につながりました。ですので、同じような考えを持っているベテランスタッフは少なくないと思っています。
――米盛さんはその話をいただいたとき、どう思いましたか?
――すでに何名かそういったスタッフも加入されているのでしょうか?
――会社の理念に“伝統に挑み、極限を創る Beyond tradition, crafted to perfection.”を掲げていましたが、まさに当初から目指している情熱や好奇心を込めてつけられたのでしょうか。
――クリエイターが独立してスタジオを作るとなったら、クリエイターの名前が冠になることもありますよね。
自分の名前が入っていると、スタジオ名を見ただけで理念がパッとわかるので、スタジオの特性がすぐわかるというのは理解しています。ただ僕は、僕自身が僕だけの力でゲームを作っていったわけではなく、たくさんの人の協力があって築き上げられた、すごく恵まれた環境だったんです。
入社時から本当に恵まれていて、とにかくいい先輩たちのおかげなんですよ。あの先輩たちに教わったことを原体験として継承し、つぎの世代に渡したいとも考えていたので、かつて在籍していたVS開発部から名前も取ってきたわけです。
――一般的なイメージですと原田さん=『鉄拳』になると思うのですが、実際はもっといろいろなタイトルにも関わっていましたよね。『鉄拳』イメージを払拭したかったのかなと思いました。
――ちょっとわかります(笑)。対人の対戦ゲームを作りたいというお話がありましたが、そこはファンの期待などを鑑みながら決めていくのでしょうか?
――サプライズではあるとは思いますけど、はい(笑)。
――スタジオ発表から、まだゲーム制作もスタートしていないようですが、続報が出るのはいつごろを考えていますか?
――以前、原田さんにインタビューさせていただいたとき「たとえば優秀なシナリオライターがヒット作を飛ばし、そのおかげで出世したらシナリオに関わらなくなってしまう」みたいな、もったいないクリエイターの出世ケースを語られていました。その通りだな、と思いつつ、そのあたりの考え方が今回の話にもつながっているのかなと感じました。
僕もいい意味で、仕事を奪われてきました。本当は自分がずっとやりたい好きな仕事なのに、「いやいや原田さんほどの人は、そんな仕事しなくていいですよ!」って奪われるわけです(笑)。そうやって続けていった結果、気づいたらスタッフの出勤管理だけしていた期間があったりと、30代半ばに悩んだこともあります。
ですから、開発者としての原点に戻りたい想いもあって、社長業をするというよりも、開発スタッフとして活躍したいと思います。
――難しいかもしれませんが、前職の最後の立場と比べると、いまスタジオを設立している忙しさにどのような変化がありますか?
いまはその重荷をいったん横に置いて、その荷物から何をもう一度背負うのか選びながら、前に進んでいる状態です。ですので、たいへんですし面倒なこともたくさんあったりしますが、自分の好奇心で選んだ道であり荷物ですから、楽しく前進しているという、心境の変化はありますね。
そんな僕の情熱と好奇心に賛同してくれる方がいたら、ぜひともいっしょにゲームを作ってみたいです。

























