2025年8月20日~24日の期間、ドイツ・ケルンで開催されたヨーロッパ最大級のゲームイベント“gamescom2025”。同イベントにカプコンの完全新作タイトル『 プラグマタ 』(※)が試遊出展された。 ※対応プラットフォームはプレイステーション5(PS5)、Xbox Series X|S、Steam。 2020年に発表されたものの、たびたび延期が告知されていた『プラグマタ』。いつ発売されるのかとゲームファンをやきもきさせていたが、2025年6月に「2026年発売決定」と発表。公式サイトが本格オープンし、ついに発売に向けて動き出した。また、ストーリーやゲームシステムの詳細も判明。本作では、主人公のヒューとディアナが力を合わせて、月面から地球への帰還を目指す。シューティングとパズルが組み合わさったゲームシステムが特徴で、パズルを解いて敵を弱体化しながら、敵を攻撃していく……というプレイ感が新しい。 本記事では、gamescom会場にて行った大山直人プロデューサーのインタビューをお届け。2020年のタイトル発表から現在にいたるまでの試行錯誤や、シューティングとパズルの組み合わせが生み出すおもしろさ、ふたりの主人公・ヒューとディアナの特徴や魅力などをうかがった。
gamescom カプコンブース内の『プラグマタ』試遊コーナー。写真ではわかりづらくて恐縮だが、試遊エリアへの入口が、月面基地の扉のようなデザインになっている。
VIDEO
アクションとパズルのよいバランスを見つけるまでに、相当な試行錯誤があった ――2026年発売が決定した『プラグマタ』について、今回が初のインタビューになるかと思いますので、まずは本作のプロジェクトが立ち上がったきっかけを教えてください。
大山
まさに、「新しいゲームを作ろう」というところからスタートしましたね。『プラグマタ』に限らず、『 祇(くにつがみ):Path of the Goddess 』だったり、『 エグゾプライマル 』だったりと、カプコンは定期的に新しいIPに挑戦しようとしています。僕は『 バイオハザード 』や『 デビル メイ クライ 』を開発しているカプコン第1開発(Capcom Dev 1)の所属ですが、『プラグマタ』は、Capcom Dev 1の中で新しいIPにチャレンジするという試みのひとつです。 ――『プラグマタ』を作るうえで、まずはどのようにコンセプトを固めていったのですか? 大山
まず、新しいゲームを作るのならば、どうしたらゲームファンの皆さんに親しみを持ってもらえるか……と考えた時に、いま僕らがいる時代からは少しだけ先の未来、その時代とSF的な設定を組み合わせるのがいいんじゃないか、というのが最初にありました。つぎに、近未来かつ月面であれば、“なんとなく手が届きそうだけど、また届いていない場所”として、物語を描ける余地があるのでは? という考えにいたり、プロジェクトが始まっていきました。 ――ゲームシステムよりも先に、月面や近未来といった舞台が決まっていったのですね。
大山
はい。また、宇宙服を着たヒューとアンドロイドの少女ディアナ、このふたりが協力して地球への帰還を目指すというストーリーも、本作のコンセプトとして初期から存在しているものです。 ――では、舞台やストーリーの骨子が決まった後、シューティングとパズルを組み合わせるという本作のシステムはどのように生まれたのですか?
大山
そこがいちばん苦労したと言いますか、たいへんだったところです。2020年にアナウンスメントトレーラーを公開させていただきましたが、そのときは部分的にゲームを作っていまして、それはおもしろいものになっていたんです。ただ、製品版相当のボリュームで長く遊べるように開発を進めていったところ、なかなかうまくハマらず……おもしろくなっていない状態で皆様にお届けするわけにはいかないため、複数回の延期の告知をさせていただくことになりました。 ――なるほど。2020年のトレーラーは、ティザーのようなものだったのですね。
大山
はい、あのトレーラーはコンセプトを示すもので、ゲーム自体は部分的にはできている、という状態でした。ヒューのアクションと、ディアナのハッキングを軸にすることは決まっていたのですが、ハッキングをゲームプレイに落とし込むのにかなりの試行錯誤がありました。最初はパズルは想定しておらず、あくまでコンセプトとして考えていたのは“ハッキング”でしたので、いまとは全然違うシステムだったこともあります。 ――その試行錯誤の結果、いまのシューティング+パズルというゲームデザインにたどり着いたのですね。
大山
はい。今回、gamescomに試遊出展して、メディアやインフルエンサーの方、一般のユーザーの方から「シューティングとパズルの組み合わせがおもしろかった」と言っていただけたので、長く時間をかけて作り込んだ甲斐があったなと思っています。 ――インタビューに先駆けて試遊させていただきましたが、プレイ前は「シューティングとパズルの両立は可能なのか?」と少々不安だったものの、いざやってみるとけっこうがんばれるなと。シューティングしながらパズルのために頭の容量を割けるバランスが絶妙だと感じました。
大山
まさに、そのバランス調整に時間をかけました。シューティング&パズルというシステムに決定した後も、実際に触って「おもしろい」と思えるまでのバランス調整をするのに、かなりの時間を要しています。 ――パズルを解いている最中にダメージを食らうこともありますが、それがどこまでなら許容の範囲なのか……というのを調整するのが難しそうです。
大山
本当にそうなんです。「ふたつのゲームジャンルを組み合わせることは、これほど難しいことなのか」と思い知りましたし、実現できたいまは、「組み合わせることで、こんなにおもしろくなるのか!」と気づきましたので、ぜひ皆さんに触っていただきたいです。過去になかなかない爽快感と没入感だなと思っています。 ――マルチタスクのために脳をフル回転させているときのような感覚がありますね。これまでのシューティングにはないというか。スピード感重視のシューティングとはちょっと方向性が違うのですが、でもプレイしている側はずっと忙しいという。
大山
このゲームは、プレイ動画を見ているだけだと、けっこうスローに感じられるかもしれないのですが、プレイしている人自身は、見た目以上に忙しいんですね。プレイヤーはスピード感を感じられると思います。このスピード感のバランスについても、絶妙なラインを探るのがたいへんでした。 ――今回の試遊で体験できたパズルは、そこまで難度が高いものではありませんでしたが、ゲームが進むとパズルが複雑になるのでしょうか?
大山
今回の試遊版では、浮いている弱い敵なら3×3マス、ちょっと強い敵は5×5マスのパズルと、敵の種類に応じてマスのサイズが変わっていました。製品版ではもちろん、もっとさまざまなバリエーションのパズルが登場します。具体的な数は言えないのですが、ビジュアル的にもインパクトがあるような、あっと驚いてもらえるようなものが登場します。ただ、ただ、ハッキングのウェイトが重くなりすぎると、バランスが偏ってしまうので、そうならないような工夫とアイデアも詰め込んでいます。
――ディアナのハッキング時、パズルの中には特殊な効果を持ったマスが登場しますが、ああいったマスの種類も増えるのでしょうか。
大山
黄色マスの“ハッキングノード”ですね。このノードを通過するとさまざまな効果が発生しますが、今回の試遊ではデコードと呼ばれる、敵の防御力を下げられるノードが登場しました。デコード以外にもさまざまな種類がありますので、どのハッキングノードを装備するか? 装備していたとしても、この敵相手に本当に使っていいのか? というのを考える必要があります。 ――なるほど。雑魚敵相手に使うのはもったいない、温存しておこう、と考える戦略性もあるんですね。
大山
最初のうちは、皆さんはパズルに慣れていないので、パズルを解くこと自体のウェイトが重いと思うんですね。でも慣れてくるとスムーズに解けるようになるので、そのぶん別のことを考える余裕が生まれてきます。新しいゲームですので、最初は「ちょっと複雑そう……」と突っかかりを感じるかもしれませんが、慣れるとどんどん、自分が成長していく感覚を味わっていただけるかと。 ――やはり開発スタッフの皆さんの中には、ハッキングのパズルが超得意な方もいるんですか?
大山
特定の誰かがうまいというわけではなくて、くり返しプレイするうちに、みんなどんどんうまくなってきちゃって。チームとしてはうまくなりすぎちゃって、そうすると初めてプレイする一般の方とスキルが乖離してきちゃうんです。テストプレイの際は、都度初見の人を連れてきて、そのプレイフィール、意見を取り入れながら調整しました。 ――ディアナのハッキングとともに軸となるヒューのアクションについてもお聞かせください。今回体験できた中では、ふわっとしたホバーが楽しかったです。
大山
今回試遊していただいた範囲では、スーツの機能を使って重力の低下を抑えている状態なので、ふわっとした感覚は味わっていただきつつも、地球に近いプレイフィールも得られるような調整になっていますね。
――今回の試遊では、ヒューの武器は3種類ありましたが、今後、どんなバリエーションが増えていくのでしょうか。
大山
ヒューの武器については、十字キーのそれぞれの方向に、特徴的な武器をアサインできる状態になっています。ショックウェーブガンという高火力の武器は左側のボタンにアサインされていますが、ゲームが進んでいくと、ショックウェーブガン以外の高火力の武器も登場します。それを見つけたときに、ショックウェーブガンを装備したままにするか、新しいほうを装備するかを選んで、スロットに当てはめていく形ですね。 ――右側のボタンには、ちょっとトリッキーな武器がアサインされていましたね。では、下側のボタンは……?
大山
下側はまだ秘密です(笑)。上側のボタンに設定されている武器は唯一、時間経過で弾の数が回復しますので、ここだけは武器の入れ換えなしで、スタンダードなシューティングを楽しんでいただけます。
人間らしさと違和感を両立させたディアナのかわいさ ――『プラグマタ』への反響を見ていると、やはり「ディアナがかわいい!」という声が非常に大きいと思います。人間らしさとアンドロイドらしさのバランスはどう調整したのでしょうか。けっこう人間寄りの外見をしているようにも思いますが……。
大山
人間っぽく見えつつも、アンドロイド的な違和感を残している形になります。たとえば、月面の施設にいるのに、どうして宇宙服を着ているんだ、どうして裸足なんだ、とか。そういった「人間だったら、これはおかしいな」という違和感を入れ込んでいます。一見、宇宙服を着ているヒューのほうがロボットに見えて、ディアナのほうが人間っぽいのに、じつは逆というギャップが、また驚きとおもしろさを作り出せていると思っています。
――ディアナは青い服も印象的ですね。
大山
いろいろと案を出していった中で決定したデザインなのですが、結果的に、黄色と青というカプコンらしいカラーになりました。今後のカプコンを象徴するようなキャラクターになってくれたらうれしいですね。 ――ディアナについて、英語のボイスを聴くと「ダイアナ」と呼ばれているようなのですが、日本語では「ディアナ」という表記にしていることに意味はあるのですか?
大山
この作品に限らず、キャラクターの名前は、その言語でプレイする方にとって馴染みのある発音や表記に変えるのが通例ですので、その一環ですね。日本の方にとってはディアナのほうが馴染みやすそうということで、もともとディアナという名前で開発を進めており、ローカライズする中で、英語のボイスではダイアナになりました。 ――ところで、プラグマタのロゴを見ると、一番目のAとMと一部分だけが光っていますが、これにはどんな意味が込められているのでしょうか。
大山
お気づきになりましたか。これは、逆向きの矢印と言いますか、逆の方向をハイライトしている状態になっていて、これはまったく異なるふたつのものを強調するようなニュアンスになっています。ただ、これが具体的に何を指しているのかというのは、ゲームをプレイして考えていただきたいです。もしかしたら人間とアンドロイドかもしれないし、月と地球かもしれないし……ゲーム内には対照的なものがいくつもありますので、それらを探しながらプレイしていただき、いろいろと考察していただけたらうれしいです。 ――2026年発売予定ということで、まだ具体的な発売日は公開されていませんが、開発状況はいかがでしょうか。
大山
これまで度重なる延期を報告させていただいていましたが、いよいよ本当に、2026年に発売します。ですので、先日公開したトレーラーでも、ディアナからのメッセージで「It’s real XD」という風に書かせていただきました。
――一部のファンからは、もうディアナから謝罪のメッセージがもらえない、という嘆きの声も上がっていましたが(笑)。では最後に、ゲームファンの皆様に向けてひと言お願いします。
大山
ようやく2026年発売決定ということで、これまでお待たせしてしまって申し訳ございません。長らくお待ちいただき、ありがとうございました。ゲーム発売に向けて、これからも情報を発信していきますので、今後の続報にもぜひご期待してお待ちいただけるとありがたいです。
インタビューには、大山氏とともに本作のプロデューサーを務めるエドソ・エドウィン氏(右)も同席。「実際に触っていただくとわかるのですが、すごいゲームプレイ体験ができますので、ぜひ多くの人に遊んでいただきたいです。今後、多くのイベントにも出展を検討していますので、よろしくお願いします」とのこと。
gamescom会場のいたるところにヒューとディアナのビジュアルが掲示されていた。東京ゲームショウへの出展も決まったとのことで楽しみ!
VIDEO