ロゴジャック広告

『ディアブロ5』『StarCraft』新作発表からXbox新体制下での変化、日本市場へのアプローチまで——Blizzard社長ジョアンナ・ファーリーズ氏が見据える針路

『ディアブロ5』『StarCraft』新作発表からXbox新体制下での変化、日本市場へのアプローチまで——Blizzard社長ジョアンナ・ファーリーズ氏が見据える針路
 2026年9月12日~13日にアメリカ・アナハイムにて、Blizzard Entertainmentのゲームの祭典“BlizzCon 2026”が開催された。本イベント会場にて、Blizzard Entertainment社長のジョアンナ・ファーリーズ(Johanna Faries)氏への単独インタビューを実施した。
広告
 初日に電撃発表されたのは、オープンワールドシューターとして蘇る『StarCraft』とシリーズ最新作『ディアブロ V』。両作の発売時期を早い段階から明かした意図をはじめ、今後のBlizzConの開催ペース、労働協約の批准やXbox新体制との連携、さらには日本市場やクリエイターとの協業に対する想いまで、新生Blizzardを率いるファーリーズ氏に詳しく語っていただいた。

Johanna Fariesジョアンナ・ファーリーズ

2024年初頭にBlizzard Entertainmentの社長に就任。現在は、開発、パブリッシング、事業戦略、テクノロジー、ストーリーおよびフランチャイズ開発を含む、Blizzardを代表するゲーム・ユニバースやIPのグローバルポートフォリオ全体を統括している。(文中はファーリーズ氏)

『StarCraft』、『ディアブロ V』の発売時期に踏み込んだ理由とこれからのBlizzConのありかた

—―BlizzCon 2026初日は2030年に『StarCraft』、2029年に『ディアブロ V』を発売するという電撃発表があり、世界中のファンが熱狂しました。かなり先のリリース時期も含めて明かされましたが、Blizzardが今後どのような未来を描いているのか教えていただけますか?

ファーリーズ氏
 今回の発表であらかじめ発売時期に踏み込んだ最大の理由は、私たちの開発計画に対する高い確信をお伝えしたかったからです。これらはスタジオにとって極めて大きな挑戦であり、両タイトルともそれぞれのフランチャイズの未来を担う超大作(AAAタイトル)です。だからこそ、開発チームが世界クラスの作品を創り上げるための十分な時間と環境が確保されていると感じてもらうことが何よりも重要でした。

 歴史的に見ても、かつてのBlizzardはイベントなどで華々しく発表を行いながらも、実際のリリース時期が見当もつかないという状態に陥ることがありました。今回の発表は、そうしたアプローチからの転換でもあります。

 「いつ出荷できるのか」について高い確信を持ち、時計の針を合わせられるほど正確な計画を立てること、そして大規模にローンチをし、これから数年間かけて熱気を高めていく姿勢を、チームとコミュニティの双方に向けて明確に示しました。

 ゲーム開発のタイムラインにおいて、2029年は決して遠い未来ではありません。瞬きをしているあいだに2030年がやってきます。チーム自身も「遠くもあり、同時に決して遠い未来ではない」と感じながら、最高の作品をお届けするための万全の体制を整えています。

—―BlizzConについて伺います。かつては毎年恒例のイベントでしたが、今回は3年ぶりの開催となりました。今後は再び毎年開催に戻る計画があるのでしょうか? それとも不定期な形が続くのでしょうか?

ファーリーズ氏
 それについては、まさに社内でもじっくりと議論を重ねている最中です。今回のイベントから得られた学びをしっかりと振り返る必要があります。

 3年間のブランクがあったことで、ファンコミュニティの期待が凝縮され、どのゲームファンにとっても熱狂できるコンテンツが満載のイベントとなりました。詰め込みたいものが多すぎて困るほどでしたが、これこそがBlizzConに対して抱えていたいという、うれしい悩みですね。
『ディアブロ5』『StarCraft』新作発表からXbox新体制下での変化、日本市場へのアプローチまで——Blizzard社長ジョアンナ・ファリーズ氏が見据える針路
ファーリーズ氏
 一方で、2024年に私が社長に就任して以降、現場のスタッフから多くのフィードバックを集めてきました。その中で出てきた課題のひとつが「毎年開催というサイクルがときに開発の負担になり得る」という点でした。開発ラインが充実している年はすばらしい発表ができますが、毎年開催に縛られると、開発目標とタイミングが合わない中で無理に発表を合わせようとしてチームが疲弊してしまうことがあります。ゲーム開発には、それぞれ固有の開発ペースが存在するのです。

 そのため、今後は“発表のラインアップに合わせたBlizzCon”へとシフトしていくことが重要だと考えています。チームが万全の自信を持って情報を共有でき、足を運んでくださるファンの皆さんにも「参加すれば必ずすばらしい発表が待っている」と確信していただける状態を作りたいのです。次回の開催時期については、適切なタイミングで改めてお伝えします。

—―BlizzCon以外にも、『オーバーウォッチ』や『ディアブロ』シリーズのスポットライト配信など、独自の大型情報発信が増えています。BlizzConとこうした各種ショーケースのバランスはどのように取っていくのでしょうか?

ファーリーズ氏
 近年、私たちはBlizzConのような巨大イベントだけでなく、小規模ながらも密度の高いコミュニケーションを生み出す場を整えてきました。各フランチャイズがバトンをつなぐように新情報を発信していくリレーレース形式の“Blizzard Showcase”などはその好例です。

 たとえば『
オーバーウォッチ』チームが独自のスポットライト配信を行ったり、2027年に向けて『World of Warcraft: Midnight』をはじめとする最新情報を順次お届けしたりと、発表に最適なタイミングに合わせて柔軟に展開できます。

 2027年初頭に向けても、すでにつぎの展開を準備しています。BlizzConが開催されない期間であっても、こうしたデジタルショーケースを通じてコミュニティとつねにつながり続けることができます。リアルイベントとしてのBlizzConと、臨機応変なデジタル配信が相互に連携するこのモデルは、スタジオにとって極めて強力だと考えています。

歴史的な労働協約の批准と、Xbox新体制下におけるスタジオの変化

—―つい先日、Blizzardの労働組合で初の労働協約が批准されました。AIの利用に関する条項が含まれている点も注目を集めています。社長として、今回の合意にいたるまで、どのような対話があったのでしょうか?

ファーリーズ氏
 これは決して短期間で決まったことではなく、長い時間をかけて対話を重ねてきた結果です。全社が一丸となり、誠実に交渉を重ね、つねに密接なコミュニケーションを維持し続けてくれたチームを誇りに思っています。

 これは私たちが目指してきた極めて重要な到達点であり、このように歴史的な形で前進できたことを全員が喜ばしく思っています。過去数年間にわたり何ヵ月もの時間を費やし、この枠組みを形作ってくれたスタッフ全員に心から感謝しています。今回の合意は、Blizzardが未来へ向かって進むための非常に強固な基盤になると確信しています。

—―前回のBlizzCon 2023は、MicrosoftによるActivision Blizzardの買収完了から3週間後の開催でした。その後、Xbox側も新体制となり、環境が大きく変わりました。昨日会場にはXboxの新CEOであるアーシャ・シャルマ(Asha Sharma)氏も来場されていましたが、新体制となって以降、Xboxとの関係性や開発環境にはどのような変化がありましたか?

ファーリーズ氏
 非常に力強いサポートを感じています。これは私が2024年に社長に就任して以来、一貫して実感していることです。MicrosoftとXboxは、Blizzardが持つブランドの力と、それがゲーム業界全体にとっていかに重要であるかを深く理解してくれています。アーシャやマット・ブーティ(Matt Booty: Xbox副社長兼最高コンテンツ責任者)の手厚いサポートを受けながら、スタジオの未来について対等に戦略を話し合える環境はすばらしいものです。

 もうひとつの大きな利点は、Xbox傘下の多種多様なスタジオどうしが知見や学びを共有できるネットワークです。スタジオごとに直面している課題や環境は異なりますが、つねに対話を続け、密接に連携しようというオープンな文化が育まれています。Blizzardとしての独自のアイデンティティや創造性を保ちながら、ひとつの大きな集合体としても活動できるこの関係性は、今後も続いていくはずです。
『ディアブロ5』『StarCraft』新作発表からXbox新体制下での変化、日本市場へのアプローチまで——Blizzard社長ジョアンナ・ファリーズ氏が見据える針路
左:アーシャ・シャルマ氏、右:マット・ブーティ氏。
—―ファーリーズ社長は2018年にゲーム業界(Activision Blizzard)へ参入され、2024年にBlizzardの社長に就任されました。人材の流動性が高いアメリカのゲーム業界において、クリエイターを惹きつけ続ける“Blizzardというスタジオの魅力”はどこにあるとお考えですか?

ファーリーズ氏
 オープニングセレモニーのスピーチでも触れましたが、Blizzardには比類なきクリエイティブなビジョンと、業界最高峰の才能が集まっています。

 彼らはゲーム内のあらゆるピクセル、細部にいたるまで徹底的なこだわりと配慮を注ぎ込みます。他社との大きな違いを生み出してきた圧倒的な完成度と芸術性を追求する姿勢が、スタジオのDNAとして深く根付いているのです。

 そして文化的には、チーム全体が非常に謙虚で、互いへの敬意と優しさに満ちている点が挙げられます。私はアーティストやクリエイターの情熱に寄り添いながら、戦略・計画・運用とのバランスを取り、会社全体が持続的に成長できる環境を守ることに強いやりがいを感じています。
『ディアブロ5』『StarCraft』新作発表からXbox新体制下での変化、日本市場へのアプローチまで——Blizzard社長ジョアンナ・ファリーズ氏が見据える針路

『オーバーウォッチ』に見るカルチャライズ戦略と日本のゲームスタジオへのメッセージ

—―日本市場について伺います。欧米では『ディアブロ』や『World of Warcraft』が人気の高いフランチャイズですが、日本では『オーバーウォッチ』がコミュニティを含めて非常に大きな成功を収めています。このユニークな日本市場をどのように分析し、今後アプローチしていこうとお考えですか?

ファーリーズ氏
 まさにおっしゃる通りですね。私がチームにつねに促しているのは、“グローバルなマインド”を持つことです。これは全世界ですべてのフランチャイズをまったく同じ型で展開するという意味ではありません。地域ごとに響くタイトルやコミュニティのありかたは異なって当然です。

 重要なのは、その地域に適したサポートを提供することです。コンテンツの差別化を図ることもあれば、現地のクリエイターやストリーマー、あるいは異なるブランドと手を組むこともあります。

 今回のBlizzConでも、世界中のプレイヤーがこの場に集い、“Overwatch World Cup”のハーフタイムショーをYOASOBIが飾るなど、音楽やカルチャーが交差する光景を目にすることができました。これは「機能しているものを積極的に追求しよう」という私たちの姿勢の表れです。日本のコミュニティに響いている要素があるのなら、世界のほかの地域と無理に揃える必要はありません。地域に合わせたカスタマイズを迅速に行える運用モデルを維持し、ファン層との絆をより深めていきます。

—―『オーバーウォッチ』ではYOASOBIやLE SSERAFIMなど、アジア圏のアーティストやIPとのコラボレーションが目立っています。開発チームからこうしたコラボレーションの提案があった際、経営陣としてはどのように判断されているのでしょうか?

ファーリーズ氏
 私の役割は、クリエイティブな才能を持つ開発チームのジャマをしないことです。チームがフランチャイズとコミュニティの双方に深く響くと信じるアイデアを形にできるよう、自由なスペースと裁量を与えることを最優先にしています。

 もちろん、開発チームの創造性を妨げないよう、戦略的に足並みを揃えるためのフレームワークを用意します。開発、プロモーション、事業運用など各分野のチームが一堂に会し、「どこに好機があるのか」、「深めるべきパートナーシップは何か」を結束して話し合います。そして、その試みを成功へ導くための戦略的基盤を整えることこそが、私の責任です。

――日本には世界的に著名なゲーム会社が数多く存在します。将来的な協業やパートナーシップについて、日本のゲームクリエイターや企業に向けたメッセージをいただけますか?

ファーリーズ氏
 もちろんです! 私たちの成功において、日本のパートナーの存在は不可欠です。「A rising tide lifts all boats(全体の状況がよくなれば、個々の状態もよくなる)」という言葉があるように、パートナーシップによってコミュニティが広がり、単独では生み出せなかった新しい価値が生まれます。

 私たちは日本のパートナーへの投資を継続することに極めて強いコミットメントを持っていますし、お互いにポジティブな効果を生み出せるのであれば、新たなパートナーシップを模索することにも非常に前向きです。Blizzard単独では届かない新しい領域へと挑戦するためにも、日本の皆さんとの関係をさらに深めていきたいと考えています。

――最後に日本から会場へ駆けつけたファン、そして日本から見守っているファンに向けてメッセージをお願いします。

ファーリーズ氏
 まずは貴重な時間とリソースを使って、日本からアナハイムまで直接会いに来てくださった皆さんに心から感謝いたします。日本から海を越えて集まってくださる熱量は、決して当たり前のことではありません。自分たちのスケジュールを割いてまで足を運んでくださる姿に、私たちのゲームがいかに深くコミュニティをつないでいるかを実感し、胸が熱くなります。

 そして、日本から配信を視聴し、BlizzConをともに盛り上げてくださったすべてのプレイヤーの皆さんにも、深い感謝をお伝えしたいです。世界中のコミュニティの情熱があってこそ、過去最大のBlizzConを実現することができました。皆さんが注いでくださる熱量に、私たちは全力で応え続けます。これからもBlizzardのタイトルをよろしくお願いいたします。
この記事を共有

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

週刊ファミ通最新刊
週刊ファミ通表紙
購入する
ebtenamazon
電子版を購入
bookWalker