2026年2月19日にリリースされた、アドベンチャーゲーム『パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語』。同作のディレクターを担当する石山貴也氏は、かつて『ドラゴンクエストⅩ』の開発に携わり、システム関連のメッセージなどを担当していたというキャリアがある。言ってみれば『ドラゴンクエスト』の生みの親である堀井雄二氏の孫弟子的な存在だ。
そんな石山氏が、『パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語』リリースのご褒美として(?)、堀井氏との対談を熱望したという。そこで、その現場にファミ通が同席。日本におけるアドベンチャーゲームの祖でもある堀井氏と石山氏が、アドベンチャーゲーム、そしてRPGやゲームクリエイターとしてのキャリアについて、ざっくばらんに語りあった模様をお届けする。
堀井雄二 氏(ほりい ゆうじ)
ご存知、『ドラゴンクエスト』シリーズの生みの親。1980年代には『ポートピア連続殺人事件』や『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』など、“堀井雄二ミステリー3部作”と呼ばれるアドベンチャー作品も手掛けており、日本におけるアドベンチャーゲームのパイオニアでもある。
石山貴也 氏(いしやま たかなり)
スクウェア・エニックス所属のクリエイターで、『パラノマサイト』シリーズのディレクターであり、シナリオ担当。過去には、『探偵・癸生川凌介事件譚』(And Joy作品)シリーズの企画・監督・脚本・サウンドを担当。『スクールガールストライカーズ』のディレクション、シナリオも手掛けている。
『ポートピア連続殺人事件』があったからこそ生まれた『パラノマサイト』
――石山さんは、かつて『ドラゴンクエストⅩ』のシナリオライブプランナーチームにいらっしゃったそうですね。
石山
はい、そうです。ただ、堀井さんとちゃんとお話させていただくのは今回が初めてなんです。当時は、僕個人を認識していただいているとは思っていなかったぐらいの立場でしたけど。プランナーとして、藤澤さん(藤澤仁氏。『ドラゴンクエストⅩ』Ver.1のディレクター)やりっきーさん(齋藤力氏。『ドラゴンクエストⅩ』Ver.2およびVer.3のディレクター)といっしょに仕事をさせてもらっていました。
堀井
いつごろまでやっていたんですか?
石山
ちょうど『ドラゴンクエストⅩ』のリリースのころまでやっていました。
堀井
じゃあ10年以上前ですね。
石山
もう、そんなになるんですね。
――そもそも石山さんはかなりの『ドラゴンクエスト』ファンだったとうかがいました。
石山
僕はいま50歳なんですけれど、小学5年生くらいのときに初代『ドラゴンクエスト』が出たんです。『ポートピア連続殺人事件』(以下、『ポートピア』)はその前年ですかね。で、まずファミコンの『ポートピア』を遊んだときに「なんかすごい! これはほかのゲームと違うぞ!」というのを子どもながらに感じて夢中になりまして。以降、アドベンチャーゲームやRPGでたくさん遊ぶようになりました。
――多感な時期に『ドラゴンクエスト』と『ポートピア』が直撃したわけですね。
石山
そうなんです! まさにドンピシャ世代で、『ポートピア』が僕のアドベンチャーゲームの原体験なんですよ。その後、ハードの進化とともに進化する『ドラゴンクエスト』シリーズも追いかけて……といった感じで感銘を受けながら育ったのですが、いまやこうして自分でゲームを作れるようになりました。ありがとうございます!
堀井
ゲームを作ったのは、スクウェア・エニックスに入ってからですか?
石山
スクウェア・エニックスに入社する前は、別の会社で携帯電話用のアドベンチャーゲーム(『探偵・癸生川凌介事件譚』シリーズ)などを作っていました。
――ある意味、堀井さんが『ポートピア』を作っていなかったら、『パラノマサイト』シリーズはなかったわけですね。
石山
はいそうだと思います! 僕がアドベンチャーゲームを作るときは、どうしても自分の原体験である『ポートピア』や『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』(以下、『オホーツク』)をすごく意識していまして。堀井さんに伺いたいのですが、『ポートピア』の開発当時は、お話を作りながら、プログラムまでご自身でされたんですよね?
堀井
そうですね。絵も描いてみたりして。自分で作っていましたね。
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石山
おお、絵もですか! ちなみに、お話はぜんぶ決めてから作り始めたのでしょうか?
堀井
犯人だけは決めていましたね。
石山
なるほど。では、結末だけ決めて、あとはシナリオを書きながらそこに向かって組み立てていったんですか?
堀井
そうですね。ボクはイタズラ好きなので、犯人をいちばん驚く人にしたかったんです。で、“コンピューターゲームならではの犯人”ということで、彼に決めました。
――ネット上ではなぜか犯人が非常に有名な……。
石山
“アレ”ですよね。堀井さんがいちばん最初に、堀井さんがスゴい仕掛けをやられたので、僕も含めた以後のアドベンチャーゲーム開発者は「『ポートピア』以上の犯人って、どうすりゃいいんだよ!」ということになっていますよ(笑)。
――(笑)。
石山
ただ、最初からゲームならではの仕掛けをやられた堀井さんは、本当にスゴいと思います。
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『ポートピア連続殺人事件』(1985年発売)。(C)SQUARE ENIX
容量との戦いのなかで残したもの、削ったもの
堀井
『ポートピア』当時はカートリッジの容量に制限があったから、作るのはけっこうタイヘンでしたね。
石山
僕も携帯電話でゲームを作っていたからわかるのですが、少ない容量の中でまとめるっていうのは、本当にタイヘンだったと思うんです。
堀井
『ポートピア』は、32キロバイトしかなかったですからね。
石山
容量を節約するために文字を1文字単位で削るとか、そういう世界ですよね……。
――石山さんもそういった容量との戦いをされたのですか?
石山
僕が作ってた携帯電話のいちばん最初のアプリが50キロバイトだったのですが、それでもキツキツで。「どうにか1文字削れないか、どこかで容量を稼げないか」って思いながら作っていたのですが、それよりも少ないわけですから。
堀井
じつはね、ファミコンの『ポートピア』は、最終段階まで作って、容量が2キロバイト足りなかったんです。
石山
当時の2キロバイトなんて途方もなく大きいですね。
堀井
その段階で『ポートピア』は文章が1000個くらいあったのですが、「1文につき2文字削れば足りるな」となって。全部見直して、ちょっとずつ削ったんですよ。
石山
うおお、簡単に言ってますけど、文字も平仮名しかないから削るの難しそう……! でも、プレイしてもそんな苦労は気づかないですから、そこの調整力がすごい……。
堀井
ゲームの中で“スナックぱる”を探すことになるんですけれど。最初のシナリオでは、「ぱるなら、その角を曲がったところに」みたいな感じでちょっと長かったんですけれど。「ぱる なら そこでっせ」と変えちゃって。
――思い切って(笑)。
堀井
「よし、10文字削れた!」みたいな感じでしたね(笑)。
石山
そうやって容量と戦いながらテキストを削っていくと、どんどん機械的になって無味乾燥になりがちじゃないですか。でも、堀井さんはお遊びというか、ちょっとふざけたところをちゃんと残してますよね。そこがスゴいし、好きなところでして。
石山
お話だけのことを考えるなら不要なんですけども、ちょっとクスッとしたりとか、キャラクターの気持ちが見えてきたりするテキストがきちんと残されているところに、感銘を受けました。
堀井
プレイヤーをニヤッとさせたかったので、そこは削らなかったですね。
石山
そうですよね! 「おふざけも決して無駄なものではなくて、必要なものなんだ」とか、「本筋と関係なくても、これを見たらビックリするだろうな」というところは勝手に受け継いで(笑)。「これからも、ちゃんとふざけていこう!」と思ってやっています。
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堀井氏がアドベンチャーゲームを作ることになったきっかけ
――堀井さんはゲームコンテストで入選したことがゲーム開発に携わるきっかけになったと思うのですが、アドベンチャーゲームを作った理由は何だったのですか?
堀井
コンテストで受賞した『ラブマッチテニス』というゲームが商品化されたんです。その後、「もう1本商品化できるようなゲームを作ってほしい」という依頼があって。どうしようかなと思っていたら、当時、『月刊アスキー』という雑誌に“アメリカではアドベンチャーゲームというものがあるらしい!”という記事があったんです。
記事を読んだら、テキストで物語を作って謎を解いていくものなんだということはわかって「こういうもので遊んでみたいな」と思ったんです。でも、当たり前ですけれど、自分で作ったら遊べないじゃないですか(笑)。
――それはそうです(笑)。
堀井
ただ、商品化前提で人にやってもらえるなら作ってみよう! と思って、いろいろ考え始めて。もともと刑事物やミステリーは好きだったので、「謎解きと言えばミステリーだろう」ということで、想像で作り始めたんです。当時、ベーシックという言語を覚えたばっかりだったんですが、基本のINPUT文とPRINT文、IF THEN文を使ったらできちゃった(笑)。
――できちゃった。
石山
え……海外のアドベンチャーゲームを実際にプレイして参考にされたとかではなく、「きっとこんな感じだろうな」というイメージだけで、あのPC版の『ポートピア』ができたんですか?
堀井
そうですね。
石山
おお……なんと。
堀井
当時、ファミ通の塩崎さん(ファミ通2代目編集長の東府屋ファミ坊)が取材に来てくれたんですけれど。彼いわく、それまでのアドベンチャーゲームというのは、東西南北などに1歩ずつ移動するようなスタイルが主流だったそうなんです。それなのに『ポートピア』は、場所を一気に移動してシーンを切り換えているのが斬新だと言われて。ただ、本家のアドベンチャーゲームをよく知らないで自然に考えただけなんですけれど(笑)。
石山
昔のゲームは、マンガや映画のようにカットを切り替えるという概念がなかったそうですね。舞台はつねに地続きで、順に移動していくスタイルが中心だったところ、『ポートピア』の登場で、場所ごとカットを切り替えながらお話を描いていくというスタイルが確立された……と。
堀井
あと『ポートピア』は、ファミコン版になるまではコマンド入力式(※調査のためのコマンドをキーボードで入力するスタイル)だったのですが、コマンド入力って、日本語だと難しくて。コマンド用にいろいろ単語を登録しておいても、コマンドの言いかたがいろいろあるから、反応できないことが多いんです。「これは無理だな」と思っていたのですが、そこでコマンド選択式を思いついたんですよ。「何を」、「どうする」って選ぶだけだったら全部わかるだろうって。で、それでファミコン版が発売できたんですよね。
石山
僕はファミコン版から遊び始めたんですが、『ポートピア』のコマンドは、つねに同じ種類が並んでるじゃないですか。だから「このコマンドは絶対に関係ないだろうな」という場面でも、選ばれた場合に反応するメッセージをちゃんと用意しなきゃいけないんですけど。
――そうですね。
石山
でも『ポートピア』では、ちゃんとそれも逆手にとってるんですよ。最後の最後に必要になるコマンドが、普通はそこでは使わないものなのに急に意味が変わって。違う反応が出た瞬間「うわあああああ!」って本当に驚いて(笑)。
――まさかのコマンドの使いかたをされていたわけですね。
石山
スゴい衝撃を受けました。たぶんあれが、人生で初めてゲームで鳥肌が立った瞬間です。
コマンドが常時たくさん表示されているからこその仕掛けも、堀井さんが最初にやっちゃったんですよ。そういう原体験があるからこそ、アドベンチャーゲームでは驚きたいし、驚かせたいんですよね。たとえばシステムの意外な使いかたをしてみるとか。それは『パラノマサイト』にも入っているのですが、そういうマインドの原点はこの『ポートピア』での体験にあると思ってます。
堀井氏が感じた『パラノマサイト』の印象
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堀井
『パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語』にはミニゲームも入っていましたね。
石山
はい。そこもひとヒネり入れて。ただ潜ってレベルを上げるだけじゃない使い方をしています。
堀井
そうそう。普通にやっていると終わっちゃうんですよね(笑)。
石山
そこで一度は失敗することにも実は意味があって、狙ってそうなるようにしています。「ゲームだから」という理由で見逃されそうな部分に、あえて意味づけをしてみるのが好きだったりするので、『パラノマサイト』でもそういうことをやっています。皆さんがビックリすることを考えながら作るのが楽しいんですよね。
堀井
伊勢へ取材に行ったんですか?
石山
行きました! 暑いなか写真を撮って回って、話を聞いて。
堀井
伊勢エビ、おいしかったでしょう?
石山
おいしかったですね! 伊勢の海産物はすばらしかったです! 皆さん、伊勢に行きましょう!
堀井
『パラノマサイト』は今回が2作目ですよね?
石山
はい。1作目は、墨田区にある本所七不思議という実際に伝わっている伝承をネタにした、怪談っぽいホラーのゲームにしたんですけれども。2作目は伊勢の人魚をテーマにして、夏の青い空、青い海という爽やかなイメージの伝奇ミステリーにガラッと変えてみました。
堀井
主人公の勇佐くんは海女さんなんですよね。そこはビックリしました。
石山
そこは、ひとヒネり入れたかったところで。実際に取材したところ、『パラノマサイト』の舞台である1980年代は、男性の海女さんはいなかったものの、別にやっちゃダメな空気だったわけでもなかったそうなので、男の子が祖母の後を継いで、という設定にしてみました。最近は男性の海女さんもいるそうですね。
堀井
海女さんを選んだきっかけは何だったんですか?
石山
水中というシチュエーションを使いたかったんです。
ゲームの特徴として“パラノマの全天球背景をぐるぐる見回す”というものがあるんですけれど、前回の『本所七不思議』では、あまり上下を見ることがないなと思っていて。「上下を見回すような環境ってなんだろう?」と考えた結果、水中だなと思って。ただ、水中に潜らせたら潜らせたで、移動ができないと素潜り漁っぽくならなくて。それで結局、全天球背景じゃなくて、3Dで海の中を作ることになったので、本末転倒な感じになってしまいました。
――そういう遊びを入れてくるのは、堀井さんの影響もありそうです。
石山
システムを使った仕掛けを入れたかったので、じゃあ今回は自分で仕掛けになる素潜りのシステムを入れちゃおうと。……おっと、これ以上は言えませんが(笑)。
――堀井さんは『パラノマサイト』を遊ばれたそうですが、その印象はいかがでしたか?
堀井
それぞれの登場人物の視点で物語が変わるので、「この人から見るとこうだったんだ!」みたいな驚きがあって。お話を戻して、張られた伏線を回収していくところなんかは、凝っていておもしろかったです。最初にプロットを作ってから作り始めたんですか?
石山
登場人物と結末だけ最初に決めて、あとは最初から作っていきました。先ほど聞いたら堀井さんも同じ作りかたをされていたようなので、ちょっと安心しました(笑)。僕は、ゲーム自体を作りながらお話も組み立てていくというやりかたが合っているようでして。アドベンチャーゲームって少人数で作れるからこそ、臨機応変な展開ができるのかなと。堀井さんは少人数どころか、ほぼおひとりだったみたいですけれど。
堀井
ボクの場合は完全にひとりで、資料もなし。頭の中だけで作っていましたけど(笑)。
石山
だからこそ、融通が利くところってありますよね。
堀井
そうそう。ある程度付け替えられるし、直せるし。
石山
あと、見た目に合わせてテキストでちょっと調整しようとか、この絵がないから言葉で補足しようとか、そういった細かい調整ができるのが、アドベンチャーゲームのよさじゃないかと思ってます。
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――ほかに『パラノマサイト』で気になった点はありましたか?
堀井
絵の演出はすごく凝っていたと思います。キャラクターはほとんど動かないけれど、演出やカメラワークで工夫したりしていて。
石山
ありがとうございます。じつは、その絵も最初に使うパターンを決め打ちしていて、ありものの絵の中でどうにか組み合わせるという作り方をしているんです。
堀井
へえぇ! まあ、アニメだと手間かかっちゃいますからね。
石山
はい。そこは少しでもコストを下げるために(笑)。でも、そういう工夫って好きなんですよ。ある程度、制限があったほうが楽しいというか。
堀井
あぁ、それわかります(笑)。
石山
「容量はこれだけしか使えないぞ」とか「絵はこれだけしか使えないぞ」という中で、どう表現して、どうやってスゴいことをやろう、どうやってビックリさせようかみたいなことを考えていくのが。たぶん、当時の堀井さんも同じようにやっていらっしゃったんじゃないかと思いますけども。
最後までこだわって直せるものが、テキスト
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――『ポートピア』は堀井さんが完全におひとりで開発されたというお話でしたが、『オホーツク』のころもご自身でプログラムを書かれたのですか?
堀井
そのころは『ドラゴンクエスト』が動き始めていたので、2本はちょっと無理だなと思って分業にしたんです。なので、『オホーツク』はプログラムをログイン編集部にいたゲヱセン上野くん(上野利幸氏)が担当して。
石山
『オホーツク』の音楽も担当されてた方ですよね?
堀井
そうそう。音楽もやってくれて。
石山
堀井さん自身が実装されなくなったことで、ちょっと作り方を変えたとか、工夫したことってありましたか?
堀井
それまでは完全に自分の頭の中で作っていたので、何の資料も用意していなかったんですよ。でも、人に渡すには、フォーマットとかいろいろ必要になるので、それは作りましたね。コマンドを決めて、このセリフを表示させてって。
石山
ここでこのコマンドを選んだらこのテキストが表示されるというのを、全シーン書くわけですか?
堀井
そうです、そうです。フローチャートみたいなものをね。
石山
フローチャートということは、必ずプレイヤーが見るであろう順番でテキストが並ぶわけではなくて、この話とこの話を聞いたら、このコマンドでこのテキストを出すという、設計のところまで全部ですよね……?
堀井
そうですね。実際に人がプレイするとどれを選ぶかわからないので、そういうところもテキストでフォローして。
――分業とは言え、膨大な量ですね……。
石山
そのシーンでは選ばれないようなコマンドに対するメッセージも、想像で全部作らなきゃならないわけですよね……。そういうのを、全部テキストだけで書いて渡されたんですか?
堀井
そうです。でも、最初のころは『ドラゴンクエスト』も同じ作りかたをしていましたね。町の人のセリフをすべて書いて渡していたので。
石山
それで、上がってきたものを見て、直すことはありましたか?
堀井
直しますね。わかりにくかったりするときもあるので。テキストだけだと、簡単に直せますからね。いまみたいにボイスが入ると、なかなか直せないけれど(笑)。
石山
そうなんですよね(笑)。でもやっぱり堀井さんもテキストは最後まで直したいですよね。わかる……。
堀井
ボイスとテキストが一字一句同じではなくなっても別にいいよ、って思うときもありますね(笑)。
石山
『パラノマサイト』も、ボイスがないからこそ最後の最後までテキストで微調整ができるので、ものすごく助かっています(笑)。
――部分的なパートボイスならまだしも、フルボイスはそう簡単に直せませんよね。
石山
やっぱり、最後まで融通が利きやすいのはテキストなんですよ。帳尻が合わなくなっても、文字で説明することでなんとかできますから。
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堀井
あと、テキストの修正は、ほとんどバグが出ないんですよね。フラグやプログラムを変えるわけじゃないので。だから開発の終盤でもいじりやすいんです。
石山
だから、ヒントになるセリフとかは、最後の最後まで微調整しちゃったり(笑)。
――作り込めるし、作り込みたくなるんですね。
石山
堀井さんのやってきた、「限られた文字数の中で伝える」というコダワリは、作品からすごく感じていて。『ドラゴンクエスト』では、メッセージウインドウの中の、平仮名しかない状態でも、心を揺さぶるストーリーや人々の暮らしぶりといったものが伝わってくるというのは本当にスゴくて、僕が好きなところなんです。
堀井
ありがとうございます。
堀井氏に伝えたかった『ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち』への熱い想い
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『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』(1990年発売)。(C) ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/SQUARE ENIX
石山
『ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち』を遊んだときに印象的だったことなんですが、オムニバス形式なので、章ごとの主人公がいるじゃないですか。
最後の章になると、各地でいろいろな主人公が活動していることを、町の人の会話などで垣間見られるんです。「ここに誰々が来たぞ」みたいな感じで。しかも、あちこちの町や村で聞けるそういう話がどの順番で見ても、大丈夫なようになっていて。点と点がうまく繋がるようにシナリオを書いていらっしゃるのが、本当にすごいと思ったんです!
――よほど堀井さんに伝えたかったのか、すごい熱量ですね(笑)。
石山
いや、だってね!(笑) いまの状況をこと細かに伝えなくても、人の動きが見えてくるというか。「ほかの主人公が世界のあそこにいて、あっちに向かっているんだ」っていうのが町の人との会話から伝わってきて、そろそろ出会えそうなのがわかると、そりゃあワクワクするじゃないですか!
そういった体験って、自分で歩き回って情報を集めるRPGのシステムと非常にマッチしていて、本当にすばらしくて印象的だったんです! 大人になってから再プレイしたときも「う、うめえ……RPGのストーリーテリングが抜群にうめえ……」と感服しきりでした。
――『ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち』をオムニバスの物語にしようと思ったきっかけはあるのでしょうか?
堀井
『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』が社会現象になったので、もう本当にプレッシャーで。そんな中、章立てにすることを思いついたんです。
石山
複数の主人公が世界の各地で自分のトラブルを解決していくうちに、集まっていくという流れですね。
堀井
集める仲間は全員、自分がやったことあるキャラクターなんで、集め甲斐があるなと。
石山
やはり仲間が集結していくところのワクワク感が、狙いだったんですね。『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』でシステム的には完成して、『ドラゴンクエスト』のフォーマットができたなかで、じゃあそれで群像劇を表現しようと判断して、最初にそれを実装して、最高の体験として成し遂げているというのが、堀井さんがただ者ではないところだと思います。
――本当にそうですよね。
石山
言葉を選ばずに言えば、化け物みたいなすごい能力だなと思うんですけれど。「『ドラゴンクエスト』のフォーマットでも群像劇ができる」という確信は最初からあったのですか?
堀井
ボクはもともと漫画家志望だったんですよね。だから、ゲームを作るときも、地の文はほとんどなくて、ほぼセリフなんです。文章よりは、セリフのほうが読みやすいですからね。
――言われてみれば確かに!
堀井
だから、コンピューターを覚えてお話を書けるとなっても、マンガに群像劇はあるわけで、ふつうに思い付きましたね。
石山
なるほど……。村の人の発言から、だんだん人の動きが見えるようにしようみたいなことも、できるだろうという確信があったんですね。ただ、マンガと違ってRPGだと、歩き回って好きな順番で人に話しかけられるじゃないですか。でも、それでもちゃんと楽しい内容にしなくちゃいけない。お話を作るときはプレイヤーに伝える内容をコントロールして、順番に伝える方がラクだと思うんですが、それをものともしないのがスゴいなと。
堀井
軽い導線は考えますけどね。ただ、情報は“面”で作っているので、困ることはないように。というか、重要なセリフ、決められたセリフの人はラクなんですよ。むしろ、なんでもない、ただの人のセリフを考えるのがタイヘンでしたね。
石山
あぁ、そうですよね。物語の大筋には関係ないセリフって意外と。でも、その人の暮らしや人となりを感じさせるものを、ほんのひと言ふた言で伝えるっていうのが、すごく好きで。堀井節なんてよく言われますが、テキストの味わいの大切さをつねづね勉強させてもらっています。勝手に(笑)。
『ドラゴンクエストⅩ』で学んだ“見るテキスト”
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『ドラゴンクエストX オンライン』(2012年サービス開始)。(C) ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SQUARE ENIX
――チームでゲームを作るようになっていくと、それまでは堀井さんの頭の中にあったものをほかの人に伝えなければならないわけですが、そこにノウハウのようなものはあったのですか?
堀井
フォーマットがあって、それを見ればわかるという作りかたをしていましたね。たとえば、ボクがマップを書いて、人を置いて、人の番号振って、その番号に対応したセリフをすべて書き出して。それで、フラグによってクエストをクリアする前、クリアした後とかで、そのセリフを変えるみたいな。
――その手法を、シリーズを重ねるごとにブラッシュアップしていかれたわけですね?
堀井
そうですね。だから、最初のころは“あらすじ”というものがないんですよ。最初に『ドラゴンクエスト』を作ったときも、まずマップと人の配置とセリフから作っていって、つぎにアイテムのデータを作って渡して……みたいな。プロローグ的なものは作りましたけど、作ったもののほとんどは、そういう設計図みたいなものでした。
――時代は流れて、石山さんが『ドラゴンクエストⅩ』のテキストを書いたころには、マニュアル的なものはあったのでしょうか?
石山
シナリオ作成の心得的なものがありました。その中で、僕が感銘を受けたのが「読むテキストではなく、見るテキストを心がけよう」というものでして。
――それはどういうことなのでしょうか?
石山
長い文章が一気に出てくると、どうしても「うっ!」って抵抗感を感じてしまうので、2~3行くらいでパッと見て頭に入る文章にしようと。しかも、言葉の使いかたや読みかたはもちろん、文字の並べかたにも気を配りなさいと書いてあって。「うわー、『ドラゴンクエスト』はそこまでこだわるものなんだ!」と思った記憶があります。なので「あ、こだわっていいんだ! じゃあこれからは遠慮なくこだわろう!」と(笑)。あと、『ドラゴンクエスト』は、テキストに読点を使わず、スペースを入れるという書きかたをしてるじゃないですか。
堀井
それはなぜかというと、最初は平仮名しか使えなかったんですが、平仮名が続くと読みにくくて。かと言って、読みやすさを出すために読点を入れてしまうと、それはそれでうるさいんです。だから、スペースを入れるようになったんですね。
石山
ゲーム内で漢字が使えるようになってもその伝統は残っているんですが、僕自身はこれをスゴい発明だと思っていて。じつは、『パラノマサイト』でも、その前にやってた『スクールガールストライカーズ』でも“、”をいっさい使っていないんですよ。
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――そこは『ドラゴンクエスト』っぽいなと思いました。
石山
当時、藤澤さんが、「『ドラゴンクエスト』に関わった人はみんな文章の書き方が『ドラゴンクエスト』になる」とおっしゃっていたのですが、例に漏れず僕もその影響をしっかり受けて「スペースってすごく便利だなぁ」と思うようになりまして(笑)。
堀井
そう、スペースは便利なんですよ。
石山
読点よりも軽率に入れられるというか。読点を入れるほどではないけど区切りたいときとか、ちょっと平仮名の単語が続いたときとか、あいだを空けて読みやすくすることができるんです。
――そうですね。使い勝手はいいと思います。
石山
で、スペースで位置を調整し始めると、改行の位置もちゃんと自分で整えたくなって。たとえば“1行目がズラ~っと長くて、2行目は2文字ぐらいしかない”といった状況にならないよう、なるべく1行目と2行目の長さを揃える、といった感じに。あとは、スペースの位置が1行目と2行目で縦で並ぶと、そこで区切られたブロックのように見えてしまうので、そうならないようにも気を遣って。
堀井
ちなみにスペースを使うようになったのは、もともとマンガのセリフの書きかただったからなんです。マンガのセリフを見る感覚なんですよ。
――本当だ! マンガのセリフは『ドラゴンクエスト』と同じですね。ちなみに、そのシナリオチームのマニュアルというのは、堀井さんが作られたものなのでしょうか?
堀井
ボクは感覚でやっていたんですが、藤澤くんが論理立ててマニュアル化してくれたんだと思います。
石山
おお、なるほど。まだ家庭用ゲームの黎明期というか、そんなにたくさんタイトルがない時代から、堀井さんが感覚でと言いながらもそこまでテキストに気を遣って書かれていたからこそ、RPGやアドベンチャーというストーリー体験を重視したジャンルが発展してきたというのは絶対にあると思っています。なので、それは受け継いでいきたいなと勝手に思っています!
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文章へのコダワリと翻訳
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――奇遇にも、この対談を行っている本日、じつは『パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語』の発売日でして。
石山
もう、ドッキドキです!(笑)
――海外版も同時発売なんですよね?
石山
はい、英語と中国語に対応しています。先にも述べたように、言葉にこだわって作っているのですが、あまり言葉とか言い回しにこだわっても、翻訳したときに伝わらないのでは、という懸念がありまして……。
堀井
たとえば英語の場合、いろいろな味が削げちゃうというか。どうしてもシンプルになってしまうんですよね。
石山
日本語では、主語ひとつでも俺、僕、ワシ、私……とかいろいろ使い分けてますけれど、英語にすると全部“I”とか“my”とかになっちゃいますし。
堀井
英語はシンプルな言葉なので仕方ないと割り切っています。ボイスが入るようになったことで、声のトーンや読みかたで性格が出せるようになったので、それはよかったですね。
石山氏が抱くRPG制作への憧れ
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石山
僕はいまアドベンチャーゲームを作っているんですけれど、せっかくスクウェア・エニックスにいるなら、RPGを作りたいなとずっと思っているんです。アドベンチャーゲームを作っているときと、RPGになったときで、シナリオの書きかたで変わること、気をつけることってありますか?
堀井
なんだろう……。頭を切り換えたので、わからないですね。「プログラムのコマンドを書いてこれを出す」というやりかたから「人を置いてその人にこれを喋らせる」という作りかたに変えただけなので……。
石山
ああ、なるほど、感覚的にやっていらしたと。それでできているというのが、スゴいんですけれど……(笑)。
――このゲームをどう楽しんでもらうかを考えたとき、堀井さんの頭の中に最適なものがなんとなく浮かぶのでしょうか?
堀井
そうですね。こうすると遊びやすいんじゃないかな、とか。そんな感じですね。
石山
逆に、いまの技術でもしもアドベンチャーゲームを作るなら「こうことできそうだな」とか「こういうことをしたいな」と考えることはありますか?
堀井
インターフェースについてはあまり変わらないんじゃないかと思います。ただ、ちょっとジレンマなのは、最近はシーンによって出るコマンドが違うものがありますよね?
石山
むしろそっちのほうが多いですね。必要なコマンドしか表示されないタイプのもの。
堀井
それはそれで作るほうも遊ぶほうものが楽なので、アリかなとは思うんでけれど。遊びの要素は入れづらくなったかもしれないな、とは思いますね。
石山
すべてのコマンドを常時表示しているからこそ、できる仕掛けがありましたからね。確かに、いまはそのタイプのアドベンチャーは少ないです。でも、いまの人が遊ぶにはすべてのコマンドを表示していたら面倒くさいだろうなというのもわかります。
――ただ、堀井さんがいまの時代にどんな仕掛けを考えるのかは気になります。インターフェースを使うのかも含めて。
堀井
きっと、とんでもない仕掛けを作って驚かそうとすると思いますね。ただ、いまはゲーム実況とかで全部謎が暴かれちゃうじゃないですか(笑)。そのへんも難しいところなんですよね。とんでもないどんでん返しを考えても、すぐにバラされてみんなに知られちゃいますから。
――SNSで部分的に……、そのどんでん返しだけ広まっちゃったりしますからね。一方で、SNSきっかけで話題になってヒットすることもあります。
堀井
そうなんですよね。『8番出口』なんかはそのタイプで。映画にもなっちゃいましたからね(笑)。
石山
『8番出口』は、「まだそんな手があったか」と思わされたゲームでした。ちょっとしたアイデアをきっかけに、小さいゲームが一気にポンと出てくるというのは、夢がありますよね。いまは、どうしてもゲームを1本作るのに時間かかるようになっちゃったじゃないですか。できれば、もっとポンポン出していろいろなことを試したいんですけれど、そうもいかず……と思っていましたけど、ああいうワンアイディアで出して、見てもらえる流れはアリだなと思いました。
堀井
遊ぶほうもラクなんですよね。「これはこうすればいいんだ」とわかった状態で遊べるから。だから、どこを楽しむかですよね。
――大作をガッツリ遊びたい人もいれば、小さな遊びのものをサクサク楽しみたい人もいて。
石山
大作ばかりだとお腹いっぱいになっちゃうから、小さい遊びのものもあったほうがいいと思います。選べることが大事なのかなと。
堀井氏の立ち位置から見える夢や野望とは?
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石山
堀井さん、いま夢や野望みたいなものってありますか? 我々からすると、やりたいことをやられているように見えるし、すごいゲームを作って、勲章も受章されて。安っぽい言いかたかもしれないですが、ゲームクリエイターとして頂点にいらっしゃるひとりだと思うんです。その方が「まだやりたい」と思うことはあるんだろうか、と。
堀井
なんだろう……何かを思いついたら「やりたい!」ってなるんですよね。ビックリさせるようなことを思いついたりしたら。
石山
それは、ゲームに限らず?
堀井
そうですね。そこは何でも。
石山
なるほど。堀井さんの立場やお年でも、新しい何かを作りたい、やりたいって思えるんですね。
堀井
ぜんぜんあります。
石山
すごいなあ。僕は50歳になるので「あと何本ゲームを作れるんだろう」なんていうことをどうしても考えちゃうんです。でも、堀井さんがそうやってガンガン現役でやられているのを見ると、勇気づけられます!
堀井
あと、ボクの場合は先輩がいたんですよ。すぎやま先生っていう(笑)。
一同 確かに!(笑)。
堀井
いまのボクから見ても、まだ20年ありますからね。
石山
そう考えると、僕なんてまだまだですね(笑)。ぜんぜん若手だ!
――あと40年は作れますよ!
石山
今後もまだまだやりたいことをやれそうだ!(笑) いやあ、本当に励みになります。堀井さんにはゲーム作りで勲章をもらえることもあると教わりましたし、今後も自信を持っていろいろなものを作っていきたいと思いました!
堀井
RPGも作りましょう。RPGでもアドベンチャーみたいなことはできますからね。謎解きという意味では、どちらのスタイルでもできちゃうと思うし。
――いずれRPGを作っていただきたいですね。
石山
そうですね。ただ、どうしても規模が大きくなってくるので、なかなか動くのも難しいだろうなという感覚はあるんですけれど。
――『パラノマサイト』をRPGにしてもいいんじゃないですか?
堀井
できそうですよね。
石山
やっちゃってもいいんですかねぇ? 急にRPGになったら、皆さん「えー!」ってガッカリしちゃいそうな気がして。驚かれるかもしれないけど、求められているものとは違うのでは……と。
――でも、『ドラゴンクエスト』にもいろいろなジャンルの作品がありますから。
石山
ああ、確かに。いまや、『ドラゴンクエスト』はあらゆるジャンルのゲームが遊べるプラットフォームみたいになってますよね。でも、『パラノマサイト』はどうだろう……。
堀井
初期の『ドラゴンクエスト』みたいに、町を作って、人を置いて、いろいろな人と話して謎を解いていくっていうような形なら、RPGにもできそうな気はしますけどね。
アンテナを張り、新しい刺激をつねに求めて
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堀井
いま、ボクがハマっているのはスマホで観るようなショートドラマなんです。見ちゃうんですよ。5分くらい観たら「つぎは課金です」ってなると「マジかよ!」って思ったりもするんですけれど(笑)。ただ、続きが気になるように、観たくなるように作られているからつい課金しちゃうんです。よくできていますよ。
石山
おお、ショートドラマを。そういう新しいものは、堀井さんご自身で積極的に探して手を出す感じなんでしょうか?
堀井
ボクは、基本的にミーハーなんです。あと、最近で言うとチャッピーさん(Chat GPT)もいろいろ相談に乗ってくれますよ。どんどん賢くなるし。いちばん驚いたのは、ニューヨークで行った美味しいハンバーガー屋が気になって、「あれはどこだったんだろう?」ってチャッピーさんに相談したんですよ。「ヘンな入り口で、ホテルのフロントの横から行けて、有名なお店らしいんだけど」って聞いたら、それだけで答えてくれて、合っていたんです。
――そういう調べものは、チャッピーさん得意そうです。
堀井
手相も見てくれるし、「スゴいな!」って思いましたね。なんでもできるんだなって。それこそAIを使ってアドベンチャーゲームとかできないものかな? と思ったり。
石山
うはあ……やはり、つねに新しいものを使って何かおもしろいことができないかを考えられているんですね。その精神は大事だなあ。そういえば、『ポートピア』のヤスをAIにする試験的なことも、すでにやってましたよね。
堀井
もっとガッツリやっちゃって、雑談しながら遊ぶようなものがあってもいいですよね。
石山
本当に会話と同じ感覚で遊べるようになれば、アドベンチャーゲームも「あれやって! これやって!」を会話でやるようなスタイルになることも考えられますね。自分が何をするかを、相談しながら決めていくような。テキストでのコマンド入力だった当時にやりたかったことが、いまの技術でようやくできるようになるのかもしれないです。
――微妙な言葉も、AIが汲み取ってくれれば……!
石山
いまなら、そこまでできそうですよね。さらに翻訳までやってくれれば、最高です(笑)。
――しかし、堀井さんからAIという言葉が出てくると感慨深いです。
石山
そうですよね。個人的に、AIという言葉を日本に広めたのは、堀井さんの『ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち』じゃないかと思ってますから。
――ちなみに、堀井さんは最近、どんなゲームで遊ばれているのでしょう?
堀井
新しいものもやりますけれど、昔のものでけっこう遊んだりもします。いま『スーパーファミコンウォーズ』をやったりして。
――懐かしい!
堀井
ニンテンドー3DSで手軽に遊べるんですよね。手軽と言う意味では、アドベンチャーゲームはタッチだけでも遊べるから、スマホには向いていますよね。
石山
そうなんですよ。ゴロゴロ寝転がりながら遊べるのはいいかなと思っています。
――一時期はアドベンチャーゲーム不遇の時代がありましたが、最近はまた盛り上がってきましたね。
堀井
脱出ゲームとか流行ったおかげですかね?
石山
そうかもですね。脱出ゲームや謎解きなんかが流行った流れで、アドベンチャーゲームも見直されたのかもしれません。
堀井
『8番出口』も流行りましたし、またアドベンチャーゲームのブームが来るような気がしますね。スマホならみんなとつながっているので、みんなとワイワイやるマルチのアドベンチャーゲームができるかもしれない。
石山
なるほど……!
堀井
マーダーミステリーみたいなこともできそうですよね。参加型はみんな好きだと思うんですよ、とくに女子が。お台場に“イマーシブ・フォート東京”という体験型の施設があって何度か行ったんですが、来ていたのはほとんど女子でしたからね。
石山
おお……ちゃんとそういう施設にも行ってらっしゃるんですねえ。そういったイマーシブ作品に参加されたときって、「自分ならこうするのに」とか「こうすればいいのにな」と思ってしまいませんか?
堀井
あります、あります。だから、刺激になりますね。
石山
やっぱり! 職業病ですよね。
続編を作るときに考えること
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石山
堀井さんは最近だと、『ドラゴンクエストⅠ&Ⅱ』の追加シナリオを執筆されたそうですが、“昔作ったものの続き”を書くのって難しくなかったですか? それとも、そこまで抵抗なく書けた感じだったのでしょうか?
堀井
リメイクをそのまま出してもつまらないだろうな、というのもありましたし、今回は、発売順を変えたので、それなりに書き甲斐がありましたね。こうしたかった、というものはあったので。
石山
それは当時から思っていたことですか?
堀井
当時はやりきったので、それはなかったです。後から「こういうこともできたな」というのを書いた感じですね。『パラノマサイト』は、つぎの構想があるんですか?
石山
いやあ、いまは……なにも考えられないです(笑)。堀井さんは、これまで新作のアイデアはいつごろから考え始めてた感じですか?
堀井
『ドラゴンクエスト』の場合は、発売したらすぐですね。間隔が短かったころは休みなく作っていました。作ってくれって言われるんで。
石山
うっ……やっぱり、そのくらいじゃなきゃダメなんだなあ(笑)。
――いやいや(笑)。『パラノマサイト』にはファイルナンバーがあって、今回38ですけれど。前は23で、そのあいだをマンガで埋めて、なんていう工夫をされていますよね。
石山
そうですね。まあ、数字自体に大きな意味はないんですけれど(笑)。
――次作は、2作のあいだにある余白のファイルになるのか、それともぜんぜん違う前後に当たるものなのか、というところもファンは気になっていると思います。
石山
そのあたりは、これから話し合いながら決めていきたいです。ゲーム以外での展開も含めて。
堀井
『パラノマサイト』は、何人ぐらいのチームで作っているんですか?
石山
社内で開発の中心にいるのは4~5人ぐらいです。あとは、開発会社さんと協力して。うちの会社では珍しく少人数です。
――少人数のほうが開発はラクですか?
石山
ラクですねえ。アドベンチャーゲームのいいところは、少人数でも作れるというところなので、そこは活かしていきたいです。少人数だからこそ、作家性というか、個々の持ち味は出しやすいと思いますし。たとえば『パラノマサイト』のキャラクターイラストは、塗りから差分まで、すべてひとりで描いています。
堀井
すごいですねえ。いい味が出ていますし。
石山
個人のスキルに完全に依存した作りかたなので、企業としてはあまりよくないんですけれど(笑)。
――前作と本作に共通するものを最小限に抑えたことで、次作以降もいろいろなものが作りやすくなるというか、多様な可能性があるシリーズになったのではないでしょうか?
石山
そうなんです。キャラクターを引き継いじゃうと、ずっとそのキャラクターを引き継いでいかなきゃいけなくなるかなと思って。『ドラゴンクエスト』は毎作一新していますけれど、どこかでキャラクターを続編に引き継ごうと思ったことはなかったですか?
堀井
あまりなかったですね。枝分かれさせたものはありますけれど。
石山
前作のキャラクターが人気だと、新作でも登場させたくならないかな? と思ってしまうんですが。
堀井
人気になるほど、その期待に応えるのがタイヘンなので。逆に一新したほうがいいかなと思いますけどね。
石山
ああ、なるほど! ちょっと元気が出ました(笑)。
――キャラクターは変わっても、スライムやはやぶさの剣が出てきたら「これは『ドラゴンクエスト』だ!」となりますよね。それといっしょで、「これが出てきたら『パラノマサイト』だ」となればいいのではないでしょうか?
石山
そうですね。たぶん、それが呪いとか呪詛珠、案内人になっているのかなと思っていますけれども。どうなんだろうなあ? 発売日当日なので、皆さんにどう受け止められているのかわからないんですよね。あとでエゴサーチしてみないと……そういえば、堀井さんはエゴサーチとかされるんですか?
堀井
もうしなくなりました。昔はしていたんですけど。
――あはは(笑)。
石山
でも、昔はされていたんだとわかって安心しました。どうしても反応が気になっちゃうんですよ。だって、イタズラを仕掛けて、それをこっそり見てないなんてありえないじゃないですか!(笑)。
――そうかもしれませんね(笑)。いやあ、しかしおふたりが並んでいると、『パラノマサイト』で堀井さん原案のファイルナンバーが生まれたりしないかな? という夢を見てしまいますね。
石山
おっ。舞台が神戸や北海道になったときには、もしかしたら……なんてことも!?(笑)
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/67038/a359e841a0f883d04c86a4328e337360c.jpg?x=767)
“驚き”という名のいたずらを、未来へ。
奇しくも本日3月9日は、シリーズ初代作『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』が産声をあげた日(2023年)。ちょうど発売3周年の記念すべき日に、この対談をお届けできることになった。
約40年前に『ポートピア連続殺人事件』でアドベンチャーの洗礼を受け、堀井雄二氏の背中を追うようにシナリオ制作の道を歩む石山貴也氏。日本におけるアドベンチャーゲームの開拓者となった堀井氏との対談は、『ドラゴンクエストX』開発を介した大師匠&弟弟子というような関係性の単なる再会に留まらず、石山氏の創作のルーツを辿る旅ともなった。
『パラノマサイト』に仕掛けられた、ときにシステムさえ逆手に取る“イタズラ”の数々。そこには、幼少期の石山氏が受け継いだ堀井流アドベンチャーのDNAが、いまもなお熱く脈打っている。時代を超えて共鳴し合うふたりの仕掛け人による驚きの競演を、ぜひプレイを通じて確かめてほしい。
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