人生を変える運命の出会いはあるのか? ゲームデベロッパーとパブリッシャーをつなぐリアルピッチイベント“GPB: Connect@BitSummit 2025”に潜入

by古屋陽一

人生を変える運命の出会いはあるのか? ゲームデベロッパーとパブリッシャーをつなぐリアルピッチイベント“GPB: Connect@BitSummit 2025”に潜入
 2025年7月18日~20日に、京都市勧業館みやこめっせにて開催された日本最大級のインディーゲームの祭典BitSummit the 13th Summer of Yokai。

 毎年恒例となったBitSummitの取材に赴いた記者は、会期中の夜に同じくみやこめっせで行われた集英社主催によるイベントの場に、昨年に続き足を運んでいた。そう“GPB: Connect@BitSummit 2025”だ。

 ご存じでない方もいらっしゃると思うので説明しておくと、“GPB”とは“Game Pitch Base”の略で、集英社が運営しているゲームデベロッパーとパブリッシャーをつなぐピッチプラットフォームのこと。詳細は“Game Pitch Base”のサイトに詳しいが、デベロッパーが制作中のゲームの内容やビジネスプランなどをまとめた“ピッチデッキ”を公開し、パブリッシャーはそこから気になるタイトルを探せるというサービスだ。
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 “ピッチ”というのは、そもそもビジネス的には“短い時間に簡潔な言葉で相手に提案する”こと。いわば短いプレゼンだ。デベロッパーがみずからのタイトルをパブリッシャーにアピールする場が“Game Pitch Base”となる。

 それを、デベロッパーやパブリッシャーが集う場でリアルに行ってしまおうというのが“GPB: Connect@BitSummit”で、昨年(2024年)初開催された同イベントを訪れた記者は、とても興味深く取材させていただき、今年(2025年)も行われるというので、無理を言って参加させていただいた次第。会場は、昨年同様BitSummitと同じ京都市勧業館みやこめっせの地下1階にあるイベントホール。
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“GPB: Connect@BitSummit 2025”開催にあたり集英社ゲームズの森通治氏が挨拶。
 2回目となる“GPB: Connect@BitSummit”でピッチを行うのは、事前にエントリーしていた国内外の18社(者)。昨年同様個人や小規模なグループから法人までバラエティーに富んでいる。聞けばBitSummitには参加せずに、“GPB: Connect@BitSummit”のためだけに京都に来たという方もいるというから相当気合が入っている。対するパブリッシャーはBitSummitに出展している企業を中心とした24社。

 イベントの流れは、昨年同様以下の手順で進行した。

  1. デベロッパーがステージでスクリーンを使い、5分程度のピッチを行う。
  2. テーブルに移り、興味を抱いてくれたパブリッシャーに開発中のバージョンなどを見せながら説明する。

 昨年と違うのは、デベロッパーには専用のテーブルが設けられていて、デベロッパーはピッチが終わると自分の席に戻り、タイトルに興味を持ったパブリッシャーが来てくれたら個別説明に入るという点。昨年は完全フリーテーブル制になっていて、ピッチが終わるとデベロッパーとパブリッシャーは任意の席についてミーティングという段取りになっていたのだが、いささか慌ただしかった。

 それが今年はピッチを終えたデベロッパーが自席に戻って座っていれば、タイトルのことが気になったパブリッシャーがデベロッパーの席に訪れて、おもむろに挨拶を交わしてお打ち合わせ……というスタイルに変更されたのだ。
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デベロッパーの席にパブリッシャーが挨拶にいくというスタイルになった。
 これに関して端から見ている限りでは、デベロッパー、パブリッシャーともに、よりスムーズにミーティングに移行できているなあという印象。「さながら屋台村のようだなあ。人気のある屋台とそうでない屋台がてきめんにわかってしまいそう……」という感じだが、引きのあるプロジェクトとそうでないプロジェクトが出てしまうのはエンタメ産業の厳然たる事実。とはいえ、どの席も頻繁にミーティングが重ねられていたように思う。

 シャイで引っ込み思案な記者は人前でスピーチしたりプレゼンするのがあまり得意ではなく、こういうピッチの場に立たされたら確実に緊張するだろうなあ……と想像するが、参加した開発者の皆さんは堂々としたもの。己のクリエイティブの魅力をしっかりと伝えたいという思いが感じ取れた。
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ちなみにピッチの順番はエントリーの先着順。これは、早めにピッチを行う人ほどミーティングの時間が取れることになるので、“早いもの勝ち”というルールを明示することで少しでも公平性を保つため、とのこと。
 今年もせっかくの機会だからということで、記者たちは(記者と“GPB: Connect@BitSummit”をサポートする広報のNさん)は、会場に来ていたデベロッパーやパブリッシャーに、“GPB: Connect@BitSummit”に直撃取材を敢行。このイベントに参加した理由や自作に対する思いなどを聞いてみた。

 なお、昨年2024年に行われた“GPB: Connect@BitSummit”では、把握できているところだと4組がこのイベントを通してマッチングされたとのこと。今年はどうなるのかも気になるところだ。
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【デベロッパー】

『紙装甲主人公と不死身のカエル』(シロ氏)「勉強する場だと思って参加した」

 『紙装甲主人公と不死身のカエル』は、主人公が不死身のカエルと協力しながら敵の弾幕を避けたり防いだりしてコースをクリアーしていく2Dアクションゲーム。“紙装甲主人公”とタイトルにある通り、主人公は極めて打たれ弱く、音楽に合わせてアクションをすることで、より強力な攻撃をくり出せるようになる。
 開発を手掛けるのは個人開発者のシロ氏。ピッチのトップバッターということで相当緊張したとのことだが、“GPB: Connect@BitSummit”に参加した理由を聞いてみると……。

 「『紙装甲主人公と不死身のカエル』の開発に着手したときに、より多くの人に遊んでほしいという思いもあり、いつかNintendo Switchで出したいと思っていたんですね。とはいえ個人開発ではなかなかきびしいなと考えていたところに、“パブリッシャーさんとお話ができる場がある”というふうにうかがってエントリーしました」(シロ氏)

 とのこと。『紙装甲主人公と不死身のカエル』は、NHKが主催する“神ゲー創造主エボリューション2024”で“サイゲームス賞”と“神ゲーイベント大賞”、“優秀賞”を受賞しており、業界からの評価も高い。今回のBitSummitにも、“神ゲー創造主エボリューション”ブースから出展しており、東京ゲームショウ2024にも出ていたという、いわば注目度の高いタイトルだ。パブリッシャーから引く手あまたではないかと想像されるのだが……。

 「まったくないとはもちろん言いません。ありがたいことにお声掛けはしていただいているのですが、パブリッシャーさんからのお話の内容を理解できるほど、いま僕の中に知識がまったくないんです。リリースするためには何をすればいいのかということが、まだ雲をつかむような話で……。このまま交渉をしてもお話にならないくらい、僕が無知無学な状態です。ですので、こういった場所でいろいろなお話を聞かせていただいて、何をすれば僕は目標までたどり着けるのか、勉強のために来たんです」(シロ氏)

 と、率直なお答え。「“GPB: Connect@BitSummit”のような催しは、願ってもいないような機会です!」とのこと。
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Nintendo Switch版への移植も考えているとのこと。
 すでに何人かのパブリッシャーと話はしたそうだが、「皆さん温かいです」とシロ氏。「いろいろと知らないことは教えてくださいますし、必要な段取りについてもご教示いただきました。なかにはゲームがよくなるアイデアをくださった方もいらっしゃったんですよ! 会場で出展されているのを聞いて、遊んでくださったようです。“ここをこうしたらもっとおもしろくなるのではないかと思ったんです”みたいなことをおっしゃってくださって。今日ホテルに帰ったらさっそく作ろうと思っています」とのこと。

 BitSummitで開いている“Game Pitch Base”ということもあって、思わぬ広がりを生んでいるようだ。

 最後にシロ氏は、「僕と関わって損をしたということはやっぱり起きてほしくないんです。どこまでお願いすればご迷惑がかからないのか、そしてどこまで自分でやればクオリティーが担保できるのか、話し合いしながらこの後は決まっていくのかなと思っています」と語った。
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『DRIFTED ドリフテッド』(UrbanFox)「自作のことを考えるいい機会になった」

 おつぎにお話をうかったのは、UrbanFoxのフーチー氏。フーチー氏はもともとはイギリスのゲーム会社で働いていたのだが、日本語を勉強したいとの思いからコロナ禍の最中に会社を辞めて日本へ来たという。

 日本に来て日本語の勉強をしながら、「やっぱりゲームが好きなので、ゲームを作りたい!」との思いからゲームを作り始め、いま手掛けているのが紙飛行機をモチーフにした『
DRIFTED ドリフテッド』。ちょうど紙飛行機の物理演算を試してみて、遊び心地がいいと思い着手したタイトルだ。
 『DRIFTED』は東京ゲームショウ2024やgamescom 2025などに出展。注目度も高かったと思われるが、まだプロトタイプの段階で開発に打ち込んでいたこともあり、本腰を入れてパブリッシャー探しをしておらず、そろそろパブリッシャー探しを本格化していこうと思っているのだという。

 ちなみに、フーチー氏は『DRIFTED』と合わせて、一人称視点のナラティブサスペンスゲーム『
THE SCREEN』を開発中。同作は“神ゲー創造主エボリューション”の“ゲームプライズオブジャパン”で2025年度“ファイナリスト 8作品”に選ばれており、昨年のBitSummit Driftでは“神ゲー創造主エボリューション”で出展したそうだが、今回はビジネスチケットで訪れたという。「いろいろなパブリッシャーさんを知りたかったのと、ほかの開発者さんと会いたかった」というのがその理由。

 フーチー氏は「自分はこれまで開発中心で取り組んできて、しかもひとりでやってきたので、正直準備不足です。パブリッシャー探しも初めてなので、経験不足でもあります。ピッチの経験もほとんどないですし……」と語るが、何事も経験ということで、“GPB: Connect@BitSummit”は貴重な機会と言えそう。
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 “GPB: Connect@BitSummit”に参加してどう思うか聞いてみたところ「よかったです! これまではゲーム開発に没頭してきましたが、いざ自作をプレゼンしようとなったときにあまり考えていなかったので、冷静に自作を判断するきっかけになりました。本作をずっと開発しているわけにもいかないので、締め切り日やリリース日を考えないといけません。今後のスケジュールを考えるうえでもいい機会にもなりました」とのことで、『DRIFTED』のことを考えるうえでは絶好のタイミングになったようだ。
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『不可思議メメメは寝ていたい』(LabyLab)「ピッチも大いなる勉強の場」

 「今回の“GPB: Connect@BitSummit”に参加した理由は、パブリッシャーを探したかったのがひとつと、自分たちと似たような状況の開発者がどんなピッチをするのがちょっと見てみたくて。ゲームが好きなので、どんなふうにゲームを見せるのか興味が湧いたんです」と語るのは、LabyLabのエンジニア・ディレクターのナマセ氏とプランナーのayaka氏。
 おふたりが所属するLabyLabが開発中のタイトル『不可思議メメメは寝ていたい』は“天才ハカセ”が人々を癒やしの眠りに誘う羊“不可思議メメメ”を開発して、それを世界中の人にばらまく物語が展開されるといういわば拡大再生産ゲームだ。

 ナマセ氏はもともとゲーム会社のエンジニアリングとして働いていたが、「いまのゲームって規模がどんどん大きくなっていて分業体制になっているので、自分で“ゼロイチ”から作ってみたくて」とのこと。そしていまの会社に移り、本作の開発に取り組んでいるという。ふだんはナマセ氏とデザイナーの2名が中心となって開発を進めているそうだ。いまの会社はゲーム専門というわけではないが、「“インディーゲーム開発部署”を若手主導で立ち上げ開発しています。もちろん、社長公認です(笑)」(ayaka氏)とのこと。
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 参加しての感想を聞いてみると、「いろいろな企業さんからお話をいただいたりして、初めての機会なのですごくびっくりしつつ、ためになっています」(ナマセ氏)と初々しいお返事。パブリッシャーに対しては、「自分たちはゲームを作り始めたばかりで、とくに知名度がぜんぜん足りていないので、そこをサポートしてくださるパブリッシャーさんを探しています」(ナマセ氏)という。

 ちなみに、LabyLabはインディーゲームのインキュベータープログラムiGiに参加している。iGiではピッチの練習のプログラムもあるそうで、そこでの成果もあるのではという。「いろいろなパブリッシャーの方に見ていただく、“GPB: Connect@BitSummit”のような機会は、ありがたいです」(ナマセ氏)とのことだ。

 “ゼロイチ”からゲームを作るの経験はまだ少ないというLabyLabだが、ピッチも大いなる勉強の場になっているようだ。
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エンジニア・ディレクターのナマセ氏(左)とプランナーのayaka氏(右)。

【パブリッシャー】

あまた「優れたインディーゲームのことを知る絶好の機会」

 ここからは、“GPB: Connect@BitSummit”に参加していた、パブリッシャーサイドの意見をお届けしよう。まずはあまたの代表取締役会長兼社長 高橋宏典氏。『Last Labyrinth』などの自社パブリッシングタイトルや受注タイトルなど、幅広く展開しているあまたは、近年インディーゲームのサポートにも積極的に取り組んでいる開発スタジオだ。
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――今回、“GPB: Connect@BitSummit”に参加した理由を教えてください。

高橋
 あまたは、まだ規模は小さいのですが、インディゲームをパブリッシングするAMATA Gamesを展開しています。現状はSteamで発売されているタイトルをコンソールに移植することが多いのですが、今後はSteamからごいっしょできるタイトルを増やしていこうと考えています。

 それで今回の“GPB: Connect@BitSummit”のことをおうかがいして、これからごいっしょできるタイトルを見つけていくきっかけになればということで参加しました。

――BitSummitに来たのもタイトルを探すために?

高橋
 そうですね。BitSummitはインディーゲームのイベントとして日本では最大規模で歴史も長いですし、デベロッパーやパブリッシャーなど、世界中からいろいろな人が集まってきます。すごく雰囲気もいいので大好きですね。

――そんなBitSummitで開催される“GPB: Connect@BitSummit”についてはどのような印象を?

高橋
 主催する集英社さんは徳があるなと(笑)。いろいろなパブリッシャーさんを呼んで、デベロッパーさんとマッチングする機会を提供してくれるというのはありがたいですね。

 ご存じの通り、BitSummitではたくさんのゲームが出展されるのですが、全部見切れるかというとさすがにそうはいきません。そんななか、こうしたピッチイベントがあると、1タイトル5分間という短い時間ではありますが、そのタイトルのことを知ることができます。あと、デベロッパーさんたちがどのようなコンセプトでタイトルを作っているのかを端的に聞けるので、こういったイベントはすごくありがたいです。

――実際に参加してみていかがでした?

高橋
 皆さんピッチの練習をすごくされていて参加されているのだろなあと思いました。しっかり準備されていますね。ラインアップもかなりバラエティーに富んでいます。パブリッシャーさんも多彩で、パブリッシャーごとにカラーがあるので、マッチする部分も多そうです。

――あまた的にも、「うちに合うだろうな」というタイトルはありました?

高橋
 そうですね。お声かけしたタイトルもあります。

――それはどんなタイトルで……?

高橋
 もちろん内緒です(笑)。

NEOWIZゲームオン「作り手のやりたいことを確認する場でもあった」

 つぎにお話を聞いたのはNEOWIZゲームオンの事業開発チーム チーム長 杉村知顕氏。社名変更に合わせてインディーゲームに注力することを明らかにしている同社はBitSummitに出展。インディーゲームデベロッパーにアピーする意味も込めて“GPB: Connect@BitSummit”に参加した。
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――今回、“GPB: Connect@BitSummit”に参加した理由を教えてください。

杉村
 ゲームオンは2025年7月1日付けをもって、NEOWIZゲームオンに社名を変更しました。これまで国内におけるゲームオンという企業のイメージは、PCオンライン、モバイルサービスという側面が強いかと思います。ですが現在は本社NEOWIZとともに、日本国内において、“クオリティーの高いコンソールゲームにおいて、さまざまな形で協業を図る”ということと、“インディーゲームの領域でも、優秀なクリエイターを探す”という大きな目標を掲げて活動しています

 その活動の一環として、今回NEOWIZとして初めてBitSummitに出展させていただきまして、その流れで、会期中に開催されている“GPB: Connect@BitSummit”も絶好の機会ということで参加させていただきました。

――参加してみていかがでしたか?

杉村
 有意義でした。

 じつはお目当てのタイトルがあったのですが、それ以外に気になるタイトルもありましたね。

 NEOWIZゲームオンの方針として、ナラティブ重視なんです。ストーリーがしっかりとしていて、広がりがあるような世界観を有しているという。ゲームメカニクスがユニークでしっかりとしているというのは、ゲームだから当然の前提としてあって、一見わかりづらいようなタイトルも、もしかしたらクリエイターとしては明確な考えがあって、ゲームとしても何かメッセージがあるのではないかということを確認するための場でもありました。

――作り手のやりたいことを確認する場でもあったということですね。

杉村
 ちなみにNEOWIZゲームオンでは、ナラティブなインディーゲームに特化したコンテスト“NEOWIZ QUEST”の作品募集を2025年3月から開始しています。単に“新しいゲームを送ってください”、“おもしろいゲームを送ってください”ではなく、ナラティブでゲームを表現したいクリエイターからの作品を待っています。募集期間は2026年1月16日(金) 23:59までと約1年におよぶ長さなのですが、それだけ本腰を入れてインディーゲームに取り組んでいるということでもあります。

 なんてことを適宜アピールしながらクリエイターさんとは打ち合わせをさせていただきました(笑)。

――逆に営業活動の側面もあったのですね(笑)。

集英社ゲームズ「重視しているのは“尖り”と“食らいつき”」

 集英社ゲームズは、“GPB: Connect@BitSummit”にいちパブリッシャーとして参加。ほかパブリッシャーとフラットな関係で、ピッチをしたデベロッパーに相対している。プロデューサーを務める福田匠氏にお話を聞いた。
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――2回目の実施となりますが、“GPB: Connect@BitSummit”に参加してみていかがでしたか?

福田
 昨年に勝るとも劣らないほどのクオリティーの高いタイトルでよかったなと考えています。

 昨年からの違いということで言うと、これはBitSummit全体にも当てはまることかなとは思うのですが、海外の皆さんがより多く参加されていますよね。BitSummitに対する海外の方からの注目度がさらに高まってきているのかなと。それに合わせて、“GPB: Connect@BitSummit”もけっこう国際色豊かなイベントになってきた感じはします。

――ピッチには日本語を話さない方やAIに任せたりという方もいらっしゃいましたね。皆さん工夫してプレゼンしていました。

福田
 ここに出ることで日本のパブリッシャーとつながりたいという方もいらっしゃるようです。一方で、パブリッシャーサイドも国際色豊かになってきました。昨年の“GPB: Connect@BitSummit”で、把握しているだけでも4件マッチングが成功したことで、グローバルな評価をもたらした部分があるのかもしれないです。

――ピッチもバラエティーに富んでいた印象がありますね。

福田
 それは実際あるかなと思います。これまでのインディーゲームが、これ自体は悪いというわけではまったくないのですが、わりと自分の好きなものを作るという点にフォーカスしていたのに対して、より評価されるもの、売れるようなものを作るという目線を持ち始めたところはあるのかなと。

――自分の作りたいものだけを作っていればいいというわけにはいかないということでしょうか。

福田
 それが悪いというわけではぜんぜんないとは思います。ゲームというものは自己表現の一種なので。一方で、「自分の作ったものをより世界に広げていきたい」だったり、「より多くの人に手に取ってみてもらいたい」という思いでいる方のほうが増えてきているのかなと。

 こういった場で自分のタイトルを宣伝して、パブリッシャーを獲得して、より多くの人に知ってもらいたいと考える方が増えてきているという実感はあります。

――ちなみに、デベロッパーさんと相対するにあたって、とくにどんな点に注目しているのですか?

福田
 ひとつは、いまの段階で見るものとしては、やっぱり作家性ですね。その人ならではの“尖り”というか、その人にしか表現できない何かがあるなと感じられるところ。

――それはピッチで判断するのですか?

福田
 そうですね。あとはビジュアルとかゲームシステムとか、そういったところに「あ、これはこの人たちにしか表現できないな」という、何が“尖り”みたいなものが感じられるかというところと、あとは、たとえば話してみて、どう食らいついてきてくれるかとか……。意見を受け入れて、どんどんいいものにしていきたいという方向性の方のほうが、つぎにつなげていきやすいだろうなと感じるところはあります。
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――デベロッパーさんとのやり取りを経て、どのような気付きがありましたか?

福田
 大きくふたつの側面があると思っています。まずは大前提としてゲームがおもしろいこと。そして「このゲームおもしろそう」だと思わせること。この両面がそなわっているものが、「このゲームよさそう」と思わせて、今後も長くお話をしていきたいと思わせてくれますね。

 逆にいうと、そういう勘どころのある方とは、よりコミュニケーションがうまくいくように思います。つぎのステップに、より話が進みやすいですね。

 それがゲームそのものの話で、もうひとつがやはり精神面になるのですが、“食らいつき”でしょうか。

――“食らいつき”ですか?

福田
 はい。いろいろな相談をさせていただく中で、「じゃあ、これはどうですか?」といった感じで食らいついてご提案いただける方は、作品をブラッシュアップして、よりいい企画にしていく過程で、話が進みやすかったと思います。

――へこたれない精神とか、そんな感じなのでしょうか。

福田
 いい意味での柔軟さみたいなところはあるかなと思います。実際のところ、けっこうこれは難しいバランスかなとは思います。作家性を大事にしつつ、他者からの客観的な評価や意見にしっかりと耳を傾けて、「では、こういう風にしたらもっとよりよくできる」というところを感じてもらえるか。

 “自分の作りたいものだけを作る”ということは、もちろんそれ自体はゲームの表現としていいのかなとは思います。ただ、我々パブリッシャーとしては、“この世界の人に評価されるものを作っていきたい”と考えているので、“さらにいいものを作っていく”という発想を持った、柔軟性を判断します。

――今回参加してみて、手応えはいかがですか?

福田
 さすがにバイネームではお話できないですが、いいなと思ったタイトルは複数ありました。今後継続的にお話し合いを継続していきたいと考えています。

【主催者】

ゲームクリエイターズCAMP「反響の大きさに手応えを感じている」

 最後に、“GPB: Connect@BitSummit”を主催するゲームクリエイターズCAMPの堀切舜哉氏に話を聞いた。昨年同様今年も司会を担当するなど、フル回転していた堀切氏だが、イベントを終えての手応えは?
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――“GPB: Connect@BitSummit”を終えていかがですか?

堀切
 今年はデベロッパー向けのテーブルを用意する都合上、ピッチは昨年の20組から18組に減らしたのですが、応募数としては昨年より多かったので、倍率が上がって反響の大きさを感じています。タイトルのクオリティーも上がったと参加されたパブリッシャーの方やパートナーの方もおっしゃていたので、よかったと思っています。

――昨年と登壇者が違うので、一概には言えないと思うのですが、ピッチもより洗練されてきたような気がしますね。

堀切
 そうですね。よりバリエーションが増えたというか、より個性的な人が増えたという肌感はありましたね。海外の方とかも増えました。

――デベロッパー向けのテーブルを用意したとのことですが、昨年の実施を経て調整したのですね。

堀切
 そうですね。昨年はフリースペースだったので、「声をかけに行きづらい」「誰がどのタイトルの人かわかりづらい」というご意見があり、今年はタイトルごとにテーブルを用意して、パブリッシャーさんは気になるタイトルのところに話しに行っていただくというわかりやすい構成にしました。

 あと、“GPB: Connect@BitSummit”は、とにかくタイトルを多くしたいので、ピッチと商談が同時進行になっているのですが、昨年はピッチのステージと商談エリアが近くて、商談時の声が聞き取りづらかったんです。それで、今年は場所を分けたいということで、デベロッパーのテーブルがある商談エリアとピッチのエリアをなるべく離すようにしました。

――昨年の実施で、把握できているだけでも4件のマッチングがあったとのことですが、“GPB: Connect@BitSummit”の成果は着々と上がっている感じでしょうか。

堀切
 そうですね。別に報告の義務はないので、「これも決まったんですね」みたいな、我々が把握できていないところでマッチングしたタイトルもけっこうあったりして、反響の大きさを感じています。

――ピッチの中で気になるタイトルとかありました?

堀切
 いろいろありました。「何年かけて作っているんだろう」みたいなタイトルもありましたし、海外から来たタイトルって、日本のほかのインディーゲームイベントでは、あまり見かけないので「これ初めて見た。しかもすごいなあ」というタイトルと出合えるのは、BitSummitに合わせて実施したからこそみたいなところはありますね。

――“GPB: Connect@BitSummit”は今後も継続していくのですね?

堀切
 はい。継続していきたいですね。

――昨年お話をうかがったときは、BitSummit以外でも……みたいなお話もありましたがいかがですか?

堀切
 そうですね。やるとしたら東京ゲームショウかなという話はあるのですが、なかなか手が回らず……。ピッチを行うタイトルもインディーゲームが多いので、いまのところはBitSummitかなと。会場的にもやりやすいですからね。

[おまけ]吉田修平氏「画期的な取り組み」

 会場には、もとソニー・インタラクティブエンタテインメントで、現在はインディーディベロッパーとパブリッシャーのアドバイザーを務める株式会社yospの吉田修平氏も顔を見せていた。インディーゲームに対する造詣も深い吉田氏だが、“GPB: Connect@BitSummit”について聞いてみた。
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 「世界ではけっこうあるのですが、日本ではほとんどなかったので、こういう場が用意されたということ自体が画期的です。集英社さんが率先して、ほかのパブリッシャーさんに門戸を開いているということで、すごくいいことをやられているなと思います。

 集まっていたインディーゲームは粒揃いのタイトルが揃っていましたね。デベロッパーさんにとっても、パブリッシャーさんにとってもいいイベントですよね。多くのマッチングが成立することを期待しています」

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