虚無の向こう側へ
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『バイトヘル2000』は、ソニー・コンピュータエンタテインメント(現:ソニー・インタラクティブエンタテインメント)から発売されたミニゲーム集。電気グルーヴのピエール瀧氏と映像作家の田中秀幸氏が企画・制作に携わった、みずから「ゲームジャンル:クソゲー」と称する『グルーヴ地獄V』の流れを汲む作品だ。
RPGのような壮大な物語はなく、ただひたすらに単純作業の退屈なバイトをこなしていくことになるのだが、それが次第に退屈から快感へと変わっていくのが不思議な魅力となっていた。一部のゲームファンからは熱狂的な支持を得て、発売から20年経った現在も伝説として語り継がれている。
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プレイヤーの目的は単純明快で、バイトをくり返して稼いだ給料でガチャガチャを回していくこと。携帯型ゲーム機であるPSPの特性を活かし、いつでもどこでも地獄のような単純作業に没頭できた。いまで言うクリッカー系ゲームの先駆けのようなミニゲームもあり、やめられなくなる中毒性があった。
本作のバイトの多くは意図的に単調に作られているのだが、虚無感の漂う作業を続けているとプレイヤーは不思議とリズムに乗ってきて、ある種のトランス状態になってくる。バイトの作業のチョイスがいいのか何なのか、くだらないのにいつしか夢中になってしまっている自分がいる。
印象に残っているバイトと言えば……『グルーヴ地獄V』にあった“ボールペンコウジョウ”の続編“ボールペン工場II”。たまに上下を正しつつ、ひたすらキャップをはめていく。
“ひよこ鑑定”は、画面上のひよこをオス、メス、天国(死んでいる)に仕分けるという内容。
人気作『みんなのGOLF』とのコラボ(?)のゴルフボールを探して拾う“みんなのGOLF場ボール拾い”。
デモの群衆をどんどん増やしていく内容で、後に『The Last Guy』としてプレイステーション3用ソフトにリブートされた“デモ行進”など、じつに多種多様なミニゲームになっていた。
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ガチャガチャは“新しいバイト”を手に入れる手段になっていたので自然とくり返していくことになるのだが、ほかに“ハズレ”と“ドウグ”も入手できた。
ハズレと言いながらもコレクター魂を刺激するヘンテコな収集アイテムが膨大に用意されていて、無駄にコンプリート欲を刺激されたものだった。「苦労して手に入れたのがこれかよ」と思わず笑ってしまうようなくだらない物も多々あった。
ドウグは、さまざまなツールで実際に役立つものもあるのがおもしろい。“ラーメンタイマー”はカップ麺作りに役立つし、“電卓酒場”は飲み会の割り勘計算ツール、“王様ゲーム支援ツール・大臣”は王様ゲームの罰ゲームを決めてくれた。ほかにもリアルで役立つはずのものが多数収録されていて楽しかったが……実際に使った人がいるのかは謎。
現行機種への移植は行われてはおらず、現在本作をプレイするのはかなりハードルが高いのが残念なところ。当時の攻めた姿勢を感じられる稀有な作品なだけに何とか体験してもらいたいが、PlayStation Plusのゲームカタログに来たりはしないだろうか……?
















