サバイバルホラーFPS『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』(ストーカー2:ハート・オブ・チョルノービリ)の本編をクリアーするころには、探索の舞台“ゾーン”に恐怖を覚えることもなくなっていた。 即死級の罠である“アノマリー”はお宝を生み出す恵みに、危険な“ミュータント”は狩りの標的になった。人間に襲われても、危なげなく返り討ち。理不尽な強敵も退け、少しのミスが命取りになる危険地帯を越えたいま、“ゾーンでは敵なし”だった。
ところが、『S.T.A.L.K.E.R. 2』初の大型DLC“Cost of Hope”をプレイして、その自信が勘違いだったと思い知らされることになる。ゾーンの不可思議具合を舐めていた、と言ってもいい。理解を超えた“空間的アノマリー”の先にあるとあるステージが、いつしか失っていたゾーンへの恐怖を呼び戻した。
これは、2026年8月20日に配信される『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』のDLC“Cost of Hope”で新たな恐怖を味わった男の備忘録だ。先行レビューという形でお届けする。
※画面は開発中のものです。
※PS5、Xbox Series X|S、PCで発売。本稿ではPC(Steam)版を体験しています。
デューティーとフリーダムが衝突する新地域“アイアンフォレスト”
2024年11月21日に発売された『S.T.A.L.K.E.R. 2』は、原子力発電所の事故で危険地帯と化した区域“ゾーン”を探索するオープンワールドFPS。そこで生活する人々や恐ろしい生態系などを描くサバイバルホラーだ。
本DLC“Cost of Hope”では、ゾーンで活動する組織間の衝突を巡る新たな物語が展開される。
物語の発端は、新地域“アイアンフォレスト”で起きた事件。ゾーンを管理しようとする“デューティー”と、ゾーン資源を共有すべきだと考える“フリーダム”。ふたつの組織は反目し合っているものの、協定を結ぶことでゾーン内での協力関係を築いていた。
あるとき、フリーダムの一団が惨殺される事件が発生する。デューティーが犯人だと主張するフリーダムと、無実を主張するデューティー。協定が破られて緊張が走るなかで、主人公のスキフはその真相を探るべくゾーンを奔走する……というのがDLCストーリーのあらすじだ。

意見は真っ向から対立。両陣営と関わりあるスキフにとってはかなり居心地が悪い。
新マップ“アイアンフォレスト”は、メルトダウンが起こった“チョルノービリ原子力発電所”を擁する危険地帯。人の精神を破壊するプサイ放射線が高濃度で漂い、即死級のアノマリーが密集している。道を外れればすぐさまミュータントに襲われ、幻覚、幻聴なんて日常茶飯事だ。

霧が深く電線と鉄塔が乱立する、まさに“鉄の森”。
とはいえ、この程度はゾーンではいつものこと。危険であるほど、まだ見ぬお宝が眠っているのではないかと期待してしまう。ゾーンの探索者“ストーカー”なら、足を踏み入れずにはいられない場所だろう。
新たな敵“アモック”との戦闘は熾烈だった。全身を硬い装甲で覆ったような人型ミュータントで、正面から銃弾を浴びせても簡単には倒れない。効果的に倒したいなら、攻撃をかいくぐり、背中に取り付けられた機械を狙う必要がある。何者かに作り変えられたような姿も不気味で、人間の闇を感じさせるデザインはいかにも『S.T.A.L.K.E.R.』シリーズらしい。


背後の機械は弱点。非常に機械的なデザインだが誰がこんなものを作ったのか……。
事件の真相を追うストーリーも刺激的だ。序盤で心を通わせたフリーダムの一団が、その後、無残に命を奪われる。彼らとは、危険なゾーンで背中を預け合い、助け合いながら苦境を乗り越えようと言葉を交わした仲だ。

みんな苦しいながらも頑張って支え合った。ゾーンで安らげる場所は本当に貴重。
交流した時間こそ短かったが、いつ命を落としてもおかしくない無法地帯で助け合った尊き隣人なのだ。さすがに他人事ではいられない。「彼らに何が起きたのか知りたい」という気持ちも芽生える。傭兵のような側面を持つストーカーにとって、当初はミッションのひとつにすぎなかったはずが、気がつけばそれは復讐とも呼べる個人的な動機へと切り替わっていた。

ゾーンの数少ない団らんの場が血の海と化す。ゾーンで仇を取りたいと思える瞬間がやって来るとは……。
心温まる時間を与えてから容赦なく奪い、その喪失感を先へ進む動機へ変えてしまう。映画などでも見られる演出だが、自分で操作するゲームで体験させるあたり、開発陣はじつに非情である。
自分の判断さえ疑わせる、理解不能な“空間的アノマリー”の先
実際に遊んでみて、思った以上に驚いたステージが中盤にあった。どこへつながっているのかわからない“空間的アノマリー”(ポータル的なもの)の先にある、“誰か”の記憶を再現したような領域だ。
一見すると、小道と階段が入り組んだ霧の深いヨーロッパ風の住宅街。だが、景観は多層的に重なっており、どこへ続くのか見通せないほど複雑だ。最初はどこを目指せばいいのかもわからないまま、探索を進めることになる。

高所からでも全体が見通せないほど暗く、ずっしり重い雰囲気が漂う。
しかも、奥へ進むほど、その複雑さは大きくなり空間の歪みもひどくなる。廊下は同じ場所をループし、重力が反転する。時間も空間も歪んでいるのか、上とも下ともつかない場所が多い。進んだ先には、永遠に続くような階段まで現れる。なにが起きているのか理解が追いつかないが、それでもとりあえず進むしかない。

上下左右が無茶苦茶な部屋も。唐突に現れるので頭が混乱させられる。

とある建物の区画。階段をどんなに下っても同じ場所に行き着く。
仕掛けもまた複雑怪奇だ。行き詰まった場所で隣の部屋の錠前を壊すと、なぜか自室の扉が開いた。チュートリアルや説明があったわけではない。行き詰まった末に、自力で見つけた解法だった。

先に進みたいのに開かない扉がある……。

どうしようもないので、とりあえず壁の隙間からとなりの部屋にある扉の錠前を撃ってみる。

先ほど開かなかった扉の解錠に成功。なぜ……?
進みかたとしては恐らく正解なのだろうが、これが合っているかどうか、明確に教えてくれる存在はいない。謎を解いた達成感よりも、「偶然進めただけではないか」、「この道は死につながっているのでは」という疑いが残る。ふつうならプレイヤーに安心を与えるはずの“正解”が、ここでは不安を深めてくる。
そこへ、突然敵が姿を現す。また、どこからともなく声が聞こえ、意味ありげに置かれた人形はこちらを覗く。不安に不安が重なり、この時点で筆者の心は完全にこの地に取り込まれていった。

ここには人もいる。特殊な手順を踏まないと入れないこの場にどうやって来たのか。そもそも本当に人なのだろうか? いまとなってはもうわからない。
先へ進めば何かが起きる。それでも、脱出するためには歩き続けるしかない。いまの進みかたが正しいのか、目的地へ近づいているのかすらわからない。判断の基準を失ったまま、なにかが待ち受けていると信じながら進む。探索自体が恐怖心を掻き立てる構造が秀逸だ。
これまでの恐怖には銃とアクションで対応できた。敵は倒せる、アノマリーは避けられる。空間的アノマリーで警戒すべきは、敵ではなく空間そのものだ。空間はプレイヤーを惑わせ、判断を欺く。自分を信用できなくなったときには、もう術中から抜け出せない。“Cost of Hope”の空間的アノマリーは、プレイヤーの認識まで揺さぶってくる。

いま自分が迷っているかどうかの判断さえつかない。それでもストーカーは進むしかない。
『S.T.A.L.K.E.R. 2: Cost of Hope』は、怖い。怖いから投げだしたいかと問われたらそんなことはなく、今日もまたマウス&キーボードに手を伸ばしている。恐怖の先にあるお宝を求めずにはいられない、このストーカーの性にはどうやら抗えないらしい。
今回プレイできたのはDLCのごく一部ではあるものの、新たな地、敵、恐怖は十分に体験できたと言える。もうゾーンは怖くないんじゃないか。そう油断しているストーカーにこそ、“Cost of Hope”はゾーンには未知の部分が残されていることを突きつけてくる。
嘘だと思うなら、この先を自分の目と自分の足で確かめてほしい。もっともこれは『S.T.A.L.K.E.R.』。そこで目にしたものを信じられるかどうかは、また別の話だ。

奇妙な場所だがごきげんなお宝は手に入る。これだからゾーン探索はやめられない。
【製品概要】
- 商品名:S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl(ストーカー2:ハート・オブ・チョルノービリ)
- 対応機種:PC(Steam/Epic Games Store/Windows)/Xbox Series X|S/PS5
- 発売日:PC/Xbox Series X|S版 配信中(2024年11月21日(木)配信)、PS5版 発売中(2025年11月20日(木)発売)
希望小売価格
PC/Xbox Series X|S版
- Standard Edition 7950円[税込]
- Deluxe Edition 1万499円[税込]
- Ultimate Edition 1万4499円[税込]
※デジタル版のみ販売PS5版
- Standard Edition 8778円[税込]
- Deluxe Edition 税込1万1528円[税込]
- Ultimate Edition 1万5928円[税込]
※パッケージ版はStandard Editionのみ販売- ジャンル:サバイバルホラーFPS
- プレイ人数:1人
- メーカー:GSC Game World
- CERO表記:Z区分(18歳以上対象)
- 日本版ポータルサイト
- 公式サイト