『龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties』横山昌義氏インタビュー。「20周年記念としてシリーズファンに楽しんでもらうための作品に」

by齋藤モゲ

byおしょう

『龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties』横山昌義氏インタビュー。「20周年記念としてシリーズファンに楽しんでもらうための作品に」
 2026年2月12日にNintendo Switch 2/プレイステーション5(PS5)/プレイステーション4(PS4)/Xbox Series X|S/PC(Steam)にて発売予定の『龍が如く』シリーズ最新作『龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties』。本作は2009年に発売された『龍が如く3』のフルリメイク作品である『龍が如く 極3』(以下、『極3』』)と、その物語で桐生の強敵として立ちはだかる峯義孝を主人公とした新作『龍が如く3外伝 Dark Ties』(以下、『Dark Ties』)が、1本に収録された作品だ。
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『極3』の主人公・桐生一馬。
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『Dark Ties』の主人公・峯義孝。
 はたして本作はどんな経緯で生まれ、そしてどんな“極”体験をプレイヤーにもたらすのか。新要素やゲームの見どころ、コラボプロジェクトや20周年記念イベントも含め、龍が如くスタジオ代表の横山昌義氏にインタビューを行った。
※本インタビューは週刊ファミ通2025年10月16日号(No.1917/2025年10月2日発売)に掲載されたインタビューに加筆を加えたものになります。[IMAGE]

横山昌義よこやま まさよし

龍が如くスタジオ代表として『龍が如く』シリーズの制作総指揮を担当。本作でもシナリオやキャスティングなどに関与しつつ、統括的な立場で制作に携わる。

ファンによろこばれるものを目指して作られた『極3』

――今回、『維新! 極』を含めて“極”シリーズの第4弾となりますが。キャスト変更、そして何より峯が主人公の『Dark Ties』の追加に驚かされました。まず、今回の『極3』のプロジェクトが立ち上がった経緯からお聞かせください。

横山
 いま龍が如くスタジオはふたつの新規タイトルとして、『New VIRTUA FIGHTER Project』と『STRANGER THAN HEAVEN』を発表・制作しています。そのうえで、さらに“完全新作”を同時並行で制作するのは厳しい状況なのですが、今年は『龍が如く』シリーズの20周年を迎える年でもあるので、何かしらの『龍が如く』作品は出したいと考えていました。

――今年2025年の12月8日で、1作目の『龍が如く』発売からちょうど20年になります。

横山
 20周年を迎えられたのは、ひとえに応援してくださったファンの方々あってのことです。よって今回は、そういった方々が素直に「欲しい!」と思えるタイトルを作ろうと考ました。結果、それはやはり『極3』だろうと思ったんです。これまでも、ことあるごとに「『極3』は出ないのですか?」と言われていましたし。

――たしかに。配信番組の『龍スタTV』でも、「いずれは……」とお話をされていました。

横山
 そのうえで、スタジオの余力や現在の状況を総合的に考えたとき、いまが「『極3』を作るならここだ!」というタイミングでした。ただ、「単なる“極”化じゃおもしろくないよね?」という思いもあり、「それなら最近作り慣れてきた“外伝”を乗せようか」となったわけです。やはり、ファンがうれしいと感じる最大の追加要素は、ストーリーだと思っていますから。

――慣れてきたからといって、ポンと外伝を追加できるのがスゴいですが(笑)。

横山
 『龍が如く』シリーズは基本的に神室町が舞台ですから、ある種の流用ができる。そうでなければ、この期間での開発は実現できなかったと思います。

――たしかに、神室町という共通の舞台があってこそではありますね。

横山
 ちなみに、これまでの『極』シリーズでも、何らかの形でストーリーを追加してきましたが、同様の形では皆さんの驚きが少ないだろうということで、今回は外伝にしました。さらに、その主人公をファンに根強い人気がある峯にしたことや、『極3』のキャスト変更なども、完全にファンの目線を意識して作っています。

――峯がプレイヤブルになったのはうれしい驚きでした!

横山
 じつは開発初期段階では「峯を主人公にした2時間くらいのCG映画を追加しようか?」といった案も出ていたくらい、いろいろな選択肢を検討していました。でも、「やはりファンにとっていちばんいい形は、プレイヤブルになることだろう」と考え、いざ作り始めたらいろいろ欲が出てきて……今回の形になったわけです。
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――ちなみに『龍が如く 極2』の真島編はある程度本編を進めてからプレイできる形でしたが、『Dark Ties』はいきなり最初から遊べるのですか?

横山
 はい。東京ゲームショウ2025の試遊ではどちらで遊ぶかを選べましたが、製品版も同じです。ゲームとして完全に独立しているので、『極3』を遊ばずにいきなり『Dark Ties』から始めることが可能です。

――『Dark Ties』から始めれば、作中の時系列に沿った形にもなりますね。

横山
 とくに『龍3』をプレイ済みでストーリーを覚えている方は、『Dark Ties』から遊んでもらうのもわりとオススメですね。

――『Dark Ties』のボリュームはどの程度になるのでしょうか?

横山
 独立してリリースする外伝ではないので、たとえば『龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii』(以下、『龍8外伝』)などよりは、ストーリー的なボリュームは少なめです。ただ、バトルはもちろん、峯を操作して街遊びもできますから、『極2』の真島編よりは充実したものになっていると思っていただければ。

――街遊びについて、東京ゲームショウ2025の試遊版で驚いたのが、 峯役の中村獅童さんがカラオケの楽曲も歌っていることでした。

横山
 私もダメもとでお願いしてみたのですが、快諾していただけました。言ってみるものだなあと思いましたね(笑)。
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TGS2025の試遊版でのカラオケシーン。
――ある意味目玉コンテンツのひとつですね

横山
 これは私の想像も混じる話なのですが、『龍3』のときはおそらく獅童さんにとってゲームの仕事は初めてで、いろいろと手探りだったのではないかと思います。さらに、お仕事としてしっかりと演じていただいたものの、1ヵ月以上しっかり稽古して役を入れていくような舞台の仕事とは、残った印象も違ったのではないでしょうか。でも『龍3』がリリースされたあと、獅童さんがいろいろな人に会うたびに、「峯よかったです!」と言われたらしいんですよ。「いったい何年前の作品だよ!」という感じなのですけれど、いまだに海外の方からも同じように言われたりするらしくて。

――でも、『龍3』の峯のドラマをふり返ると、いまだにそう言われるのはわかります。

横山
 今回は、そのくらい影響力があることがわかっている状態ですので、獅童さんも「今回は気合い入っています。手は抜けないです」とおっしゃっていました。

――そんな背景もあって、カラオケで歌うことも快諾していただけたのかもしれないですね。ちなみにこの『Dark Ties』というタイトルなのですが、これは峯のネクタイの色に由来しているのでしょうか? というのも『極3』のCGイラストのネクタイが白で、『Dark Ties』のネクタイが黒だったので……。

横山
 いえ、『Dark Ties』は、日本語にするなら“黒い絆”といったニュアンスの言葉なのです。今回ワールドワイドでの同時発売が決まっていたので、「“黒い絆”みたいな言葉って、英語ならなんて言うの?」とアメリカのスタッフに確認したら「それは“Dark Ties”だ」と。おそらく、スラング的な言い回しだと思いますが、絆を“Ties”と言うらしいんです。ちなみに、「それなら“Black Ties”だとどういう意味になる?」と聞いたら、「それは“喪服”だ」と言われたので、「じゃあ“Dark Ties”だね」という感じで落ち着きました。

――つまりその“黒い絆”とは、『龍3』でも描かれていた、峯と堂島大吾との絆でしょうか?

横山
 それもありますが、神田との絆のほうがガッツリと描かれる感じですね。なお、それに関連した余談なのですが、『Dark Ties』はファン向けの作品ということもあり、じつはこれまでの私のポリシーをちょっと曲げている部分があるんです。皆さんからすればわりとどうでもいい部分なのかもしれないですが……。

――それはどういったところですか?

横山
 じつはこれまでの作品では、基本的に“現役の極道を主人公には据えていない”んです。ですからメインで描かれる物語の時点では、たいていの主人公は“元極道”のタイミングになっていたりしました。そういう意味では、峯も最初はカタギですから一部踏襲はしているものの、『Dark Ties』では峯が極道になるまでの話がしっかりと描かれることになります。
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――言われてみれば、たしかにそうですね。

横山
 ですから『Dark Ties』のメインストーリーについては、“物語から得られる教訓”や“いい話”なんてものはひとつもありません。感覚的には映画の『アウトレイジ』に近い話だと思っていて、登場するのは全員悪人なんです。神田もそうですし、峯が崇拝している大吾も結局は極道の親分ですし。

 よって峯を主人公としてプレイする作品にはなっていますが、プレイヤー=峯のような主観視点的な作品ではなく、峯を俯瞰して観ていくような作品になっています。20周年のタイミングとして「変化球もいいかな?」ということで、そうしてみました。

――基本的に『Dark Ties』の舞台は神室町になるのでしょうか?

横山
 そうですね。時期的には『龍3』の2年くらい前の話なので、『極3』の街と変わらない神室町が舞台になります。

衝撃の新キャストを抜擢した理由とは

――『極3』の新キャストもかなり驚きました。決定にいたるまでの選考基準を教えていただけますか?

横山
 それをお話する前に、そもそもの『龍3』の話をさせてください。じつは当時(『龍3』の発売は2009年)、ひとつの決まりとして、「演者さん自身の顔をフェイスキャプチャーするのは、スピンオフ作品だけでやろう」というルールがあったんです。というのも、「技術的に新しいことをするのは、ナンバリングではなくスピンオフで」と決めていまして。

――たしかに、フェイスキャプチャーを全面的に行った『龍が如く 見参!』や『龍が如く 維新!』は、それぞれ新ハード(PS3、PS4)で初の『龍が如く』作品でした。

横山
 当時の例外として『龍が如く4 伝説を継ぐもの』がありますが、じつはこの『龍4』も、当初はスピンオフのつもりで作っていたんです。のちにナンバリング作品になったことで、結果的に「フェイスキャプチャーするのはスピンオフだけ」というルールが崩れることになりました。

――つまり、『龍3』の開発時点では、フェイスキャプチャーを念頭においたキャスティングは考えられていなかったわけですね?

横山
 そうなんです。その前提を踏まえてのお話なのですが、私の中で“極”シリーズというのは、リメイクだけれど単なるリメイクではなく、そこからもう1歩進めたものという認識です。それを表現するためには、過去作と同じキャストだけでなく、「この人が演じることで別のおもしろさが生まれる」ようなキャラクターが必要だと考えました。

 これは個人的な意見なのですが、私は基本的にドラマや映画などのリメイク作は観ません。ですが、ときどきどうしても観たくなるものがある。それはどんなときなのかと言えば、キャストが気になる方に変わったときなんです。
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――「この人が演じるのなら観てみようか」という感じでしょうか。

横山
 はい。たとえばドラマの『白い巨塔』なら、「田宮二郎さんがやっていた財前教授役を唐沢寿明さんがやるのであれば観たい!」という感じですね。だって、基本的なお話はすでに知っているわけですから、それ以外の部分でワクワクしたいじゃないですか。

 そんな背景がありつつ、じゃあ『極3』のキャストをどうするかと考えたとき……まず峯と神田は『Dark Ties』の構成上どうしても変えられませんでした。なぜなら、『極3』と『Dark Ties』は独立したタイトルのため、いきなり『Dark Ties』をプレイすることができます。そうなると過去に『龍3』をプレイした方が、違う見た目、違う声の峯や神田を見て混乱する可能性がある。そういった都合からキャスト変更は『極3』のみに登場するキャラクターに留めています。

――そのふたりを変えたら、作品自体が違うものになるな、という感じもします。

横山
 はい。でもそれ以外のキャラクターは、“いま新しく演じてもらったらおもしろいと思える方”や“私が観てみたいと思う方”に演じてもらいたかったのです。その最たる例が、浜崎を演じる香川照之さんでした。
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――最初に聞いたときのインパクトはすごかったです。

横山
 ちなみに収録の当初は、「ちょっと抑えて演じてもらおうかな」と思っていたんです。『龍3』で高橋ジョージさんが演じられたクセのある浜崎に引っ張られない形で、違う浜崎が観られたら、と。でも、実際のところは……浜崎が本音を語るときや、ピンチになったときに、香川さんの“牙”が出てくるんです。

――牙とは……?

横山
 近いところで言うと、ドラマ『半沢直樹』の大和田常務みたいな(笑)。

――あー!(笑)

横山
 香川さんの出演された作品はいろいろ観ていましたから「どんな演技になるかな?」とは思っていました。それが「大和田常務のほうに行くんだ!」となって、おもしろかったですね。

――それは……どんなシーンになるか気になりますね。

横山
 しかも今回、香川さんについては、フェイシャルモーションをフルでご自身にやっていただいたんですよ。

――これまでは、ご本人が表情まで演じているわけではなかったのですか?

横山
 はい。いままでの手法を説明しますと、最初にモーションアクター……たとえば春日一番なら、桐生も担当している三元雅芸さんというモーションアクターがキャラクターの動きの演技をつけます。そしてその動きを観て、春日一番役の中谷一博さんが声を入れる。その後にもう一度、三元さんが声を聞きながら顔の演技をするという流れでやってきました。

 もちろん、技術的には身体の動き、声、表情を一気に録ることもできますが、キャストの方々にアクションなどもしてもらわなければならない関係で、分業にしているんです。

――派手なアクションなどは、ご本人にできるかどうかの問題もありますし、モーションキャプチャーに慣れた役者さんのほうが撮影しやすいという側面もあるでしょうね。

横山
 ええ。そして香川さんの演技って、ある瞬間にこちらが思ってもいないような表情をするのも魅力なんですよ。“笑いながら怒る”とか、そういうことができちゃう方なので。しかも、表情が豊かすぎて、モーションアクターが演じられる範囲を超えている。なので、香川さんに「表情も録らせていただけないですか?」とご相談したんです。このあたりは、RGGサミットでもご覧いただけたかと思います。

――顔に機材を付けて、演技されている様子がありましたね。

横山
 そうです。そして実際に録ったら、「ここでこの表情をするの?」といったような驚きの演技もあって……私が観たかった浜崎になっていましたね。

――とても気になります! もう1点気になるのは、浜崎は『龍4』にも出演するキャラクターじゃないですか? 今後のことを言うのは気が早いですが、そのあたりはどうするんだろう……という疑問がありまして。

横山
 詳しくはお話できませんが、そのあたりもちゃんと考えた形になっています。

――楽しみにしています。続いては、力也を笠松将さんにお願いすることにした経緯についてお聞かせください。

横山
 笠松さんは、「いま桐生の弟分を演じたらいちばんおもしろいだろうな」と思う俳優さんだったので、お願いしました。以前、彼は『TOKYO VICE』というドラマで若いヤクザのリーダーを演じていたんですが、それがとてもよくて。愛嬌と可愛らしさと強さを併せ持っている感じだったのですが、それが力也に合うと思ったのです。
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――藤原竜也さんが演じた力也とは、ちょっと方向性が違いますよね。

横山
 ええ。藤原さんの演じた力也は、セリフも聞き取りやすいし、パキッとしている。当時のキャラクターモデリングの技術的にも、そのハッキリさが合っていました。ただ、いまは技術が進歩して、細かい表情で感情を見せられるようになりましたし、微妙なニュアンスも、生っぽさも出せるようになっています。それなら、逆にキャラクターっぽくない笠松さんの演技で力也を観てみたいな、と思ったんです。人間臭さも出せる俳優さんですし。

――空気感とか、そういう部分ですね。

横山
 そうです。実際、彼の演技を入れると、本当に舎弟っぽい力也になるんですよ。ちなみに作中では、桐生と力也が出会って、力也が桐生に魅了されて、桐生を一家の親分に引き合わせて……といった流れになりますが、『龍3』だと、「バトルに負けました! 兄貴と呼びます!」といった形でした。今回はそのあたりにちょっとストーリーを足して、笠松さんに演技をしてもらった結果、力也が桐生を兄貴と呼ぶまでの変化がわかるようになっています。

――感情のグラデーションがよりわかるようになっている、と?

横山
 はい。“キャラクター感”が薄れて、より生っぽい力也になったと思います。

――それも楽しみです! では、名嘉原を演じる石橋凌さんはどんな経緯で?

横山
 石橋さんは、ずっと憧れていた俳優さんのひとりでした。これは石橋さんも覚えていてくださったのですが、じつは昔の作品で出演のオファーをしたことがあったものの、諸事情で見送りになっていたんです。でも、今回は快諾いただけてうれしかったですね。
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――『龍が如く』シリーズに出演してほしいと思い続けていたひとりだったんですね。

横山
 はい。そして今回、ついに石橋さんとお仕事させていただいたのですが、取り組みかたがちょっとスゴかったですね。最初の打ち合わせのときに、名嘉原に生年月日はあるのか、設定されてなかったとしても何歳くらいなのか、どこで生まれてどう育ったのか、奥さんはいたのか、いたとしたらいつ離婚したのか……というバックボーンを尋ねられました。

――そこまでされる方はあまりいないのでしょうか?

横山
 石橋さんほど綿密にバックボーンを知りたがる方はいなかったですね。そしていざ収録となったら、役作りができているのはもちろん、打ち合わせの際にいたスタッフの名前を全員覚えてくださっていて、名前で呼んでくれるんです。「ああ、こういう取り組みかたなのか!」と感心しましたね。

――スタッフさんの人数も多いでしょうに。

横山
 すごいですよね。あと、キャラクターの見た目に関しても「もうちょっと色黒くしてほしい」とか、すごく気にしてくださって。ですので、石橋さんとは作品をいっしょに作っていった感覚です。もちろん、演技も抜群でした。

――それは楽しみです。あと、今回は明らかにされませんでしたが、『龍3』では渡哲也さんも重要な役どころを演じていらっしゃいました。そこは当時のままですか?

横山
 はい。渡さんの声に関しては変えていません。田中敦子さんが演じられた役もそうです。そこは守りたいと考えていました。

――安心しました! なお『龍3』から続投で演じられる方々は、今回新規で収録されているのでしょうか?

横山
 録り直しが必要だと思ったところは、必要に応じて進めています。あとは新規に追加されたシーンもあります。

――神田は、かなり新規のセリフが多そうです。

横山
 神田は『Dark Ties』だと主役くらい喋りますから、宮迫さんはけっこうたいへんだったと思いますよ。もちろん大吾も出てきますが、『Dark Ties』は“峯と神田の話”と言っても過言ではないくらいなんです。
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――『Dark Ties』については、『龍8外伝』でジェイソンを演じた松田賢二さんが、フェイスキャプチャー込みで新キャラクターを演じられています。これはやはり、『龍8外伝』の出演がきっかけだったのでしょうか。

横山
 碇新平は、『Dark Ties』における重要キャラクターなのですが、オリジナルモデルではなくイメージに合う方をキャスティングして作ろうとしていました。そうなったとき、これは松田賢二さんだろうと。ジェイソンは日本人ではないのでオリジナルモデルでしたが、今回はフェイスありなので、続いて演じてもらっても違和感はないでしょうし。本来、松田さんは声優というより俳優ですし、見た目的にもキャラクターに合っていました。
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――碇というのは、どのような人物なのでしょう?

横山
 神田に負けないくらい、個性的なヤツです。私が思う変な人……たとえば、“変なタイミングでデカい声を出す”ようなタイプです。

――人との距離感がちょっと間違っているような?

横山
 はい。ただ、そういう変な感じを飲み込めて演じられそうな人は、けっこう限られているな、とは思っていました。そのため「松田さんなら!」と安心して任せられましたし、怪しい雰囲気も出していただけました。

 前もって言っておきますが、松田さんの演じ分けにより、ジェイソンと碇はぜんぜんイメージが違います。ジェイソンのときも上手いと思っていましたけど、改めて松田さんはスゴいなと感じました。先ほどお話した大きい声を出すタイミングとか、ほとんどアドリブですからね。

いまどきのゲームにするためにバトルも遊びもしっかりテコ入れ

――ここからはゲーム自体の話に入っていきたいと思います。桐生の衣装(かりゆし)が変わりましたが、その理由は?

横山
 『龍3』の桐生は、歴代桐生のCGを並べたとき、モミアゲの処理が下手とか、なんか毛深いとか、横から見ると太って見えるくらい分厚い……といった理由で、開発内ではいちばん人気がなかったのです。なので“極”化にあたり、桐生の身体をスリムにしつつ、併せて衣装も変えました。

――バトルシステムも刷新されて、いまどきの『龍が如く』らしく、ふたつのスタイルが選べるようになりました。

横山
 これはもう、当時やりたかったけれどできなかったことを盛り込んだ結果ですね。スタイルチェンジはいままでの流れから実装した面もありますが、バトルのアクションのネタは技術的な進化でできるようになったことが大きいです。私の記憶が正しければ、今回収録されているネタは、『龍3』当時に検討したけれど見送ったものが多いですね。
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――『Dark Ties』における峯のアクションの手触りはどんなものになるのでしょうか?

横山
 基本的には、『龍3』でサンドバッグを殴っていたシーンの峯のイメージですね。ボクシングを軸としたスタイリッシュで、スマートで、スピーディーな感じです。主人公ごとの手触りはまったく違う感じに仕上がっていますね。
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――『極3』で追加された“ツッパリの龍”や、『Dark Ties』の“神田カリスマプロジェクト”といった、ユニークな名前の遊びもあるようですね。

横山
 神田カリスマプロジェクトは、かなりおもしろいです。要するに峯が舎弟の立場として、神田という親分の尻をぬぐったり、神田の評判を代わりに上げてやったりしてよろこばせる、という遊びです。

 成果が現れると、神田が褒美に風俗をおごってくれたりして、そこで峯との絆が深まっていきます。そういう意味では、ストーリーでも遊びでも、神田が『Dark Ties』のキーマンと言えます。神田はいいキャラですよ。清々しいほどの馬鹿さっぷりも含めて(笑)。
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――たしかに、神田は本当にいいキャラクターだと思います。

横山
 神田は登場から最後までまったくブレていない、唯一のキャラクターかもしれません。人間って誰かと話せば、何かしら影響を受けるじゃないですか? でも、神田はまったくブレない。

――ずーっと“酒、女、暴力”みたいな。

横山
 はい。いいか悪いかは置いておいて、ある意味で信念の人なんです(笑)。そうそう、先ほど挙がった“ツッパリの龍”に関しては、スペシャルゲストとして和田アキ子さんが登場しますので、そちらも楽しみにしていてください。
――おお! どうなるか楽しみです! あと、『極3』のアサガオライフはどんな感じになるのですか?

横山
 今回改めて思ったのですが、『龍3』ってメインストーリーが短いんです。でも、プレイヤーにはある程度のボリュームのプレイ体験をしてもらいたいですから、当時はなるべく沖縄にイベントを作って、東京にはすぐに行かせないようにしていました(苦笑)。そのために、アサガオで子どもたちと触れあうエピソードを作ったという側面もあるんです。

――ぶっちゃけましたね(笑)。

横山
 当時のアサガオのエピソードは未熟な面もありましたが、いまならもっとできるだろうということで、おもしろく仕立てるためにいろいろと手を入れました。ある意味、改善しがいのあった部分ですね。

 それぞれの子どもたちとのエピソードは元をそのまま活かしたものもありますし、ガラっと変えているものもあります。ただ、綾子の足の速さなど、子どもたちの基本的な設定やパーソナリティーはほとんど変えていません。あくまでゲーム的な仕立てとドラマの内容に手を入れている、という認識でいてもらえればと思います。
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――プレイスポットなどにも調整は入っているのですか?

横山
 はい。最初に言っておくと、新しい遊びがある代わりにキャバクラはありません。『龍3』のときのように、「ちょっと会話して終わり」的な仕組みは、いま遊んでもあまりおもしろくないだろうと思いましたので。

――その代わりに、女の子要素としてレディースを描く“ツッパリの龍”が入っている形に?

横山
 そんな感じですね。ほかにもカラオケやバッティングセンターなどを始めとした、いつもの神室町で遊べるプレイスポットがありますし、ゴルフの打ちっぱなしや、桐生のコーディネートなども用意しています。あとは仲間を呼んで写真が撮れるプリクラ的な“プリサークル”とか。レトロゲーム系もいろいろ仕込んでいるものがあります。
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20周年を楽しんでもらうために仕込んでいるさまざまな施策

――RGG SUMMITで発表された“龍が如く×日本統一 ドラマプロジェクト”についてうかがいたいのですが。そもそも、このコラボはどんな経緯で立ち上がったのでしょう?
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横山
 『極3』は、20周年記念の作品ですし、ファン向けに作った作品です。その一方で『極3』から『龍が如く』シリーズに触れる人というのも、必ず存在するわけです。そういう方たちはこれまでのお話を知らないから、いきなり『極3』からだと楽しめないじゃないですか。

――シリーズものの宿命ですね。

横山
 ですから当初は『龍が如く』と『龍が如く2』のストーリーをまとめたような動画を私たちで作って、それを翻訳して……なんて考えていたのですが、そんなものはYouTubeにたくさんありますし、そもそも興味がある方は、すでにそういう動画を観てくれているだろうと。

――そうですね。PS5やXbox Series X|Sなどでも改めて『龍が如く 極』と『龍が如く 極2』がリリースされるということなので、興味があるなら『極3』の前にプレイする人も多いかもしれません

横山
 そんな状況のなかで我々がすべきことは何なのかと言ったら、いままで『龍が如く』に触れていなかった方が、3作目だけど気になって手に取ってもらえるようなコンテンツを発信すること。それも、知識を得るためのものではなくて、エンターテインメントとして成立していて「これはこれで観たい!」というものであること。そのうえで、コンテンツの続きが『極3』になっているという図式が理想なわけです。

――それこそが、『日本統一』のキャスト陣が演じる『龍が如く』だったと。

横山
 はい。本宮泰風さんの演じる桐生や、山口祥行さんの演じる真島で、『極3』にいたるまでの桐生の話が描かれたら、多くの人が観てみたいのではないかと考えました。そこで『日本統一』の総合プロデュースもしている本宮泰風さんに「どうですかね?」と相談したら、やっていただけることになりまして。そこから、ちゃんと権利関係の社内調整をして、この夏に脚本をあげたばかりです。なのに、RGG SUMMITでもう発表できてしまったという。ちょっとスピードがおかしいですよね(笑)。
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――龍が如くスタジオも驚くスピード感ですね(笑)。

横山
 そこからいろいろな準備をして、撮影して、編集して、『龍が如く』20周年に合わせて配信できるというんですから。そんなことができるのは、『日本統一』のチームだけだと思います(笑)。

――内容としては、どんなものになるのでしょうか?

横山
 基本的には1作目の『龍が如く』のお話ですね。そこに大吾のエピソードが追加されていて、最後まで観ると『極3』にすんなり入って行けるような作りです。とはいえ、シナリオ段階で『龍が如く』から変えているところはけっこうあります。

――どのような部分がアレンジされているかも楽しみです。あとは、神室町をどう再現するのか、という部分も気になるのですが。

横山
 ロケが難しいシーンも多くあるので、部分的にゲームの映像をミックスする予定です。じつは試しに、桐生と真島の顔を、『龍が如く7外伝 名を消した男』で使った獅子堂と鶴野のCGに差し換えてみたのですが、これがめちゃくちゃピッタリで。

――おふたりはすでに顔のデータがありますから、そんなこともできちゃうんですね(笑)。

横山
 とくに真島の顔を鶴野にしたときは、肌の色も調整不要なくらいピッタリで。声までは変えられないけれど、DLCとしてスキン変更をリリースしようかと思うレベルでした(笑)。ですので、神室町を歩いていたりするところはゲームのCGを使って、セレナに入ったら実写になって……といった感じになりそうです。

――おふたりが桐生や真島をどう演じられるのかも気になりますし、どちらのファンも観たくなりそうですね。

横山
 食い合わせのいいタイトル同士のコラボなので、『日本統一』のファンの方、こういうタイプの実写作品が好きな方に、まずは観ていただいて、『極3』を遊んでもらえるといいなと思います。
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桐生一馬役の本宮泰風さん(左)/真島吾朗役の山口祥行さん(右)
――このコラボを含め、20周年を迎えるにあたり、ゲーム以外にもアレコレ仕込んでいそうですね。

横山
 手始めにやるのが、RGG SUMMITでもお伝えした“冠婚葬祭”がテーマのイベントです。過去に開催した「散った男たち展」は“葬”がテーマでしたが、今回は20周年ということもあって、歴史を振り返りながら……たとえば柏木さんなど、いろいろなキャラクターの20歳くらいの姿を見られるような展示があるといいな、と思っています。具体的な内容はまだまだこれからですが、いま準備を進めていますのでご期待ください。

 さらにそのイベントでは、お値段的にはちょっと張りますが、予約制で特定のキャラクターと結婚式を挙げられるサービスも考えています。男女両方のキャラクターを用意しますので、皆さんにもウエディング衣装を着ていただいて、選んだキャラクターとがっつり記念撮影を楽しんでいただける予定です。
――公式がキャラクターとの結婚を支援するというのは、なかなか聞かないですね(笑)。

横山
 ファンサービスとして、そういうものもあっていいんじゃないかな、と。ほかにもいろいろと考えていることがありますので、ぜひ続報を楽しみにしていてください。
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