
2026年7月22日から7月24日にかけて、パシフィコ横浜ノースならびにオンラインにて開催された“CEDEC2026(Computer Entertainment Developers Conference 2026)”。こちらはCESA(コンピュータエンターテインメント協会)主催による、日本最大のゲーム開発者向けカンファレンスだ。

当講演ではそんなゲーム史を、あの名機プレイステーションの生みの親のひとりであり、それ以降も無数のタイトルに携わってきた吉田氏が語ってくれた。ゲーム自体だけでなく、当時のさまざまな出来事や思い出にまで触れている。当記事ではその一部にのみ触れるが、実際の講演では下記26タイトルすべてについて語ってくれた。
(以下、CEDEC2026セッション内容紹介文より抜粋)
- 『クラッシュ・バンディクー』 - 1996 (PS)
- 『グランツーリスモ』 - 1997 (PS)
- 『サルゲッチュ』 - 1999 (PS)
- 『ICO』 - 2001 (PS2)
- 『ラチェット&クランク』 - 2002 (PS2)
- 『God of War』 - 2005 (PS2)
- 『アンチャーテッド エル・ドラドの秘宝』 - 2007 (PS3)
- 『PixelJunk Monsters』 - 2007 (PS3)
- 『リトルビッグプラネット』 - 2008 (PS3)
- 『Demon's Souls』 - 2009 (PS3)
- 『Gravity Daze』 - 2012 (PS Vita)
- 『風ノ旅ビト』 - 2012 (PS3)
- 『サウンドシェイプ』 - 2012 (PS3/PS Vita)
- 『Bloodborne』 - 2015 (PS4)
- 『PlayStation VR WORLDS』 - 2016 (PSVR)
- 『Rez Infinite』 - 2016 (PS4/PSVR)
- 『人喰いの大鷲トリコ』 - 2016 (PS4)
- 『ASTRO BOT: RESCUE MISSION』 - 2018 (PSVR)
- 『Fall Guys』 - 2020 (PS4/PC)
- 『Ghost of Tsushima』 - 2020 (PS4)
- 『Stray』- 2022 (PS5/PS4/PC)
- 『Synapse』 - 2023 (PSVR2)
- 『Stellar Blade』 - 2024 (PS5)
- 『九日ナインソール』 - 2024 (PC)
- 『Clair Obscur: Expedition 33』 - 2025 (PS5/XBOX/PC)
- 『Beast of Reincarnation』 - 2026 (PS5/XBOX/PC)
PS初期から見られる、クリエイター第一の姿勢

吉田氏はいまなおインディーゲーム開発者へのサポートなど、ゲーム業界への多大な貢献を続けており、本年度の“CEDEC2026”でもコンピュータエンターテインメント開発全般に貢献した人物へ贈られる“特別賞”を受賞した。
どちらが正しいということはないが、吉田氏はつねにクリエイター側を選んできたという。この選択は、開発規模が膨らみ続ける昨今のゲームビジネスとしては下手かも知れない。IPをチームで作り上げることが生み出す成功について、吉田氏は先日のファミ通によるカプコンの代表取締役社長・辻本春弘氏へのインタビューについても触れた。
『クラッシュ・バンディクー』 - 1996 (PS)

日本でのローカライズ向けのプロデュースを担当するなかで、当時の集英社Vジャンプ編集長・鳥嶋和彦氏から「このキャラは絶対に日本では売れない」ときびしくもありがたいアドバイスを受けたという。当時のアメリカ版のクラッシュは目が緑、毛がボーボーと我々が知る姿とはかなり異なっていたのだ。
これをきっかけに日本ローカライズではビジュアル面のみならず、ゲーム難易度など全面的に作り直すことにしたという。我々おじさんゲーマーの記憶にいまなお残るあのCMソングとダンスもその一環であり、鳥嶋氏のひと言がなければあの歌も誕生しなかったのかもしれない。
『グランツーリスモ』 - 1997 (PS)

1997年当時、日本プレイステーションスタジオの内部で唯一ゲーム制作をしていたのが山内一典氏のチームだった。山内氏はまだ経験は浅くとも戦略的に考えており、レースゲームの企画を通すために「プレイステーションにも『マリオカート』のようなタイトルが必要ですよね」とカートゲームとして企画を上層部に通し、それでいて中身はゴリゴリのシミュレーションエンジンを入念に準備して仕上げた。
筆者も当時「なんだこのハンドリング!?」と驚かされた記憶があるが、それは山内氏のチーム入魂の物理演算エンジンによる賜物だったわけだ。吉田氏いわく、山内氏のように成功しているチームにはほとんどの場合、強力なクリエイティブを持つディレクターと、マネジメントに強いプロデューサーがぶつかり合っていたという。ひとりでこの両者を務められる例はあまりに稀で、山内氏はその数少ないひとりだという。
『サルゲッチュ』 - 1999 (PS)

当時SCE内部では、『ファイティングバイパーズ』(セガ/1995)でアニメーションなどを担当していた高塚進氏と新人プログラマー2名のチームが3Dアクションゲームを作る実験を進めていた。さらに当時SCEが開催していたゲームクリエイター発掘オーディション“ゲームやろうぜ!”によって、個人応募の優秀な人材が内部制作チームにつぎつぎと合流し、本作開発チームは20数名にまでなった。
インディーゲーム開発者を支援する吉田氏の姿勢にも通じそうな本作だが、さらに語るうえで外せないのはアナログスティック2本を使った操作。右スティックをめちゃくちゃグリグリと回した思い出を持つ読者諸兄も多いことだろう。当時まだ新しい機能だったこのアナログスティックを前提に、さまざまな遊びを議論するのが楽しかったという。
PS2から3の過渡期、失敗もあれば学びも多かった
『Demon's Souls』 - 2009 (PS3)

今回のCEDEC2026のテーマでもある“共創”。それが実現できなかった例でありながら、吉田氏にとってはフロム・ソフトウェア代表取締役・宮崎英高氏との出会いとなった忘れがたいタイトルとのこと。ソニーとフロムの件と聞けば、多くの古株ゲーマーが「あのことか」と思い出すことだろう。
当時、どのようなゲームを作りたいのかとしっかりと聞いておければよかったと吉田氏は語った。吉田氏はファンタジーテーマのタイトルを作っているのだな、という認識だったが、QAから届いた確認用のロムで実際プレイしてみると、2時間経ってもまだ最初のステージにいて、その難しさに驚愕したという。
その難しさから発売前に盛り上がらず、アメリカとヨーロッパのチームからは発売しないと決定された本作。ところが開発期間も延ばして2009年に発売となると、当時の2ちゃんねるなどのネット界隈を中心に「これは神ゲーなのでは」とじわじわと盛り上がり続ける。海外チームもこの人気を認め、精神的続編の『DARK SOULS』発表時にはぜひサポートしたいと申し出たが、別のパブリッシングルートが選択される結果となった。
当時、吉田氏にはアクションゲームの制作ノウハウとして、ユーザーにスムーズに遊んでもらうという考えしか頭になかったという。本作から開発側がどんなユーザー体験を生み出そうとしているか把握することの大事さを学ぶとともに、『ELDEN RING』などでのフロム・ソフトウェアの大躍進を見るに、自分たちが関わらない形になったのは結果的によかったのではと強がりながら思うと吉田氏は語った。
『Gravity Daze』 - 2012 (PS Vita)

ポータブル機のセンサー機能などをフルに活用し、人気を博した本作。吉田氏から見て外山圭一郎氏は、チームメンバーに大きな方向性は見せつつも、それぞれのクリエイティビティーや解釈で提案を求め、メンバーのよさを活かしていくゲーム作りをしていくのが印象的な人物だという。
本シリーズは『2』でPS4に移行するなかで、ポータブル機ならではの魅力などを再現できず、外山氏のチームはそのあとジャパンスタジオから新作は出せなかった。当時のジャパンスタジオのシャットダウンはけしからんとの意見は、いまなお多いという。
吉田氏いわく、当時の日本のクリエイターからのアイデアは非常にクリエイティブながら規模が小さめで、PS4以降の大容量プラットフォームにスケーリングするのが非常に難しかったという。PS4という新ハードをけん引してくれるビッグタイトルが求められるなか、さまざまなアイデアを出ていたもののジャパンスタジオは閉鎖となった。
ただ、外山氏はのちにメンバーを率いて『野狗子: Slitterhead』を発売してそのクリエイティビティを絶やさずにいてくれた。ほかにも2007年に『パタポン』(PSP)を世に出した小谷浩之氏が新作『ラタタン』を生み出すなど、ジャパンスタジオでは生み出せなかった名作を、マルチプラットフォームで遊べる結果になったとも言えると吉田氏は語った。
『風ノ旅ビト』 - 2012 (PS3)

吉田氏がインタビューなどで、いままで携わった中でもっとも誇らしいタイトルとして挙げるという本作。ジェノヴァ・チェン氏は「プレイヤーをどんな気持ちにさせたいか」という点を第一としていたという。
当時はオンラインゲームがとくに人気を博した時代。同年に日本でサービスインしたタイトルだけでも『ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン』、『機動戦士ガンダムオンライン』、『ファンタシースターオンライン2』、『EVE Online』などビッグタイトルが並ぶ。『ファイナルファンタジーXIV』、『TERA』、『リネージュII』、『マビノギ』などの古参タイトルも人気だった。
ただ、オンラインゲームは人気であると同時に、チートや暴言などでいまよりも荒れやすい時代。ジェノヴァ・チェン氏はオンライン上で人と人がいっしょにプレイして、みんながハッピーな気持ちになれるゲームデザインを目指したという。ジェノヴァ・チェン氏が2019年に世に出した『Sky 星を紡ぐ子どもたち』も含め、筆者のようにオンラインゲームを多くプレイしている人が改めて本作に触れると、この話を聞いたからこそ感じられるものがあるかもしれない。
『Bloodborne』 - 2015 (PS4)

『Demon's Souls』でフロム・ソフトウェアとすれ違いがあったあと、もう一度チャンスを与えてもらい、吉田氏としても非常にありがたい話だったという本作。発売前年の2014年に開催されたE3では、プレスカンファレンスでの本作ステージ紹介を吉田氏が務めた。
吉田氏自身も本作ではプラチナトロフィーまで獲得しており、そのなかでもとくに難しかったのは聖杯ダンジョンの炎に包まれた犬のボス(旧主の番犬)だったと語った。実際に吉田氏は、当時SIEジャパンスタジオのYouTube配信でこのボスに挑んでいる。
30年業界を見守る吉田氏は、現役ゲーマーにして皆の父
『人喰いの大鷲トリコ』 - 2016 (PS4)

2005年から実質11年をかけて世に出たタイトル。当初はPS3での開発だったが、パフォーマンスの関係で15fpsしか出ないなど問題を抱え、PS4に移行した。当時はインタビューのたびに「トリコはどうなった?」と聞かれ続けたのを覚えているとのこと。
吉田氏から見ると、上田文人氏は自分のヴィジョンがとくにしっかりしたクリエイターだという。ゲームを開発しているとユーザーは気づかない欠点もクリエイター側からは見えるもので、上田氏は本作を10年作り続けても最後の最後まで直したい部分をリスト化して会議で共有していたという。Summer Game Fest 2026でタイトルが発表された上田氏の最新作『gen ATLAS』もまた、『トリコ』から約10年間作り続けた作品とのことで、吉田氏としても大いに期待しているという。
『Ghost of Tsushima』 - 2020 (PS4)

2019年からサードパーティーのインディーゲームサポートに回った吉田氏が、ファーストパーティーで最後に関わったタイトル。日本の映画のようなタイトルを作りたいというSUCKER PUNCHスタジオの熱意を受け、日本ローカライズチームが全面協力したという。
海外スタジオが制作したプレイステーション系列タイトルとしては、『クラッシュ・バンディクー3 ブッとび!世界一周』以来の100万本販売達成タイトルでもある。
『Stellar Blade』 - 2024 (PS5)

吉田氏がサードパーティーリレーションチームから「韓国でぜひ吉田さんにも来てほしいスタジオがある」と言われて訪問したのが、本作開発を担当したSHIFT UPスタジオ。そこでキム・ヒョンテ氏から「ずっとプレイステーションのゲームを子どものころからプレイしてきて、将来プレイステーションでゲームを出すのが夢でした」と言われたという。プレイステーションの生みの親だからこそ実現する、稀有なシチュエーションだ。
ゲームのハイエンドぶりからファーストパーティーでやったほうがいい、と吉田氏に言わせたいというリレーションチームの思惑どおり、本作は実際にプレイした吉田氏の意見でプレイステーションとのコラボレーションが決定。今後も同スタジオのアクションゲーム制作に、吉田氏としても期待しているとのこと。
『Beast of Reincarnation』 - 2026 (PS5/XBOX/PC)

ここまでたっぷり語ってきたことで「時間がない!」と駆け足の締めになったが、今年2026年発売のタイトルとして最後に吉田氏が語ったのがこちらのタイトル。発売元のFictionsは『STRAY』を見出した慧眼を持つメンバーが設立したパブリッシャーだという。
ゲームフリークの古島康太氏にとっては、初の大型タイトルディレクションとなる。吉田氏いわく、古島氏はものすごく深く考えるクリエイターであり、納得いくまで去年の春からゲームプレイをくり返し、パブリッシャーのFictionsと議論を重ねているのを見てきたという。
吉田氏自身も現在、毎日のようにマスター版をプレイさせてもらっており、楽しくてしょうがないとのこと。できることならこの場を早めに去って続きをやりたいくらいだと語った。
講演総括「なにか新しいものを世に出す手伝いをしたい」

今回は半分も紹介できていないが、約80分となる講演で紹介された26タイトルのエピソードは、リアルタイムで全作品を知っている身としてはそれだけで懐かしさが身にしみた。加えて吉田氏ならではの視点が、非常に新鮮だった。
プレイステーション誕生からいままで、さまざまなゲームを見守っている吉田氏。いまやゲーム業界のお父さんとも呼べるような存在であると、本講演で改めて感じられた。吉田氏にしか紹介できない“自分のゲーム史”と、いまなお活躍しているさまざまなゲームクリエイターとのなれそめなどはとても興味深かった。
今回の記事で触れていないが、吉田氏がなにを語ってくれたのか気になるタイトルがあるという人もいるだろう。レギュラーパス、オンラインパスの購入者は2026年8月4日(火)10:00までアーカイブが視聴可能なので、ぜひご確認いただきたい。
◆『私が出会った素晴らしいゲーム、クリエイター、そしてその創造性について』セッション紹介ページ












