舞台『爆剣 -帝国幻想兵団-』上演スタート。大正時代に召喚された剣士たちにはある秘密が――ヨコオ流エンタメフルコースは最後のデザート(余韻)すらホロ苦い

by杉原貴宏

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舞台『爆剣 -帝国幻想兵団-』上演スタート。大正時代に召喚された剣士たちにはある秘密が――ヨコオ流エンタメフルコースは最後のデザート(余韻)すらホロ苦い
 『NieR(ニーア)』シリーズをはじめ、『ドラッグ オン ドラグーン』シリーズ、さらにはマンガ原作なども手掛けるクリエイター・ヨコオタロウ氏が原作・脚本を担当する舞台『爆剣 -帝国幻想兵団-』の上演が東京都渋谷区にあるCBGKシブゲキ!!にてスタートした。公演は2024年12月23日まで。
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 本舞台『爆剣』『爆剣~幕府御前試合~』、『爆剣~東京転生死合~』、『爆剣~東京転生死合・再戦~』、『爆劔 ~源平最終決戦~』に続く、『爆剣』シリーズの最新作。演出はヨコオ氏の舞台をほぼすべて演出してきた松多壱岱氏が担当する。

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今回の舞台は大正時代。秋山好古が剣士たちの召喚に成功したところから物語は動き出す

 戦国時代や現代など、これまでさまざまな時代を舞台にしてきた『爆剣』の今回の舞台は大正時代。

 帝国陸軍少佐、秋山好古(須賀京介)は西欧列強に囲まれた国の未来を案じ、ある計画を立てていた。それは、戦国時代の剣士たちを召喚し、暗殺部隊として編成するという奇抜な内容だった。
 そして召喚されたのは魔王・信長と小野善鬼や東郷重位など数名の剣士。

 やがて信長は秋山の計画を自らの野望のために利用し始めることに……。

 その野望とはいったい――。

『爆剣』オールスターキャストの中で存在感を放つ雑賀孫市役の本西彩希帆さん

 秋山好古に召喚されるのは、過去に上演された舞台『爆剣』シリーズに登場した剣士たちで、いわばオールスターキャストのような形。

 そんな剣士たちの中に本西彩希帆さん演じるシリーズ初参戦の雑賀孫市が重要キャラとして加わる。しかも終止、仏頂面で。だが、彼女の存在感はどの剣士にも負けていない。ある宿命を背負った重く切ないキャラだが、どういう理屈かわからないミステリアスな要素も併せ持っており、本西彩希帆さん演じる孫市をもっと見てみたい気持ちになった。
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単純な対立構造ではなく、己の信念、心情、正義、欲望などが絡み合い、物語は意外な結末へ――

 本作は、魔王・信長の野望を阻止するために他の剣士たちが力を合わせて立ち向かう、といった単純な対立構造ではなく、さまざまな思惑や信念、心情、正義、欲望……そして譲れない生き様が絡み合い、物語は意外展開の連続で終幕まで突き進んでいく。

 なお、召喚された剣士たちは過去に登場した舞台とは少し性格などが異なる印象を受けたが、その違和感がしっかりと伏線になっていたり、ヨコオ流の世界観が大いに楽しめる内容になっている。

 しかも今回は個々の剣士がより深く描かれ、見どころも多い。その中で筆者的にもっとも印象に残ったのは佐藤智広さん演じる平賀源内。大正時代の文化に触れて水を得た魚のようになった平賀源内は剣豪たち顔負けのカッコよさ。ありがちな天才博士・発明家キャラ程度にしか思っていなかった(そもそも剣士じゃないし)ことをお詫び申し上げます。
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舞台冒頭、ヤツメさんが剣士たちの背景を説明してくれるので今回が始めての『爆剣』の人も安心。
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秋山好古を演じるのは『爆劔 ~源平最終決戦~』でミカエルと名乗るポルトガル商⼈を演じた須賀京介さん。
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舞川みやこさん演じる佐々木セツは、あの剣豪・佐々木小次郎の(モンスターペアレント気味な)母。小次郎に剣を教えたのはセツ。もしかして小次郎より強い!?
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黒木文貴さん演じる小野善鬼の強さにはある秘密が。
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鶴見 萌さん演じる天草四郎は前回登場時(『爆剣 ~東京転生死合~』)よりも子どもっぽくなって登場。
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門野 翔さん演じる東郷重位は戦国時代の剣の達人。
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千葉瑞己さん演じる源頼朝は天草四郎と同じく、中身は子ども。人肉が大好き。
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佐藤智広さん演じる平賀源内は江戸時代中期の医者で発明家でもある。
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鵜飼主水さん演じる織田信長は超人的な力を持ち、自らの野望のためには手段を選ばない。剣士たちは幾度となく信長の野望を阻止してきた。

笑える要素がうれしいグルメコーナーや映像・ライティングによる演出もパワーアップ

 緊張感のある舞台の合間に、笑いがこぼれて緊張をほぐしてくれるグルメコーナーは今回も健在。むしろ、食べる回数は増えてパワーアップしている。

 ゲネプロでは、カレーにアポロチョコをトッピングする、というあまり食べたくないカレーをみんなで食べて想像通りの微妙な空気になったり、須賀京介さんが骨で口が痛くなりそうなアジの骨せんべいを一気食いさせられたりと、演者たちの素に近い表情も見られるグルメコーナーは演者ファンにとってもたまらないコーナーだ。
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 また、
『爆剣』といえば背景や状況説明などはもちろん、剣士たちの必殺技の発動時の演出など、凝った映像演出も見どころのひとつ。ライトやレーザーなどによる光の演出も巧みで、舞台の臨場感がより強く感じられ、目を閉じるとさまざまなシーンが目に浮かんでくる。
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ヨコオ氏の舞台の中でも最高峰のデキ

 シリーズを重ねるごとに成熟度が増してきた感のある『爆剣』。作品ごとに時代を変え、今回は大正時代ということで、剣と銃、幕末と近代の香りがする大正レトロ、さらに呪術や陰陽などといったものとも絶妙にマッチする背景もあって、これまで以上に怪しい雰囲気もマシマシ。

 終幕まで先が読めないストーリーは、剣士たちの激しいぶつかり合いのあとの余韻もあってすごく心に残るヨコオ氏らしい物語となっている。ヨコオ氏の舞台はほぼ観劇している筆者からみても今回の
『爆剣 -帝国幻想兵団-』は『爆剣』シリーズ史上最高峰のデキでは!? と感じているので、時間に余裕がある方はぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。観劇後、クリスマス前の渋谷で感じる雑多な雰囲気もなかなか趣き深いものですよ?

【原作・脚本】ヨコオタロウ
【演出】松多壱岱

【出演】※カッコ内は役柄
本西彩希帆(雑賀孫市)
須賀京介(秋山好古)
舞川みやこ(佐々木セツ)
黒木文貴(小野善鬼)
鶴見萌(シロ/天草四郎)
門野翔(東郷重位)
佐藤智広(平賀源内)
千葉瑞己(源頼朝)
雛形羽衣(ヤツメ)
鵜飼 主水(織田信長)

アンサンブル
町田尚規
加納義広
中野貴文
澤田圭佑
堀川恵利
倭香
※敬称略

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(Photo:永山亘)
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