『SCHiM - スキム -』レビュー。離ればなれになったご主人を追いかけ影の中を三千里。ピチョンと移動するシャドウアクション
 2024年7月18日にNintendo Switch、プレイステーション5(PS5)、プレイステーション4(PS4)、Xbox Series X|S、Xbox One、PC(Steam)にて発売となった『SCHiM - スキム -』。

 本作は、影の中をピチョン、ピチョンと移動していくアクションゲームで、かわいらしいデザインと歯応えのある難易度が魅力です。ゲームを始めて数分後には移動SEの虜になっていること間違いなし!

 本作のレビューと、本作の開発に関わったエーヴアウト・ヴァン・デー・ワーフ氏、ニルス・スリーカマン氏のインタビューをお届けします。

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[IMAGE]※本稿の画像はすべてPC版の画面を撮影したもの。※本稿はPLAYISMの提供でお送りします。
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影に宿る不思議な存在・スキム

 本作のタイトルにもなっている“スキム”は、オランダ語で“精霊のようなもの”、“目の端に見えるチラチラしたようなもの”を意味する存在。本作では真っ黒なカエルのような姿で描かれ、あらゆる物の影の中に存在しています。

 本来、スキムたちはあらゆる影の中に存在していて、世界中のすべてのものが必ずひとつ、スキムを持っています。そして、子どものころはなんとなく見えていても、大人になれば見えなくなってしまう存在です。このあたりは“イマジナリーフレンド”の現象と共通するものがありますね。

宿主から切り離され、離ればなれになってしまったスキムの物語

 本作では、とあるスキムに焦点が当てられ、物語が展開していきます。

 とある人間の影に住んでいたスキムは、その影の中で、子どもの成長を見守りながら過ごしていました。そして彼が大人になったとき、転んだ拍子にスキムは彼の影から切り離されてしまったのです。

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まだ子どもの宿主。
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学生時代の恋人と。(そのあと別れたっぽい)。
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無事に学校を卒業!
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とあるオフィスで働いていた宿主ですが……。
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どうやらリストラ宣告をされた様子。
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荷物をまとめて会社から出て行きますが……。
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つまずいて転んだ拍子にスキムが……!

 本作は基本的なチュートリアル以外、言語という言語は出てきません。しかし、ゲームをプレイしていれば、自然と物語の内容が把握できる作りになっています。オシャレ。

 宿主の影から長時間離れてしまうのはスキムにとってよくないことです。それに、ずっと見守ってきた人間に対する愛着もあるでしょう。スキムのため、宿主の影への帰還を手伝うことに。

影から影へ、ピチョンと移動で大冒険

 スキムができることは、ジャンプすることと、物体や生き物に憑依してなんらかのアクションをすること。操作もこのふたつ、というシンプルな構成です。

 ジャンプの距離には制限があるので、たくさんの影を経由して進んでいく必要があります。一見すると影が途切れていても、見る角度を変えればジャンプできそうな影が見つかることも! 困ったときは視点を操作して角度を変えてみるのが吉。

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行き止まりのように見えても……。
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視点を動かすと道は続いている。

 また、物体によってはインタラクトできるものも存在します。たとえば、踏切の影に飛び移れば遮断機の操作ができますし、信号機の影に飛び移れば赤、青と色を変えることができるのです。

 動く人間や動物、クルマの影に飛び移ることができれば、かなりの長距離移動が可能に。なんだかヒッチハイクをしている気分です。あながち間違ってはいないのですが。

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信号機の色を変えれば人やクルマが動き出す。
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踏切の遮断機を上げて通行可能に。
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ときには動物の手(足?)も借りよう。

 余談ですが、攻略に直接関係がない物体にもインタラクトが可能です。ゴミ箱の影でインタラクトすればフタがバコッと浮いたり、自転車のベルを鳴らしたり、水飲み場の蛇口を捻ってみたり……ときには、スキムの行動に対して人間たちがリアクションを取ってくれることも。こういう細かい作り込みもいいですね。気分はポルターガイストを起こす側の幽霊です。

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ゴミをばらまくスキム。こら!

 ときには先住民よろしく、ほかの影に潜むスキムたちと出会うことも。スキムどうしで、コミュニケーションを取るんでしょうか? 「あ、ちょっとお邪魔します……」、「あ、どうも……」みたいな。

 伝承によるとスキムは妖精のような存在ですが、どういった生態系なのかも気になりますね。光合成ならぬ“闇合成”でエネルギーを生成していたりするんでしょうか。

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車の影に住んでいるスキムは大きい。

デザインのよさ、そして歯応えのあるアクション

 プレイしていて感じたのは、まず、デザインのよさ。

 没入感を高めるためにスッキリとしたUI、スキムが移動するときのピチョンという音の気持ちよさ、テキストを最小限に抑えることでどの国のどんな人が見てもなんとなく理解できるストーリーライン、配慮された色覚デザインなどなど。時間帯によって影の伸び率に変化があるのも細かい。

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日中。
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夕方。
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夜。

 まさにシンプル・イズ・ベストと言いたくなる洗練されたデザインです。それでいてかわいいんですよね。シンプルでスタイリッシュならまだしも、シンプルでかわいい、を作るのは難しい作業だと思います。

 もうひとつの感想は、アクションゲームとしての歯応えもきちんとある、ということ。

 本作の基本動作はジャンプのみ、というシンプルな作りですが、ところどころきちんと難しい。とくに動いている物体の影に飛び移るとき、飛び下りるときのタイミングがめちゃめちゃ難しいんです。

 あれを思い出しました。小学生のときにやったクラス対抗の大縄飛び。肌で入るタイミングがわかる子もいれば、毎回縄ビンタを食らう子もいる。私は比較的縄ビンタを食らう子どもでした。

 
『SCHiM - スキム -』はクラス対抗じゃないし、タイミングを逃してもシームレスにすぐリトライできるのが救い。

 話が逸れてしまいましたが、アクションゲーム好きでも満足できる難易度となっていますので、気になる方はぜひ遊んでみてください。

開発者インタビュー:プレイヤーの想像力をかきたてるデザインを意識

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Ewoud van der Werf(エーヴアウト・ヴァン・デー・ワーフ)

オランダ在住。本作ではディレクターを務め、プログラムや3Dモデリングを担当。文中はエーヴアウト。(写真左)

Nils Slijkerman(ニルス・スリーカマン)

本作の共同ディレクター。レベルデザイン、ストーリー、モーションキャプチャーを担当。文中はニルス。(写真右)

――本作を開発するにいたった経緯をお教えください。

ニルス
 最初は、まだ学生だったエーヴアウトの卒業プロジェクトとして企画されました(※)。それから何度かSNSへ開発状況を投稿しているうちに、さまざまな人から本作へ興味を持たれるようになったんです。

 もともとは短いゲームを作るつもりでしたが、X(旧:Twitter)のポストがバズったことで、いくつかのパブリッシャーが興味を示してくれました。それで、
『SCHiM - スキム -』をもっと大きなものにできると確信し、いまにいたります。
※過去、エーヴアウト氏はスタジオExtra Niceにインターンとして所属しており、Extra Niceは本作のサポートにも関わっている。
――本作を開発するにあたって注力したポイントを教えてください。

ニルス
 エーヴアウトはおもにプログラミングとシェーダーの調整などの、アート方面に集中してもらいました。加えて、プラットフォーム間の齟齬をなくし、スムーズな操作感にするため、エーヴアウトは移植作業をすべてひとりで行ったんです。また、プレイヤーにジャンプアクションをどのように感じてもらうか、彼の中には明確なビジョンがあり、非常に重要なポイントでした。

エーヴアウト
 ニルスはおもにゲームやレベルデザイン、ストーリーの構想、モーションキャプチャーを担当してくれました。
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――影から影への移動やカラーパレットが印象的です。これらの要素を採用した理由を教えてください。

ニルス
 『SCHiM - スキム -』のスタイルは、『タンタン』(※)のようなコミックのリニュクレール風にインスパイアされたものです。また、エーヴアウト自身が色覚異常の一種を有しているため、色を限定し、コントラストをはっきりさせることで、より見やすいデザインを作ることができました。色覚異常の方にもゲームを楽しんでもらえるとうれしいですね。
※『タンタンの冒険』シリーズ……ベルギーの漫画家エルジェによる漫画シリーズ。
――スキムはオタマジャクシのような、カエルのような見た目をしていますが、このようなデザインにしたキッカケや狙いがあれば教えてください。

ニルス
 生き物としてのスキムを感じられるようなものにしたかった、という思いがあります。影そのものをインクに見立てて、そこに生き物が住んでいるような感じにもしたかったです。そのため、スキムは少し垂れやすく、伸縮自在である必要がありました。

 『SCHiM - スキム -』の世界では大人には見えないけれど、子どもや動物には見えるので、ファンタジックで、定義できないような生き物を目指しました。つまり、子どものような想像力と、目の端で何かが動くのを見たときのような経験が、スキムのインスピレーションのもとになっています。

――ステージでは自由に影を移動する野良スキムのような子もいましたが、影の中であれば宿主から離れても大丈夫なのでしょうか。

ニルス
 場合によりけりで、モノやヒトによって異なります。デザインの過程で、私たちは世界観に存在するさまざまなスキムについて考え、それらがそれぞれにどう違うのかを必死に考えました。けっきょくスキムとは、物や動物、人の本質や魂のようなものです。そのため、スキムはその人、動物、物体の個性と一致します。

 たとえば、木のスキムは自分の影から飛び出すことはなく、自分の影と同じ場所にいるのが好きです。一方、遊び好きで元気な猫には、影から飛び出して好奇心旺盛なスキムがいるかもしれない。宿主を見失ったスキムは、戻る道を探しているか、あるいは戻るための適切な機会を見つけるまで隠れているでしょう。もちろん、影から長く離れすぎるのはよくないよ!
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――どう生まれどう消えていくのか、生きるのに必要なエネルギーは何かなど、スキムの生態について設定しているものがあれば教えてください。

ニルス
 いい質問ですね! これに関して、私たちは徹底的に話し合いました。スキムの伝承と世界を、非常に解釈しやすいものにしたいと考えていたからです。この質問に答えたいのはやまやまですが、それ以上にプレイヤー自身に解釈してもらいたい、という気持ちが強いです。

 明確な答えではありませんが、私たちはゲーム内の細かいところに、こうした疑問へ光を当てるようなポイントを加え、そこに労力と時間をかけました。私たちにはまだまだ語りたい物語がありますし、将来のコンテンツでこのことをもっと語る方法を検討するかもしれません。

――アクションゲームとして、本作は操作技術が求められるシーンがいくつかあると思います。操作難易度はどのあたりのプレイヤー層を想定して作られたのでしょうか。

ニルス
 親しみやすく、寛容で、リラックスできるゲームにすることが目標でした。マニアックなゲーマーと、ゲームをプレイしたことのない人の両方で試遊してもらったところ、どちらもそれぞれのやりかたでプレイし、楽しんでもらえました。

――ただ影を移動していくのではなく、影の持ち主(物体、動物など)にインタラクトできるのが印象的でした。信号機やクルマ、跳ね板などの攻略に必要な物だけでなく、それ以外の物にもインタラクトできる仕様にした理由があれば教えてください。

エーヴアウト
 そうですね、エリアを探索するのは本当に楽しいですし、ユニークなインタラクションがたくさんあれば、プレイヤーをこの世界のさらに深いところまで誘えると思っています。ただ、ひとつの影にインタラクトできるようにすると、必然的にすべての影へインタラクトできるようにしなければいけないので、かなり話し合って決めたことではあります。

 ですが、実装しました。なぜなら私たちは、プレイヤーの方々がいろんな影にインタラクトして、どんな効果が出るのか試す姿を見るのが大好きだから。何でもクリックできる、何でも起こりうるというゲームがいいと思ったんです。メインストーリーやミッションではないことを試して報酬を得るのは、とても楽しいですからね!

――チュートリアルを除いて、本編では言語を使用せずにストーリーが描かれていましたが、このようなデザインにした理由を教えてください。

ニルス
 私たちは、アニメーションを通してストーリーが伝わる、という構造が大好きです。ピクサー映画やスタジオジブリは、これをとてもうまくやっていて、私たちはそうしたストーリーテリングの大ファンです。アニメーションはデザイン・プロセスの中でもっとも難しい部分でしたが、その出来栄えにはとても満足しています。

 私たちはモーションキャプチャースーツを手に入れ、ゲーム内のほぼすべてのアニメーションを自分たちで収録しました。世界中の老若男女がゲームで何が起こっているのか理解し、自分なりに解釈できるでしょう。
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――ストーリーを表現するうえでこだわったポイントをお教えください。

ニルス
 伝えたいテーマや題材はかなり早い段階から決まっていたのですが、具体的なストーリーの伝えかたは、開発のかなり後半になってから確定しました。

 このゲームの重要なテーマのひとつは、子どものような遊び心です。私たちは世界中のプレイヤーから、“影のみを踏んで移動する”など、架空のルールのゲームを誰もが遊んだと聞いています。具体的なルールは文化によって異なりますが、想像上のゲームは世界共通のようですね。世界を遊び場としてとらえることができるのは、
『SCHiM - スキム -』と共鳴するものがあります。

――日本のゲームファンにメッセージをお願いします。

ニルス
 私たちは2023年のBitSummitと東京ゲームショウで2回、日本のファンの皆さんにお会いすることができたのですが、日本のゲームファンのよく時間をかけて、ゆっくり探求し、実験する遊びかたを見るのがとても好きでした。細かいディテールをたくさん盛り込みましたが、日本のファンはそれを見つけるのがとても上手ですね。

エーヴアウト
 日本のファンの皆さんに心から感謝し、『SCHiM - スキム –』のリリースを楽しんでいただけるとうれしいです。

『SCHiM - スキム –』

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  • 対応プラットフォーム:Nintendo Switch、PS5、PS4、Xbox Series X|S、Xbox One、PC
  • 発売元:PLAYISM
  • 開発元:Ewoud van der Werf / Extra Nice
  • 発売日:2024年7月18日
  • 価格:ダウンロード版:2750円[税込]、パッケージ版:4400円[税込]
  • ジャンル:アクション
  • 対象年齢:CERO 全年齢対象
  • 対応言語:日本語、英語、中国語(簡体字、繁体字)、韓国語ほか全31言語対応予定
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