冒険を通して心を通わせていく少年と巨獣
『人喰いの大鷲トリコ』は、ソニー・インタラクティブエンタテインメントから発売されたアクションアドベンチャーゲーム。『ICO』や『ワンダと巨像』といった名作を手掛けたゲームデザイナー上田文人氏の約11年ぶりの完全新作だったということもあり、「ついに!」と感極まったファンも多かったのではないだろうか。奇しくも12月6日は『ICO』と同じ発売日なのだが、インタビューによると「たぶん偶然だと思います」とのことだった。なお、本作は2018年の第21回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門で大賞を受賞している。
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『人喰いの大鷲トリコ』というタイトルの通り、本作を象徴するのはファンタジー世界の動物のような姿をした巨獣“トリコ”。人喰いと言い伝えられてきたが主人公の少年とは相棒のような関係となり、何とかコミュニケーションを取りながら忘れ去られた遺跡の謎を解き明かしていく。
多くの人が驚かされたのは、やはりAIによるトリコの挙動だろう。架空の動物だというのに、プレイしているうちに本当に実在しているかのように錯覚させられてしまうのだから本当にすごい。
何種類もの動物の体を組み合わせた一見するとキメラのようにも見える姿をしていて最初は正直怖かったのだが、よく観察すると耳をピクピクさせたり毛づくろいをしたり、細かな仕草をしてくれるのがなかなかにキュート。次第にトリコから目が離せなくなるから不思議なもの。筆者は最終的に、ふさふさの羽毛みたいな体に顔をうずめたくなってしまったほどだ。
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巨獣のトリコと小さな少年、それぞれの体格の違いをうまく利用しつつ、二人三脚で仕掛けを解いていくところも見どころのひとつ。少年が登れない段差までトリコを誘導して体を伝って登ったり、トリコに乗ってダイナミックにジャンプしたり。任意の場所に雷撃を放って瓦礫を破壊なんてこともできる。
しかし、相手は生き物。トリコの想定外の行動にヤキモキさせられるケースもしばしば。これがかえってリアルさを醸し出していたのかもしれない。ときには敵の出現などで興奮してしまったトリコを撫でて落ち着かせる必要もあって世話が焼けるのだが、これがじつによかった。少年とトリコに絆が育まれていくようで見ていてほっこりもする。
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本作は制作が難航してなかなか発売されなかった経緯があるのだが、テレビやWeb用のCMではそういった中で待ち続けたファンの心情を複数のシチュエーションで描いている。「あと○日」というカウントダウンもあったので、覚えている人も多いと思う。
筆者的に響いたのはサラリーマンのひとりが呆然と『トリコ』のポスターを眺めていて、同僚らしき人物が「これ随分前に予約してなかったっけ?」と声を掛けるCM。「7年前」、「長え、よく待ったな」というやり取りのあとで「出たら出たで、寂しいんだよなぁ」と呟くといった内容なのだが、まったく同じ気持ちだったのでとくに印象深い。
ほかにもゲームショップが舞台で2009年の予約ノートを見ているものや、発売日発表時の外国人のリアクションを映したものなど、かなりグッとくる内容ばかりでどれもわりと泣けるから必見だ。
現在『人喰いの大鷲トリコ』はValue Selectionが発売されていてお得な価格で入手できるうえ、プレイステーション5(PS5)所持者かつPS Plus+会員なら“PS Plusコレクション”で追加費用なしで楽しめる。未プレイであればぜひ利用してみてほしい。
















