人徳者
Today's text 中目黒目黒
以前、デートコースとして活用したことがあるんだが、目黒に世界で唯一の寄生虫の博物館がある。館内には超有名人のサナダムシくんや、お魚大好きなアニサキスくん、キタキツネからお引っ越してくるエキノコックスくんなど所せましと寄生虫の標本が置かれていて、下手なお化け屋敷よりも涼しくなれる。とくにビジュアル的に衝撃だったのが、イルカの胃に寄生したアニサキスくんの標本。写真を掲載したいところだが、「こんなの載せるんじゃねー」という猛烈なクレームが届きそうなので今回は我慢するが、別のものにわかりやすく置き換えると……じゃがいもを何ヵ月もほったらかすと、芽が伸びちゃうことがありますわな? あの芽が数百本生えている感じ。数百本レベル。うにょうにょと。にょきにょきと。お食事中の方はすみません。
【寄生虫】きせい‐ちゅう
1 寄生生活をする小動物。体内に寄生する回虫・蟯虫(ぎょうちゅう)・肺吸虫・条虫などの内部寄生虫と、体表に寄生するノミ・シラミ・ダニなどの外部寄生虫があるが、前者をさすことが多い。
2 自分では働かず、他人に依存して生活している者。
宿主がいないと生活できない寄生虫は哀れだが、じつにずうずうしい。いまや寄生するだけでなく、宿主を死に至らせるヤツもいるらしく、生物の風上にもおけぬ存在だ。一方、ドンドルマでの俺は、寄生虫とはあまりにも正反対で、かなりの人徳者として通っている。たとえば、何かわからないことがあると、『モンハン』博士のような存在の友人Bくんが側にいて何でも教えてくれる。質問内容は「寒冷期のメシってなんだっけ?」、「閃光玉ってどうやってつくるの?」、「ハンマーで強いのなに?」など高レベルで多岐にわたるが、Bくんはまったくいやな顔をせずに(見えないが)、むしろ積極的にあれもこれもと話してくれる。
このまえなんて、あまりにも低次元の話だが、まわりにいた友だちと”はちみつ何個持っている競争”を実施した。友人のIちゃんは350個、女尻笠井は250個、俺は5個……。決して催促したわけではないのだが、Iちゃんはハチミツ10個となぜか秘薬を手渡してきた。「上位は金があっていいのう」と正直な意見を言っただけなのに。最後にIちゃんは「もう、たかるなよ!」と一生懸命励ましてくれた。
先日は同じメンツでクエストに出かけようとしたのだが、食事の材料がないことに気付く。「今回はいっか」とそのまま行こうと思ったら、たまたまIちゃんの部屋が開いていたので遊びに行った。だが、Iちゃんは不在で、部屋の外でメンバーと話している。帰ってくるまでちょっと待っていようとイスに座っていたら、帰ってくるなりえらく感動したようで、何も言ってないのに笑顔で食事をふるまってくれた。強調するが、僕は無言で座っていただけなのに。それからというもの、「今回が最後だぞ!」と遊びに行くたびに必ず食事をふるまってくれるようになった。理由はズバリ、人徳からだと思われる。
▲会話でわかるように、Iちゃんは喜びすぎだ。
上位になっても俺は人徳ビームをバリバリ放っている模様。ご存じのとおり、クエストには支給アイテムがない。わかっているけど、忘れるときがある。弘法も筆の誤りってやつだ。とくに肉。「腹減った……」なんて、ひとりごとを言っていたら、すぐさまBくんの近辺からピコーンピコーンと聞き覚えのある音が。吸い寄せられるように近寄ってみると、いいから持ってってとばかりに、ごんがり肉×5。おまけにマンドラゴラ×5つき。「マンドラゴラって何に使うの?」と聞いたら”秘薬”とのことで、ついでに栄養剤の素材もくれた。
この類の話は枚挙に遑がない。これってみなさんもお分かりのように、人徳者あるがゆえ。この言葉につきる。自分でも自分が恨めしいくらいだ。でも向上心旺盛な俺は、人としてさらに成長すべく”自律”という厳しい環境に身を置きたいと思う。自画自賛だが、この志はすばらしすぎる。まず知識の面から有言実行。
▲もう頼らない!
”PCのモニターのまわりにカンペ大作戦”。意外と役立つ。決してこれは宣伝ではない。8月24・31日号のファミ通の『モンハンフロンティア』特集の切り抜きだなんてひとことも言っていない。これにより、友人たちの好意に甘えなければいけない心苦しい生活とはおさらばだ。
ある日、こんなブッダの化身みたいな人格者の俺に友人がこう言い放った。
「寄生虫みたいだね」
……なんか勘違いしているようだ。最後に目黒寄生虫館のホームページで印象的だった言葉を引用する。寄生虫とはこういうものだ。
寄生虫はほかの動物から「住み家」と「食べ物」をもらって生活しています。
ですから普通、貸主への害を少なくするように進化します。
もし寄生虫が貸主に大きな影響を及ぼせば、
自分も生き残れなくなりますので、
影響を少なくするような生き方に進化してきました。
寄生虫は「こわいもの」と思わずに、
まずその不思議で巧みな生き方を知ってください。