『ホテル・バルセロナ』レビュー。映画のオマージュを詰め込んだマニアックなアクション……だと思ったら、遊びやすさが追求されたリプレイ性の高い作品だった
 『レッドシーズプロファイル』などを手掛けたSWERY氏(White Owls)と、『ノーモア★ヒーローズ』などで知られる須田剛一氏がタッグを組んだ2.5Dスラッシャーアクション『ホテル・バルセロナ』が2025年9月26日にプレイステーション5(PS5)、Xbox Series X|S、Steamで発売された。

 本作はリトライ前提の歯応えのある難易度のアクションや、ホラー映画へのパロディ&オマージュがふんだんに盛り込まれた世界観が目を引く作品となっている。

 この説明だと「マニア向けなのかな?」と思うかもしれない。もちろん、刺さる人にはとことん刺さるコンセプトではあるが、製品版をプレイして強く感じたのは“多くの人が楽しめる、かなり遊びやすい部類のアクションゲーム”だということ。

 本記事では、クリアーまで遊んだ筆者のレビューをお届けする。記事の後半ではSWERY氏へのインタビューも掲載。
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亡き父が殺人鬼と交わした“契約”とは?

 主人公は連邦の新米保安官ジャスティーン・ベルシュタイン。彼女は精神の中に狂気の殺人鬼”Dr.カーニバル”を宿しており、つねに行動をともにしているという設定だ。

 そんなジャスティーンが、タイトルにもなっているシリアルキラーたちの巣窟“ホテル・バルセロナ”にたどり着いたところから物語が始まる。ジャスティーンにとっては父を殺した仇敵。そしてDr.カーニバルは自身に呪いをかけた因縁の相手である連続殺人鬼“ウィッチ”を捕らえるべく、ホテルに潜む殺人鬼たちを殲滅しながらウィッチの行方を追う……というのが大まかなストーリーとなっている。

 物語自体はジャスティーンとDr.カーニバルを中心に描かれており、フルボイスによる内気なジャスティーンと、強者の風格漂うDr.カーニバルの掛け合いもみどころ。また、Dr.カーニバルはジャスティーンの亡き父との間に“契約”を交わしていることを度々口にしており、その内容はジャスティーンにも明かされていない……そんな謎を抱えたストーリーにも惹きつけられた。
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ジャスティーンの精神に宿っているといっても、相手は謎の殺人鬼。完全に信じ切ってはいない様子のジャスティーンとDr.カーニバルの関係性にも注目だ。
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ジャスティーンがホテルにたどり着くまでのストーリーはムービーシーンで描かれる。

自分の幻影と共闘する“スラッシャーファントム”は工夫次第で心強い味方になる

 戦闘ではDr.カーニバルを憑依させたジャスティーンを操作し、武器を使った近距離攻撃と遠距離攻撃、ジャンプ、ガード&パリィ、敵の攻撃を回避する“ダッジ”といったアクションを駆使して戦っていく。ステージはいくつかのエリアが連なる分岐型になっていて、エリア内の敵を倒しながら進み、ボスのいる最深部を目指していくような形だ。
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 近接武器は、初期装備となる“スカルペルと杖”、手数の多さでより多くの返り血を浴びる“ツイン丸鋸”、攻撃動作は遅めだが高いダメージが出せる“斧”の3種類。遠距離武器はハンドガンやショットガンに加えて、投擲武器や正面の敵を一掃できる火炎放射器も!
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ステージ開始時にランダムで決まる天気や時間、周期的に変わる月の様子によってステージに出現する敵が変化するローグライト要素も。また、ジャスティーンのサイズもランダムで変わる。
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各エリアには制限時間があり、タイマーが0になると即ゲームオーバー。ただ、各エリアはそこまで長くなく、序盤のステージは慣れてくると1分くらいで終わるほどの長さなので、くり返し遊ぶ際にも軽快に周回できた。
 ステージ内の敵はなかなか手強く、とくに序盤のうちは複数体を一気に相手しようとするとけっこうたいへん。敵の攻撃パターンがわかってくると、パリィやダッジを使ってアグレッシブに戦うこともできるが、最初はなかなかそうもいかないだろう。HPをすべて失うとステージの最初からやり直し。そして拠点となるホテルに戻り、さまざまな強化を行って再挑戦となる。

 敵を倒して集めたアイテムを消費すると、スキルの解放や武器の購入が可能。解放できるスキルは、ゲームの進行度(正確には倒したボスの数)に応じて制限がかけられているのだが、このバランス感覚も絶妙。制限いっぱいまでスキル解放を終えたとしても、簡単になり過ぎず、でもなんだか倒せそうなくらいの強さになっていた印象で、アクションゲームとしての手応えを残したまま強くなっていく過程が楽しめた。スキル解放に必要な素材はふつうに遊んでいれば簡単に集まるので、毎回より強くなったジャスティーンで再挑戦できるのも夢中で遊べてしまう要因となっていた。
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スキルツリーを進めていくことで最大HPを増やしたり、武器の解放や新たな攻撃技の習得、パリィの受付時間延長など、さまざまな恩恵を受けられる。
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装備している武器は強化も可能。ステージ内に現れるカジノで賭けに勝つことで、武器の強化や付与された特殊能力の変更などが行える。
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ランダムな強化要素として、ステージ内でつぎのエリア分岐を選ぶ際に“体力回復”や”スラッシャーファントムの攻撃力UP”などが付与される扉ボーナスも。
 そして、キャラクターの強化が進むと、戦いに余裕が生まれると同時に、敵を斬るアクション的な気持ちよさも感じられるようになっていく。豪快な技をくり出して、血しぶきを上げながら敵をなぎ倒していくのはかなり爽快だ。
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敵の血しぶきを溜めることで画面上の敵に大ダメージを与える必殺技“カーニバル覚醒”が発動できる。敵は死んだ後も斬りつけることで血しぶきをあげるので、一滴残さず絞り取ろう。
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「グロいのはちょっと……」という方には、出血表現をポップコーンに置き換える設定もおすすめ。ポップコーンを撒き散らしながら倒れる姿はかなりシュール。
 そして、本作の目玉とも言うべき要素が“スラッシャーファントム”だ。スラッシャーファントムは、過去にプレイした自分の動きをそのまま再現する幻影とともに戦えるシステム。幻影と言いつつ、しっかり攻撃判定があるので、足並み揃えて戦うことで攻略を手助けしてくれる心強い存在となる。

 ただ、前回挑戦時の動きをそっくりそのまま再現するので、攻撃が空振ることも。そのため、敵がいないところで遠距離攻撃を撃ってみたり、敵を倒したあとも少し長めに攻撃を振っておいたり、といった工夫を凝らすのもおもしろかった。「さすがに体力が少ないし、今回ボスは倒せないな」というときも、気持ちを切り替えて、つぎの挑戦のための下準備だと割り切って遊べたのも新鮮な感覚だった。
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スラッシャーファントムはゲームが進むと最大4体まで出現するようになる。ただ、ファントムと異なるルートを選択してしまうと、すべて消滅してしまうのでそこだけは注意。

ジャスティーンを待ち受ける7人のボスを殲滅せよ

 ステージ最深部にたどり着くと、強大なボスとの戦いが始まる。ホテル・バルセロナ内に潜むボスは全部で7人。各ボスの登場時にはムービーシーンがあり、狂気に満ちたド派手な映像はボスたちの凶悪さをしっかり感じられるものになっていた。
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 ボスは当然手強く、初見で倒すのは至難の技。筆者も初回到達時は毎回即死だった。しかし、何度も挑戦すれば自然とボスの行動パターンがわかり、回避やパリィを駆使して戦えるようになってくる。ボス戦でもスラッシャーファントムが出現するので、使えるものをすべて活かしてシリアルキラーたちを殲滅しよう。

 そして、明らかに映画のオマージュが含まれた各ボスのビジュアルも注目ポイント。各ボスがどのようにして凶悪殺人鬼になったのか、という設定までしっかりと作られていたのは驚かされた。彼らの背景エピソードは倒した後に明かされるので、いったい何人殺したのかとか、予想しながら戦うのもいいかもしれない。
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1面のボスはキャッチャー防具を装備した殺人鬼“ジェイコブ”。手に持つ巨大な改造バットを振り回し、プレイヤーを追い詰める。ノーステップ打法からくり出される豪快なフルスイング、そしてフォロースルーのシルエットのカッコよさはまさにメジャー級。

映画にまつわる小ネタ探しや、オンライン要素など、バラエティに富んだコンテンツも!

 シンプルにアクションゲームとしておもしろいのはもちろん、それ以外の部分でもプレイヤーを楽しませてくれる要素が散りばめられている。数多くの映画作品のオマージュが盛り込まれているのもそのひとつだ。

 ボスのようにわかりやすいものから、ステージやホテル内に隠されているものなど、小ネタを探しながら遊ぶのもまた一興だ。正直、筆者はそこまでホラーやスプラッター映画は詳しくないので、拾い切れていないであろう小ネタもたくさんあると思う。ただ、有名映画ネタもいくつか確認できたので、筆者と同じように詳しくない方も安心して楽しめるはずだ。
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ホテル内の背景にも細かいネタが仕込まれている。
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収集要素となるジャスティーンの衣装にも映画ネタが。
 さらに、ホテル内のバーには本格的なピンボールマシンが遊べるアクティビティも。これもかなり作り込まれていて、ふつうにハマった。
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 映画好きの友人を誘ってアレコレ話しながら遊ぶのも楽しそうな最大3人で遊べるオンライン協力プレイを始め、ドッペルゲンガーとして他プレイヤーの世界に侵入して襲いかかる“敵対マルチプレイ”も用意されている。
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殺人鬼を追っていたはずのジャスティーンが、プレイヤーを襲う殺人鬼になってしまう敵対マルチプレイ。

 そしてゲームを進めていけば、さらに驚かされるユニークな仕掛け(ジャンプスケア的なものではない)が待っている。ネタバレになるので詳しく言えないのがもどかしいが、そこはぜひプレイして自分の目で確かめてほしい。

好きな人はもちろん、アクションゲーム初心者にもオススメしたい!

 死んで覚えるタイプのアクションゲームは、どれだけプレイヤー側のモチベーションが維持できるかというのも重要な要素だと思う。最初のうちはノリノリでプレイしていても、どこかで自分のプレイスキルが頭打ちになり、「また気が向いたときにやるか」と思ってそのまま放置しっぱなしに……みたいな経験をしたことがあるプレイヤーも少なくないはず。

 本作では、豊富な強化要素でテンポよく成長が実感できるうえに、スラッシャーファントムといった工夫し甲斐のある要素があるおかげで、死んでも「つぎこそは!」と強く思わせてくれる。そういったモチベーションを保てる要素の多さが、本作の遊びやすさにつながっていると感じた。

 また、「世界観やストーリーには興味あるけど、ゲームは苦手」という人にもオススメしたいのが、イージーモードの存在だ。本作はステージに挑む前に毎回難度が選択可能なので、ずっとノーマルで遊んでいて「ちょっと苦戦しているな」と思ったらいつでもイージーモードに変更できる。しかも獲得できるアイテムが減ったりといったペナルティーもなし。先ほど書いたとおり、本作には進めば進むほどプレイヤーを驚かせる仕掛けが待っているので、ゲームを投げ出してしまうくらいなら、使ってみるのも手だと個人的には思う。

 逆に、ゲームの腕に自信がある、または本作を遊び尽くしたいプレイヤーに向けたサポートも手厚く、とにかく難しい最高難度“スラッシャー”や、マニア向けの縛りプレイも実装されている。極限のスリルを求めるプレイヤーはぜひチャレンジしてみてほしい。
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縛りプレイの設定はホテルのフロントで受け付けている。“近接武器使用禁止”や”ガード禁止”といった各要素ごとにオンオフが切り替えられるので、自分好みの縛りかたでプレイできる。もちろん恩恵もあり、縛った状態でボスを倒せれば追加でボーナス報酬が得られる。

【SWERY氏インタビュー】「キャリアの原点に触れる旅でもあった」

 さて、本作を開発したWhite OwlsのSWERY氏に開発にまつわる話や個人的に気になった部分について聞いてみた。開発経緯などは過去にインタビューで伺っているので、気になった方はそちらも合わせて確認してほしい。
――発売を迎えたいまの心境はいかがですか。

SWERY
 正直、ちょっとフワフワしてます。2019年に冗談みたいに始まった企画が、本当に“ホテルのドア”を開けてしまったのか……って。スラッシャー映画へのラブレターを、ゲームという形に封じ込める作業は、僕のキャリアの原点(古きよき“手強い”アクションの感覚)にもう一度触れる旅でもありました。ようやく皆さんに鍵を渡せたことがうれしいです。

――発売してまだ間もないですが、ファンからの反響などは届きましたか?

SWERY
「ホラーへの愛が伝わる」、「イースターエッグを探すのが楽しい」という声はたくさん届いています。オンラインの協力や侵入(PvP)についても、「意外と相性がいいじゃん」と反応をもらってます。できれば多くの方に遊んでいただき、ファンアートもたくさん描いてもらえるとうれしいですね。

――本作は多くのインディーゲームイベントに精力的に出展されていた印象ですが、さまざまなプレイヤーたちの生の反応を見た中で感じたこと、または印象的だったことはありますか?

SWERY
 イベント会場では、とにかく“手触り”を見ていました。最初の数分で心を掴めるか、倒されてからの「もう一回!」が自然に出るか、です。基本的にはスラッシャー映画のファンの方は細部の小ネタにニヤリとしてくれていて、アクション好きの方はくり返し上達していく流れにすんなり入ってくれた。このふたつが確認できたのがいちばんの収穫でした。
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――2024年7月に開催されたBitSummit Drift/ビットサミット ドリフトで取材させてもらったときに、「コンテンツ制作自体は完了していて、現在はバランス調整とブラッシュアップを行っている」と伺いました。とくに時間をかけたバランス調整はどういった部分だったのでしょうか?

SWERY
 ひと言で言うと、“救済策”の整備にいちばん時間をかけました。ストーリーを楽しみたいけれど難しそうで二の足を踏んでしまう人に向けて、イージーモードの難易度調整、救済アイテムの追加、そして体力回復の措置を入れています。同時に、ゲームの芯は鈍らせないように、各武器の個々の特徴(使い心地や得意距離など)がきちんと活きるよう見直し、スキルの入手順序や価格も細かく詰め直しました。最終的には、本当に“ミリ”の世界の調整で、プレイヤーが自分のテンポで物語に入っていける手触りを目指しています。

――須田剛一氏と制作をともにする中で、特に印象に残っている出来事やエピソードがあれば教えてください。

SWERY
 いちばん強く覚えているのは、まず、カナダ・バンフで開催されたReboot Develop RED(※)のとき。イベントの会場だったホテルが幽霊ホテルということもあって、そこで企画MTGをしました。長い廊下や重たい扉の手触り、窓の外の静けさまで含めて「ホテルって、それ自体が舞台装置なんだ」と確信できた瞬間でした。

 つぎに、コロナ禍で直接会えなくなった時期。オンラインMTGを重ねる中で、僕も須田さんもバーチャル背景をホラー映画風にしたり、照明をいじって画面越しに“こわさの温度”を合わせたりしていました。ふざけているようで、作品の基調を擦り合わせる大事な儀式だったと思います。

 あとは、須田さんに勧められて映画
『来る』を何度も見返したこと。あの作品のよさをどうゲームのシーン構成に翻訳するか――そこは苦労しましたね(笑)。
※Reboot Develop RED……カナダのバンフで開催されたゲーム業界向けのカンファレンス。2019年1月に渋谷ロフト9で開催されたイベント内で、須田氏が「SWERYさんとコラボ作品を作ります」と発言したことが本作のきっかけとなっている。その後、同じ年の10月に行われた“Reboot Develop RED”でSWERY氏と須田氏が再会。改めて企画の構想を話し合った結果、『ホテル・バルセロナ』が本格的に動き出した。
――作中のホテルバルセロナの外観や内装、設定でモデルにしたものや、コンセプトなどはありましたか?

SWERY
 まず大きなイメージの起点は、さきほど触れたReboot Develop REDの会場になっていたカナダ・バンフの“Fairmont Banff Springs”です。石造りの存在感と、長い廊下や分厚い扉がもつ“空気の重さ”は強く意識しました。

 映画やドラマから受けた影響で言うと、
『シャイニング』のオーバールック・ホテル、『ツイン・ピークス』のグレート・ノーザン・ホテルは外せません。広いロビーの間や、夜の廊下の心細さ――あの“舞台装置としてのホテル”という発想は、ゲームの導線づくりにも直結しています。

  ホラー以外では、ウェス・アンダーソンの
『グランド・ブダペスト・ホテル』のシンメトリーや色彩設計、それからフランク・ロイド・ライトの旧帝国ホテルの幾何学的な意匠や段差の使いかたも参考にしました。観光地としての華やぎと、誰もいない深夜の静けさ――その両方の“気配”を混ぜ合わせて、ホテルそのものが物語を語り出すような空間を目指しています。
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――さまざまな映画作品などのパロディやオマージュが盛り込まれていますが、泣く泣くカットしたアイデアはありましたか?

SWERY
 あります(笑)。たとえば映画『来る』にちなんで、最上階に“松たか子さんが住んでいる”というトンデモ設定が企画メモにありました。集めたシールをその“人物”に渡すとレア装備がもらえる――いわば“ヤ◯ザキ春のパン祭り”方式。……もちろん権利・肖像の観点で完全アウトですし、作品のトーンも崩れるので潔くボツに。アイデアとしては大好きだったんですが、そこは大人になりました(笑)。

――本作にはプレイヤーを驚かせるユニークな演出がありましたが、お話できる範囲で構いませんので、開発秘話などがあれば教えていただきたいです

SWERY
 “死んだ自分が味方になる”(スラッシャーファントム)は、最初はチームに言わず、僕の中だけで温めていたアイデアでした。プリプロでアクションの骨子が固まって、「ここからもう一段、個性を立てたい」と思ったタイミングで、「でさ、このゲーム、もっと個性的にしたいんだけど、みんなはどう?」って切り出したんです。ゲームのテンポを崩さず、でも“死の意味”をひっくり返す――その線引きがいちばん難しかったですね。

 もうひとつ挙げるなら、ゲーム中に映画
『エスケープ・フロム・L.A.』っぽい名場面があるのですが、これが説明に苦労して、「なぜここでそれをやるの?」とスタッフからは何度も問われました(笑)。

――オンライン要素として、ほかのプレイヤーにドッペルゲンガーとして襲いかかる敵対マルチプレイが用意されていますが、この要素を入れることになった経緯を教えていただけますか?

SWERY
 エンディング後も熱を落とさずに遊べる“余白”を厚くしたかったんです。武器の収集や強化、潜在能力の付け替え、衣装集めなど、やれることはたくさん用意していますが、そもそも本作はアクションの手触りが楽しい。物語とは関係なく、同じ敵と何度でもやり合ってほしい。そのテンションを長く保つには、PvEだけではなく他者の気配が割り込む瞬間が効く、と判断しました。

 そこで採用したのがドッペルゲンガー侵入(敵対マルチ)です。あえて、僕が格闘ゲームを作っていたころの“挑戦者、登場!”のノリで、戦闘の最中に“影”が合流する。人間が入ってくることで読み合いが生まれ、スラッシャーらしい“狩る/狩られる”の緊張も一気に立ち上がる。結果として、本編の恐怖と快感をブーストしつつ、物語クリアー後の遊び場としても機能する――その両輪を狙って入れた要素です。

――ポーズ画面から見られる本作の用語やアクションを解説する“ジャーナル”は小ネタもたくさんあり、読んでいてとてもおもしろかったです。こうした小ネタ的な部分で、とくに注目してほしい点やお気に入りのものはありますか?

SWERY
 ジャーナルは、“外の世界の匂い”を立ち上げるための装置で、ゲームを止めて読むとニヤッとできる小ネタを散りばめています。それと、各ステージ冒頭の映画風ポスターは、「もしこのステージが一本の映画だったら?」というテーマで、すばらしいイラストレーターの皆さんに描いていただきました。どれも“作家性の味”がしっかり出た自信作です。

 それと、タイトル画面から見られる“クレジット”。あれ、よく見ていると何かに気づくかもしれません。
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映画風ポスターは各ステージの冒頭に演出として現れるもの。各ボスをテーマに描かれたこのポスターイラストには、ヒロアキ氏、KAZ Omori氏、河崎淳氏、Nottsuo氏、山宗氏、Tomatika氏、増田幹生氏といった名だたるイラストレーターが参加している。
 ちなみに、最後の質問に「ベニシオ・ルーカスが気になります」という文言を添えていたのだが、SWERY氏から「ベニシオ・ルーカスは、この“ホテル・バルセロナ・ユニバース”の中でカルト的地位を持つ映画監督という設定です。90年代以降、ずっとB級寄りだけど熱烈な支持者がいる作品を撮り続けている……という人物像」との回答をいただき、小ネタにも詳細な設定があったことにめちゃめちゃ驚いた。この意味を知りたい方は、ぜひゲーム内のジャーナルでベニシオ・ルーカスを見つけてみてほしい。
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『ホテル・バルセロナ』

  • 対応プラットフォーム:プレイステーション5、Xbox Series X|S、PC
  • 発売日:2025年9月26日発売
  • 発売元:CULT Games
  • 開発元:White Owls
  • ジャンル:アクション
  • 価格:プレイステーション5版は3960円[税込]、Xbox Series X|S版は3950円[税込]、Steam版は3990円[税込]
  • 対象年齢:CERO 17歳以上対象

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