『ホテル・バルセロナ』SWERY氏インタビュー。須田剛一氏のリップサービスから開発が始まった!? くり返し遊んでもらうために、前回のプレイヤーの動きを再現する“スラッシャーファントム”を取り入れた【BitSummit Drift】

by半蔵門アラタ

『ホテル・バルセロナ』SWERY氏インタビュー。須田剛一氏のリップサービスから開発が始まった!? くり返し遊んでもらうために、前回のプレイヤーの動きを再現する“スラッシャーファントム”を取り入れた【BitSummit Drift】
 SWERY氏と須田剛一氏がタッグを組んだ横スクロールアクションゲーム『ホテル・バルセロナ』。本作は殺人鬼“Dr.カーニバル”を宿す主人公のジャスティーン・ベルシュタインとして、凶悪殺人犯たちとのバトルをくり広げながら舞台となるホテルからの脱出を目指すアクションゲーム。ホラー映画へのパロディがふんだんに盛り込まれた世界観や、前回プレイしたときの主人公の動きを再現する“スラッシャーファントム”と共闘できるシステムなども特徴的な1作となっている。

 2024年7月19日~21日までの期間、京都・みやこめっせで開催された“BitSummit Drift/ビットサミット ドリフト”では、本作のプレイアブル出展が行われた。また、会場では開発者のSWERY氏に話を伺うことができたので、そのインタビューの模様を本記事ではお伝えしていく。
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SWERYスエリー

『レッド・シーズ・プロファイル』『The MISSING -J.J.マクフィールドと追憶島』などを手掛けるゲームクリエイター。本作の開発を行うWhite Owlsの代表取締役も務める。

SWERY氏がゲームを骨太にしつつ、須田氏がポップにするという役割に


ーーまず、本作はどういった経緯で始まった企画だったのでしょうか。

SWERY
 東京で『Travis Strikes Again: No More Heroes』のイベントがあったときににゲストとして呼んでいただいて、須田さんがリップサービスで「SWERYさんとコラボ作品を作ります」みたいなことをおっしゃってくれたんです。僕も「いいですね」って言っていたら、その場で急に「タイトルは『ホテル・バルセロナ』です」と、須田さんが発表しちゃったんです。

ーー急展開ですね(笑)。

SWERY
 そこで「横スクロールでバンバン戦うアクションで、外山圭一郎さん(※)にも参加してもらいましょう」みたいな感じのノリで話していたらそれがバズってしまって。しばらく経ってから、カナダのイベントで須田さんとお会いしたときに「あの話、真面目にやりましょうか」という話をして、ふたりでレストランでご飯を食べながら構想を練って、形になりそうだったので「じゃあ、僕が真面目に企画にしますね」と言ったのが始まりでした。
※『SIREN』シリーズや『GRAVITY DAZE』などを手掛けたゲームクリエイター。外山氏が代表を務めるBokeh Game Studioの新作ホラータイトル『野狗子: Slitterhead』は2024年11月8日発売予定。
ーーふたりでアイデアを出しながら膨らませていったと。

SWERY
 須田さんはストーリーや世界観などの原案担当で、僕がゲームメカニクスを持ち込んだ形です。最初は僕のほうからも世界観を提案してみましたがちょっと複雑すぎて、「もっとシンプルに殺人鬼をぶっ倒すやつにしましょう」という須田さんの原作に僕が肉付けをして、ゲームっぽくなったものを企画書として作成して進んでいきました。

ーー須田さんがタイトルを発表したタイミングでは、ある程度須田さんの中では企画の構想みたいなものはあったのでしょうか?

SWERY
 そのときはタイトルだけだったんじゃないかな……。

ーー『ホテル・バルセロナ』というタイトルには意味があったのでしょうか。

SWERY
 たぶん意味とかはとくになくて、須田さんのワードセンスですよね。須田さんの『花と太陽と雨と』や、僕の『Deadly Premonition』とかでもホテルのシーンがけっこう出てくるので、「ふたりともホテルに思い入れがあるよね」という話をしたことがあったんですよ。そんなこともあって『ホテル・バルセロナ』というタイトルを聞いたときに僕もしっくり来ちゃって。

ーー語感もいいですし、タイトルとしてもカッコいいですよね。

SWERY
 本当にさすがやなと思いました(笑)。

ーー開発の体制としては須田さんが原案を担当して、SWERYさんのほうでゲームを作っているという形なのでしょうか。

SWERY
 今回はグラスホッパー・マニファクチュアさんは入らずに、須田さんは監修という形でやりとりしながら、開発はWhite Owlsで行っています。こちらからキャラクターデザインとかも提案すると「もう少しこうしたほうがヒロイックになるよ」みたいな、さすがだなと思わせるアイデアが返ってきたりするので、僕がゲームを骨太にしていきつつ、須田さんがポップにしているという役割分担かもしれないです。

ーー開発はどのくらいの人数で行われているのですか?

SWERY
 『The MISSING - J.J.マクフィールドと追憶島- 』のときと同じメンバーが中心なのですが、メインが6人で、あとプラスで外部のパートナーさんにも手伝っていただいているという感じです。

ーーまさに少数精鋭ですね。

SWERY
 本当に少人数で長く時間をかけて、できるだけよいクオリティのものを目指しています。今回のBitSummitでも大きなブースで出すと「どうせそれなりの大人数で作っているんでしょう?」と見られてしまうのが嫌だったので、あえて審査を受けて一般のインディーゲームサークルとしてブースを出しているんです。

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スラッシャーファントムは“遊んだ時間軸そのものをつぎの周回に持っていける”システム


ーーゲームは一度力尽きてもスキルが開放できたり、前回のプレイヤーの動きを再現する“スラッシャーファントム”のシステムなど、リプレイ性を重視した仕掛けが多かった印象でした。

SWERY
 今回のゲームの要素をピラミッドで表したときに、いちばん下には“気持ちいいバトルアクション”があって、そのつぎに重要な要素として”くり返しプレイできるシステム”というのを置いています。何度もくり返し遊んでほしくて、右肩上がりに成長するものではなく、プレイ中はもらえるけど死んだらなくなるものを仕掛けとして入れています。

ーープレイ中だけもらえる仕掛けとしてとくに特徴的なのが“スラッシャーファントム”というシステムですが、こちらはどういった経緯で生まれたアイデアだったのでしょうか?

SWERY
 くり返しプレイしてもらうための仕掛けを考えたときに、いろいろな作品を調べたら何らかのアイテムや経験値みたいなものを持ち帰ってつぎの周回に活かせる、というシステムが多かったんです。ですので、違うアプローチとして”遊んだ時間軸そのものをつぎの周回に持っていける”というものにしたいと思いついたのが最初です。過去の時間をそのまま持っていくというイメージのシステムです。

ーースラッシャーファントムをゲームで表現する際の苦労などはありましたか?

SWERY
 最大4体まで同時に出すことができるので、操作キャラクターが乗るはずの足場を、ファントムが落としてしまう事件とか、本当にいろいろありました(笑)。簡単に作れると思っていたのですが、意外と難しかったという苦労はありましたね。
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ーーちなみに、その足場問題はどういった形で解決したのでしょうか。

SWERY
 ファントムが影響する設置物を限定することで解決しました。操作しているキャラクターだけが移動中の足場に影響するとか、そういう問題点を全部リストアップして考えましたね。

ーーほかにも、敵の返り血を浴びると貯まるゲージで強力な技(カーニバル覚醒)が出るというアイデアも斬新でした。

SWERY
 主人公のジャスティーン・ベルシュタインは、彼女の中にDr.カーニバルと呼ばれる別人格が入り込んでいて、その人格が体を乗っ取ることで戦えているという設定なのですが、このへんが須田さんのセンスですよね。カーニバル覚醒を使うと、画面上のキャラクターを全員倒すというシステムになっていて、武器カテゴリーごとに違う技が出る形になっています。

ーー試遊版でも冒頭にジャスティーン・ベルシュタインとDr.カーニバルの会話シーンがありましたが、ふたりの関係性も気になります。

SWERY
 Dr.カーニバルは僕が考えたのですが、これは映画『ハンニバル』(※)のパロディなんですよ。ハンニバル・レクターとクラリスの寄生関係をひとつのキャラクターで表現したというイメージです。
※FBI捜査官の主人公・クラリスと精神科医で連続殺人犯のハンニバル・レクターを中心に物語が展開される、『羊たちの沈黙』から続くサイコホラー映画シリーズの2作目。[IMAGE]
ーーホラー映画のパロディで言うと、ボスのデザインもですよね。ホッケーマスク……じゃなくてキャッチャーマスクが印象的な1面のボス“ジェイコブ”とか。

SWERY
 ホッケーマスクのほうは世界的に有名な方なので(笑)。“完全な”オリジナルで野球の殺人鬼という設定にしています。

ーーボス戦の前にはアニメシーンもありましたが、ゲーム中にはけっこうアニメシーンが使われているのでしょうか。

SWERY
 今回はカットシーンとして3Dのポリゴンシーンもありますが、ストーリーのシーンはすべてアニメにしていて、南條沙歩さん(※)というアニメ作家さんにお願いしています。「南條節でお願いします」と依頼して、好き放題描いていただきました。製品版ではオープニングもアニメのシーンがあるので、そこも注目してほしいですね。
※YOASOBI『たぶん』のMVや、TVアニメ『チェンソーマン』第6話のエンディングアニメーションも担当しているイラストレーター/アニメーター。[IMAGE][IMAGE][IMAGE]
ーーくり返しプレイするほど、キャラクターがスキルで強化できたり、スラッシャーファントムもあるので、アクションゲーム初心者にも比較的優しいシステムなのかなという印象を受けました。

SWERY
 それはあると思います。初心者に優しいことでいうとイージーモードも付けますので、ストーリーを楽しみたい方はそちらで楽しんでほしいなと思っています。

ーーアクションゲームは“難所を乗り越えたときの快感”も魅力のひとつだと思いますが、イージーモードを付けた理由というのはどういったところなのでしょうか?

SWERY
 これは、前から言っているのですが、できるだけゲームのエンディング到達率を上げたいんです。ですので、購入された方が自分の好きな難易度でエンディングに行けたらいいなと思っていて、積みゲーにならないように今回はイージーモードを付けました。
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本作の難易度はイージー、ノーマル、ハード、スラッシャーの4つ。ちなみに、SWERY氏ですら「僕でもハードはかなりしんどい」とのこと。
ーー僕も今回ゲームを遊んで、何度も苦戦しながらくり返し1面を遊んでいたのですが、オススメの戦いかたなどがあれば教えていただきたいです。

SWERY
 スラッシャーファントムをうまく使って、自分自身をうまく重ねていくというのがいいと思います。敵がいない場所でわざと空振りしてみたり、遠距離攻撃ばかりで攻略するファントムを作ってみたり、そういったプレイを重ねて3周目とか4周目にいちばん熱くなるようにしていくとかなり強くなると思います。あとはスラッシャーファントムが使ったカーニバル覚醒もちゃんと効果が出るので、どこで使うかというのもポイントですね。

ーーなるほど! スラッシャーファントムは本当にプレイヤー次第でいろいろな使いかたができそうですね。あと気になったのが、キャラクターが大きくなったり、サイズが変わることがあるのでしょうか?

SWERY
 ゲームの世界観として、もしかしたら悪夢かもしれないし、魔女の呪いかもしれない世界の中で主人公は戦っています。実際に死んでいるわけではないのか、死んでいるけど生き返っているのかが曖昧な世界なので、魔女の呪いによってプレイヤーが小さくなったり大きくなるというのもランダム要素として入っています。

ーーサイズによってキャラクターの強さも変わっているのでしょうか?

SWERY
 サイズが大きいと攻撃範囲も広くなるので、通常よりも強くなります。サイズはゲーム中で入手したコインを使って再抽選ができるので、「ファントムも溜まって、今回こそボスを倒したい」というときは再抽選をして大きくなるのを狙うということもできます。
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ーーアクションも非常に爽快で、くり返し遊びたくなるシステムも多いので、かなりじっくり遊べるタイトルになりそうですね。

SWERY
 最終的には難しい部類のゲームなのですが、アクション部分は斬る気持ちよさを追求していて、脳死状態で斬っていて気持ちいいみたいなところまで持っていきたいです。RPGではないですが、「昔の俺って弱かったな」と体感できるアクションゲームを作っている感じですね。

ーー発売は2024年予定とアナウンスされていますが、進捗はいかがでしょうか?

SWERY
 コンテンツの制作はすべて終わっているので、いつでも終わらせられる状態のままバランス調整とブラッシュアップしている状態です。

ーー最後に、本作に期待しているファンの皆様へ向けてメッセージをお願いします。

SWERY
 『ホテル・バルセロナ』は、僕にとっても、須田さんとのコラボというゲームクリエイターになった当初から夢見ていたような企画で、それを形にするチャンスがきたので、本当に楽しみながら作っている作品です。体験版もお届けする予定ですし、最終的には製品版も楽しんでいただきたいと思いますので、期待していてください!
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