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『MIMESIS』協力型ホラーゲームでもっとも恐ろしいのは“仲間と同じ姿や声で(敵が)語りかけてくること”。AIがプレイヤーの声や行動を模倣する話題作の誕生秘話【開発者インタビュー】

『MIMESIS』協力型ホラーゲームでもっとも恐ろしいのは“仲間と同じ姿や声で(敵が)語りかけてくること”。AIがプレイヤーの声や行動を模倣する話題作の誕生秘話【開発者インタビュー】
 プレイヤーに擬態するAIが話題の4人協力型ホラーゲーム『MIMESIS』(ミメシス)。同作はKRAFTON傘下のクリエイティブスタジオ“ReLU Games”が手掛けた作品で、
2025年10月27日の早期アクセス版の配信開始から約50日間でグローバル販売累計売上100万本を突破している。

 作品の特徴として、前述の通りプレイヤーに擬態するAIが挙げられるが、その
AIがプレイヤーの行動だけではなく、声(ボイスチャットでの会話)までも模倣するという点が大きな話題を呼んでいる。それにより、いっしょに探索しているのが、ほかのプレイヤーなのか、それともプレイヤーを模倣したAIなのかと疑心暗鬼になってしまうという、新たなゲーム体験を生んでいる。

 そんな本作を手掛けた“ReLU Games”の開発スタッフにメールインタビューを実施。開発秘話や作品に込めた想い、今後の展開などに加えて、AIを活用したゲームの可能性について、たっぷりと訊いた。

 なお、2026年1月6日までSteamで本作が20%オフの960円[税込]で購入できるセールが実施中。本記事や動画などを見て気になっていたという方は、この機会に遊んでみてはいかがだろうか?
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本記事は『MIMESIS』の提供でお送りします。
――タイトルの『MIMESIS』は“模倣”や“擬態”という意味を持つ単語ですが、このタイトルにした理由や想いを聞かせてください。

開発
『MIMESIS』という言葉こそが、本作の核となる体験をもっとも的確に表していると考えました。ゲーム内に登場する存在“ミメシス”は、単にプレイヤーの外見をコピーするだけの存在ではありません。プレイヤーの信頼を巧みに獲得し、ときには生きている仲間そのものを疑わせてしまう。そうした心理的な仕組みまで含んだ存在だからです。

 従来のゲームにおけるモンスターが、基本的に“攻撃すべき対象”であったのに対し、ミメシスはプレイヤーどうしのあいだに入り込み、信頼を崩し、混乱を引き起こす新たな形の脅威として描かれています。こうした特徴をもっとも凝縮して表現できる言葉が、『MIMESIS』でした。

――本作はホラーな雰囲気がありつつも恐怖ではなく、“不信”や“混乱”、そしてそこから生まれる“笑い”を中心としたゲームデザインになっているように感じました。このようなデザインにした経緯や意図を教えてください。

開発
従来の協力型ホラーゲームにおいて、恐怖の多くはモンスターやトラップといった外部要因から生まれるもので、そばにいる仲間はつねに安心できる味方の存在でした。

 しかし、「本物の人間のようなモンスターが、仲間のふりをして振る舞っていたらどうなるだろう?」という発想から着想を広げていくなかで、恐怖の対象が“外”ではなく、“すぐ隣にいる仲間”へと変わるという、これまでとは異なるおもしろさを見出すことができました。

 もっとも恐ろしい存在が、仲間と同じ姿や声で語りかけてくることで、プレイヤーの間に自然と不信感や混乱が生まれていきます。

 ただし、私たちがもっとも大切にしたのは、その緊張感が不快な恐怖で終わるのではなく、正体が明かされた瞬間に思わず笑ってしまうようなコミカルな展開へとつながることでした。予想外の危険に思わず悲鳴を上げながらも、ミメシスに騙されたお互いの姿を見ていっしょに笑える、そんな“怖いけれど楽しいゲーム”を目指して制作しました。

――本作は4人でのプレイが推奨されていますが、4人という人数にした理由を教えてください。開発中は、ほかの人数なども検討されていたのでしょうか?

開発
『MIMESIS』の核となる価値は、“不信から生まれる緊張感”と、その先に訪れる“ユーモラスな楽しさ”にあります。

 開発初期の段階から4人プレイを想定していましたが、最適な体験を追求するため、さまざまな人数構成でテストを重ねてきました。2~3人の場合は緊張感こそ高いものの、人数が少ない分、思わぬ笑いが生まれにくく、一方で5人以上になると、賑やかさは増すものの、恐怖や緊張感が大きく薄れてしまう傾向がありました。

 その結果、4人という人数が協力型ホラーというジャンルにおいて多様な戦略的な組み合わせを可能にしつつ、互いを疑い合う緊張感を保つうえでもっともバランスの取れた構成であるという結論に至りました。
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――本作の特徴のひとつとして、声(ボイスチャット)をNPCが模倣をしてくるという要素がありますが、このアイデアはどのようにして生まれたのでしょうか?

開発
「AIが搭載されたモンスターが本当に人間のように振る舞ったら、どんなおもしろさが生まれるだろうか?」。そんな問いから本作の発想は始まりました。

 ただ、協力プレイゲームではボイスチャットがコミュニケーションの要となるため、動きだけを真似するだけでは、プレイヤーを完全に欺くことには限界がありました。どれほど挙動が自然でも場面にそぐわないひと言があるだけで、ミメシスだとすぐに見抜かれてしまうからです。

 そこで、ミメシスの音声表現をより自然なものにするため、数多くの試行錯誤を重ねました。たとえば、ミメシスのほうから人に問いかけたり、攻撃を受けた際に悲鳴を上げたりといった要素を取り入れることで、音声でのやり取りが格段に人間らしくなっていきました。その結果、“人間のような動き”と“状況に即した音声表現”が互いに噛み合ったときにこそ、『MIMESIS』ならではの唯一無二のおもしろさが完成するのだという確信に至りました。

――声を模倣するというのは、これまでのゲームにはなくとてもユニークだと思いました。開発中に実際にゲームとして組み込んだときに「これはいける」と判断したのは、どんなタイミングだったのでしょうか?

開発
それは、2025年1月に社内で実施した初回のプロトタイプテストのときでした。

 当時のミメシスは、現在と比べるとAIの挙動もまだ拙く、音声による会話にも不自然な部分が多く残っていました。それにも関わらず、プレイヤーたちはミメシスと会話を交わしながら行動をともにし、突然攻撃を受けたり、会話をしている最中にも互いを疑い合うような状況が自然と生まれていたのです。完成度としては決して高い段階ではありませんでしたが、それでも“不信から生まれる恐怖と、その先にあるユーモア”という本作の核となるおもしろさが、はっきりと感じ取れました。この体験を通じて、ミメシスがさらに人間らしい振る舞いを身につければ、必ず成功する。そう強く確信するに至りました。

――声を模倣する際のアルゴリズムはどなっているのでしょうか? たとえば、何度も発せられているワードを合言葉だと予想して、意図的に抽出したりしているのでしょうか? また、ミメシスにやられていわゆる神視点になったときのプレイヤーの発言も抽出しているのでしょうか?

開発
ミメシスの音声会話における核となる要素は、“どのセリフを、いつ発話するか”を判断する意思決定能力にあります。ゲームプレイ中には数多くの音声会話が発生しますが、それらを実際に使用するまでには、複数の判断プロセスを経る必要があります。

 ミメシスはつねにその瞬間の状況を認識・分析し、プレイヤーをもっとも効果的に欺けるタイミングにおいて、最適なセリフを選択して再生します。また、いっしょにプレイしているメンバーの構成によって会話のスタイルが変化するのは避けられませんが、ミメシスはそうした変化にも柔軟に対応できる構造を備えています。ただし、“観戦者視点”での会話は、実際のプレイ中に行われる会話とは異なる性質を持つ場合が多いため、収集対象には含めていません。

――声以外についても、AI技術を活用してプレイヤーたちの行動を模倣するようですが、具体的にはどのような部分を真似するのでしょうか?

開発
開発初期の段階では、あらかじめ決められたルートに沿って移動する程度の挙動でしたが、現在ではプレイヤーのほぼすべての行動を模倣できるようになっています。単に経路を歩くだけではなく、開発チームが独自に訓練したディープラーニング技術を用いることで、人間特有の動きを再現しています。

 たとえば、歩きながら周囲を見回したり、暗い場所では壁に寄り添うように進んだりと、機械的ではない探索行動を見せます。アイテム(スクラップ)や装備を拾ったり置いたりするのはもちろん、手に持った装備を実際に使用したり、ダンスエモートを行うことも可能です。さらに、放送設備を使ってアナウンスを流したり、隠し通路のレバーを引いたりするなど、ゲーム内の大半のギミックを操作することができます。
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――本作は、フレンドだと思っていた相手がじつはAIだったり、逆にプレイヤーであるにも関わらず、フレンドからAIだと疑われたりするのがおもしろい部分だと思います。開発者の皆さんのもとに届いたエピソードの中で、とくにおもしろかったり、印象的だったりしたものを教えてください。

開発
最近、とあるプレイヤーの方がマンガとして描いてくださったエピソードが、とても印象に残っています。4人で秘密通路を進んでいた際、ひとりが先に通路へ入った瞬間に扉が閉まり、そのプレイヤーが死亡してしまうという出来事でした。

 残された仲間たちは、レバー操作を担当していた友人に対して「なぜレバーを離したんだ?」と激しく問い詰めたのですが、じつはその友人はまだ一度もレバーを操作しておらず、反対側にいたミメシスがレバーを引いて扉を閉めていたことが判明しました。ミメシスの行動そのものと、そこから生まれる不信感が見事に描かれたエピソードで、非常に印象深い体験でした。

――本作は難しいという声も耳にしたりしますが、プレイするうえでコツやアドバイスなどはありますか?

開発
このゲームに、こうすれば必ずうまくいくという正解はないと考えています。

 ただ、いくつかのヒントを挙げるとすれば、まずひとつ目は自動販売機で購入できるさまざまな装備をしっかり活用することです。懐中電灯であれ武器であれ、装備をうまく使いこなせば、生存率は大きく向上します。

 懐中電灯だけではきびしいと感じた場合は、武器やコンパスを選んでみるのもひとつの手でしょう。また、今回のアップデートで追加された装備アップグレード(懐中電灯、コンパス、ペイントボール)や、トラム修理時に追加されるトラムパーツも、積極的に活用すれば大いに役立つはずです。

 ふたつ目は、仲間との協力です。ひとりで行動すれば身軽で素早く動ける反面、危険に遭遇したときには限界があります。仲間がそばにいれば、困難な状況もずっと乗り越えやすくなるでしょう。ひとりでは倒すのが難しかったモンスターも、ふたりで力を合わせて挑んでみてください。
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――本作はゲーム内でマップが存在しないため、迷いやすいという意見も見受けられますが、マップなどのアイテムを追加する予定はありますか?

開発
ミニマップに関するフィードバックについては、チーム内でも多くの議論を重ねています。未知のエリアを探索すること自体も、本作における重要な要素だと考えていますが、一方で「道に迷うストレスが高い」というご意見を多くいただいているのも事実です。

 そのため、ミニマップで直接ルートを示すという形ではなく、マップ構造そのものの複雑さを緩和しつつ、道を見つけるためのさまざまな手段を追加していく方向で検討しています。たとえば、位置を音で知らせてくれる犬やコンパスは、道探しが苦手な方の助けになるかもしれませんし、今回の装備アップグレードで追加されたペイントガンを使って痕跡を残すことで、進行ルートの把握に役立てることもできます。

 また、前回のアップデートでは一部マップにおけるストレスを軽減する調整を行っており、今後も状況を注視しながら、継続的に改善を進めていく予定です。

――ユーザーからのフィードバックの中で要望の多いものを教えてください。また、その要望に対応する予定はありますか?

開発
アーリーアクセス版のリリース以降、多くの皆さまからさまざまな形でフィードバックをお寄せいただいており、心より感謝しています。とくに、アーリーアクセス開始直後にもっとも多くご要望をいただいていた公開サーバーおよびセーブ機能については、すでにアップデート対応を完了しました。そのほかにも、マップやモンスターの拡張、利便性の向上、バランス調整など、非常に多岐にわたるご意見をいただいており、利便性改善やバランス調整については、現在も継続的にアップデートを行っています。

 現在、開発チームでは新たなマップやモンスターといった新規コンテンツの準備にも着手しています。また、12月18日のアップデートで追加された装備やトラムのアップグレード機能についても、ぜひ多くのフィードバックをお寄せいただければ幸いです。
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――現在、早期アクセス中ということで、今後正式リリースに向けてブラッシュアップなどを行っていくと思いますが、追加予定の機能や今後のロードマップなどを教えてください。

開発
アーリーアクセスを通じて、『MIMESIS』の基本的な骨格は完成したと考えていますが、拡張できる楽しさの余地はまだまだ多く残っていると感じています。

 正式リリースに向けて、私たちがもっとも重視しているのは、コンテンツの拡充と、ミメシスそのもののさらなる進化です。くり返しプレイしても、毎回異なる体験を通じて楽しめる作品であるべきだと考えており、そのためには、現在以上に多彩なマップやモンスター、トラップなどが必要だと捉えています。また、プレイを重ねる中で成長を実感できるようなコンテンツについても、検討を進めています。

 ミメシスについても、いま以上に進化した存在へ構築していくため、開発とテストを継続しています。アップデートを重ねるごとに、これまで以上に自然で、どこか飄々とした、より“人間らしい”ミメシスへと進化させていくことを目標としています。

――現在はPC向けタイトルとなっていますが、家庭用ゲーム機への展開などは予定されていますか?

開発
現在『MIMESIS』は、PC/Steamプラットフォームにてアーリーアクセスとして配信しており、プレイヤーの皆さまとともにゲームの改善を進めています。コンソールプラットフォームへの展開については、現時点では具体的な計画はまだ確定しておらず、まずはSteam版の完成度を高め、プレイヤーからのフィードバックを積極的に反映していくことに注力しています。

 一方で、ReLU Gamesとしては、より多くのプレイヤーの方々に『MIMESIS』ならではの独自のAI体験を楽しんでいただきたいと考えています。そのため、アーリーアクセス期間中にゲームの基盤をしっかりと固めたうえで、将来的な複数プラットフォーム展開の可能性についても検討していく予定です。

――本作はAIを活用したゲームとしても注目を集めています。ReLU Games は、“AI × GAME” という理念や目標を掲げていますが、今後、新しいおもしろさを生み出すためにAIをどのように活用しているかを教えてください。また、今後もAIを活用したゲームを作る予定はありますか?

開発
ReLU Gamesでは、ディープラーニング技術をゲームの“おもしろさ”に結びつけ、新たな体験を生み出すことを核となる目標に掲げています。私たちにとってAIは、単なる技術要素ではなく、ゲームに新しい楽しさをもたらすための重要な要素だと考えています。

 そのため、AIを制作効率の向上だけに活用するのではなく、「どうすればAIをゲームの本質的なおもしろさに組み込めるのか」をつねに模索し、プロトタイプを制作しては、社内で実際にプレイしながら意見を交わす。そうした取り組みが自然に行われています。

 現在は『MIMESIS』の開発に注力していますが、今後もAIをゲームの核となる楽しさに融合させ、新しい体験を生み出すゲーム作りに挑戦し続けていきたいと考えています。

――最後に日本のゲームファンにメッセージをお願いします。

開発
日本のゲームファンの皆さまに、『MIMESIS』についてお話しできる機会をいただき、とてもうれしく思っています。最近は、日本で行われている『MIMESIS』のライブ配信や、コミュニティに投稿されている感想などもひとつひとつ拝見しており、さまざまな形で楽しんでいただいていることに心から感謝しています。

 不信とユーモアが共存する『MIMESIS』を、より一層楽しいゲームにするため、現在も試行錯誤を重ねながら開発を進めています。これからも進化を続けていきますので、ぜひ引き続き見守っていただければ幸いです。ありがとうございました。

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