プロ野球速報アプリ『NPB+』、じつはKONAMIが作っていた! NPBEとソニーの3社協業による新アプリの開発と運営の裏側に迫る

プロ野球速報アプリ『NPB+』、じつはKONAMIが作っていた! NPBEとソニーの3社協業による新アプリの開発と運営の裏側に迫る
 2026年、野球ファンのあいだでひとつのアプリが注目を浴びている。
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 NPB公認のプロ野球情報アプリ『NPB+』。

 このアプリ最大の特徴は“ホークアイ”のトラッキングデータがリアルタイムで配信されていること。テニスのイン・アウトを判定する ELC(Electronic Line Calling) にも使われている技術だ。何がすごいのか、まず画面写真を見てもらおう。
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『NPB+』一球速報画面。
 詳しくは記事中でも言及するのだけれど、ホークアイの取得データをアプリ上で視覚的に再現して、ほぼリアルタイムでボールの行方や選手の動きが見られるのだ。

 さらに、ストライクゾーン(目安)も表示され、ホークアイのトラッキングデータ による極めて正確な位置情報が表示される(※厳密には現状の日本プロ野球のストライクゾーンとは定義が異なる。下図参照)。

 それを見られるのは非常にエキサイティングであり、また、回転数や“変化量”はこのアプリでしか見られない情報でもある。だから野球ファンからの注目度は非常に高い。
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『NPB+』では、トラッキングシステムによって取得したデータをもとに、投球コースが可視化されている。判定位置やゾーン設定の考え方は、MLBで採用されているABS(Automated Ball-Strike System)=自動ボール・ストライク判定システムと同じ基準に即しており、ボールが判定位置を通過した際の座標を、ストライクゾーンとの関係が分かる形で示している。(5月18日配信『NPB+で“見える”投球コース――テクノロジーが際立たせるプロの技術』より引用)
 「よくこのアプリを世に出せたなあ」と感心していたら、なんとその開発・運営はコナミデジタルエンタテインメント(以下、KONAMI)が行っているのだという。そう、『パワフルプロ野球』、『プロ野球スピリッツ』のKONAMIである。

 ゲーム会社がなぜ本格的な、そして革新的な野球アプリを開発・運営しているのだろうか?

 詳しく調べると、ホークアイをグループ会社に有するソニー、アプリを開発するKONAMI、そして球団が持つ権利やデータの提供をNPBエンタープライズが担うことで実現したのだという。

 新時代の野球速報アプリ、その開発と運営について、野球ファンでもある記者がじっくり訊いた。あのう、いつにも増して、野球ファン以外の方はけっこう置いてけぼりです。すみません。へでで。

田村哉太 氏たむら かなた

KONAMI『NPB+』プロデューサー。(文中は田村)

平井純貴 氏ひらい じゅんき

KONAMI『NPB+』にておもにディレクションを担当。(文中は平井)

NPBE&KONAMI&ソニーの3社協業

――まずは『NPB+』がどういったアプリなのか、改めてお聞かせください。

田村 
最初に枠組みの話をすると、『NPB+』はKONAMIとソニー、そして主導するNPBエンタープライズ(以下、NPBE)の3社協業で行っているプロジェクトです。

 ソニーのグループ会社であるホークアイさんのトラッキングシステムがプロ野球12球団の本拠地球場に入ったことで、これまでなかなか見られなかった非常に詳細なデータを、ファンの方にもおもしろい形で届けられるのではないかと考えたのが企画のスタートです。そこで3社で集まって、ディスカッションが始まりました。

――企画の発端はどういった流れで?

田村 
前提をお話ししますと、KONAMIとしては「どうやったら野球がより広がっていくか」をずっと考え、取り組み続けています。なぜなら、プロ野球が広がることで、KONAMIの野球ゲームも広がっていくと考えているからです。

 球団の方やNPBさんと個別にやり取りをしているなかで、「デジタルアプリみたいなプラットフォームにファンを集めて、プロ野球のおもしろさを改めて伝えていく場所を作れるのではないか」という話が出ていました。

 そして一方で、ソニーさんのグループ会社であるホークアイさんのトラッキング技術が出てきました。ソニーさんはソニーさんで、球界をどうやったら盛り上げられるか、どうすればデータが普及していくかといったことは考えられていたと思います。

――野球の普及を考えるNPBEとKONAMI、そしてホークアイのデータを活用したいソニーの3社の思惑が合致して

田村 
そこがつながって発展していった感じですね。

 ホークアイさんのトラッキングがそもそもどういう技術で、どういうデータが吐き出されていて、そのデータをもとにKONAMIとしてはどういう協力ができるのか、というコミュニケーションからスタートしました。実際にアプリの制作が始まったのは数年前です。
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協業の概念図。3社がいて初めて成立するのだ。

ホークアイのデータを野球ファンにどう見せるか

――詳しい内容に行く前に、ホークアイのトラッキング技術について改めて確認しておきます。これは球場に複数台の高精細な光学トラッキングカメラを設置して、リアルタイムで画像を解析することで、ボールの動きや選手の骨格などのデータを精密に取得できる技術……というものですよね。

田村 
はい。テニスのELC(Electronic Line Calling)などにも使われています。ホークアイさんのトラッキングシステムは、NPBでも数年前から設置する球団が出始め、いまでは12球団の本拠地球場にはすべて設置されました。

 そして『NPB+』は、そのホークアイさんのデータを視覚的にわかりやすくお伝えすることで、野球がよりおもしろく見られるアプリです。

 ホークアイさんのトラッキングシステムは基本的にはデータを集めるために各球団が自チームのために設置されていったシステムですが、それをもう一段階活用してみようというのが本アプリの出発点です。

――いや本当に、見ていると楽しくて、いままでになかった体験だなと感じます。投球の精密な軌道を始め、打球速度や走者速度、これまで野球中継でも野球アプリでも見られなかったようなデータが、試合進行と同期して見られて。わかりやすくたとえると、『プロ野球スピリッツ』で打球速度や打球角度が出るあの感じの、よりすごい版という感じですよね。

平井 
そうですね(笑)。
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『プロ野球スピリッツ2024-2025』。打撃時に打球速度や角度が表示される。イメージとしてはこれのもっとすごい版。(C)Konami Digital Entertainment
――で、ホークアイで取得したデータをアプリ上でどう表示させるかという部分がKONAMIの担当というわけですね。

平井 
はい。ホークアイさんのトラッキングシステムが12球団の本拠地球場に設置されたので、共通データとして何か使えるんじゃないかと、NPBEさんも考えていたところでした。

 ホークアイのデータはある、これをうまく使えば新しい楽しみがファンに提供できそうだ……という状況があったんですけど、それをどう世に送り出すかというところがなかなか固まりませんでした。本アプリにおいては、NPBEさんとも協議のうえで現状の形になっています。ですので、KONAMIだけでは現在のアプリの形にはならなかった、実現できなかったと思います。

ーーストライクゾーン表示などもかなり踏み込んだアプリになっているなと感じます。3社がいてこその『NPB+』なんですね。3社協業というなかで、KONAMIが担っているのはアプリの設計と開発・運用という部分で?

田村 
そうですね。各球団との関わりが強いアプリになるので、NPBEさんからは顔写真素材の提供をやっていただいています。また、新しい取り組みになるので、球界の理解を得ながら進めていかなければいけない部分も多く、そういったところもご調整と推進をしていただいています。

 ホークアイさん関連のもろもろはソニーさんの分野です。我々は“CMSの動画”と呼んでいるんですけど、こういう動画の出力もソニーさん側でやっています。

 そしてKONAMIとしては、NPBEさんとソニーさんからいただいたデータをアプリに落とし込んだり、アプリの運用を行ったりしているという分担ですね。
プロ野球速報アプリ『NPB+』、じつはKONAMIが作っていた! NPBEとソニーの3社協業による新アプリの開発と運営の裏側に迫る
CMS(Contents Management Systemの略称)動画。ボールや選手の動きを再現して3D映像として出力、鳥瞰視点などいろいろな視点で打球の高さや速さが見られる。ホークアイのデータからボールや選手の動きを抽出して再現される3D映像。

先行アプリとの差別化

――プロ野球速報アプリというカテゴリーではいくつかの先行サービスがあると思いますが、『NPB+』ではホークアイのデータ以外にはどのように差別化を図ったのでしょう。

田村 
ほかにないデータが見られるというのはもちろんのこと、「こういう風に見たいんだよな」というUX(ユーザーエクスペリエンス。ユーザーの体験や印象)についても、しっかりと落とし込もうと考えて開発しました。

 もうひとつ開発時に掲げていたのは“個人にフォーカスできるようにすること”です。

――と言いますと。

田村 
好きなチーム、球団を追いかける方はたくさんいると思いますが、個別の“選手”でもう少し掘り下げられるようにしようと意識していました。具体的には、選手をお気に入り登録して、その選手の現在の速報や成績などがすぐに見られるように設計しています。
プロ野球速報アプリ『NPB+』、じつはKONAMIが作っていた! NPBEとソニーの3社協業による新アプリの開発と運営の裏側に迫る
個人成績や打球速度の記録などが個別に見られる。
田村 
当時、メジャーリーグで活躍する選手が目立ち始め、大谷翔平選手もすごく話題になっていた時期なので、選手ひとりだけを追いかけるファンが増えつつあると感じていました。“推し活”的に、チーム同様に選手個人を追いかける文化が生まれるだろうと考え、差別化のテーマにしました。

平井 
当時、検索のトレンドを調査したときに、“読売ジャイアンツ”と“大谷”というワードで同じぐらいの数だったんです。

 ひとりだけでそれだけファンを熱狂させる可能性があることがわかったので、球団ではなく気になっている選手だけ見たいという人もいるのだろうと。そういう方にとって選手個人の情報を簡単に見られるように設計しました。

 そして、選手から入ってチームのファンになるケースもあると思いますので、そういう導線も用意したいと設計段階から考えていました。

2026年春の本格運営にいたるまで

――2025年の秋からテスト版の運用が始まって、2026年シーズンから本格運用になりました。どういう経緯でスケジュールが決まったのでしょうか?

田村 
開発の都合もありましたし、やはり新しいアプリですので、怖さもありました。

 KONAMIとしても球界としても、「これを出してどういう反応が来るだろう?」と、早めに試してみたい気持ちと、少しおっかなびっくりなところもあったので、まずはポストシーズンで反応を見てみようと考えました。

 そこで速報部分などに焦点を絞りつつ、感度の高いユーザーさんにまずは見ていただいたという流れです。

――昨年のテスト版の際はあまり宣伝もしていませんでしたよね?

田村 
そうですね。当時はとくにプロモーションも大きくはしていなくて、簡単なプレスリリースの発信くらいでした。それでもやはり多くの方にインストールしていただき、多くの反響をもらえましたね。

――かくいう僕もそのひとりです。じつはというかあまり知られていないかもしれないところでは、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)2026の試合もこのアプリで速報が見られましたよね? 今回、テレビ放送がなくて、独占配信(とラジオ)だったので、助かった方もいたのではないかなと思います。

田村 
侍ジャパン事業を担うNPBEさんがいるので、我々としても、『NPB+』は侍ジャパンもしっかりと追いかけていくアプリであるべきだろうと最初から話していました。
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――MLBの球場はホークアイのシステムが導入されているので、そのデータさえ手に入れば同じようにできるわけですね。あとは、NPBEを通じてMLBに話を通してもらえればいけると。
 
田村 
おっしゃる通りです。ホークアイさんの部分で、ソニーさんとMLBさんのつながりがもともとありますし、日ごろからやり取りもあったそうなので、そういった関係性もあってスムーズに進みました。

――3社協業のいい作用が出たわけですね。2025年のポストシーズン、2026年春のWBCと運用してみて、どういうフィードバックがあったのか、本格運用に活かされた部分があれば教えてください。

平井 
テスト版では1球速報しか出していなかったので、「もっとこういった情報がほしい」という意見が集まってきました。

 最初に集まってきたユーザーさんはコアな野球ファンだろうと思いますので、指標に関してはそういった方の意見の多いものから順番に入れていった感じではあります。

――OPSとか。

平井 
そうですね。『NPB+』では、「データを民主化していきたい」という大きなテーマがあります。

――データの民主化。

平井 
たとえば、“OPS”は、かなりわかる人も増えてきたと思うんですけど、“ハードヒット(打球速度が約153キロ以上の強い打球のこと)”というと、まだ日本での認知度は低いと思います。“打球速度”もかなり民主化されたデータだと思いますが、“K%”と言われたら「何それ?」となる人も多いですよね。

 各指標がどのくらい認知されているか、民主化されているか、どんなデータを表示するかといったバランスを、ユーザーさんの意見の量から計っていました。こういった部分は調査しにくいところですので。

――打球速度などの細かなデータはフィードバックを受けて入れたわけですか?

平井 
テスト版では最高打球速度しか入れていませんでした。でも、やっぱりユーザーさんはほかの選手との比較がしたい人が多くて、“平均”が見たいという要望が多かったので入れることにしました。

 パーセンタイル表示(全選手の成績を下から順に並べた際、どの位置にいるかを示す相対評価指数)についても要望が多く、製作委員会で話しているところです。

複雑なプレイはどう登録している? アプリ運用の実態

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――アプリの運用についても詳しく聞かせてください。ボールや選手の動きはホークアイのトラッキングシステムから自動でデータが入ってくるとして、それ以外のプレイや複雑な点の入りかたなどの反映は、どのように対応しているのでしょうか?
 
平井 
選手の動き、ボールの軌道などは完全にホークアイさんが取得するデータで自動で描かれています。ただ、これだとどこからどこまでがワンプレイかわからないので、試合ごとに現地に入力オペレーターが配置されています。

 たとえばゲーム中の実際の判定がボールかストライクか、アウトかエラーかなど、その場にいないとわからないものを入力したら、それがトリガーになってワンプレイと判断しています。

――ああ、なるほど。ホークアイは選手やボールなどの動きを追いかけるけど、どういうプレイなのかを判断しているわけではないんですよね。野球はインフィールドフライやエラー、ランナーの追い越しなど、かなり特殊なプレイが起こるケースもありますよね。

田村 
起こり得ます。

平井 
よほどのことがない限りミスはないと思いますが、修正できるようになってはいます。

――ホークアイのトラッキングシステムが設置されていない地方球場での試合はどうなるんでしょうか?

平井 
オペレーターが入力した結果だけが表示される形になります。だからリアルタイムの動画とか投球コースや回転数といったデータはナシになりますね。

 ゆくゆくは地方球場開催の試合にもホークアイさんのシステムを入れられないかという議論はあるようです。

――へええ、なるほど。ホークアイ部分は自動なんだけど、それ以外は人力でがんばっている……となると、けっこうマンパワーが必要ですね。

田村 
そうなんですよ。

――各試合にデータ入力のオペレーターが必須となると、人件費も掛かりますよね。

田村 
秘密です。

――(笑)。『NPB+』のマネタイズというのは現在どのような形で?

田村 
アプリ内で広告が出ますので、基本的には広告モデルでやらせていただいています。ただ、マネタイズの部分では、広告表示以外にもやはり必要だと考えています。

 KONAMIとして「プロ野球ファンの人なら必ず持っているアプリにしたい」という野望はあります。『NPB+』にはそのポテンシャルはあると自負しています。実際にそれぐらい多くのお客さんに普及してくると、いろいろと見えてくるかなと思っています。

――UZR(守備範囲の指標)なんかも、ホークアイの仕組み的にかなり正確に出せそうな気がしますし。野手の送球速度ランキングとか守備で走った距離ランキングみたいな、ちょっと変わったデータなんかもこの仕組みなら取れそうですよね。イチ利用者としてすごくおもしろいアプリだと感じているので、ぜひいろいろな形で利益が上がり、リクープできて長続きしてほしいと思っています。

ゲーム開発とのシナジー効果

――KONAMIといえば、『パワフルプロ野球』、『プロ野球スピリッツ』(『プロスピ』)シリーズなど野球ゲームも手がけています。『NPB+』とゲーム開発の相乗効果はあるのでしょうか?

田村 
『NPB+』の画面を見ていただくとわかるんですけど、1球速報の選手モデルは『プロ野球スピリッツA』(『プロスピA』)のものを使っています。

――あっ、本当だ! 言われてみれば。
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選手はじつは『プロスピA』の姿。
田村 
これまでKONAMIが持っているアセットや知識、野球エンジンなど、使える技術は活用しています。

 一方で、『NPB+』から取得できるデータをゲーム側に向けてはどのように使えるのかというのは、議論が続いています。これまでなかったデータを、どう活用するか。

――ボールの回転数や変化量もダイレクトに見られますもんね。

田村 
あと連携としては、“パワスピポイントクラブ”という我々がやっているポイントサイトで『NPB+』との連携キャンペーンをやったのですが、これはすごく反響がありました。

 本当に多くの皆さんに連携していただいたので、今後どんな体験を届けるのかを議論しています。ゲームを通じて『NPB+』にも何かが起こるという、プロ野球全体を楽しんでもらえるような仕掛けづくりをできればと思っています。

――将来的に『NPB+』が野球ファンにとってなくてはならない必須アプリになって、ゲームとシナジー効果があると楽しそうです。

田村 
『プロ野球スピリッツA』では、球団ではなく好きな選手を中心に集めてチームを作るプレイヤーも多いんです。ふだんは野球をあまり見ないけどゲームとして楽しんでくれていて、「この選手が強いから」という理由で使っているわけです。

 そして、その選手が実際にどんな選手なのか気になったときに、横に『NPB+』があると、一連の体験としてプロ野球ファンになってもらえる設計にできたらと考えています。

“横変化●●cm”は何基準?

――アプリ内の少し細かな質問になりますが、アプリ内では投球時の変化量も表示されています。これは何を基準にした数字なのでしょうか?
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これ。ちなみに“rpm”は1分間あたりの回転数。
平井 
詳しくは書いてはいないんですが、“ボールがまったく回転しなかった際に、その速度で飛んでいった場合に、どれだけ重力の影響で落ちていくか”を基準0としています。

 それに対して、ボールのスピンによって少し変化するわけです。上に行くとこの差がまず高さのプラス変化量になります。そして、右ピッチャーのシュート回転だと右方向に少し変化しますが、これが横のプラス変化量です。数学のx軸とy軸と考えてもらえればわかりやすいかもしれません。
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捕手から投手を見た視点での数値。
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『NPB+』の変化量の見かた。たとえば、変化の大きなスライダーである“スイーパー”の定義のひとつに、この図で言うと“マイナスの変化量”が25cm以上であること、というのがある(右投手の場合)。
――投手から打者を見たときに、右側がx軸のプラスで、上側がy軸のプラスになるわけですね。

平井 
そうです。データがお好きな方のあいだでは浸透しているのですが、一般にはそこまでまだ浸透しておらず、浸透し始めている……くらいの感じでしょうか。

――「浮き上がる」と言われた昔の藤川球児投手や江川卓投手のストレートは、もしもわかったらすごい数値が出そうです。昔に『NPB+』があったらなあ。

平井 
そうですね、変化量の数字でも、球の“ノビ”と言われるものがわかりますから。

 解説の人が「球がノビてますね」と言ったときに、昔はわからなかったことがホークアイさんのトラッキングデータ数値を見れば、実際にホップ回転していることがわかると思います。

 社内の目標として“業界視聴率を上げる”というのもあります。たとえば、解説者の方はもちろん、スポーツ紙やメディアの方が『NPB+』の数値を使って記事やニュースで発信してほしいと思っています。

――そこまで数値や指標に詳しくない初心者の方は、『NPB+』のどこを見るのがオススメというのはありますか?

田村 
あまりプロ野球を見ない方であれば、ランキングを中心に見てもらえれば楽しいと思います。そこから、「こんな選手がいるんだ」と知ることもできますから。そこから、気になった数値について掘り下げていって、沼に入ってもらえればと。

――たしかにランキングとデータを見ているだけでも楽しいですよね。
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ランキング画面。
田村 
あとは、ニュース欄にあるコラムもオススメです。たまに“データの見かた”のような、かなり濃い内容のコラムを出しているので、データ野球の沼にハマりたい人はぜひ読んでみてください。

平井 
まずは1球速報の数値を見ながら、試合中のその瞬間でしか得られないデータもあるので、それを楽しんでもらえればと思います。中継よりもより正確な数値が出ますので。

――なるほど。ただ、テレビを観ながらアプリを見ていると、つぎの球を投げたときにデータが取得されているので、直前の投球データがなるべく早く見たいと感じることもあります。

平井 
そのご意見は非常に多いです。更新ボタンを押せるようにするとか、何らかのアクションを起こせるようにするとか、一定時間変化がなければ何かを表示するといったものは必要だろうと考えています。

――テレビを観ながらだと状況はわかりますが、アプリだけで見ている人は更新が止まると、球場で何か起こっているのかわからないですよね。

平井 
そこが課題ではありますね。

――では最後に、『NPB+』について、読者に伝えたいことがあればぜひ。

平井 
何より、まずは使ってみてほしいですね。

田村 
そうですね、プロ野球が好きな方であれば、まず一度手に取ってもらいたいです。

 我々も日々ブラッシュアップしていますので、たまに戻ってきていただければと思います。NPBE、ソニー、KONAMIという3社だからできることが、この後もたくさんありますので、日々進化する『NPB+』を使い続けてほしいですね。
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【記者の目】野球ファンなら必携アプリに

 というわけで、注目の新野球速報アプリ『NPB+』についてじっくりしっかり訊きまくってきた。

 プロ野球ファンとしてもともと注目して使っていたところに、ゲームファンとしてはおなじみのKONAMIが開発・運営しているというのだから、これはもう詳しい話を訊きに行くしかない……という使命感(?)を持って行った取材。アプリ開発の発端や開発者の熱意をしっかりと訊くことができた。

 投球時のストライクゾーン表示も含め、「ホークアイのトラッキングデータを使って野球の新しいおもしろさを提供したい」と考える3社の姿勢はじつに積極的なもので、とても好印象だ。マネタイズに課題を残すというけれど、ぜひできる限りがんばってほしい。

 MLBの“ABS”が将来NPBにも導入されるかは不明だけど、ホークアイのすごさが手もとで体感できる本アプリ。NPBEとKONAMIとソニーの3社がそれぞれの得意分野を持ち寄って初めて実現できている、じつはすごいことだ。プロ野球ファンの方はぜひ試してみてはいかがだろうか。

担当者プロフィール

  • 堅田ヒカル

    堅田ヒカル

    ギリ昭和生まれのファミ通編集者。富山県出身。秋葉原と神宮球場に出没。酒とゲームとスワローズと本と旅と犬と猫を適量かき混ぜたら完成。『パワプロ』、『シェンムー』、『ドラクエ』、『逆転裁判』、『グランツーリスモ』が好きな雑食系ゲーマー。内野手。右投げ右打ち。

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