本誌ではこっそりテスト版をプレイさせて貰ったのだが、異国の香りと湿気が漂ってきそうなリアルな質感の香港アンダーグラウンド世界で、“こちらも敵も一発が重いバランスかつ、ボディカムFPS特有のクセがある挙動の中でやみくもに撃ちまくる”という、手に汗握りまくりの緊張感がハンパない作品だ。
「香港のアクション映画への愛をこめた」『Better Than Dead』開発インタビュー
香港の古い中国的な街中を舞台にしたのは、私が長年抱いている香港のアクション映画への愛という、もうちょっと個人的な理由から来ています。(ボディカムFPSを検討し始めた時に)あの雰囲気が自然に感じられたので、最初からこの方向性で実験を始めたんです。発端は個人的な試作に過ぎませんでしたが、少しずつこれが本物になると理解し始めました。
――狭い空間での激しい銃撃戦の体験がこのゲームの核だと思いますけども、ゲームプレイの点でその他の柱はどういったものになりますか?
主人公はプロの兵士ではなく、極限の暴力の中に放り込まれたハンドガンを持った普通の若い女性です。ゲームを攻撃的でプレイアブルなものに保ちながら、その脆弱さを描き伝える。これこそがこのプロジェクトの核心的な挑戦のひとつです。
別の柱として、道徳的なプレッシャーがあります。このゲームには無実の市民が出てきますけど、彼らを登場させたのは、復讐をスッキリした抽象的なものにしたくなかったからです。復讐心に駆られたやみくもな攻撃性と罪悪感の間の緊張をプレイヤーに感じてもらい、その暴力が何も関係なかった一般の人に波及してしまった時に何が起こるかを問いかけたかったんですね。
というのも、これはドラマチックな香港アクション映画にもしばしばあるテーマで、ゲームにああいった感じを残したかった。これは単にテーマ的なだけでなくて、ゲームプレイにも作用するものですから。
それと私は昔のアーケードゲームの設計が好きなんです。メカニズムは限られてるけど、プレイヤーがそれをマスターすることでシンプルな動作をより完璧なプレイへと昇華できるという。
要素を絞ることで、本能的に戦わざるを得ない銃撃戦の緊張を作り出す
息が詰まるような狭いステージでは、より本能的な反応が強いられます。もう少し広い空間になるとリズムが変わって、ポジショニングと思い切って前に出ていく勢いがより重要になります。市民がいることで躊躇することになったり道徳的なプレッシャーを受けることもあるでしょう。

なのでバリエーションは手作りのシチュエーションやペース、各ステージがどう同じ基本要素を異なる方向に押し進めるかによって生まれます。プレイヤーに限られた手段を与えて、それをエキサイティングに活用する方法を発見させ続けるようなゲームが好きなんです。単に目新しいメカニズムを足すよりも、その方が強いアイデンティティを与えてくれると思っています。
――このゲームならではのTIPSはありますか? スライディングからアグレッシブにプレイするとうまく行くような感じがありましたが。
(“正解”がある)戦闘パズルかのように毎回プレイするよりも、リズムを信じて思い切って前に出て取り組むプレイヤーをこのゲームは報いる傾向があります。スライディングは単にスタイリッシュな動作というわけではなくて、より大きな流れの一部としてくり出した時に最も効果を発揮します。

同時に、攻撃性は意思と共存しないといけません。もし無実の人々が死んでしまうと、ゲームが微妙な形でプレイヤーに不利な方向へ傾き始めます。なので最高のプレイはプレッシャーと勢い、そしてコントロールのバランスの中から出てきます。
――ステージクリアー画面で市民の死亡数がカウントされますが、自分の名誉のためだけじゃなくて実際ゲームに影響する部分もあると。
先ほど触れたように隠れたゲームシステムも存在し、一般市民が死ぬとゲームがわずかにプレイヤーに対して不利に傾きはじめます。運があなたの味方ではなくなったかのように、だんだん厳しく、より懲罰的になっていくんです。でも、明示的なフィードバックやUIを通じてそれを説明したくはありませんでした。プレイヤーがなぜそうなったのか理由を完全に理解しなくても、本能的に感じてくれることを期待しています。
アーリーアクセスの“To the Hell”では道徳的なプレッシャーとしてだけでなく、その回のプレイを不利に転じさせうる隠れた強制力として、体験の中の意味ある一部としてすでに機能しています。なので決して象徴的なものではなく、重みのあるものとなっています。“To The Heaven”ではそのモード名が示唆する通り、その重みはさらに強くなるでしょう。

なのでアーリーアクセス期間中でも、このゲームは独自の形とアイデンティティを持つ完結した体験だと考えています。(“製品版”にはパーツが足りてないような)断片のようには感じられないはずです。
これはこの世界への完全な降下であり、再プレイ性と熟練と毎回のプレイをさらに押し進める喜びを中心に構築されています。さらにより深く体験を追求したいプレイヤーのために、よりハードコアなモードとして“To The Heaven”も開発中です。(そのための追加ステージも予定しています)
ひとりでゲームを作ることは膨大な時間がかかりますが、その多くはそれぞれのステージがちゃんと意図のこもったものに感じられるよう費やしています。多くのプレイヤーが気づかないだろう細部にも、世界をより豊かに、銃撃戦をより激しくするために作り込んでいます。
――拳銃以外の銃は出てきますか? 拳銃は乾いた雰囲気にとても合っていると思いますが、個人的にはUziやMac-10なら行けるのではと感じるのですが。
それは彼女が何者であるかを強調するとともに、ゲームに非常に特定の規律を与えます。さまざまな銃器で体験を広げるより、ひとつの状況をより深く掘り下げて、その制限が与える緊張やリズム感、残酷さを中心にゲームを動かしていきたかったんです。
UziやMac-10は設定には完全に合うと思いますが、ゲームをよりよくあるシューターの方向に持っていってしまうことにもなるでしょう。私はある種の乾いた感覚とプレッシャーを保つことに惹かれるので、奇妙なことに、拳銃しかないということすらも、戦闘にアイデンティティを与えるものの一部になっているんです。
映画的な空間を生み出す
ある意味でこのゲームは、私にとって香港アクション映画と結びついた場所の個人的な百科事典のようなものですね。でも私を最も刺激したのはあの世界の日常生活と結びついた普通の場所なんです。市場とか路地、店、階段、廊下、そういった密度が高く、親しみやすく、人々の生活を感じさせる空間です。
実際の制作ですが、自分でフォトグラメトリーを行ったわけではありません。既成の素材、一部のフォトグラメトリーされた素材、改変した要素、細部のカスタム、ライティング、看板、そういったものや作業を組み合わせ、試行錯誤をくり返して作り上げたものです。
ひとりでやっているのですごく時間がかかりましたが、この作業がとても好きなんです。手作業で空間を形成して、もっと豊かに、もっと密度高く、より活き活きとしたものに仕上げていくのは、私にとって開発の中でもっとも満足感のある部分のひとつです。

――ところで、ゲーム開発を始めたきっかけは? これまでのキャリアについて教えてください。
長年、おもにイタリアの映画業界でVFXを中心とした映画の仕事をやってきたんですが、ゲームは常に私の最大の情熱でした。そしてVFXキャリアの後半で、バーチャルプロダクションやバーチャルセットの作業工程を通じてUnreal Engineへの理解を深め始めたんです。少しずつ、それが私に扉を開いてくれました。段々VFXの世界から離れて、ゲーム開発に完全に専念していくようになったんです。
私は長年チームで働いてきましたが、本来は孤独を好む人間でもあるので、良くも悪くも完全に自分ひとりでなにかを作ってみたいと感じていました。なので個人でのゲーム開発は職業上の新たな道であるだけでなく、非常に個人的な、ある種セラピーみたいなところもあります。

私はずっとアジアの文化に魅了されてきました。『Forza Polpo!』と『Mountain Boy』の場合、日本の影響は私にとって非常に自然に感じられます。私はイタリア人ですが、イタリアと日本の美学の間に一定の親和性を感じてきました。どちらも異なる形で、調和・美・自然の存在、そして雰囲気と環境への深い配慮を重んじているように思えます。
――あなたの視点から見たイタリアのインディーゲームシーンはどんな感じなのでしょうか?
大作FPSのファンよりも、オリジナルな体験を好むFPSプレイヤーに届けたい
現在特に集中しているのは、機能を積み重ねるというより、コアの体験をより強烈にすることです。戦闘の感じ、明確さ、ペース、接敵の状況、各銃撃戦のなかで感じられる勢いなどを気にして調整を進めています。
クローズドプレイテストのおかげで、理論上は面白そうだったけど実際のゲーム体験を弱めていた要素や、単純に楽しくなかったメカニズムを取り除いたり変更することが出来ました。それとDiscordサーバーに参加してくれた皆さんには、フィードバックだけでなくシェアしてくれたアイデアや参考資料にも感謝したいですね。香港出身の人がいたことなども、とても助けてくれました。

なので、コンパクトで何度も遊べて勢いを中心に構成された激しいシューターを好みそうなプレイヤーにオススメしたいですね。本作ならではのリズムを学び、ステージに何度もトライして、もっと限界に挑戦していく、そうしてカオスを徐々に操るようになっていく、そんな人です。
作家性の強いゲーム、一般の商業的な作品よりも、ちょっと粗削りだったり奇妙だったり執着的だったりしても、すごく固有の体験を味わえるゲームに惹かれる人向けだと思います。広大なミリタリー空間だったり、大きな武器と派手なスペクタクルの連発を求める人にはちょっと合わないかもしれません。
でも、緊張感があり、フォーカスがはっきりしていて、手作りで個性にあふれた何かを求めているならば、このゲームは直接的にお応えできるものがあるんじゃないかと思います。








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