そして発表会の後日、『エンドフィールド』でレベルデザイナーを務めるRUA氏への単独インタビューも実施。
『アークナイツ』とのつながりについてや中国×水がテーマの新エリア“武陵”制作の経緯、工業&戦闘システムのバランス調整など、深堀りして訊いてみた。
RUA
『アークナイツ:エンドフィールド』のレベルデザイナー。文中はRUA。
『エンドフィールド』はIFでもパラレルでもなく直接的な未来編
工業システムについては、一部設計に参加していますが、おもにもうひとりのレベルデザイナーが専門的に担当しています。
――最初にいちファンとして聞いておきたいことがありまして……。本作は『アークナイツ』から遠い未来の話とのことですが、完全な続編なのでしょうか。それともIFストーリーや平行世界といった位置付けなのでしょうか。何かあった未来じゃないか不安で……。
じつは開発初期、『アークナイツ』からおおよそ500年後の設定だったんですが、いまではおおよそ100年後くらいという位置付けにしました。これは海猫さん(同作のプロデューサー)の考えによるものです。
『アークナイツ』の世界観には長命なキャラクターもいますので100年というギャップがあれば、物語としてもっとも可能性を広げられる展開が作れると考えました。100年以上生きるキャラクターもいますがそれも考えの範囲内です。
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そこから、中国にある水と緑豊かな江南地域がモチーフ候補に挙がり、竹林など中国特有の自然要素を多数取り込み、いまの武陵地域ができました。都市については、海猫さんがデザインした現代中国風と未来都市を融合した建築を採用しています。
このスタイルは、古代中国風が多いほかの作品ではあまり見られず、新鮮さがあると考えました。彼自身がもともと建築方面の出身だったので、設計が得意なことも背景にあります。
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私たちが求めるのは「こんなもの見たことがない」という感動です。まったく新しいことに挑戦しているので、モデル制作の進捗をアーティストに聞いたときには「もっと時間をくれ!」なんて、よく言われます(笑)。
――武陵は水を使った工業が発展しているものの、舞台となるタロIIは、基本的には未開拓の星ですよね。すると、環境や文化の概念があまり発展していないのではと思います。今後実装されるエリアでは、どのような文化形成、工業の発展が為されるのでしょうか。
今後実装の部分についてはあまり言えないですが、少しだけ。私たちがいまやろうとしているのは、たとえば将来的に実装する地域において”必ずしも特定の勢力に属さないエリアが存在し得る”ということです。タロIIは開拓地。ある地域が開拓される際は多くの国や組織の人が集まってコミュニティーが形成されていくのが自然だと思っています。
ひとつの場所に多種多様な人たちが集まってもらうには、どうすればいいのか。今後のストーリーを作っていくうえでやらきゃいけないことですね。
集成工業システムには無限のポテンシャルが秘められている
ただ、プレイヤーが工業システムを長時間プレイした後も続けていきたいのか、それとももっとサンドボックスのように、どこにでもなんでも置ける形のやりかたを求めてくるのか、まだわかりません。
プレイヤーの意見を参考にしながら細かく調整していくことになると思います。
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探索意欲の低下についても心配は不要です。たとえばフィールドにあるのは宝箱などではなく資源(鉱脈など)。そこに工業地帯を構築し開拓するといった楽しみ方が待っています。
プレイヤーに「この世界を改造できるからおもしろい」と感じさせる、工業を発展させるために自発的にいろいろな場所を探索したくなる、といった楽しみを提供したいと考えています。
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オープンワールドよりも狭いですが、逆に距離が近いことでお互いに影響し合っちゃうんですよ。あるコンテンツをマップに配置する際「ここに置いたの? 私もすぐ近くに配置したんだけど」みたいなことが起こってしまい、かえって効率が悪くなってしまったこともあります。作業スピードはちょっと上がったかもしれませんが、それ故の苦労もね……。
また、箱庭式にしたことでマップとストーリーのつながりが強くなりました。オープンワールドでよくあるのは、町など特定のエリアで話が進み、つぎのエリアに行くとさらに進むという作りです。ですが『エンドフィールド』は箱庭式にしたことでエリア間の密度が高くなりました。道中において、なにが起こってなにが展開されるのか、シナリオライターとレベルデザイナーによる入念な擦り合わせも重要になってきます。
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3Dモデルのキャラクターは約半年間にわたって制作
リボンをどうやってうまく運動させるか、どこに置いていいか、どこに置いちゃいけないか、徹底的に研究しました。こういうことに関しては、2Dと3Dのアーティストが「もっと小物を増やしたい」、「それは干渉してしまう」とよく意見を衝突させていますね。
もうひとつは体型です。大人や少年少女といったベースとなる体型を用意するのが一般的ですが、これでは物足りない。動作も同じようなものに見えてしまいますので、個性を出しにくい。
そのため、専用の移動・攻撃モーションはもちろんですが、歩くや走るといった共通の動き、手の振りかたなどにも、気づきにくい微妙な違いをキャラクターごとに調整しました。階段を上るときの動作なんかも全然違うんですよ。
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たいへんだったのはレーヴァテイン。ベータテストIからスキルも基本攻撃も全部作り直しました。私たちにとって、思い入れのあるキャラクターですからね。2025年5月から調整が始まり、完成したバージョンでも「このスキルが少し弱いかな」「ここの見た目があまりよくない」みたいな意見をずっとみんなで出し合いました。
また、必殺技使用後に通常攻撃のモーションが変わる部分にも力を入れましたので、ぜひ使ってみてください。
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最初は、アクション性よりもリアルタイムでありながら戦略性に比重を置いて、30~40くらいのデモを作りました。そして完成したのがテクニカルテストの戦闘です。テンポがゆっくりかつ、攻撃時にキャラクターが止まるような、ハーフターンベースに近い感じで調整しました。
しかし、プレイヤーからは「スタイリッシュさや華麗な表現が足りない」というフィードバックが多く寄せられる結果となりました。敵を選択するためにカメラが固定されることでも迫力が損なわれてしまいます。
そこで、操作感のベースをアクション寄りへと大きく方向転換。スキル(戦技)はクールタイムではなく、『ファイナルファンタジー』シリーズに登場する“ATBゲージ”のようなシステムを採用しています。これなら、戦略性が成立するなと手応えを感じましたね。
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連携技は戦技の方針が決まった後に追加しました。基本攻撃と戦技、必殺技だけでは物足りませんからね。『エンドフィールド』はひとりだけの戦闘ではなく、4人同時戦闘ですから、チームメンバーと連携する遊びかたもあったほうがいいなと。さらに、連携の戦略性を深めるために状態異常の仕様変更もしました。
――ベータテストIIでは物理・灼熱・寒冷・電磁・自然といった属性があります。一方『アークナイツ』では精神系など特殊なアーツもあります。今後、そういった新しい属性や状態異常の実装など戦略の拡張は予定していますか?
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こういったバトルコンテンツの実装は検討しているんですが、“一度使ったキャラクターはつぎのステージでは使えなくなる”といった、運営側がプレイヤーのパーティー編成を縛るシステムはやりたくありません。
以前に『アークナイツ』で似たようなプレイスタイルを導入してみたんですが、反響はよくありませんでした。そこから得たのが、“プレイヤーへの押しつけはよくない”という教訓です。
理想は、プレイヤーが「このキャラクターを使いたい、ここで使うのがベスト」と自発的に多くのキャラクターを楽しめること。いまは、その理想的なシステムを見つけるために模索中です。
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“直接的な交流はしないけど、人の温もりは感じる”システムが、いまのニーズに合っている
多くのプレイヤーは、直接的な交流をあまり好まない人が多いと考えています。私もそうですし、そういう人たちの心理はよくわかります。
そこで“直接的な交流はしないけど、人の温もりは感じる”というシステムが、昨今のプレイヤー層のニーズに合っていると考え、導入にいたりました。
将来的には『モンスターハンター』のような、みんなでいっしょに討伐するようなマルチプレイも検討していますが、みんなが気軽に遊べるようにすることや、実装のタイミングについては、まだ検討中です。
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リリース後、もしくは今後のアップデートで時間があれば追加される可能性はあります。
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もし今後、特定のキャラクターの音楽を出すときには、その所属の背景にある地域のものを参考にして制作するので、そこは問題ないと思っています。
地域によって音楽性は変えていきたいと思っています。たとえば、砂漠の地域を訪れたときには、アラビアンな雰囲気の音楽を作るということもあるでしょう。また、現実にあるモチーフを感じない『アークナイツ:エンドフィールド』独自の国もあったらいいなとは思っています。
――これまでのインタビューで『ファイナルファンタジー』や『デス・ストランディング』の名前が登場していますが、RUAさんはふだんどんなゲームをプレイされていますか? 制作上で影響を受けた作品も教えてください。
最近リメイクされた『空の軌跡 The 1st』もいいですね。クイックバトルと奥深いコマンドバトルを分けているところはとても参考になります。
工業システムにおいては『Factorio』、『Dyson Sphere Program』、『Satisfactory』といったゲームを開発チームみんなでプレイしました。とくに『Factorio』や『Satisfactory』の影響は大きいです。『マインクラフト』などのサンドボックス系のゲームもやりました。
――そういった名作の影響を受けつつも、『エンドフィールド』は新たな形として進んでいくのですね。
――ありがとうございました。














