『ブルーディスティニー』の開発秘話も。バンダイナムコフォージデジタルズ代表取締役社長の稲垣浩文氏独占インタビュー。「期待を超える感動を」

byリプ斉トン

by坂本ビス太

『ブルーディスティニー』の開発秘話も。バンダイナムコフォージデジタルズ代表取締役社長の稲垣浩文氏独占インタビュー。「期待を超える感動を」
 2025年3月、多くの名作ゲームの開発を手掛けてきた“B.B.スタジオ”は、“バンダイナムコフォージデジタルズ”への社名変更を行い、バンダイナムコフォージデジタルズを束ねる代表取締役社長として稲垣浩文氏が就任した。

 “期待を超える感動を”という言葉をスローガンとして掲げる同社は、いったいどんなビジョンを思い描いているのか。本記事では、バンダイナムコフォージデジタルズの社名の由来や実現したい未来などを稲垣氏へのインタビューから明らかにしていく。

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バンダイナムコフォージデジタルズのこれまでの歩み

  • 1994年 2月
    株式会社バンプレ企画を設立
  • 1997年 3月
    商号を株式会社バンプレソフトに変更
  • 2008年 4月
    バンダイナムコグループの再編により、株式会社バンダイナムコゲームス(現株式会社バンダイナムコエンターテインメント)の100%出資子会社となる
  • 2011年 3月
    株式会社ベックから事業の譲り受け
  • 2011年 4月
    商号を株式会社B.B.スタジオに変更
  • 2024年 4月
    開発力の強化を目的に、株式会社バンダイナムコスタジオの100%出資子会社となる
  • 2025年 3月
    商号を株式会社バンダイナムコフォージデジタルズに変更
  • 2025年 8月
    シリーズ最新作『スーパーロボット大戦Y』発売

稲垣浩文 氏いながき ひろふみ

1993年にバンダイ入社(ナムコとの経営統合前)。ビデオゲーム事業部にておもに『機動戦士ガンダム』シリーズのゲームを多数制作。その後、アニメ制作プロジェクトにて『交響詩篇エウレカセブン』や『コードギアス 反逆のルルーシュ』なども手掛けた。

期待以上のおもしろさを届ける開発会社でありたい

——2025年3月より社名がバンダイナムコフォージデジタルズとなり、新体制となりましたが、社名に込めた想いからお聞かせいただけますでしょうか。

稲垣
 前身であるB.B.スタジオのスタッフは職人気質の人員が多く、“職人がよい物を作る”という意味の込められた“フォージ(鍛造)”という言葉を使いたいと考えていました。

 また、ゲーム開発だけでなく、今後は培ったノウハウを活かしてさまざまなデジタルサービスを展開したいと考えており、その意味も込めて“デジタルズ”という言葉もプラスし、現在の社名としました。

——稲垣さんはバンダイナムコフォージデジタルズの代表取締役という立場に就任されました。今後、社として重視したいことや方針としたいことを教えてください。

稲垣
 多彩なコンテンツを数多くリリースする方針ではなく、高い商品価値や作品のクオリティーを重視した開発を行っていきたいです。レストランにたとえると、おいしい料理が食べられたら、ほかの人に広めたくなりますよね。

 これはエンタメでも同じことで、コンテンツをPRする方法として口コミに勝るものはないと考えています。ですが、「期待通りにおもしろかった」では弱く、「期待以上のおもしろさだった」と思っていただいて初めて感動を覚え、広めたくなるものだと思います。“期待を超える感動を”という言葉をスローガンとして開発をしていきたいです。

——取り扱うコンテンツとしては、今後もIPビジネスに重点を置くのでしょうか。

稲垣
 はい。弊社のいちばんの強みはキャラクターIPを取り扱ったものですから、今後もその作品のファンが喜んでいただけるものをどれだけ私たちが作るものに込められるのかを、その作品の版権元様や、『スパロボ』、『バトオペ』のパブリッシャーであり、以前在籍していたバンナイナムコエンターテインメントと密に連携して作り上げていきたいです。
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バンダイナムコフォージデジタルズ社内の一角。『スパロボ』、『バトオペ』も含め、同社が携わったタイトルが置かれている。
——いよいよ発売となった『スパロボY』は海外でも同時発売をされていますが、今後は海外への展開も推し進めていくのでしょうか。

稲垣
 弊社の場合、いちばんのターゲットは日本になりますが、ゲームをプレイすることでキャラクターIPを知っていただける機会になるので、たくさんの海外のファンの方々にぜひプレイしていただきたいと考えています。

——『スパロボY』では試遊会を行うなど、ユーザーと近い距離でコミュニケーションを取る施策を実施されていました。

稲垣
 新社屋にオフィスを移した際に多人数でゲームをプレイできるスペースを設けたので、ユーザーを呼んで試遊会ができることをバンダイナムコエンターテインメントのマーケティングチームに提案したところ、実現することができました。

 我々は開発会社ですから、ユーザーの方と直接お会いするような機会は少ないので、非常にありがたいことでしたね。貴重な生のご意見ですから、頂戴した意見はどんどんこれからの開発に活かしていきたいです。

 『バトオペ』もコロナ禍以前はオフラインイベントを定期的に実施していたのですが、最近になってようやく再実施ができるようになってきました。バンナイナムコグループは、“Fun for All into the Future”というパーパスのもと、“世界中の人々に楽しさと感動を届け、未来に向かって笑顔と幸せを追求していく”ということを目指しています。

 我々とファンが一体となって、いっしょに楽しいエンタメを作っていきたいという気運は、さらに社内で高まっていると感じています。

——稲垣さんは過去にはさまざまなコンテンツを手掛ける立場として活躍されていましたが、代表取締役としてのお仕事には、どういったところにやりがいを感じますか?

稲垣
 ありがたいことに、過去にはアニメやゲームなど、さまざまなジャンルのコンテンツ制作に携わることができました。その経験を活かして、今後バンダイナムコフォージデジタルズをどんな会社にしていくのか、そこにやりがいや楽しみを感じています。

 自分も過去の経験からいちゲーム開発スタッフが会社に求めているものは理解しているつもりなので、そこを先回りして現場の環境を整えていけば、さらにデベロッパーとしての価値を高めていけるだろうと考えています。

 キャラクターIPをどのように調理してお客さまに届けていくかということや、いろいろな提案ができるような人材を育成していくことも重要な目標ですし、やりがいを感じる部分となっていますね。
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——グループ外のゲームでは、B.B.スタジオ時代に『ドラゴンクエストⅩ 目覚めし五つの種族オフライン』の開発実績もありました。

稲垣
 これはスクウェア・エニックス様からお声掛けいただきまして弊社で開発を担当させていただきました。グループ内のコンテンツの制作だけでなく、他社様と協力することで得られる経験はとても大きいので、今後もチャンスがあれば、開発会社として手を挙げていきたいです。

粘りの戦略で実現したプラモデル計画

——過去に稲垣さんが携わられたゲームの中で、印象に残っている作品はどのタイトルになりますか?

稲垣
 いちばんは、『機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY』です。ゲームオリジナルの主人公とシナリオを作らせていただきまして、それを3部作、3ヵ月に1度のペースでリリースするというプロジェクトでした。

——昔でもかなりハイペースな開発だったのではと思うのですが……。

稲垣
 考えられないくらいですね(笑)。

——開発期間は全部かぶっていますよね。3ヵ月ではゲームは作れないですし……。

稲垣
 もろかぶりしています(笑)。かなりたいへんだったと記憶していますが、開発の規模も近年のゲームほど大規模でないので、なんとか走り切ることができました。『機動戦士ガンダム 外伝 THE BLUE DESTINY』ではオリジナルのモビルスーツを制作したので、ぜひプラモデル化を含む商品化をしたいと考えていて、バンダイの各事業部や出版社に働きかけ、マンガの連載や、カプセルトイの販売は実現したのですが、プラモデル化は難しかったです。

 オリジナル機体のブルーディスティニー1号機やイフリート改はいまでこそ人気を獲得しましたが、単発のゲームのモビルスーツだったので、一過性で売れ続けないだろうと思われたようです。

——稲垣さんとしては悔しい思いですよね。

稲垣 はい。一度はNGを出されましたが諦めきれなかったので、『
ギレンの野望』や『ジージェネレーション』シリーズに機体を登場させた結果、認知度も上がり、その後も継続的にガンダムのゲームに登場したことで、プラモデル化の夢を果たすことができました。
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——まさに粘り勝ちですね。
稲垣
 あのときは本当にうれしかったです。

——その熱意を、ぜひスタッフの皆さんにも届けていただき、楽しいコンテンツをファンに提供していただきたいです。最後に、会社としての今後の展望について教えてください。

稲垣
 現在は『スパロボ』と『バトオペ』がメインとなっていますが、冒頭に申しましたように、さまざまなデジタルコンテンツをビジネスとして展開していきたいと考えています。ゲーム以外にも遊技機の映像制作を手掛けたりしていますし、クオリティーを担保しつつもいままでと異なるジャンルや事業への展開を目指したいです。

 そういったかゆいところに手が届くような会社になれば、グループ内外で存在感を示していけると考えています。守るべきものは守りつつ、変えるべきところは大きく変えていかないと、この激動のゲーム業界で生き残っていけません。

 そこを我々経営陣がきちんと理解したうえでファンの皆様に愛されるゲームを作り、新たなファンも獲得してバンダイナムコフォージデジタルズのことをもっともっと知ってほしいと考えています。

 最後に、ひとつお知らせになってしまうのですが、バンダイナムコフォージデジタルズでは、ともにコンテンツを作り上げていただく新たなクリエイターやスタッフを絶賛募集中となっています。我こそはという人は、ぜひ公式サイトから、弊社の門を叩いていただけるとうれしいです。
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