『ラタタン』インタビュー。テストプレイでは“『パタポン』の皮をかぶったソウルライク”というフィードバックも。『パタポン』のよさを継承しつつ、新規タイトルとしての確立を目指す【BitSummit the 13th】
 2025年7月18日~7月20日まで京都・みやこめっせで開催されるインディーゲームの祭典“BitSummit the 13th(ビットサミット ザ・サーティーンス)”。

 会期中に『
Ratatan(ラタタン)』の開発者である、TVTのプロデューサー坂尻一人氏と、ゲームデザイナーである小谷浩之氏にインタビューをする機会に恵まれた。『Ratatan(ラタタン)』は、『パタポン』の “精神的続編”として、2023年に発表されたリズムアクション。発表後クラウドファンディングを実施し、即座に目標額を達成するなど大いに話題を集めた一作だ。

 今回のBitSummitでも、BitSummit アワードにて大賞にあたる“VERMILION GATE AWARD 朱色賞”を受賞するなど、期待度は極めて高い。同作に対する思いを坂尻氏と小谷氏に胸中を聞いた。

 なお、インタビューは、BitSummit アワード発表前の7月19日に実施したものだ。
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坂尻一人氏(さかじりかずと)

TVT プロデューサー(写真右・文中は坂尻)

小谷浩之氏(こたにひろゆき)

TVT ゲームデザイナー(文中は小谷・写真左)。

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ユーザーからの声を反映するため、アーリーアクセスを延期

――先日、アーリーアクセスの延期を発表しましたが、その理由を教えていただけますか?
坂尻
 本来であれば7月25日にアーリーアクセスを配信予定だったのですが、延期とさせていただきました。具体的な延期日程はお伝えできないのですが、Steam Next Festに合わせて体験版を出したところ、1000件以上の評価と3000件ほどのフィードバックフォームを得られたので、この量をすべて確認するには1ヵ月では無理だと判断し、延期させていただくことにしました。

――フィードバックはできる限りの反映はしたいという方針ですか?

坂尻
 できる限りは対応したいと思っています。

――とくに気になったフィードバックはどういったものでしたか?

坂尻
 難易度、バランス面でしょうか。少し難しかったというご意見が多かったです。「『パタポン』の皮をかぶったソウルライク」という表現をされる方もいらっしゃいました。

――(笑)。

坂尻
 なので、アーリーアクセス前にその調整もしようと思っています。

 あとは必殺技ですね。キックスターターのときに出したPVに、ラタタンが必殺技を使うシーンがあったのですが、それが開発の中で消してしまったんです。それを「復活させてほしい」というお声もいただきました。また「特徴的なスキルを使いたいという」声もいただきまして、ラタタンごとの個性も少し出したいという想いもあり、なんとかしようかなと思っています。

――必殺技を復活させるということは、けっこうな手間暇がかかってしまうのではないかと思うのですが。

坂尻
 そうですね。ラタタンは8体いるので、8体分の必殺技をいまから作るとなると、もともと構想にあったとは言え、相当たいへんな作業にはなります。

小谷
 ただ、単に攻撃が増えるだけという調整にはしたくないと思っています。当然戦略性がある中で、ラタタンにも攻撃型とか防御型とかいろいろといますので、その特徴に合わせてどう機能させるのかというのをちゃんと考え、個性づけしたいと思っています。

――コブンにも必殺技がありますよね。

小谷
 はい。当初ラタタンに予定していた必殺技がコブンに受け継がれていったんですね。ですが、今回あまりにも要望が多かったので、両立できるのではないか……と考えて決断しました。

――必殺技を追加するとなると、レベルデザインなども調整しないといけないでしょうから、いろいろとたいへんそうですね。

坂尻
 レベルデザインの担当が、もう顔を青くしていました(笑)。

小谷
 必殺技なので当然連発はできないですし、どういうリソースを消費して必殺技を出すのかということも含めて、いろいろとバランス調整はたいへんです。

坂尻
 ユーザーの皆さんに喜んでいただけるので、私たちとしてはがんばって実装していきたいと思っています。

――変更点は、その必殺技の追加がいちばん大きいのですか?

坂尻
 そのほかにも細かい点をいろいろと予定しています。ユーザービリティーにも手を入れていきますし、細かい機能の追加も考えています。いまはそういった変更点をまとめてパッチノートを作成しているのですが、その量がとんでもないことになっています。

小谷
 けっこう変わりますよね。体験版でフィードバッグをドーンといただいたので、「がんばらねば!」という感じです。私たちは開発スピードがかなり早いので、相当なスピード感を持ってこなしていけると思っています。

――ずいぶんと思い切った決断をしたなという感じがします。

坂尻
 そうですね。私たちはインディーゲームのチームなので、決断してから即実行できるという小回りの効きは大きな強みだと思っています。とはいえ、予算との兼ね合いもありますし、準備していたマーケティングプランも変更を余儀なくされますが……。そういうことをひっくり返してでも、「やりたい!」という話になりました。

――そうなるといつ発売されるのかが、やはり気になりますが……。

坂尻
 本当に近いうちにはリリース時期をお伝えできると思います。
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『パタポン』ファンと新規『ラタタン』ファン、両方に納得してもらえるものを

――お話をうかがうのは2年ぶりなのですが、この2年間、どのようなことを意識しながら開発していたのですか?

【関連記事】『RATATAN(ラタタン)』開発者インタビュー。インスピレーションの源は地下アイドルとのコール&レスポンス。『パタポン』の進化の先が見たかった
小谷
 『パタポン』をプレイしてくださっていたユーザーさんが、「『パタポン』っぽいから」という理由で『ラタタン』をプレイしてくださった際に感じるギャップが、どんなものなのかというところはいろいろと思うところがありました。その違いを理解してくださる方もいらっしゃれば、気にされる方もいらっしゃるのだなというのが正直な感想です。

――理解を示してくださった方、違いを気にされた方、どちらに寄せた開発になったのでしょうか?

小谷
 両方に寄せました! もっともわかりやすいのは、リズムコマンドのパターンですね。『パタポン』のときは1ボタンで出る音が“ポン”などの単音だったのが、『ラタタン』では2音を1音で終わらせたり、2音伸ばしたりと、いわゆるスクラッチ風にも聞こえるようリズムパターンを新しくしています。

 『パタポン』で慣れ親しんだ拍子が楽しかったねという思い出がある方たちに対しても親しんでもらえるようにしつつ、新しさも加わった形です。

 またそれと同時にリズムゲームの部分を簡単にしたかったので、『ラタタン』ではボタンの押し変えがありません。

坂尻
 『パタポン』では複数のボタン入力を組み合わせてリズムコマンドを成立させていましたが、『ラタタン』ではどのコマンドも1ボタンでコマンドが成立します。大事なのはどのボタンをどのリズムで押すかだけ、といった状態ですね。

小谷
 ただボタンを押し変えることで『パタポン』は音の変化もあったので、それがなつかしいと言ってくださる方もいらっしゃいます。それは僕も感じているところです。

 『パタポン』で挫折された方の挫折理由がほとんどリズムを理由としていたくらいに、『パタポン』のリズムは難しかったようなんです。入念にテストをしていても、「乗り越えられない壁はあるんだな」というのを実感しました。そのため『ラタタン』では、簡単にできるところは可能な限り簡単にしたかったんです。ボタンの押し変えは、リズム入力中につぎのボタンのことを考えてしまいますし、それでリズムが狂ってしまう要因になっていたので、ここを修正しました。各コマンドがワンボタンで行えるようになったのも、できるだけ簡単にという意図からです。

 ただ、『パタポン』のプレイフィールをなつかしむ声もたくさんいただいるので、アドバンスコマンドというものを新設しています。これはオプションで切り替えられるもので、各コマンドのボタンの組み合わせが変わります。しかしただ組み合わせが変えるだけでなく、ちゃんと響きのいい音を探して、上級者向けのコマンドパターンセットというものを作って提供させてもらいました。

坂尻
 過去の『パタポン』ファンにもなじみがあるようなコマンドシステムにしています。

――両方のファンにとって、より楽しみやすくなるような感じですね。

坂尻
 そうですね。もともと本作の始まりが『パタポン』のファンに向けた“精神的な続編”という位置づけでしたので、そこは大切にしたいと思っていますので、できる限りのことはしたいと思っています。

 ただ『ラタタン』自体はオリジナルなタイトルとして令和にリリースする新規タイトルなので、『パタポン』の続編ではなくて、『ラタタン』というブランドを盛り上げていきたいという気持ちもあります。そこはコミュニケーションを取りつつ理解をいただければと思います。

――マルチプレイに関して聞かせてください。本作は最大4人で楽しめますよね。

小谷
 はい。マルチプレイも、みんなでコール&レスポンスを楽しむようなプレイ体験が得られるような仕組みにしています。

――オンラインマルチだと、やはりどうしても遅延とかもあるかと思うのですが、そのタイミングを調整する技術とかはどうなっているのでしょうか?

坂尻
 『ラタタン』では、ピアツーピア(P2P)と呼ばれる技術を使って、プレイヤーどうしを接続するシステムを採用しています。これは当社独自のTheory Engineを使っていて、プレイヤーどうしで直接通信しているので、サーバーを介するよりも遅延が少ないんですね。そこは大きな強みです。

 ただ、どんなネットワークでも物理的な遅延を完全にゼロにすることは不可能なので、『ラタタン』では“遅延がないように見える”調整処理をゲーム側で行い、みんなリアルタイムにコール&レスポンスを楽しめるようにしています。

小谷
 また『ラタタン』では、音が邪魔になったりしないように、すごく細かくいろいろな音のボリュームを調整できるようにしています。自分の音の中でも、BGMやコールの音とかいじれます。自分以外の音を聞きたくないという場合は消してしまうこともできますし、いっしょにやっている感がほしいという方は、いい感じのボリューム設定にすることもできます。

坂尻
 P2Pなので通信量が小さいのも特徴です。低速回線でもふつうにプレイが楽しめると思います。

――いろいろな方がいろいろな環境で遊んでも同期が取れるのですね。

坂尻
 ただ世界中には、我々が想定していない通信環境や接続環境を使用されている方もいらっしゃいまして、そこで少しトラブルがありました。そのへんは少したいへんなポイントではありました。

――アーリーアクセスでは、マルチプレイのセッションをリージョンごとに区切ったりするのでしょうか?

坂尻
 世界中に設ける中継地点みたいなものはある程度分割する予定ですが、接続自体はさっきもお話した通りグローバルなものを想定しています。なので地球の裏側にいる人といっしょに遊ぶというケースもあり得ます。さすがにその場合は、少し遅延を感じるかもしれないですね。

――『ラタタン』ではオンライン要素は入れたいとおっしゃっていましたが、遊びの部分に関しては自信のデキになっているのですか?

小谷
 まだ、足がかりかなとは思います。いまの遊びができて、いろいろやってみたうえで完成形に向かっていきたいと思っています。目玉であるラタタンの必殺技もじつはオンライン向けに考えています。

 お互いに支援し合うみたいな。そればかりではないですが、そういうものをベースにしながら作りたいと思っているので、期待していてください。ラタタンはそれぞれが個性を持っているのも大きな特徴なので、それぞれがで役割分担をしたプレイングも実現したいんです。

――となると、ゲームバランスとしてはソロプレイではなくマルチプレイ推奨になるのでしょうか?

小谷
 基本的にはそうですね。わちゃわちゃも含めて楽しんでもらいたいです。本作はリトライが楽しいローグライクの要素もあるので、作り手側としては「どうやってプレイヤーを倒そうか」みたいな発想も楽しんでいたのですが、最近は「どうやったらより楽しんでもらえるか」という方にシフトして開発を進めているので、ぜひマルチプレイを楽しんでいただきたいです。

坂尻
 またプレイごとに1からのスタートとなるローグライク要素があるため、進捗の異なる人たちが一同に介しても、みんな変わらず楽しい体験ができるというのも本作の特徴です。

 ソロでも遊べますが、まずは気軽にマルチプレイで楽しんでいただけるとうれしいですね。

小谷
 みんながそれぞれの進捗を気にして、ピリピリしたりギスギスしながらプレイするのではなく、『ラタタン』では「みんな楽しく遊ぼう!よ!」という場所を作りたいと思っています。

――平和な世界、理想ですね!

小谷
 ぜひとも、そうしたいですね。

坂尻
 そういった想いもあるため、『ラタタン』では、あえてプレイヤー名やオンラインIDなどは表示しない仕様になっています。

小谷
 そのほかネットワークに関しては、フィードバックなどを通じて今後もさまざまなアップデートが入るかもません。オンライン要素は私達だけのリソースではすべてのケースを検証しきれないので、皆様からのお声をいただけると幸いです。
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親しみを感じてもらうため、コブン一体一体に名前をつけた

――体験版を配信したときのフィードバックで、印象的な心温まる意見はありましたか?

小谷
 心温まる意見ばかりでした。たとえあ『ラタタン』ではコブン全員にそれぞれ名前を付けているのですが、それに気付いて反応してくれたのはうれしかったですね。

――100体全部に?

小谷
 はい、全員がそれぞれの名前を持っていますし、まだ増やすつもりです(笑)。

――2年前にお話をうかがったときは、地下アイドルの方がお好きだとおっしゃっていましたが、好きな地下アイドルの名前をもじったものなども付けたりされているのでしょうか?

小谷
 いえいえ、さすがにあそういう私的なことはしていません(笑)。

坂尻
 少しくらいしてもいいような気もしますけどね(笑)。

小谷
 ただクラウドファンディングのバッカーさんの中にはアイドルの方がいるので、こっそりNPCの名前として入ったりする可能性はあるかもしれないですね(笑)。

――(笑)。最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。

坂尻
 アーリーアクセスが延期となってしまったのですが、皆さんが喜んでもらえるようなゲームに仕上げようとチーム一同ものすごくがんばってますので、もうしばらくだけお待ちいただければと思います。あと、ウィッシュリスト登録をまだされてない方はぜひお願いします。

小谷
 ちょっと延びてしまいましたけれど、『パタポン1+2』をやり込んだ後で、『ラタタン』の新しい楽しさを味わってもらえたら最高かなと思いますので、ぜひ楽しみにしといてください。

――ちなみに、完成版のリリースはいつくらいを想定しているのですか?

坂尻
 やはり反応を見ながらという部分は大きいのですが、目安としては半年から1年くらいを考えています。その期間中に大きなアップデートをふたつ予定しています。ガラリと環境が変わるものですね。あとは月いちくらいでアップデートをしっかりとかけていくという形を取ろうと思っています。

――家庭用ゲーム機向け展開はいつくらいに?

坂尻
 アーリーアクセスの半年後か1年後に、家庭用ゲーム機向けも合わせて、正式リリースという形にしようと思っています。
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