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音ゲーアドベンチャー『UNBEATABLE』レビュー。ローカライズ熱烈希望! 最高の楽曲と情熱ほとばしるアニメが融合した極上の音楽体験

byミル☆吉村

音ゲーアドベンチャー『UNBEATABLE』レビュー。ローカライズ熱烈希望! 最高の楽曲と情熱ほとばしるアニメが融合した極上の音楽体験
 D-Cell Gamesの『UNBEATABLE』は、『Muse Dash』系の音楽ゲームに、『キルラキル』などのTRIGGER風のエネルギッシュなアニメーションをフィーチャーしたアドベンチャーゲーム、バンドpeak divideのデビューアルバムといったさまざまな要素が融合したタイトルだ。

 プレイステーション5/PCで英語版が配信開始された(※)本作のPCレビュー版をプレイしたのだが、本作、ハマればマジの神ゲーで超最高な部分と「ちょっとここはなんとかして欲しいなぁ」という部分が混在していて、なかなか悩ましい事態となっている。本記事ではそのあたりをご紹介しよう。(※Xbox Series X|S版は少し遅れて今のところ1週間以内に配信予定とのこと)
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“アニメロックバンド”peak divide待望のデビューアルバムとしての『UNBEATABLE』

 まず文句無しにオススメできるのが、本作の音ゲー部分を遊べる初期のデモ版『UNBEATABLE [white label]』やpeak divideによるそのサントラ『UNBEATABLE: DEMO TAPES』から追ってきているヒト。そうでなくとも、D-Cell Gamesの公式YouTubeチャンネルBandcampに上がっている曲でグッと来た人は、もうこの先は読まずに買うかウィッシュリストに入れてくれていい。

 “アニメロックバンド”を自称するpeak divideは、本作の開発メンバーでもあるレイチェル・レイク氏によるボーカルをフィーチャーしたバンドサウンドが特徴。デモの段階で
『EMPTY DIARY』、『MIRROR』、『WAITING』、『FOREVER NOW』、『FAMILIAR』といった激エモい名曲揃いだった。
 今回の『UNBEATABLE』のリリースは、言ってみればその待望のデビューアルバムがゲームという形で出たという感じだ。Bandcampで『ALBUM.』という音楽アルバムの形でもリリース予定なのだが、新曲もデモテープ収録曲に劣らぬクオリティ。個人的には、来年のIGF(世界的インディーゲーム賞)やThe Game Awardsのサウンド部門にノミネートされるべきだと強く思う。

『Muse Dash』フォロワー系というだけに留まらない、音ゲーとしての『UNBEATABLE』

 では音ゲーとしての『UNBEATABLE』はどうなのかというと、先に書いたようにシステムは『Muse Dash』のものをほぼ踏襲していて、上下2ラインで流れてくる敵(一般的な音ゲーのノーツにあたる)に対してボタンを押すことで、キャラがアクションをくり出して戦っていくというもの。

 『Muse Dash』のようにキャラが走らずに中央でノーツを待ち構えていること、左から(ストーリーモードでは上下からも)ノーツがやってくるパートもあるといった細かいバリエーションはあるものの、同時押しや長押し、連打パートや避けるべき障害物があるといった部分も『Muse Dash』と同様だ。
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音ゲーがバトルとして表現されるんだけど、主人公ビートのアクションが躍動感たっぷりに表現されてていい感じ。
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左右からノーツがやってくるようなシーンも。
 プレイ感としては、やっぱりバンドサウンドを中心にしていることによるエネルギッシュな気持ちよさが特徴的。ギターのコードに合わせてくり出す攻撃にアクションゲームのヒットストップが感じられるようになっていたり、ライブだったらクラウドサーフが起きそうな箇所などに絶妙にノーツが配置されている巧みな“譜面”作りなどのおかげもあって、最高にノれる。

 この音ゲー要素は、ゲスト曲なども加えた音ゲー特化のアーケードモードだけでなく、アドベンチャー形式のストーリーモードの戦闘場面でもプレイすることになるのだが、物語の節目となる場面ではアニメ演出などが入り混じったスペシャルバージョンに発展し、「すべてはコレがやりたかったのか!」と感動させられる。(っていうかエモすぎてちょっと泣いた)
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音ゲーがそのまま進行しながらカットイン演出が入ったり。
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間奏からそのままアニメパートになったり。「音ゲーもアニメもADVも全部やりてぇんだ!」という情熱がほとばしりすぎててヤバい。
 なので単なる『Muse Dash』フォロワーというだけに留まらず、曲とゲームが融合した音楽体験を生み出すべく同じ開発チームがシステムと主要曲のどちらも直接手掛けているという、本作ならではの開発体制が十二分に発揮された内容になっていると感じた。

 さて「オイオイ絶賛じゃねぇか、“悩ましい事態”とか言ってたのはなんなんだ」とお思いの人もいるかと思うので、そろそろそのあたりを書いていこう。

不屈(UNBEATABLE)の女の子の戦いを描くADVとしての『UNBEATABLE』

 本作の舞台となるのは、音楽が禁じられた世界。ストーリーモードでは、そんな中でレジスタンス的に立ち上がるバンド“UNBEATABLE”とそのボーカルであるビートの物語が展開される。

 ボリュームとしては10時間ぐらいあり、まったくもって音ゲーのオマケではないレベル。peak divideの曲に乗せてくり広げられる物語はベタだけど力強いし、ゲームシステムを使ってツッコミを入れたりするヒネった語り口も面白い。

 その上で先ほど触れたような音ゲーとアニメ演出が融合したシーンでは、オールタイムベスト級のとてつもない高みに到達している数分間が存在する。
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アイテム入手時の演出で「つーかみんなどこに行きやがったのよ」という心の叫びを表示するだけだったり(左)、アニメのファンサブ(勝手翻訳)の注釈風テロップでツッコミを入れたり(右)。
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チェイスシーンなんかもリズムゲーム的に音楽に合わせて展開される。
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音ゲー部分の入力をオートにするオプションなんかもあったり。

さまざまな部分にQoL系アップデートが必要

 しかし、そういった「こういうのをやりたい!」と力を入れている独自の部分は素晴らしいんだけども、華々しくはないけど必要なベーシックな部分が追いついていない所があちこちあるのだ。

 たとえば、話を見失ったり現在の目標がわからなくなった時に簡単に確認できるようにしておくとか、突然ジャンプアクションをやらせたいならせめてプレイヤーがルートを少しは察せるように視線誘導するとか他キャラでお手本を見せるとか、そういった些細だけど根本的なところだ。こちらは追加予定があるようだが、現状ではテキストログも確認できない。なんというか、初期衝動が先走りすぎているバンドのようだ。
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この画面に「現在の目標」的な表示とか、簡易でいいのでマップ機能とかあったら大分不満は解消するんだけども。
 レビュー期間中も最後の追い込みのアップデートでバグ修正や機能や演出の追加がガンガン行われていたので、そういった部分が早い段階で改善される可能性はあるけども、ひとまずプレイ体験の質を高めるQoL系のアップデートが必要だろうことは疑いない。

 そのほかにも、スケール感を出すためにマップが無駄に長くなりがちとか、雑魚戦闘がいちいち音ゲーなので長くなりがち&インスト曲なので若干ダレるとか、まだ細かいバグがちょっと多いとか、セリフがちょっと冗長でテンポが悪くなってるといった気になる部分はそれなりにある。

 でもそれらは個人的には、ストーリーモードの最高の部分を体験することを考えれば割と我慢できる。なので
開発側の意図に添えないとよくわからない詰まり方をするのだけはなんとかして欲しいと思った次第。
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ストーリーモードでは上下からノーツがやってくるパターンもある。だけど名無しのキャラとインスト曲でダラダラ戦わないといけないのはちょっとダルいんだよね……。

ローカライズして欲しい!

 もうひとつこれは要望的な部分になるのだが、現状で製品版は英語のみとなっていて、他言語ローカライズがない。パブリッシャーのPlaystackに確認したところ、簡体字中国語を皮切りに多言語対応していく意向はあるものの、詳細はまだ発表できる段階にないようだ。

 そもそもテキスト量がそこそこ多い上に、一部だけ字間やフォントサイズを変えたり波打たせたりしたりといったフォント弄りネタも多く、延期をくり返しながらまずは英語版の完成度向上を目指している現状ではそれどころではなさそう、というのはわかる。
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こういうフォント芸までローカライズするのは手間がかかりそうだなぁというのは理解。
 しかし、若年層のキャラが口語で皮肉交じりに丁々発止のやり取りをするという性質上、ノリを完全に掴むのは難しい。出てくる単語自体は難しくないので気合で乗り切れる人もいるとは思うが。

 日本語看板だらけの街シーンまであるぐらい明らかに日本のアニメから多大な影響を受けているのだから、発売後アップデートで構わないので日本語ローカライズしてくれないかなぁと思う。この物語はもっと幅広い層に響き渡るべきものがあるからだ。
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おもっきし日本ぽいシーンとかあるので、なんとかローカライズしてくんないですかねぇ。
 とまぁ、ストーリーモードのプレイ体験の向上とローカライズの2点が悩ましい部分の大半だ。音楽部分だけでも楽しめる人や気合で乗り切れそうな人は突入してもいいと思うが、「うーん、それならチョット待ってみるかぁ」と様子見する人はひとまず各プラットフォームのウィッシュリストへ登録しておくといいんじゃないだろうか。
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