これまで『ウィッチャー』シリーズの新作“Polaris”と呼ばれたプロジェクトが正式発表された形だ。主人公を、これまでのゲラルトから彼の養女であるシリに変更し、『ウィッチャー』の新章が描かれるという。
本稿では、そんな『ウィッチャーIV』のゲームディレクターを務めるセバスチャン・カレンバ氏、ナラティブディレクターを務めるフィリップ・ヴェーバー氏のふたりに国内メディア独占となるインタビューを実施。主人公をシリに変更した理由や、トレーラーに盛り込まれた情報から出る疑問点などを聞いた。
Sebastian Kalemba氏(セバスチャン・カレンバ)
『ウィッチャーIV』とシリーズ新章のゲームディレクターであり、CD PROJEKT REDにて400名を超える開発チームを率いる責任者。制作ビジョン、ナラティブ、ゲームプレイなど、あらゆる要素を監督している。『サイバーパンク2077』にはヘッド・オブ・アニメーションおよびアニメーション・ディレクターとして参加。『ウィッチャー3 ワイルドハント』の開発中に、リードアニメーターとして入社。(文中はセバスチャン)
Philipp Weber氏(フィリップ・ヴェーバー)
『ウィッチャーIV』のナラティブディレクター。シリーズの新章に向けて、没入感に満ち、道徳を揺さぶる複雑なナラティブを創作すべく、ストーリーテリングチームを率いる。過去にはリードクエストデザイナーおよびディレクターを経験しており、『サイバーパンク2077』、『ウィッチャー3 ワイルドハント』と同作らの拡張パックではクエストデザイナーとして参加。説得力があり、複数のレイヤーを持つストーリーテリングに重点を置いたクエストを作成。CD PROJEKT RED主催『ウィッチャー2 王の暗殺者』MODコンテストで自作MOD“Lykaon”が入賞したことをきっかけに入社。(文中はフィリップ)
現在開発チーム全体で全力投球中の『ウィッチャー』シリーズ最新作
また、どのエンディング後かという点についても詳しくお話することはできないのですが、プレイヤーの皆さんは、『ウィッチャー3』でさまざまなエンディングを体験されており、そのすべてにリスペクトを払いたいと考えています。今回のトレーラーで描かれている内容も、『ウィッチャーIV』で語られる物語の一部ではありますが、実際に前作のどのエンディングを引き継いでいるかについて、あるいはそもそも前作のエンディングのいずれかを引き継ぐのかについては、現段階ではお話しできません。とはいえ今後きちんとした形でお伝えできればと考えています。
――『ウィッチャーIV』の主人公はシリということで、これまで主人公を担ってきたゲラルトの存在も気になります。彼はどうなったのか、また、『IV』に登場はするのでしょうか。
ファンの皆さんが最後にゲラルトを目にしたのは、弊社が公開している『ウィッチャー』シリーズ10周年記念トレーラーだと思います。ゲラルトが、アナリエッタから譲り受けたトゥサンの邸宅へ旧友たちを招待する様子が見て取れましたが、現段階で言えることは、恐らく彼はそこで何年かを過ごしたのだろうというところですね。その後に何があったのかは、ぜひ『ウィッチャーIV』で体験していただければと。
――そもそも、シリを主人公に据えたのはなぜなのでしょうか。彼女を主人公にする場合、スピンオフやリブート作品にするという選択肢もあったと思うのですが、ナンバリング作品の主人公に据えた理由をお聞きしたいです。
原作小説でも、シリは第2の主人公という扱いを受けてきている存在なので、とても興味深い人物であると同時に、彼女の過去や特殊な能力も、RPGの主人公としてとても適切なのではないかと。
『ウィッチャー3』でも、シリはウィッチャーとしての役割を果たすような描写があったと思うのですが、『ウィッチャーIV』ではそこをもっとクローズアップして、正真正銘のウィッチャーになる過程を描きたいと考え、主人公に据えようという決断に至りました。
また、つねに中立を重んじるゲラルトとは違い、シリはまだ若いということもあってかなり直情的な性格をしています。完成されたウィッチャーとは対照的な未熟なウィッチャーを描きたかったのも理由のひとつですね。
あと、なぜナンバリングにしたのかというと、やはり『ウィッチャー3』と地続きの話であるからこそ、というのがいちばんの理由ですね。そして、今回がシリの冒険として新たな『ウィッチャー』の物語であるからこそ、リブートでもスピンオフでもないナンバリング作品として出したいなと。
さらに、初代『ウィッチャー』がそうであったように、今回はサブタイトルをつけることはしませんでした。原作小説やシリーズ作品をまったく知らない方々にとって、本作を『ウィッチャー』の世界に入るための新たな入り口として見てもらいたいという考えもありますし、シリーズファンにとっても継続して楽しめるように……など、本当にさまざまな理由から、今回正式なナンバリング作品として発表させていただいております。
そして何がウィッチャーたらしめるのか……そういった要素は、ゲーム内でもロア(※舞台設定や歴史、伝承、人物の来歴といった世界設定のこと)として語られてはいますが、そのあたりに関しては、開発チーム全体で綿密かつ合理的に解説ができるように構築しています。
トレーラーでは、ウィッチャーの印以外にも、シリが魔法のような新しい力を使っているのに気付いた方もいると思いますが、このような“源流”(※)としてのシリの力と、霊薬を飲んで戦いに備えるウィッチャー特有の力を融合した状態のものを描いていきたいと考えています。
ただ、そういった暗い雰囲気の世界の中に、ひと筋の光や希望が見えるところも『ウィッチャー』が持つDNAとして重要であると考えます。ですから、『ウィッチャーIV』も、プレイヤーの選択次第では、トレーラーでお見せした結末以外の物語を体験できるので、ぜひ楽しみにしていてください。
――『ウィッチャーIV』では、日本語を含めた複数の言語で前作からシリの声優変更が発表されています。変更することにした意図などを教えていただけますか?
前作の発売からは10年近く経過しているという点が大きいですが、今後シリの物語をお伝えしていくには、長い時間が必要となります。さらにゲラルトよりも若い主人公であるシリによる新たな冒険を描くなど、いろいろな要素(※)を鑑みて、複数言語での声優変更という決断になりました。
――本作もオープンワールドでのシングルプレイRPGとのことですが、どういった地域を冒険することになるのでしょうか。
トレーラーでシリが訪れていた場所は、シュトロームフォードという、かなり北にある辺鄙な村です。ご覧いただいたように雪も積もっていて、とても寒い地域ですが、現段階では『ウィッチャーIV』の世界のどこにあの村があるのかはお話できません。
ただ、オープンワールドのRPG作品である以上、今回もプレイヤーの皆さんが楽しんで探索できるような世界にしたいと考えています。
『ウィッチャーIV』では、Epic Gamesと正式にパートナーシップ契約を結び、Unreal Engine(アンリアルエンジン)5をオープンワールドRPG用にカスタマイズしたうえで開発を行っております。
私たちはつねに野心的でありたいと考えており、私自身はナラティブ面でそこにチャレンジしていますが、エンジニアたちは最新技術やシステムを存分に活かし、技術面でチャレンジし続けています。
ただし、現段階でどのような、そしてどの程度のパフォーマンスを発揮できるかは詳細に語ることは難しいですね。
もうひとつ重要なのは、シリが源流という強力な存在である点です。トレーラーでも、ウィッチャーの印より強力な魔法を使用しています。彼女は自然の力を引き出して魔法に変換することが可能なので、そこも活かされる要素になると思います。
バトルシーンに関しては、『ウィッチャー3』と『サイバーパンク2077』で得た教訓を活かしたうえで、『ウィッチャーIV』でさらに進化させたいと考えています。ゲームプレイの詳細については、べつの機会に公開していくつもりです。