そんな現代に寂しさを覚えている我々に朗報だ。
あの、聖徳太子が帰ってくる。――恋愛ゲーの攻略キャラクターとして。
このたび、Xのフォロワーが9.8万人を誇る“卑屈な奈良県民bot”にて、新作ゲーム制作進捗の発表があった。
その名も『なら☆こい』。
乙女ゲームといえば、戦国武将がイケメンになったり、文豪がイケメンになったりと、疑似恋愛を貪るユーザーたちの欲望をごってリ詰め込んだものだ。
しかし、先日開発状況が発表され話題となった『なら☆こい』。
そのメインキャラである聖徳太子は、なんの装飾もなくほんとに教科書やお札で見てきたとおりの見た目だ。
いや、こっちのほうが胸キュンだという人がいたら恐縮なのだが。
このビジュアル強めの乙女ゲーはいったいなんなのか。
小説家であり“卑屈な奈良県民bot”発信者のひとりである、あをにまる氏に話を聞いてみた。
あをにまる
Xのアカウント“卑屈な奈良県民bot”の運営者。奈良特有の自虐や鋭い郷土愛を交えたポストで注目を集め、ラジオ出演などメディアでも活躍。 作家としては小説『奈良千夜一夜物語』などを刊行。独自の切り口で奈良の魅力を全国へ発信している。
企画を提供するので、ゲームをいっしょに作りませんか?

攻略キャラの絵柄を変えなかったのは、「やってみようかな」という間口を広げるためです。 ふだん恋愛ゲーを触らない人でも楽しめるような、そんなコンテンツにしたかったのがあります。真面目すぎず、ちょっと笑える『学園ハンサム』とか『はーとふる彼氏』といったネタっぽくしたかったです。
――ストーリーは王道の学園恋愛ゲームっぽくなるのでしょうか?
イケメンを攻略する乙女ゲームはたくさん制作されて人気もあるので、そこに参戦するつもりはありません。あえて教科書に載っている、みんな知っている“あの顔”が出てきたほうがちょっとおもろい。 僕も乙女ゲームはネタ系ばかり遊んでいるので、いろいろな人がちょっとやりたくなるぐらいのやつがいいと個人的には思います。
――ゲーム全体のテキスト量や、1キャラクターをクリアするまでの想定プレイ時間はどのくらいになりそうですか?
最初は張り切って作っていて、好感度システムを入れようかなとか考えていたんですが、プログラムがややこしくなって、頭がグチャグチャになってしまいました。だからなるべく簡素化しようとしています。 攻略もしやすいですし、ゲームとしてのおもしろさは担保しつつ、システムがあまり複雑になりすぎず、王道なんだけど、ちょっとぶっ飛んでいるやつくらいのバランスで。
――ターゲットはどんな人を想定していますか?
蘇我入鹿の首ぐらいは飛びますが、過度にいやらしいシーンやグロテスクなものはなしで、全年齢を対象に考えています。 安心して楽しんでかつ笑える感じです。
僕の1冊目の著書『今昔奈良物語集』は、小説にしては1編1編が非常に短い、ショートショートでした。11編で70000万字くらいなので、スナック菓子みたいに読める小説です。かつみんな知っている教科書文学を原作にしました。ふだん本をあまり読まない人たちも含め、幅広い世代に向けて、と考えました。
――『今昔奈良物語集』に収録されている『ファンキー竹取物語』は超現代スラングと古文を組み合わせて語られる物語ですが、むちゃくちゃ笑いました。
――メインキャラを聖徳太子にした理由をおしえてください。
後醍醐天皇は、奈良じゃなくてほぼ京都じゃないかと思われるんですけど、一応奈良にいたというくくりで担任の先生役で出したり。

主人公である小野妹子は、ご存じの通りほんとうは男性なんですけれども、この世界の妹子は女性です。いっそセーラー服でいこうかなと思っています。
中臣鎌足は教科書版でいくとちょっと顔が怖いんで、少しだけマイルドにしてみようかと考えています。
それから大伴家持は、万葉集っていうアルバムをリリースします。「万葉集出したやつこいつやったんか」みたいな感じで、なんとなく思い出せれば楽しめるでしょう。
万葉集に入っている代表作に 「うらうらに 照れる春日に ひばり上がり 心悲しも ひとりし思へば」という代表の歌があるんですけれど、それを聞いて妹子が「なんか字余りじゃね?」とかツッこんだり」、「自分で万葉集を編纂したからって、字余りの歌を選ぶか?」って知っている人は「そうそうわかるわかる!」ってなります。でも前提として知らなくても理解はできるので大丈夫です。

著作権が切れている壁画や文献のものを使いたいんですが、まんま使うのも難しいんです。所蔵している法隆寺の権利や、撮影が禁止な掛軸なので、多分それを撮った新聞社や出版社の権利が存在するから、それをもとに描き起こししています。
この聖徳太子も、トレースをすると著作権がややこしくなるので法隆寺所蔵の掛軸を見ながらていねいに描き起こしています。
――『日出処の天子』という、聖徳太子が主人公の名作少女マンガがありまして、聖徳太子といえば、この厩戸王子にメロメロという読者はたくさんいます。そのファンからすると、『なら☆こい』はたいへんチャレンジングです。
あれから半世紀近く過ぎたので、令和の現代で通じるおもしろネタのコンテンツあってもいいかなと思ったりもします。
――2022年ごろにキャラクター設定を公開し、SNSで大きく話題になっていました。2026年の発表にいたるまで少し時間が空いたのはなぜですか?
無事出版できたので、いろいろやるかとなったら、今度はラジオの仕事をやることになったり。そうこうしているあいだに、今度は確定申告のゲームを作りたくなって『確定申告を頑張るRPG』というタイトルで、税金の制度を学ぶゲームを作ったり。
先日、新刊『奈良千夜一夜物語』を出版して、「そういえば『なら☆こい』ってアイデアあったな」と思い出しました。それでもう一度投稿して、反応を見てみたんです。手応えは感じているので進めたいのですが、プログラムからシナリオまでほぼワンオペ作業なので、手が回りきらなくてだいぶ滞っている状況です。
もしご興味のあるゲーム会社様がおられましたら、ぜひこの企画を買って下さい! そして宜しければ私をシナリオ担当として参画させてください! 僕ひとりではいつになったら完成するかわからないので、助けていただきたいんです。いまできているのは、メインである聖徳太子ルートのプロットとイメージくらいです。
――現時点でキャラクターにボイスを付ける予定はありますか?
まず少なくとも僕のお金でプロを雇うことは不可能なので、やるとしたら素人集団の完全にネタに振り切った感じです。僕も3役ぐらいやらなあかんと思います。 たぶん足らんでしょう。 女性のキャストいないし、どうしようみたいな。
――いずれは海外への展開とかもおもしろそうですね
プラスで課金したら、聖徳太子をイケメンに変えられるみたいな展開を狙ってもいいですね。「同時に10人の話を聞ける人」がいるとか、持っている知識の前提が違うので、海外版と日本版の内容をちょっと変えるとかもありですね。
――楽しみにしています。





















