インターネット上で生まれ、ケイン・パーソンズ監督によるYouTube映像を通じて独自の世界へと発展した奇妙な迷宮“Backrooms”。その映像世界を築いてきたケイン・パーソンズ監督による長編映画『バックルームズ』が、2026年9月4日に日本公開を迎えた。

その舞台挨拶に登壇し、壇上でケイン監督と対談したのは、世界的ゲームクリエイターの小島秀夫監督だ。

1980年代からゲーム制作に携わり、ステルスゲームの礎を築いた『メタルギア』シリーズをはじめ、映画的演出を取り入れた『スナッチャー』、『ポリスノーツ』、太陽光を用いた『ボクらの太陽』など、数々の革新的なタイトルを手掛けてきた小島監督は、10年前に独立。自身のスタジオ“コジマプロダクション”を設立し、断絶した世界を繋いでいく誰も見たことのない壮大な人間の物語『DEATH STRANDING』シリーズを世に送り出した。
一方のケイン・パーソンズ監督は、幼少期からインターネットや3Dツール、ゲームに親しみ、16歳でYouTubeにBackroomsをテーマにした一連の動画を投稿。その総再生数は2026年9月時点で2億7600万回を超えるほどの、デジタルネイティブ世代で最も注目を集めるクリエイターのひとり。20歳で手掛けた、ケイン氏の初の映画監督作品『バックルームズ』は、世界48ヵ国で初登場1位を記録した。
本稿では、そんな世代もキャリアの出発点も大きく異なるふたりのクリエイターによる対談をお届けする。
「デジタル世代は空間をどう捉えるのか」という話から、限られた予算とチームで創造性を守ること、アナログとデジタルの関係、そして“作り続けるための環境”へと話題は広がる。40年にわたってゲームを作り続けてきた小島監督と、20歳でA24作品の監督を務めるケイン監督。圧倒的なクリエイティビティを持つふたりの会話から、世代を越えて共鳴する感覚に迫りたい。
小島秀夫(こじま ひでお)
ゲームクリエイター、コジマプロダクション代表。1980年代からPCやMSXでゲーム制作に携わり、世界初となるステルスゲーム『メタルギア』を皮切りに、映画的な演出を取り入れた『スナッチャー』、『ポリスノーツ』、そして世界的大ヒット作となる『メタルギア ソリッド』シリーズなどを手掛ける。2015年12月に独立スタジオ“コジマプロダクション”を設立し、同スタジオ初のタイトルとして『DEATH STRANDING』を制作。2025年には続編『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』を発売した。
現在はXBOXから、初のホラーゲーム『OD』のほか、新世代のアクション・エスピオナージ・ゲーム『PHYSINT』など複数のプロジェクトを進行。さらに、ゲームだけでなく、映画、アニメーション、音楽などへ活動領域を広げている。無類の映画・読書好きとしても知られ、小島監督の推薦コメントで知られざる名作と出会った人も多数。
ケイン・パーソンズ(けいん パーソンズ)
映像作家・映画監督。オンラインでは“Kane Pixels”名義で活動。2022年にYouTubeで公開した短編『The Backrooms (Found Footage)』を起点に、ネットロア“Backrooms”を独自の世界観で再構築した映像シリーズを展開。3DCGと実写的な映像表現を組み合わせ、広大で空虚な空間や、現実の法則がわずかに崩れたような環境を描く作風で注目を集める。
2026年公開のA24作品『バックルームズ』で初の長編映画監督デビュー。
ケイン監督と小島監督――世代を越えた共鳴
――映画『バックルームズ』公開、おめでとうございます。

小島
どう映画になるのかと、楽しみにしていたんですが、その完成度とアプローチに、びっくりしました。
ケイン
ありがとうございます。小島監督にお祝いしてもらえるなんて! 日本で映画が公開されるのを楽しみにしていたので、いまとてもワクワクしています。とくに日本の観客の皆さんには、映画の中に何か刺激されるものを見つけてもらえたらと思っていて。
小島
映画の公開は、僕も発表以来ずっと楽しみで。じつはYouTubeで“Backrooms”が発表されたときから気になっていて、一連の世界観が興味深くて全部観てきましたから。YouTube版は、ケインさんが16歳のときに撮った作品ですよね?

ケイン
はい。そして映画は20歳のときに完成しました。
小島
20歳。僕も23歳で最初の『メタルギア』を作ったので、なんとなく気持ちはわかります。63歳になったいまでも(笑)。
一同 (笑)
小島
そんなふうに長いことやってきたからこそ考えてしまうんです。ケイン監督は『バックルームズ』で世界的な大ヒットを記録したので、ちょっとだけ心配で。
ケイン
ヒットしたからこその心配。
小島
ケインさんの場合は、この大ヒットをきっかけにして、これから喜びとともに、どんどんステップアップしていくと思うんです。続編の発表もされていて、今後の展開もいろいろと決まっていると思うんですけど……いろんなものが乗っかってくるんですね。
ケイン
なるほど。責任や……。
小島
人やお金のこととかもですよね。
ケイン
ああ、まさにいろいろな意味で、これからはもっと難しくなる感じがしていたところなんです。次はもっと期待された状態でしょうし、賭けるものもきっと大きくなります。それに、いまはこの映画がおかげさまでヒットできて多くの人に楽しんでもらえたのですが、その一方である種の関係者たちは、映画市場の中で高価値で利益を生む商品だと見ているんですよね。そういう人たちとの人間関係のマネジメントも難しいなと思います。
小島
ものすごい規模のヒットで、いろいろなしがらみが一挙に押し寄せてくるだろうと想像して少しだけ心配していたんですよ。僕の場合は、最初はPCやMSXという当時はコアなファンがメインのゲーム市場だったので、『メタルギア』のヒットは徐々に大きくなっていけたんですけれど。

MSX2で発売された初代『メタルギア』
ケイン
そうですよね。次回作についても今作の資金レベルで十分だと思っているので、もっと予算を増やしていろんな人を入れましょうよ、と群がってくるような人たちは中に入れずに進められるのではないかとは思っていました。コジマプロダクションが10周年と伺ってすごいと思ったのですが、今回の映画『バックルームズ』では、バンクーバーのチームと本当にすごく気持ちよくいっしょに作れたんです。彼らのようなチームなら、次も自分たちなりにいろいろ考えながらできるはずだと希望を感じています。
小島
それは素晴らしいです。ビジネスとクリエイティブのバランスをちゃんと考えられていて、安心しました。
――長年ゲームを作り続けてこられた小島監督ならではの視線でケイン監督をご覧になっていたんですね。ちょうど小島監督はことしがゲームクリエイター40周年で、同時にコジマプロダクション設立10周年になりますから。
ケイン
本当におめでとうございます! 僕が初めてあなたの作品に触れたのは、もっと小さいころで、『リトルビッグプラネット』を遊んでいて、そこで『メタルギア』コラボがあってスネークがいたんです。たぶん、6歳くらいの頃。スネークが大好きでかなり遊んでいました。

2008年に発売された『リトルビッグプラネット』では、スネークの姿になれるコラボ企画が展開された。
小島
そのころに初めてスネークと出会った……! それは僕も年を取るわけだ(笑)。
デジタル世代にうならされる
――ケイン監督は『バックルームズ』を、そして小島監督も『DEATH STRANDING』をA24で映画化予定と、ご縁がありますよね。
小島
YouTube最初期から注目していたので、A24から映画化、と聞いたときはいいセンスだと思いました。……あ、僕もA24から映画化するので(笑)。
ケイン
そうですよね(笑)。映画『バックルームズ』はどうご覧になっていましたか?
小島
いまだから安心して言えますけど、映画化が発表されたときは、やや疑問視をしていたんですよ。映画になるならストーリーも必要だろうし、あの一連のYouTube作品をどうするんだろうと。
ケイン
じつは、僕自身も一連のYouTube作品の世界観を映画化するということについては懐疑的だったんです。あらゆるアイデアや企画が、従来型の長編映画であるべきだとは思っていなかったので。
小島
でも、ケインさんのようなYouTubeとYouTuber世代、つまりデジタル世代のスタイルは、軽々とそんな疑問の先を行っていたんですよね。映画を観させてもらって「そうきたか」と唸りました(笑)。
ケイン
うれしいです。僕がとくに探していたのは、YouTubeで描いてきた“Backrooms”の世界観の中で、連続するシリーズものの形式としてまだ扱い続けたいある種の物語展開があって、映画で試してみる意味があるものだと感じていたものだったんです。
小島
年代の差もあるからか、映画を観る前は、ちょっとだけどこかケインさんを甘く見ていたところがあったかもしれないです(笑)。でも、映画はストーリーや人物設定の構造もすごく興味深くて。YouTubeからのファンだったら、いったいBackroomsに主人公が必要なのか? と思ってしまいがちなところだと思うのですが、あの世界への入り口があるのは“家具屋”。しかも客が来なくなって、店長が店の中に住んでいるっていう設定にびっくりさせられて。

ケイン
よかった(笑)。
小島
人のいない閉店後の家具屋って、ものすごくシュールな風景でリミナルスペース的ですよね。このロケーションの設定も秀逸なんですが、物語構造もまたいい。家具屋に住んでいる彼は、ちょっと精神的に悩んで、それを相談するカウンセラーがいる。ネタバレにならない範囲だと、この家具屋をカウンセラーが探しに行って……という、二つの物語が併走する構造。それが人の記憶と物体が散逸するBackroomsの空間そのものとも対応しているという。とても考えられているんですよ。

ケイン
どうすれば、YouTubeのファンも、初めて観るお客さんも楽しめるものになるのかと、本当に何度も脚本家と自分とでリライトし続けたんです。
小島
そうですよね。だからこそ、あのYouTubeの映像から、よくぞここまで映画にしたなって思いました。僕の好きなスティーブン・キングの『The Mist』みたいに、異常事態の原因は、得体の知れない組織の実験が背後にあるような、陰謀論的なムードもさらに濃厚に描かれていたところもよかったんですよね。Async社がMRIを作っている会社で……とか、僕の作品でも、そういうの好きで出てくるので(笑)。
ケイン
Async社によるBackroomsの一連の計画は、超自然的なプロジェクトですよね。僕はフィクションとして超自然的なものを扱うときのこだわりというか、自分なりのやり方として、それを何らかの意味で本当に科学的なシステムとして扱いたいんです。
小島
それはすごくわかります。僕もそうです。
ケイン
描いているものは、“そうでなければならないもの”である必要があります。例えば、何かが沈み込んでいるとか、物が散らばっているとか……あらゆる細部が、その状態を生み出したシステムを理解しているところに由来するような。何となく決めるのではなくて。僕が求めている恐怖や、不吉に感じる超自然的要素は、いつも何らかの技術的なシステムから生まれるんです。僕自身はその技術を理解していないかもしれないですが、僕なりのロジックは細かく設定してあり、それが表現の指針になっています。
ゲーム的なアプローチ

小島
シュルレアリスムが好きなので、まさに、あの空間に沈み込んだ椅子や看板などの表現は、とてもアート的に感じたんですよね。デ・キリコとか、マグリットみたいで。そこもすごくおもしろいけれど、まさにあの表現はゲーム的でもあるとも思いました。僕らは3Dでゲームを制作していく中で、オブジェクトが埋まったりするのはしょっちゅう見るんです。
ケイン
そういう幾何学的でシュルレアリスム的な空間表現について言えば、まさに小島監督のおっしゃる通り、かなりの大部分が、ビデオゲームとともに育ったこと……つまり、“物事を組み直すような感覚”から来ていると思います。僕の中では、ある意味で空間そのものをデジタルな構造として把握しているというか。ビデオゲームのプレイでは、自分の環境を把握して、非常に慎重かつ正確に移動しなければならないシチュエーションも多いですよね。
小島
映画は3D空間を撮影しますよね。それをスクリーンに投影するわけなので、レイアウトとカメラが重要になってきます。例えば象徴的な『バックルームズ』のメインビジュアルなどは、映画のセオリーからすると、すべて違和感のある構図なんですが、これってすごくゲーム的には自然というか。

小島
一見すると通路ですが、このまま進んでいくと、次第に狭くなったりとかします。平面の壁も、パースが崩れていることで、新たな空間につながるようなイメージがあって。こういうセオリーを無視した空間の捉え方は、ケインさんやYouTube世代の若い監督が3Dのゲームをずっと遊んでいたことも影響していると思いました。見たこともないし、ちょっと違和感も残る。イノベーション的な意識があります。あとは音のつけ方も従来の映画とはまるで違っていて、ゲーム的なんですよね。
ケイン
本当にそういうふうに言っていただいて、すごくうれしいです。サウンドトラックは自分も参加して作ったんですけれども、その中の一部をループにしたり、リバーブをかけて響かせたりするなど、音響としても使いました。
小島
僕も音楽というか、音にはうるさいのでここも共感度が高くて(笑)。ゲームの音付けとものすごく近いことをしていて、音響にもまたびっくりさせられたんですよね。映画の音楽はたいていが効果音や音響と、サウンドトラックという二層構造なんですけど、ゲームの場合は、そこによりインタラクティブな音付けをします。音を出すものの近くに行くと、音が大きくなったり。メロディにも意味を持たせて繰り返し使ったり。まさに『バックルームズ』でも同じで。蛍光灯が点いていく場面では、視点が蛍光灯に近づくとチリチリした音が距離に応じて聴こえてくるように音付けされていたりして。

ケイン
まさにそうしたんです。僕たちはサウンドトラックを、ゲームのような小さな小節やグループをたくさん使って作りました。メロディについても僕とサウンドデザイナーでスコアを全部取り出して、効果音のように扱っています。空間の中で音楽を鳴らし、距離感に強く基づくものとして鳴らしているんです。
小島
アプローチがゲームと同じですよね。ゲームも3Dの空間に没入するためにそういうことをするので。まあ、このやり方だとサントラが売れるかどうかはわからなくなっちゃうんですが、しかたがない(笑)。
ケイン
そうですね(笑)。でも、映画が終わったあとにも、聴ける体験としてサントラが残っているのがすごく好きです。『バックルームズ』のサントラは、ものによっては5分ほど曲を追加したりして、映画とは別のプロジェクトにしました。サントラを聴くことで、映画の中にカメオ出演するように感じられたらいいなって思っていたんですが、そういう発想になるのは、やはり空間の中に没入するビデオゲームの技術的な特徴を、ある程度理解しながら育ったからかもしれません。
アナログとデジタル――創作の架け橋

――デジタルなゲームの影響を受けながら育ったケインさんは、Backroomsの空間をすべてアナログのセットで作って撮影されたんですよね。
ケイン
そうしました。撮影を終えた翌日には、もう取り壊してしまったんですが。でもAsync社が作った、スレッショルドへの巨大な出入口だけはなんとしても持って帰ろうと思っています(笑)。
小島
セットを壊してしまったのはもったいない。テーマパークにできたのに(笑)。
――そういえば小島監督のデジタルなゲーム作品群も、毎回作中に登場する重要な品々のレプリカが特典として作られています。

『DEATH STRANDING』シリーズに登場するBBポッドなども精巧な特典として再現されたほか、商品化もされている。
小島
やっぱり手元に残せるリアルな実物というのは、特別ですよね。ちょうどケイン監督も、デビュー作なのにかなりの俳優さんたちを使っていて、そこも感心していたんですが、ゲームのCGやアニメーション制作をデジタルでやってきている人って、そういう生身の人間が苦手というケースも多いんです。ライブが怖いというか。自分の設計したものは100%思い通りですけど、人間はそうではないので演技力に左右されます。僕はそこもおもしろいと思うので、俳優さんや声優さんを昔から起用してきました。
ケイン
ええ、僕も同じように感じます。小島監督の作品のように、そういう手触りのある、人間的なプロセスがビデオゲームに持ち込まれるのを見るのはとても興奮します。
小島
昔のゲームは電子音だけだったので、まずしゃべることができなかったんで。でもいまは声が入って、人間の演技が入れられるようになり、デジタルに変換はされてますけど、アナログのモノづくりができるようになったんですよね。
ケイン
Backroomsの廊下の画像を誰かに見せたとして、それが「実際に作った空間」だと言われた場合と、「完全にCG」だと言われた場合では、その人の感じ方は大きく違うと思うんです。僕個人としては、アートや自分のやっていることが、触れられる世界に存在するものであってほしくて。僕の神経系、存在のすべてが、自分が実際に見て、匂いを嗅いで、そして触れられるものに、ずっと強く反応するからです。デジタル世代でもあるので、長時間デジタル情報に触れ続けている状態でも平気ですが……それでも、実際に触れられるものを作っている人たちがいる場所が好きなんです。これからの世代にとって、デジタル技術はさらに発展し、当たり前のものになっていくと思いますし、もしかしたら文字すら自分で書かなくなるかもしれない。でも、子どもたちには生きたアナログな手触りを伝えたいとは思うんですよね。
――まさに『DEATH STRANDING』は、近未来を舞台にテクノロジーの分断と人間の生身の繋がりを描く作品でした。

『DEATH STRANDING』

『DEATH STRANDING2: ON THE BEACH』
小島
『デススト』は、ああいった物語になったんですけど。発想の原点は、ある宗教絵画を見たときのインスピレーションでした。ケインさんも、ネットロアの一枚の画像から『バックルームズ』を生んだので、同じなんですよね。僕はアナログが入り口で、ケインさんはデジタルが入り口だったけれど、交叉するように同じ到達点に向かっているのかもしれない。

ネット上に投稿されたこの画像が、Backroomsの始まりとなった(Wikipediaより)。
自分でプロデュースしたほうがいい
小島
ケインさんはデジタルネイティブで、『オブセッション 災愛』のカリー・バーカーさんも20歳くらいですし、『TALK TO ME』や『ブリング・ハー・バック』のフィリッポウ・ブラザーズもそうなんですが、彼らのような、デジタルYouTube世代のクリエイターって、子どものころからブレンダーやアフターエフェクトもあります。いまはスマホがあれば撮影も音楽も作れる。しかも、配給会社やスポンサーもいらなくて勝手に作ってYouTubeで発表もできる。僕らの時代だと、撮影には高価なカメラが要りましたけど、まったく違う。そんな環境なのに、ケインさんがとくに興味深いのは、一連の作品は、1990年代にビデオカメラで撮影された映像を見ているという体裁……いわゆるファウンド・フッテージなど、アナログな映像表現方法を取り入れているところだったりします。僕らアナログ世代がデジタルに憧れて追い求めたのとちょうど対照的に、ケインさんたちはデジタル・スタイルで、かつてのアナログな表現の手触りを模索しながら、軽々と映画のセオリーを飛び越えて驚かされるような作品を作っていますよね。
ケイン
ゲームの歴史を作ってきた小島監督にそう言っていただけて、本当にありがたいです。
小島
僕はもう20歳には戻りませんけど(笑)。でもとてもシンパシーを感じます。
――世代を超えて共通するお二人ですが、最後に監督デビューを飾ったケイン監督に、40年目のクリエイター人生を歩む小島監督からエールをいただけませんでしょうか。
小島
ケインさんは才能もあると思いますし、これだけの世界観を組み上げているので、 まったくクリエイティブについては大丈夫だと思っていますし、すごく新作も楽しみです。でも、やっぱりこんなにヒットするといろんな人がすり寄ってくるものなんですよ。なので……先に独立した僕から贈る言葉としては、困難もあるし、もしかしたら儲からないかもしれないけれど、これからのクリエイティブは、ケインさんが自分自身でプロデュースすべきです、ということですね。
ケイン
ああ……まさにそれは僕にとって、良い進み方だと思います。僕はすでにYouTubeだけで作品を発表することにとても満足していて、大きな安らぎを感じるんです。なので、YouTube以外ですることには、それをするだけの価値がなければならないと思いました。自分のやっていることを「プロダクト」とも言いたくないような感覚です。それだとすごく企業的に聞こえてしまう。でも、映画でもゲームでも、あるいは自分が関わる何であれ、いま小島監督とお話してきたように、それを作るという行為や手触りそのものが、求めているものでなければならないと思いました。それを追求して作った作品だからこそ、きっとわざわざこの映画を観に来てくれる人たちにとっても、それだけの時間をかける価値のあるものになるんじゃないかって。
小島
本当にいろいろあるんで。でもケインさんは個人のクリエイターとしてしっかりしているから安心しました。ここまでゲームネイティブの映画作りについてお話させてもらったので、今度はケインさんのゲームも見てみたくなりますよね(笑)。
取材・寄稿:百室 100 Room(全領域百鬼夜行観測室)映画『バックルームズ』とは

2026年公開の長編映画。監督は、YouTubeでKane Pixelsとして映像作品を発表してきたケイン・パーソンズ氏。脚本はウィル・スーディク氏。キウェテル・イジョフォー氏、レナーテ・レインスヴェ氏らが出演する。
物語の入口となるのは、家具店の地下に突如として現れた奇妙な扉。その先には、黄色い壁紙の部屋や終わりの見えない廊下など、現実からわずかにずれたような空間“Backrooms”が広がっている。
ケイン監督は2022年、YouTubeに『The Backrooms (Found Footage)』を公開。インターネット上で共有されてきたネットロア“Backrooms”のイメージに、独自の映像表現と物語世界を加えてシリーズ化した。長編映画版はA24とChernin Entertainmentによる作品として制作され、日本では2026年9月4日より全国劇場にて大ヒット上映中。
設立10周年を記念した展覧会 “KOJIMA PRODUCTIONS 10th ANNIVERSARY EXHIBITION BEYOND THE STRAND:創造と挑戦の航路”

コジマプロダクションは、設立10周年を記念した展覧会を、2026年10月31日から12月20日まで東京・麻布台ヒルズギャラリーで開催する。
本展では、2015年の設立から現在まで、コジマプロダクションが歩んできた10年間の創造と挑戦の軌跡を紹介。単なる作品展示にとどまらず、作品やプロジェクトがどのようなアイデアから生まれ、人との出会いやつながりを経て世界へ広がっていったのか、そのクリエイティブの過程そのものに焦点を当てた展覧会となる。
大きな見どころのひとつが、これまで一般公開されてこなかった制作資料だ。コンセプトアートや設定資料、デザイン案をはじめ、開発の過程で生まれたさまざまなアイデアを多数展示。さらに制作スタッフへのインタビューを通じ、完成したゲームからは見えない試行錯誤や制作秘話も紹介される予定となっている。
会場には、設立10周年に合わせて新たな装いとなったコジマプロダクションのシンボル「ルーデンス」の立像も登場。実際にコジマプロダクションのスタジオを訪れたかのような空間演出が用意されるほか、複数のキャラクター立像も本展で初公開される予定だ。さらに、本展のためだけに制作された「360°映像インスタレーション」も展開される。巨大な360度スクリーンを用い、観客をコジマプロダクション作品の世界へと包み込む全方位型の映像体験で、ゲーム、映像、テクノロジーを横断してきた同スタジオならではの展示となる。
会場では、展覧会限定デザインを含む10周年記念オリジナルグッズも販売予定。さらに麻布台ヒルズ全体を舞台としたスペシャルコラボレーション企画も計画されており、その詳細は今後順次発表されるとのこと。
展覧会は2026年10月31日から12月20日まで、麻布台ヒルズギャラリーで開催。10月31日から11月3日までの最初の4日間はプレビュー期間となり、専用のプレビューチケットが必要となる。通常の前売券は2,600円、当日券は2,800円。プレビュー入場券には限定復刻版のコジマプロダクションオリジナルグッズセット付き18,000円、トートバッグ付き5,000円の2種類が用意され、いずれも抽選販売となる。