映画業界の雄としておなじみの東映がゲーム事業に参入。この4月より東映ゲームズを正式に始動し、まずは2026年度に3タイトルをリリースすることを明らかにした。東映がゲーム事業に取り組むにいたった経緯や今後の目標、展望などを、ゲーム事業を担う4人に聞いた。

松本拓也氏(まつもとたくや)
東映 新規事業開発部 東映ゲームズ
シニアマネージャー (文中は松本・写真右端)
長島寛晃氏(ながしまひろあき)
東映 新規事業開発部 東映ゲームズ
マネージャー(文中は長島・写真左からふたり目)
岩川日和氏(いわかわひより)
東映 新規事業開発部 東映ゲームズ
リーダー(文中は岩川・写真左端)
加藤賢治氏(かとうけんじ)
東映 新規事業開発部 東映ゲームズ
ゲームアドバイザー(文中は加藤・写真右からふたり目)
10年先を見据えてIPを育てていきたい
——東映がゲーム事業に参入するにいたった経緯を教えてください。
長島
東映では事業戦略としてIP創出に力を入れています。ゲームはプレイ時間が長く、ユーザーの没入度が高いことから、IPファンを育てて世界的に展開するのに適していると考え、昨年3月に松本と事業をスタートさせました。
——すでに、松竹や東宝といった映画会社がゲーム事業に取り組んでいますが、それも大きな刺激になったのですか?
長島
あまり意識はしていませんでした。私たちは後発ではあったのですが、独自の路線で行こうとは最初から考えていました。
——どのように事業を進めていったのですか?
長島
まさに手探りでした。ゼロからのスタートですね。まずは昨年3月に開催されたTOKYO INDIE GAMES SUMMIT 2025に行ったのですが、ビジネスデーと一般日があるのも知らなかったくらいでした(笑)。一般日にお客さんといっしょに入場して、デベロッパーさんに挨拶してまわりましたね。
——初々しい感じですね(笑)。
長島
以降は全国のゲームイベントに足繁く参加させていただいて、とにかく名刺交換するといったことをくり返していました。そうすると「東映がゲーム事業に参入するらしい」ということがクリエイターさんに浸透していったようで、ちょっとしたコミュニティーみたいなものができたようなんです。我々を応援してくれる方々と言いますか。ゲーム事業をスタートして3〜4ヵ月後くらいには、「こういうゲームの企画があるので聞いてください」というご要望が相当数増えていきました。
——応援者のコミュニティーですか!?
長島
最初から「本当に始めたばかりで何ができるかわかりません」みたいなこともお伝えしていたので、クリエイターさんもそんなに緊張せずに、お話ができたのかなと思います。ただ、私たちはゲームに対する知識がないので、やりかたがまったくわからない。そんなときに加藤さんと知り合ったんですね。
加藤
もともと私はWebのゲームメディアを運営しているのですが、ゲームイベントでおふたりと知り合ったんですね。いま勉強中という話を聞いて、お手伝いを……ということになりました。
ゼロからのスタートだったので、とにかくインディーゲームのパブリッシャーさんに会ってもらって知見を広めていくというのがひとつと、ゲームイベントに積極的に足を運んでもらいました。国内のゲームイベントはけっこう網羅されていたのですが、いまは海外展開が欠かせません。それで海外のゲームイベントも予定に入れていただきました。あとは、「とにかく企画書を見てください!」と。
千本ノックではありませんが、企画書を見ないといい目は養えない。それで企画書を100案件見ることを目標としました。
長島
スパルタ教育でした(笑)。実際のところ、松本も私もパブリッシャーとかデベロッパーといった言葉すら知らない状態で、いちから加藤さんに教えていただきました。本当に人には恵まれている感じがしまして、8月に加藤さんに入っていただいた後に、10月から岩川がジョインしまして、急激に話がどんどん進むようになりました。
岩川
もともとゲームは好きだったので、うれしいなと思いつつ新規事業開発部に加わりました。3人とも世代がバラバラなのですが、“ワンチーム”として、フラットに接してもらっています。
私がすごくいいなと思っているのは、誰かがひとつの作品をすごく気に入ったとして、「絶対にやりたい!」となったらとにかくそれを応援することですね。もしうまくいかなくても、「だから言ったじゃん」といったことは絶対に言わないでおこうということは約束しています。
――お話をうかがっているととても雰囲気のいい部署のようですね。
岩川
3人しかいないので、腹を決めるしかないという状態ではありますね。
長島
それで正式にメンバーが揃ったので、事業化をしたいということで会社から承認を得ることができたのが2025年末です。そしてこの4月に“東映ゲームズ”として正式に始動することになりました。
—— 3タイトルが発表されましたが、どのような基準でタイトルをセレクトしたのですか?
長島
“自分自身が推したいタイトルを応援する”というスタンスで、各自でひとつづつ作品を担当しようということで選ばせていただいています。
——それはおもしろいセレクトの方法ですね。
長島
やりかたを知らないというか。通常だと、それぞれの立場で関わっていくことになると思うのですが、まずはいちから全部経験してみようということになりました。
松本
パブリッシングさせていただけるかどうかの交渉から、クオリティーチェックやスケジュール管理まで、全部こなしています。
——2026年度は3タイトルとのことですが、それ以降の予定はいかがですか?
長島
決まってはいないのですが、もちろん2027年度に発売するタイトルも用意しなければいけないと思っています。下準備は着々とさせていただいているところです。
——ちなみに家庭用ゲーム機への展開は考えているのですか?
長島
もちろん家庭用ゲーム機向けの展開なども研究しつつ検討はしていますが、まずはSteamからのスタートということですね。
——東映ゲームズのロゴはカイロソフトが手掛けているそうですね。
松本
東映がゲーム事業を立ち上げるときに、社内の若い人に遊んでいるゲームを聞いてみたのですが、カイロソフトさんの名前を上げる声がとても多かったんですね。それでとても気になって、カイロソフトさんも参加されたピクセルアートの展示会に行ったら、いろいろな年代の方でにぎわっていて、これはもうキービジュアルは「ピクセルアートで行こう」となりました。
——なぜカイロソフトだったのですか?
松本
私としては、ピクセルと言えばカイロさん、ということもありましたし、ゲーム業界でいろいろな会社の皆さんと協力し合いながらやっていきたいという姿勢を示したいということと、シンプルに「東映の波がピクセルアニメになったらおもしろいな」ということで。動画のコラボもお願いさせていただきました。
——今後の方針を教えてください。
長島
ゲームを選ぶにあたってわりと明確にしているのは、私たちは物語を作ってきた会社なので、キャラクターがあってストーリーがある作品に注力していきたいということです。
——東映がゲーム事業に参入するとなると、映像化に対する期待値は高そうですね。
長島
そうですね。ただ、そういったことは本当にすごく先の話であって、まずはお預かりしたゲームをしっかりと売っていきたいという思いがあります。クリエイターの皆さんには、ちゃんとゲームをリリースさせていただいて、その作品が世に出てヒットするようであれば、その先に何かしらの展開もあり得るというお話はさせていただいています。
岩川
いちばんは、やはりIPとして育つことだと思います。ゲームのキャラクターだったり世界観なりがIPとして育ってくれれば、そのIPを出していく“窓口”は、東映はたくさん持っているので。IPを育てることがどれだけ難しいかは、いろいろなメーカーさんとのコミュニケーションで重々わかっていることではあるのですが、いちばんの大きな目標は、ゲームから大きくIPを育てることですね。
松本
ゲームは始まりだと思っています。ゲームで生まれたIPをどれだけほかの事業に展開して、いろいろなお客様の熱気を生み出していくかを考えたいですね。
長島
東映には、映画、ドラマ、イベントという3つの事業があるのですが、ゲーム事業を4本目の柱として確立していきたいと思っています。事業として立ち上げるからには、向こう10年はしっかり取り組んでいこうと3人で考えていますので、まずは第1弾のハッピーエンドを迎えられるように突き進んでいきたいです。

担当者による各タイトルの推しポイントはここ!
東映ゲームズの立ち上げに合わせて、同ブランドでパブリッシングを予定している3タイトルが発表された。対応プラットフォームはSteamで、発売は2026年度を予定。それぞれ推しポイントを語ってもらった。
『KILLA』唯一無二の体験が味わえる
本作は、韓国のデベロッパー、ケンキツ団による推理アドベンチャーです。幻想的で絵本のような世界観の中で、主人公といっしょに謎を解いていく体験が濃厚なんです。「いまのゲームはこんな物語を表現できるんだ」という唯一無二な感覚を味わわせていただいた作品です。(松本氏)

『HINO』キャラクターが印象的
若手クリエイター5名のユニットUnGloomStudioが作るダークファンタジーです。とくに、絵師“やたら”氏がボールペンのみで描くビジュアルはダークな世界を鮮烈に表しています。ストーリーも含め高い完成度だと感じパブリッシングを決めました。将来的にはマルチ展開も期待できると感じています。(長島氏)

『DEBUG NEPHEMEE』丁寧に作られている一作
広島在住のクリエイターさんがひとりで作っているアドベンチャーです。すごく丁寧に緻密に作られていて、「これいいな」と思ってお声がけさせていただきました。戦闘は4つの画面がマルチタスクで展開されて、それも大きな魅力なのですが、私は世界観とストーリーがすごくいいなと思っています。(岩川氏)
