悪魔がガラスでできた身体を粉々にしながら、月を目指してスケボーをプッシュしていく。そんなちょっと変わった設定のスケボーゲームが『Skate Story』だ。プレイステーション5/Nintendo Switch 2/PCで配信開始された本作のレビューをお届けしよう。なお本作の価格は2300円。
悪魔が来たりてオーリー決める、異色のスケボーゲー
スケボーをプッシュしてスピードを上げ、オーリーで段差を超えて、カーブをパワースライドで強引に切り抜け、キックフリップで終点のワープポータルに飛び込んで、次の悪魔的空間へとカッ飛んで行く。
本作、細長く伸びた通路をただ滑走していくような何気ないシーンがまぁ、やたらとカッコいい。とんでもないビッグエアーとか複雑なトリックはないんだけど、パワースライドでウィールが削れる感覚や、自分や周囲への苛立ちごとボードを踏みつけて着地するような生々しい感じがそこにはある。
“スケーターの魂”とか“スケボーの詩情”みたいなものがあるとすれば、『Skate Story』はその荒削りな結晶のようなゲームだ。『ホットライン・マイアミ』とか出してた頃の昔の尖ってたDevolver Digitalらしい作品だと思う。
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スケボーをプッシュするだけで絵になる。
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単にスピードを出して滑ってるだけなんだけど、なんとも言えない渋いカッコよさがあるのよ。
でもこれはスケボーゲームとしてちょっと異質な作りだ。トニー・ホークシリーズをはじめとするスケボーゲームは、基本的に特定のスポットで高難度のトリックをメイクする(成功させる)のが目的の中心。180度回転するよりは360度回転する方がいい、“スポーツゲーム的なスケボーゲーム”と言えばいいだろうか?
それに対して『Skate Story』は、“アクションアドベンチャーゲーム的なスケボーゲーム”だ。大事なのは目標に向かって前へ前へと進んで物語を突き動かしていくことで、トリックはその中の手段や自己表現に過ぎない。厳密に言えばコンボを重ねて稼いだポイントで戦う“ボス戦”なんかもあったりするんだけど、目標はそれほど高くなく、着実に好きなトリックを決めていけばクリアー可能だ。
冥界のアスファルトでウィールとガラスの身体を削りながら、何かに追われるようにスケボーを走らせ、月を喰らおうと駆け抜ける。そんな感じに、自身がスケーターであるSam Eng氏がスケーターの美学や刹那的な衝動をダークなファンタジーとして描くのが本作なのだ。
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(普通は最もベーシックな技である)オーリーを学ぶシーンがこんな禍々しくカッコいいゲーム、なかったでしょ?
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月に喰らいつくようにスケボーを蹴り上げてトリックを決める。一応ポイント制のバトル要素もあるんだけど、そこまで複雑怪奇なトリックをしなくてもクリアー可能。トリックの難度よりもそこに乗せていく感情がカギだ。
サウンドやグラフィックもゴリゴリで最高! それだけにフリーモードが欲しい
というわけでゲームは完全にストーリー中心の構成。冥界の奇妙な住人どもの出すクエストをこなし、冥界の小道を駆け抜けて、ボス戦に挑んで月を喰らったら、冥界のより深い階層に進む……といった感じに全9章プラスαで進行してゆく。
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ストーリーは哲学的っていうより不条理気味な感じ。
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NPCはヘンな連中ばっか。鳩はいつもめっちゃ仕事してる。
もちろん延々と細長い通路を滑っていく以外のシーンももちろんあって、ハブエリア的な場所ではサイドクエストやおまけのチャレンジも存在。それらをやって得たお金(ソウル)でパーツやシールを買えばボードをカスタマイズできる。
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ボードを変えたらなにかが変わるわけでもないし、お金を持っててもあんましょうがないので、なんとなく好みで選んでガンガン使ってよし。
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ショップのマシンでランダムに手に入るステッカーでデコってくのも楽しい。
クセがあるので人は選びまくると思うけど、ローファイなテイストとY2K趣味がミックスされたアートスタイルやBlood CulturesとJohn Fioによるサウンドもカッコよく、トレイラーとかを見て惹かれるものがある人には間違いないだろうと思う。
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Vaporwave感ある。
ゲームサイズとしてはクリアーまで5~6時間ぐらいをイメージするといいんじゃないだろうか。ひとつ残念なのは、現状で遊べるのがストーリーモードのみで、クリアーしたら再度イチからストーリーをプレイし直す以外の選択肢がないこと。
まぁストーリー性に力を極振りしたゲームなので当然と言ったら当然なのかもしれないが、発売後のアップデートでいいので、訪れたいろんな世界を自由に滑れるフリーロームモードとか音楽を聴きながら延々とチルく滑れるエンドレスモードみたいなものを加えてくれるとこの世界を長く遊べていいなぁ、と思う次第だ。
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演出重視でエフェクトが激しいので、酔いやすい人とかはカメラの設定を調整するといいかも。筆者はエグい絵面が好きなので魚眼効果を上げたりした。