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オトナの階段

Today's text 江野本ぎずも

 ある日、友人Wさんからメールが届きました。その内容は、「砦蟹の尖爪が欲しいので、ハンターランク30の試験をお手伝いしちゃいますよ」というもの。そのメールを読み返すうち、オイラはついにこの日がきたかと感慨にふけってしまいました。

 なぜかと言えばもちろん、それが上位への試験であるから。これまではるか先をゆく先輩たちに手伝ってもらっていたため、試験の重みを感じることはありませんでした。でも今回は違います。上位のハンターは、オイラにとって憧れの存在、マイヒーローなのです。野良クエストで出会った上位ハンターたちは、じつにかっこよかった。オイラなどが残り体力数ミリでヒーヒー言っているときには生命の粉塵を惜しみなく使って助けてくれ、クエスト終盤には「捕獲しちゃいますねー」とさりげなくシビレ罠と捕獲玉を取り出し、あっという間にクエスト成功へと導いてくれました。オイラもそんな上位ハンターたちに仲間入りするかと思うと、いろいろな思いが渦巻いて感慨深いとしか言いようのない気持ちになったのです。

 やっとその思いを受け入れたあとには、誰に試験を手伝ってもらおうかと悩み出しました。記念すべき晴れの舞台なのだから、あの人に来てもらおう、いやいや、あの方にも参加してもらいたい。まるで、披露宴に呼ぶ友人知人を決めかねている花嫁です。さらには、試験に失敗するわけにはいかないとイソイソ素材集めに走り、こんな大事なときにお金がない! と金策に走り……。まるでブーケを手作りする花嫁のようなマメっぷり。かと思えば、急に上位クエストで手強いモンスターたちと対峙することが怖くなって、「アタシ上位になんかなりたくないモン!」とコントローラーを投げ出したりもしました。これが世に言うマリッジブルー。て、もういいスかね、ガケっぷち20代女子のたわごとは。

 そんなこんなで、Wさんからメールをもらってから数日後。気持ちだけはすっかり盛り上がって、ついにやるかと重い腰を上げました。メンバーは、たまたまログインしていてなぜかのん気に世界陸上を見ていた我らが大塚角満と、同じくたまたまそこにいたBさん、そして待ってましたとばかりに現れたWさん。コレ、考えられる限りの最強メンバーです。もちろん『モンハン』シリーズは以前からプレイしており、つねに誰かに寄生して生きてきた中目黒目黒なんかとは違って、こと『モンハン』に関しては腕前も知識も確かなホンモノのハンター。Wさんはもうノリノリで、砦蟹の尖爪を入手するための入念な作戦を立て始めました。簡潔に説明すると……。

 砦蟹の尖爪は、シェンガオレンの脚の部位破壊報酬でのみ入手できる。その破壊方法は、4本の脚をそれぞれ攻撃するとやや赤くなり、さらにシェンガオレンが立ち上がった状態のときに攻撃を加えるともう一段階赤くなる。すべての脚が二段階赤くなっている状態で再度どれかの脚を攻撃するともとの青い色に戻り、破壊は成功。

 で、オイラをのぞく3人はこの脚破壊作戦に夢中になり、さまざまなアイデアが飛び交いました。正直、上位を目前にして気もそぞろになっていたオイラはその話をまったく聞き逃しており、またほとんど意味不明でした。はっきり言ってちんぷんかんぷん。恐る恐る、「オ、オイラは何をすれば……?」と聞くと、「ボウガンで脚を撃って」とのこと。「弾は何を持っていけばよろしいのでしょうか?」とか、「ほかに必要なものなどはありませんでしょうか?」などと質問してみましたが、3人は作戦立案に夢中でオイラのことなんか眼中になし。

 主役なのに!!

 花嫁なのに!!!!

 たとえるならば、子供の運動会で大人たちによる町内対抗リレーが予想以上に盛り上がってしまった状況でしょうか。子供の夢ぶち壊しです。しかし、口角泡を飛ばす勢いで脚破壊作戦を立てている3人を見ているうちに、何がなんでも失敗はできない気分になってきました。オイラが上位になることより、無事に脚を破壊することのほうがはるかに重要です。足を引っ張って、作戦を台無しにするわけにはいきません。そうなるとますます高まる緊張感。シェンガオレンを前に何をしていいのか、そして3人は何をするつもりなのか? まったくもってわからないまま、カッチンコッチンに緊張してクエストに出発したのでした。

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▲実際に自分の試験のときは緊張でスクリーンショットを撮り忘れていたので、コレ
はフレンドの試験を手伝ったときのもの。いきなり流れるムービーにはビビりました。

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▲ひたすら前進するシェンガオレンと、ひたすら攻撃をくり返すハンター。根気勝負です。

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▲困ったことにこのマップ、よく道に迷います。2回目なのに何度も迷子に。

 そんな状態だったため、はっきり言ってクエスト中のことをほとんど記憶しておりません。とりあえず、みんなの邪魔をしないように注意しながらライトボウガンで脚を攻撃し、1回当ててはこんなもんでよかったんかしらと不安に陥り、いやいや続けて攻撃をしなくてはと気を取り直してまたボウガンをぶっ放し……そのくり返し。こんなんで本当に試験をクリアーできるんでしょうか? いや、脚を破壊することはできるんでしょうか? まったく役に立っていない、ていうか脚破壊作戦の頭数に入ってすらいないオイラですが、だんだんと不安が増してきます。キョロキョロと辺りを見回し、ひたすら脚を攻撃している3人を見ては気を落ち着けていたのですが、どうにも緊張感に耐えられなくなって思わずデカい声でひとり言。「もう何がしたいわけ、このカニクソ野郎が!!!!」……言うまでもなく、ヤツの狙いはエリア5で直接砦を破壊すること。けれど、初めての砦、初めてのシェンガオレン、単調な攻撃のくり返し、そのうえ極度の緊張と不安状態だったため、自分が何をしているのか見失ってしまっていたのでした。

 やがてシェンガオレンはエリア5へ。脚破壊部隊の隊長Wさんはここで、「このままじゃ倒しちゃうから立つまで待って」と指令を出しました。ここまでの戦いでシェンガオレンが脚を伸ばして立ち上がることはわかっていましたが、まったく意味が飲み込めないオイラ。「立つまでは何をすればいいですか?」、「立ったらいかがいたしましょう?」などと鼻息荒くポイントのズレた質問をして失笑を買ってしまいました。3人は回復薬を飲んだり武器を砥いだりしながら最終決戦に備え、最後にひと暴れしてやるか的な雰囲気をかもし出し始めています。シェンガオレンが立ち上がったら、2段階破壊ができていない残る1本の脚に集中砲火を浴びせることで合意。「吹っ飛ばしたらごめんねー」、「それはお互い様」などと軽口を叩き合う3人を頼もしく思いつつも、オイラは相変わらずオロオロするばかり。いざ攻撃が始まるやいなや、もう頭は真っ白。何度かシェンガオレンが砦を直接ガタピシャ攻撃しているのがわかりましたが、砦の耐久度が0パーセントになったらクエスト失敗ということを思い出しすらもしませんでした。いつ脚破壊を達成したのかもよくわかりません。どれくらいのときが経ったのか、突如としてシェンガオレンがガクリと倒れ込みました。飛び交う「お疲れ様ー」の声。クエストは成功しました。脚の部位破壊もやってのけ、3人ははしゃぎ気味でお互いの健闘を称え合っていました。が、オイラはいうと、ここまできてもなおウワの空。上位になったことも、Wさんの欲しがっていた尖爪が出そうだということも忘れて、この3人、本当に有言実行するなんてかっこいいなあ、さすが上位だなあとぼんやり考えていたのでした。

 ウスボンヤリしていたオイラはクエスト状況を確認していないのですが、聞いたところによると最後の瞬間、砦の残り耐久値は10パーセントだったとか。あと1回でもシェンガオレンが砦を直接攻撃していたらクエストは失敗だったのだそうです。そんなこととは思いもよらなかった……。こうしてオトナの階段を登ったオイラですが、相変わらず上位ハンターを憧れの眼差しで眺め、何かといっちゃ助けてもらってばかり。二十歳になったからと言って、急に人間が成長するわけではないということでしょう。ちなみにあんなにノリノリだったWさん。砦蟹の尖爪は出なかったそうです。オトナの世界もきびしいのですね。

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●大塚角満
大塚角満ご存じ(?)、ファミ通のモンハン番長。ドタバタプレイ日記『本日も逆鱗日和』を上梓したばかり。ガンランスをこよなく愛するファミ通猟団のリーダー。
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中目黒目黒じつは初代『モンハン』からシリーズに触れている恐怖のテケトープレイヤー。属性や弱点などいっさい構わず、今日もテキトーに狩猟笛を奏でる。
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女尻笠井角満ブログにもたびたび登場するヘビーユーザー。シリーズのプレイ時間は長いくせに、武器やアイテムの知識が驚異的に乏しい。愛用の武器は弓。
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百人乗っても稲葉クックもレウスも知らない、オマエ本当にファミ通の人間か的な超ルーキーハンター。なんとなく、大剣を使いたいらしい。
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江野本ぎずもファミ通猟団の紅一点。『モンハン』シリーズ未経験の超初心者だ。女の武器を使って野良クエに精を出す!? 武器は片手剣を使うそうな。

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