先日マイクロソフトにより行われた配信番組“Developer_Direct 2025”にて、『NINJA GAIDEN 4 』がサプライズ発表された。本作は、コーエーテクモゲームスのハイスピード忍者アクション『NINJA GAIDEN 』シリーズの最新作。2025年秋発売を予定しており、対応プラットフォームはXbox Series X|S、Microsoft Store、Steam、プレイステーション5となる。Xbox Game Passでもラインアップされる。 約13年ぶりとなるナンバリング最新作は、これまでシリーズを手掛けてきたコーエーテクモゲームスのTeam NINJAに加え、『ベヨネッタ 』シリーズや『ニーア オートマタ 』など名作アクションゲームを数多く産み出してきたプラチナゲームズが開発に参加。両社の協業によるタイトルとなる。 VIDEO
そんな本作について、コーエーテクモゲームスTeam NINJA所属の安田文彦プロデューサーと、プラチナゲームズ 中尾裕治プロデューサー兼ディレクターへの合同インタビューが実施。本作の開発経緯や両社がタッグを組むこととなった経緯、新主人公・ヤクモや引き続き登場するリュウ・ハヤブサのアクションなどについて明かされた。ここでは、その模様をお届けする。
安田文彦氏(やすだ ふみひこ・写真左)
コーエーテクモゲームス執行役員、Team NINJAブランド長、NINJA GAIDEN IP(シリーズ)プロデューサー。本作ではプロデューサーとして、Team NINJAスタジオ開発統括を担当している。
2006年テクモ入社 (2010年コーエーテクモゲームスに合併)。『NINJA GAIDEN』シリーズの企画/ディレクターを務めた後、『仁王』シリーズのディレクター、『Rise of the Ronin』開発プロデューサー/ディレクターなどを経て、現職。
中尾裕治氏(なかお ゆうじ・写真右)
プラチナゲームズ プロデューサー兼ディレクター。前職でディレクターとして複数のキャラクター版権ゲームに携わった後、プラチナゲームズに入社し、プロデューサーに転向。
プラチナゲームズ初の自社パブリッシングタイトルとなる『The Wonderful 101: Remastered』のプロデューサーを務め、『ソルクレスタ』でもコ・プロデューサーを担当。
『ベヨネッタ3』ではプロデューサーとしてプロジェクトを統括し、また開発部門のマネージャーとして後進の育成にも取り組んでいる。
新主人公・ヤクモと超忍リュウ・ハヤブサは、それぞれ目的があり対立 ――まずは、『NINJA GAIDEN 4』の開発の経緯を聞かせてください。なぜ、プラチナゲームズと協業することとなったのでしょうか?
安田
『NINJA GAIDEN』は10数年ナンバリングタイトルがストップしていた状態でしたので、弊社、そしてTeam NINJAとしてもずっと新作を作りたいと検討を続けておりました。そして、我々はずっと開発を続けてはいましたが、10数年ぶりの新作ということで、『ベヨネッタ』シリーズや『ニーア オートマタ』など素晴らしいアクションゲームを作られてきたプラチナゲームズさんとぜひ協業させていただきたいとも考えていました。 そんな中で、弊社の鯉沼(※久史氏。コーエーテクモゲームス代表取締役社長)とプラチナゲームズさんの稲葉敦志社長が同世代で仲がよいというご縁がありましたので、プロジェクトについてお話させていただき、マイクロソフトのフィル・スペンサーさんにもご相談して、「ぜひ3社で新作を作りましょう」とご快諾いただけましたので、正式にプロジェクトを発足させることとなりました。――もともと、『NINJA GAIDEN』シリーズのナンバリング新作を作りたいと考えていたのですね。
安田
はい。ただ、弊社のTeam NINJAでは、『仁王 』シリーズや『Wo Long: Fallen Dynasty 』、『Rise of the Ronin 』などさまざまなタイトルを制作していましたので、なかなか開発ラインの確保も難しかったという側面もありました。 ――プロジェクトが発足したのは何年前なのですか? 安田
5年以上前だったと思います。 ――今回はマイクロソフトがパブリッシングを担当するとのことですが、プレイステーションでも販売されるのですね。 マイクロソフト担当者 この伝説的なフランチャイズの新たな展開ということで、プレイステーションハードを所持している方の中にも当然ファンがいらっしゃると思いましたので、幅広く展開することとなりました。 ――開発自体は、どのように進行していったのですか?
安田
まずは、企画をどういった形にするかを決めました。大きな点としては、シリーズの価値をしっかり伝えられるナンバリング新作を両社で作ることを重視すると定めています。その過程で、プラチナゲームズさんから新主人公のご提案がありました。 前作からかなり年月も経過していますし、ゲームとしても、リュウ・ハヤブサはマスター忍者として完成しているキャラクターでしたので、若いキャラクターでプレイヤーの皆さんにも没入していただきやすい形で、とのご提案でした。 我々も素晴らしいアイデアだと感じましたので、今回は新主人公のヤクモを迎えることにしました。ただ、リュウ・ハヤブサはタイトル発表時には登場すべきだという我々の思いもありましたので、今回の映像などにも登場させています。 ――リュウ・ハヤブサはプレイアブルキャラクターとして登場するのですか?
中尾
プレイアブルキャラクターとして登場します。詳しくは続報をお待ちいただければと思いますが、ヤクモとリュウ・ハヤブサともにそれぞれ目的や物語があり敵と戦っていくという流れがあります。その中で、映像にもあった通り、ヤクモとリュウ・ハヤブサが対決するシーンもありますので、なぜそうなったのか、という点なども今後の情報公開でご期待いただけるかと考えております。
――ふたりは対立しているような関係性になるのですね。
中尾
そうですね。リュウは隼一族の忍びですが、ヤクモはそれに対をなす鴉一門の忍びとなっています。そのため、とある理由でリュウと敵対せざるを得ない状況になっていくというストーリーが展開されます。 その流れの中で、ヤクモはまだ若くてこれから成長していく忍びですので、忍者の頂点になっているリュウ・ハヤブサと対立して、彼を超えるために、自分も新たな超忍になるためにがんばっていくという形でふたりの物語がクロスしていきます。 ――新主人公を起用することについて、ユーザーに受け入れてもらえるかといった不安はなかったのですか?
中尾
不安はありました。リュウ・ハヤブサが『NINJA GAIDEN』というIPでアイコンのように存在していますし、我々プラチナゲームズとしてもすごくリスペクトしています。 ですので、ヤクモは新主人公としてすげ替わったのではなく、リュウ・ハヤブサという伝説的な忍者に対して、新しい忍者を登場させることで、ふたりの物語が織り成していく点を楽しんでいただきたいというところが、我々のメッセージとしてあります。双方がしっかりと立っていますので、これまでのファンの方にも受け入れていただけたらうれしいです。――何か、リュウ・ハヤブサがコーエーテクモゲームスの象徴とするならば、ヤクモはプラチナゲームズの象徴とも言えそうですね。
中尾
そういった成分も入れてはいますね。
安田
おっしゃっていましたよね。「任務は達成する。邪魔はするな」と。 一同 (笑)。 ――構図としては似ているところはありますよね。偉大なシリーズがある中で、それを乗り越える新しい作品を打ち立てていくような。
中尾
おっしゃる通りで、ふたりが協力していくというよりは、ヤクモが挑戦していく中で、そこにリュウが立ちはだかる。そうして切磋琢磨していくような絵面になるようにしています。 ――2社で協業されるにあたって、たとえばプラチナゲームズの方から、いっしょに作るなら『NINJA GAIDEN』を、とタイトルが挙がったりはしたのでしょうか?
安田
詳細はわからないですが、一度稲葉さんにお会いした際に、正式なナンバリングシリーズとして制作をしたいというお話は伺っていましたね。 ですので、リュウ・ハヤブサを引き続き主人公に据えたナンバリング新作を作る選択肢もあったとは思いますが、そこはプラチナゲームズさんの要望でもありましたし、我々としてもしっかりと新しいものを作っていく必要があると考えていましたので、新主人公が活躍する今回の形となりました。
アクションゲームを得意とする両社の協業により手触りも一層深まる ――Team NINJAとプラチナゲームズともにアクションゲームを得意とする印象があり、その両社が協業するのはとても楽しみなのですが、一方で、Team NINJAがプラチナゲームズに力を借りる必要があったのかは疑問に感じています。そのあたりはいかがでしょうか?
安田
我々もこれまで他社のIPを預からせていただいて作品を制作したことがありますし、逆に我々からお願いして作っていただいた経験があります。そこからいろいろな学びを得られましたので、今回、我々も大好きなアクションゲームの数々を制作されているプラチナゲームズさんとぜひごいっしょさせていただきたいという思いがあり、協業させていただくことになりました。
中尾
今回はご依頼いただいて制作している側面はありますが、実際のところ、我々としてはふたつのアクションゲームの会社が協力して、コーエーテクモゲームスさんの伝説的なIPを最強にしていこうという気持ちがとても強いです。ですので、代わりに作っているのではなく、いっしょに作っている感覚をつねに感じています。
安田
Team NINJAからは私がプロデューサーとして入っていますし、『NINJA GAIDEN:マスターコレクション 』のプロデューサーの柴田剛平も参加しています。ほかにも、 『Wo Long: Fallen Dynasty』のディレクターを務めたディレクターの平山正和も加わっていたりと、うちもかなり深く入らせていただいています。Team NINJAとしても、新作にしっかりと取り組んでいますね。 ――では、まさに忍者の隠し里に新しい血が加わったような。 安田
そうですね、Team NINJAはあまりオープンではないチームではあるかもしれませんが(笑)、今回はすごく刺激をいただいています。 我々はずっと作り続けていたぶん、変えられないところもあったと思います。そこを皆さんの視点で新しいご提案をいただけたりしました。あとは、プラチナゲームズさんのゲームはケレン味があり、直感的な触り心地のよいアクションが魅力ですが、それらも存分に表現してくださっています。そういった点でも、ともに開発させていただいて、よい刺激をたくさん受けていますね。 ――両社の協業によって、新鮮だった点、それぞれの作品に活かされているポイントなどはほかにもありますか?
中尾
私が実際にやり取りをさせていただく中でいちばん感じたのが、同じアクションゲームを作る会社でも、アクションの手触り感を表現するにあたって重要視しているところがそれぞれでまったく異なる点です。そこはプラチナゲームズとしても、とても勉強になりました。 そうしたコーエーテクモゲームスさんのよさが 『NINJA GAIDEN』が長く愛されている部分でもありますので、その点は活かしつつ、プラチナゲームズらしいド派手な表現を織り交ぜております。両社のよさを存分に発現した作品にできるという点は、進めていく中で確信しましたね。
安田
『NINJA GAIDEN』はピュアなアクションゲームとして、手触りはもちろん、“滅却”というシステムなどで、プレイヤーがカタルシスを感じることができるように作っています。そういった、プレイヤーがアクションゲームでいちばん気持ちがよいと感じるところを、プラチナゲームズさんはケレン味も活用しながら表現されています。我々だけでは達成できなかった点まで踏み込んで開発されていますし、それがゲームにも表れていて、今回の映像の反応を見ていてもその点を感じ取れます。すごくよい形で開発できているのかなと感じています。
中尾
お互いのよさをうまくミックスできているという感覚がありますね。
安田
そうですよね。制作への考えかたが違っているところは当然ありますが、中尾さんがもともと 『NINJA GAIDEN』の大ファンとのことですので、我々の思いをくみ取っていただけていると言いますか、言語化しづらい部分も感じ取っていただけていて。そこを形にしてくださって、一層作品を改善していただいているので、すごくありがたく感じています。よい関係性なのかなと。 ――『NINJA GAIDEN』には途切れない緊張感がありますよね。つねに殺されるかもというような、雑魚戦が雑魚戦ではないような。そういった点と、プラチナゲームズらしいバッサリとした展開が、うまく組み合わさっているようなイメージでしょうか?
中尾
そうですね、もともと、いまおっしゃったつねにヒリヒリしている状況や、攻防の入れ替わりが激しくてスピーディーな展開というこれまでのシリーズのよさは表現しつつ、そこからさらに大きな落差、カタルシスを感じられるような緊張と緩和をプラチナゲームズなりにアレンジして表現しています。
――中尾さんは『NINJA GAIDEN』ファンとのことですが、初めてナンバリング新作のお話を聞いたときはいかがでしたか?
中尾
本当にうれしかったです。私はプラチナゲームズに入る際に、当時の上司に「人生でいちばん好きなゲームは『NINJA GAIDEN 2 』です」と言ったほどです。それでプラチナゲームズに入っているんですけどね(笑)。 安田
おかしいじゃないですか!(笑)
中尾
(笑)。というようなエピソードがあるほどシリーズを愛していましたので、プロジェクトのお話をいただいたときはぜひ入りたいと、半ばゴリ押しで参加させていただきました。自分自身も、『3』から間が空いて、『4』を待っているファンのひとりでしたので、まさか自分が提供する側になるとは思いませんでした。ですので、うれしかったですね。 だからこそ、私なりに思っていること、 『NINJA GAIDEN』をこういった形に進化させていきたい、というところを存分に詰め込むことができました。 ――2社のアクションが融合されているというお話がありましたが、本作で軸となるアクションについてお聞かせいただけますか?
中尾
今回の映像の中で、敵を切るときに赤いフィルターがかかって漢字が表示される場面がありますが、あれが、新主人公のヤクモが使う“血楔忍術 鵺の型”で、今回のアクションのキモとなっております。 『NINJA GAIDEN』のこれまでのよさとは、1対1の攻防+多勢に無勢の状況が続いていく展開だと思います。この忍術では、太刀でたくさんの敵をまとめてズバッと切る爽快感、一気に逆転する緊張と緩和を新たに作りだし、より緊張から解かれた気持ちよさを表現しています。 では、この忍術によって難度が下がっているかというと、そうではなくて、これまでのシリーズのヒリヒリとした難しさをご用意しつつ、ご褒美的に気持ちよくなるポイントをプラチナゲームズなりにご用意している形となります。――ニュアンスとしては、シューティングゲームのボムに近い、敵が集まってきた際に一発逆転で切り抜けるシステムに感じました。
中尾
そういった使いかたもできます。一方で、強大な敵にも対等に立ち向かえる武器として扱っている形ですので、使いかたやシチュエーションによっては、より繊細に“血楔忍術”で戦うことができます。いろんな種類がありますので、ボムのような使いかた以外にも、さまざまな要素によって深みを感じ取れるかと思います。 ――『NINJA GAIDEN』ですと、ガードも重要だと思いますが、ジャスト回避やパリィなど、いま風のアクションなどは組み込まれているのでしょうか?
中尾
そういったアクションは映像にもいくつか登場していまして、ジャストで交わして反撃する、というシステムは入れていますが、 『NINJA GAIDEN』の激しい攻防にマッチするようなシームレスな形となっています。 ですので、敵の攻撃を見極めてパリィしてじっくりと攻略していくというよりは、目にも止まらぬ速さで交わしたり、ガードしたり、弾いたりということを、いろいろなアクションをきっかけに開始できるようになっています。
安田
Team NINJAとしては、パリィに重きを置いたり、スタミナが存在するアクションを多く作ってきました。そういった部分は現代のアクションゲームのひとつの形だとは思います。ただ、本作においては、そこを前提にするのではなくて、シリーズとして正しい形にすることを重要視していましたので、このような形になりました。 パリィなどは検討しなかったわけではないですが、 『NINJA GAIDEN』にもジャストガード、ジャスト回避系のアクションがありましたので、今回はバトルのひとつの駆け引きとして、攻防が切り替わるものをバリエーションとして多くご用意していただいています。
中尾
攻撃を交わして反撃をしたり、攻撃どうしがぶつかってそこから逆転するような多彩なシステムで構成されていますので、アドリブでスピーディーな戦闘が楽しめる点が唯一無二の遊び心地になっているかと思います。 ――プレイヤーの反応に合わせて攻防の切り替えをコントロールできる感覚を大切にされていると。
中尾
『NINJA GAIDEN』で大事なのが、フェアな攻防だと考えています。敵とプレイヤーがあくまでも対等であること。そこを実現していくために、攻防の切り替えにおいて、あらゆるアクションから逆転や劣勢の状況に陥いる、いわば対人戦をしているような感覚を楽しめるのが、本IPのよさだと思います。その点をより強調しています。前作から年月も経過していますので、しっかりと進化させるべきだと取り組みました。
――先ほど、プロジェクトが発足したのは5年ほど前だというお話がありましたが、2020年ごろですと、コーエーテクモゲームスさんはオフィスの移転など環境の変化があったと思います。その中で、どのように開発体制を構築されたのでしょうか?
安田
プラチナゲームズさんは大阪に拠点があり、我々は東京の市ヶ谷にチームリーダーを中心にいますので、最初のころはお互いを行き来しながらコミュニケーションを取らせていただきました。ある程度軌道に乗ってからはオンラインのみですね。ちょうどそのころコロナ禍が始まりましたので、オンラインで打ち合わせをさせていただきながら開発しました。 ――プラチナゲームズさんはいかがでしょうか? 2020年ごろですと、『BAYONETTA&VANQUISH』や『The Wonderful 101: Remastered』などがリリースされていたと思いますが。
中尾
2020年ですと、いまおっしゃった2タイトルですね。Team NINJAさんと本格的にやり取りを始めたのは、その2タイトルのリリースより少し後ぐらいかと思います。企画について詰めていきながら、マイクロソフトさんには技術的なご協力をいただきながら、じわじわと水面下で動いていた時期です。
安田
本格的に開発を始めたのは2022年とかで、まだ3年弱ほどだと思います。 ――マイクロソフトは技術的なサポートのみで、開発においてはとくに意見はされなかった?
安田
基本的には最初からいっしょに企画を立ち上げつつ、我々の規模だと難しいワールドワイドのユーザーリサーチであったり、このタイトルでは何が求められるのかなどについて、定性的な部分からご意見をいただいたり、調査の結果をいただいたりして開発を進めました。さらには、プラチナゲームズさんがデザインしてくださった3Dモデルやデザインを駆使しながら、マイクロソフトさんのほうでどういったものがファンの皆さんに伝わりやすいか、マーケティングや宣伝の部分でお力添えいただきました。 ほかには、開発のビルドで最適が十分なされているかといった点では、我々はそこまで立ち入らず、プラチナゲームズさんとマイクロソフトさんで行っていただいています。中身の部分については、ある程度お任せいただいていますね。
――前作『NINJA GAIDEN 3』は13年ほど前だと思いますが、当時の課題などは、本作で解消されたりしたのでしょうか?
安田
『3』は私がディレクターを務めたタイトルで、シリーズの中では大きくベクトル変えた部分がありましたので、ユーザーさんからのさまざまな反応がありましたし、当時の我々ではやりきれなかった部分も感じていました。 それゆえ、タイトルとして必要な、先ほど中尾さんがおっしゃっていた究極の公平性、究極のプレイアビリティ、それによる歯応えのある難易度など、シリーズの本筋として外してはいけないところもより自覚的になりましたので、そういった部分を我々もしっかり関わらせてもらいつつ、プラチナゲームズさんにお伝えさせていただいて取り組んでいます。 ――コーエーテクモゲームス、プラチナゲームズともに、自由度の高いアクションゲームが魅力だと思いますが、本作では一層自由度の増したアクションが楽しめるのでしょうか?
安田
システム的には増えています。リュウ・ハヤブサは完成された超忍ですが、今回はヤクモという若い忍者で、ゲームが進行するにつれて成長していくのが、ストーリーはもちろんアクションの成長を含めて描かれています。 ですので、アクションとしてできることはすごく多いですが、ある程度順序立てて学べます。プレイヤーの皆さんに合った形で、ヤクモとリンクするような形で成長しながら奥深さを味わっていただけると思います。
中尾
本作では細かな技・システムが増えていまして、シリーズいちとなっています。それぞれの組み合わせの妙が深まっています。初心者・中級者の方も爽快で遊べつつ、上級者の方やシリーズファンの方も、技やシステムの組み合わせなどでさらに深く楽しめるように設計しています。噛めば噛むほど味が出るように作られているので、ご期待ください。 ――公平性というお話がありましたが、敵も同じように戦闘を行うのでしょうか?
中尾
敵との攻防の中で、どのように攻防が逆転するのか、負けてしまうのか、ピンチになってしまうのか、というところの発展がすごく多いというイメージでお考えいただければと思います。ただ、一辺倒に攻守を切り替えながら戦うだけでなくて、切り替えかたがたくさんあるようなイメージですね。敵によって駆け引きの系統が異なっていたり、攻撃の規模も違います。それによってバリエーションも豊富に感じられると思います。
描きたかったのは、「忍者とはいったい何なのか」 ――新主人公のヤクモの魅力を表現するにあたって、とくに注力したポイントはありますか?
中尾
ナンバリング新作ではありますが、期間が空いていますので、まずは新規の方に遊んでいただけるように、キャッチ―な見た目にする、ということは当初から考えていました。その上で、リュウと対比になるように、若くて、リュウとは違うクールさ、寡黙さを取り入れて、現代的なデザインにしていきました。 ――リュウ・ハヤブサの対比となるキャラクターということは、ヤクモを生み出す上ではあまり苦労などはなかった?
安田
口数については少し悩みました。当初は若くて口数が多い設定でしたが、あまりしゃべらないほうがよいのではないかと我々は感じました。ただ、まったくしゃべらないのもよくないので、周囲のキャラクターを含めて調整していただきました。大まかな設定やキャラクターのビジュアルのイメージは、プラチナゲームズさんにご提案いただいた通りになっています。
――ヤクモは、ひと言でいうと、どういったキャラクターですか?
中尾
殺しの任務をずっとやってきた、心のない未熟な兄ちゃん、ですかね。任務は実直に遂行していくのですが、その中で起こる影響、Aさんを殺すとBさんが悲しむ、というような、殺しがどういうもので、それがどう影響していうのか、どう世界が変わっていくのかというところは、まだ大海を知らないキャラクターになっています。そこが、リュウとの戦いを経て、役目を学んで理解をしていく、心の成長が描かれていきます。 ――人の悲しみなどを知っていく?
中尾
それもありますが、大きなメッセージとして出しているのが、“忍者とはいったい何なのか”、ということです。その点をユーザーとヤクモがリンクして、いっしょに理解していく形を作りたかったんです。
安田
忍者は、任務を果たすというところはプロフェッショナルでありながら、感情を隠しながら暗躍しているイメージがありまして。そこは外さない形で描いていただきました。 ――本作は時系列的にはどの位置に当たるのですか?
中尾
『3』の後ですね。具体的な年数はお伝えできませんが、それなりに年数が経過しています。『3』の問題が解決して落ち着いた後、『4』の冒頭でまた新しい問題は発生します。 ――本作ではリュウとヤクモどちらもプレイアブルとのことですが、それぞれプレイできる時間はどれほど異なっているのでしょうか?
中尾
ヤクモが主人公ですので、彼のほうがプレイ時間は多いです。ただ、リュウ・ハヤブサのプレイ時間は少ないのかというとそうでもなくて、彼の強さをしっかり感じ取っていただけるぐらいの時間は確保しています。 ――ふたりのプレイスタイルはどのようになっているでしょうか?
中尾
リュウ・ハヤブサに関しては、シリーズの手触りやアクションのスタイルをそのまま引き継いでいます。映像でもこれまでに見たことのある技がたくさん出てきたかなと思います。これまでを踏襲していて、達人技と呼ばれるものが多く含まれていて、1対1の戦闘がとても特異なキャラクターになっています。 対してヤクモは、成長という要素がありますが、その中で、1対1の戦闘もこなせつつ、彼なりに工夫して複数の敵との戦闘が行えたり、巨大な敵と戦闘を“血楔忍術 鵺の型”という新しいシステムを通して味わえるようになっています。ダイナミックかつ繊細な戦闘がヤクモの特徴です。
――前作から13年が経過した中での新しいナンバリング新作ですが、過去に比べて、現在ではアクションゲームに求められる要素も変わっていると思います。その上で本作を開発するにあたって、過去作から変えたこと、あるいは変えずに大事にしたことがあればお聞かせください。
安田
いまはジャンルが細分化されていたり、アクションRPGが主流になっていたり、オンラインの同期あるいは非同期の要素が入っているアクションゲームが増えている中で、最近ではアジアを中心にシングルプレイのアクションゲームが増えて、ユーザーさんも好んでプレイされている状況になっているのは認識しています。 このタイミングで『4』を開発しているのは時流にも合っているのかなとは思いますが、シングルプレイでソリッドな 『NINJA GAIDEN』を作るということは、もともと決めていたことです。 オープンワールドやオープンフィールドにする、オンラインプレイを充実させる、運営タイトルのようにアップデートを重ねていくなど、さまざまな要素を付け足すことはできると思いますが、そういったことはせずに、基本的にシングルプレイで、何度も死にながらではないですが、プレイヤーがヤクモやリュウ・ハヤブサを動かすという部分は絶対ブレないように決めていたので、その点はシリーズとして、ナンバリングとして変えていない部分です。 一方で、当時から変えている部分もあります。たとえば、オプション、ユーザビリティ、アクセシビリティの部分は、この10年間で大きく変わっていますし、スタンダードが変化しています。そういった部分にはしっかり対応しようということで、『4』でも、発表して即日配信させていただいた『2』のリマスター『NINJA GAIDEN 2 BLACK 』でも変えています。新作でも、10年以上経過したリマスターでも、その点はケアしながら作ることを大事にしています。――いまオプションのお話がありましたが、公式サイトを拝見していると、難易度カスタマイズという文言が出てきました。『NINJA GAIDEN』シリーズと言えば高難度で知られていると思いますが、それをフォローする機能なのでしょうか?
中尾
オプションやアクセシビリティついて、初心者の方への救済というよりは、ゲームがより理解しやすく、遊びやすくなるようなものが入っています。難易度設定については、いくつか段階を用意していて、爽快に遊べるようにはなっているのですが、やはりヒリヒリとした戦いがいちばんのキモだと思いますので、そこは外さないように、初心者の方でもそうしたヒリつきを楽しみながら遊べるようにカスタマイズできる形を目指して開発しています。 ――あとは、本作はたくさん死ぬゲームではあると思いますが、チェックポイントのような仕組みはどのようになっていますか?
中尾
その点も、先ほど安田さんからお話があった通り、プレイしやすいようにしています。リプレイ性は高く作っていて、純粋に戦闘を楽しめる形になっています。直前に戻れる機能も使用できます。
安田
リニアなゲームですと序盤が詰まりやすい側面もありますので、そういった部分のケアというのも、難易度のお話に関係していると思います。 ――両社ともアクションゲームを数多く開発していて近しい文化だということですが、開発の中で意見の相違があって難航した点などはあるのでしょうか?
安田
リュウ・ハヤブサの手触りについては、うるさく思われていると感じるぐらい、とくに意見させていただいています。彼になりきって動かせることがシリーズで共通して大事にしてきた部分ですので、そこは我々も細かく見させていただきました。アニメーションが綺麗に繋がって、かっこよく見える点はとくに気を配りました。 ――改めて、両社の長所が組み合わせた結果、新しく生まれた変化や価値がありましたらお聞かせください。
中尾
今回のプロジェクトにおいて大事にしたのはアクションの手触りになるのですが、タッグを組んだ結果、すごく洗練されたなと感じました。Team NINJAさんの繊細さに対して、プラチナゲームズの派手さが合わさり、唯一無二のものができたと思っています。これは今回タッグを組んだからこそ生まれたものです。実際に触った際の気持ちよさや体験など、新しいヤクモと“血楔忍術 鵺の型”を使って感じ取っていただけたらうれしいです。
安田
手触りについて、我々はこれまでずっとアクションゲームを作ってきた自覚と自負があったのですが、チーム内では言語化しなかったんです。ですので、プラチナゲームズさんに我々の目的などをどのようにお話すれば伝わるのか、といった点を今回協業させていただいたことで言語化するやりかたを身につけることができました。 それと、お若いスタッフさんが多いというのもあるとは思いますが、何と言いますか、圧が強かったのがとても印象的でした(笑)。デザインやサウンド、BGMの提案など、我々が作っていたら出てこないような提案などをいただけたおかげで、より刺激的で新しいタイトルとなりました。我々もすごく刺激になりました。そういった点でも、今回制作をごいっしょさせていただいて、成長を感じるとTeam NINJAの中でもよく話しています。 ――本作が体験できるのはいつごろになりそうでしょうか?
安田
一応お伝えさせていただいていますが、2025年のfall、秋ですね。秋にもかなり幅がありますが、アクションゲームですので、どこかのタイミングで実際に触っていただける機会はご用意したいと思っていますので、お待ちいただければと思います。