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『モンハン』辻本Pの基調講演。シリーズ21年の歩みと時代に合わせた仕掛け。「一狩りいこうぜ」が生まれ、世界に挑戦したシリーズ21年の歴史【CEDEC2025】

byぽんきち

『モンハン』辻本Pの基調講演。シリーズ21年の歩みと時代に合わせた仕掛け。「一狩りいこうぜ」が生まれ、世界に挑戦したシリーズ21年の歴史【CEDEC2025】
 2025年7月22日~24日、日本最大のコンピュータエンターテインメント開発者向けカンファレンス“CEDEC2025”が開催。最終日の24日に行われた基調講演“「モンスターハンターシリーズ」21年の継続と仕掛け”の内容をリポートする。

 講演を行ったのは、ハンティングアクション『
モンスターハンター』(モンハン)シリーズのプロデューサーを務めることでおなじみの、カプコンの辻本良三氏(※)。今年(2025年)で21年目を迎え、“ほかのプレイヤーと協力して強大なモンスターに挑む”というプレイジャンルを確立した『モンハン』シリーズの継続と仕掛けに関して、当時の開発エピソードも交えて存分に語られた。
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※“辻”の字は1点しんにょう。[IMAGE]

『モンハン』のテーマは、“誰でも参加できる”こと

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 いまでこそ『モンハン』シリーズプロデューサーとして名を馳せる辻本氏だが、1996年入社当時は、アーケードゲームプランナーとしてゲーム開発に携わってきた。

 そして2004年には初代『モンスターハンター』にてネットワークプランナーとして関わり、2007年に『
モンスターハンターポータブル 2nd』のプロデューサーを担当。以降、『モンハン』シリーズのプロデューサーとして活躍している。
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 話はシリーズ全体のことへ。シリーズ共通のテーマとして掲げられているのが、“誰でも参加できるマルチアクションゲーム”であるということ。オンラインゲームでは、「自分が役に立てなかったらどうしよう」、「ミスしちゃうとまずいかも」と、参加をためらってしまう人も決して少なくない。そのため、『モンハン』では、プレイヤーの活躍に影響されない報酬など、誰でも参加しやすいシステムおよび殺伐としない世界観をテーマに開発に臨んでいるという。
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 シリーズ共通のコンセプトになっているのは、“コミュニケーション×アクション”。プレイヤーどうしのコミュニケーションを念頭に置きつつ、つねにアクションの進化を意識しながら開発しているとのこと。加えて各タイトルごとに独自のコンセプトも掲げられており、それが唯一無二の個性につながっているのだろう。

21年目を迎え、世界中から注目を集める『モンハン』シリーズ

 続いて、時系列順に発売タイトルの解説をしていく辻本氏。1本目は、2004年に発売された“無印”こと初代『モンスターハンター』だ。
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 『モンスターハンター』というタイトルは、企画当初から付けられていたもの。あまりにもシンプルがゆえに、商標登録的にスタッフの誰もが発売時には変わるだろうと思っていたところ、なんとそのまま通ってしまった。
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 そもそも、『モンハン』はどういった経緯で立ち上がったのだろうか。企画当時、辻本氏が所属していたアーケード開発部門では、コンシューマーゲームも作りたいという声が挙がっており、会社としても将来的に来るであろうコンシューマーでのオンラインゲームに先駆けてチャレンジしていこうという方針があったため、ほか2本のタイトル(『アウトモデリスタ』、『バイオハザード アウトブレイク』)も含めて『モンハン』の開発が決まったそう。
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 しかし、当時はネットワーク環境が現代とは比較にならないくらい低い水準だったのに加え、インフラも整っていなかったため、開発はかなり難航したようだ。
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 通信での制限が多いと、やれることも限られるため、どこかを優先するしないで調整する必要が出てくる。例えば通信同期では、プレイヤーと大型モンスターに関しては同期させているが、小型モンスターや報酬面は同期していない。『モンハン』でのマルチプレイ時、見えない小型モンスターに吹っ飛ばされているハンターを目の当たりにした人もいると思われるが、それは同期されていなかったためである。

 そんな『モンハン』は、グローバルでトータル45万本の売り上げを達成している。開発としても手応えを感じていたが、同時にハードウェアやネットワーク環境面で、オンラインゲーム自体のハードルの高さが課題となっていたようだ。
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 翌2005年には、無印のアップグレード版である『モンスターハンターG』が発売。上位クエストより上の“G級クエスト”、新武器種の双剣追加など、数々の追加や調整が施されている。開発理由としては、ファンへの感謝の気持ち、そしてもっと『モンハン』を遊んでほしいという気持ちからとのこと。
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 同年には初の携帯機用タイトルとして『モンスターハンターポータブル』が発売。無印の話で挙がった“マルチプレイ時における通信の壁”を、“持ち寄る”ことで解決できるという何よりの強みが注目された。辻本氏も、「『モンハン』マルチプレイの醍醐味を広げてくれたタイトル」とコメントしていた。
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 無印との大きな違いは、攻撃の操作が右スティックからボタンに変更されたこと。直後に発売される『モンスターハンター2(ドス)』では右スティック攻撃が採用されているが、以降のシリーズではすべてボタン操作になっているため、転換期的な意味合いでも大きなタイトルであるといえる。
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 初の正式なナンバリング続編として、2006年には『モンスターハンター2(ドス)』が発売。無印から世界を広げるべく、当時やれなかったことを全部やり切ろうというテーマが設けられた。

 大きな変更&追加としては、新4武器種の追加、そしてサーバー側企画の強化だ。前者は太刀、ガンランス、狩猟笛、弓の4種が加わり、よりやり応えが増している。後者は、モンスターの狩猟数によって素材の値段(価値)が上下したり、昼夜や季節が変化するとなど、より自然やリアルを感じられるシステムが導入されている。
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 ポータブルシリーズの続編として登場したのが、2007年に発売された『モンスターハンターポータブル 2nd』。タイトルロゴを、少年週刊誌のイメージにしたデザインにするほど、若い世代をターゲットに絞っている。

 また、国内で初の100万本突破タイトルで、感慨深い作品だと辻本氏は語る。事実、日常生活的にも『モンハン』という単語を目にする機会が増えてきたタイミングでもあり、シリーズ人気の火付け役であるのは間違いないところだろう。
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 時期を同じくして、独自のリアルイベント“モンスターハンターフェスタ”も開催されている。「1日だけ『モンハン』のテーマパークを作りたい」。そんな思いから、開催にいたったという。フェスタではステージ上でタイムアタック大会も行われていたが、テーマパークになぞらえて、いわゆるヒーローショーの立ち位置で企画されていたようだ。

 また、こういったイベントでは、現地までの道のりや待ち時間などでゲームをプレイする機会が増えるため、それが携帯機の持ち寄りともうまく噛み合って、大きなプロモーション効果が得られたと同時に一大ムーブメントにつながったイベントだったと辻本氏は語った。
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 2008年には、『モンスターハンターポータブル 2nd』のアップグレード版『モンスターハンターポータブル 2nd G』が発売。当初は発売予定がなかったらしく、『モンスターハンターポータブル 2nd』のヒットを受けて急遽開発が決定。当然、開発スケジュールは非常にタイトで、当時『モンスターハンター3(トライ)』の開発に当たっていたメンバーも総動員し、なんと制作期間はたったの9ヵ月だった。
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 直近では当たり前の存在となったオトモアイルーだが、初登場したのは本タイトルである。シングルプレイでもマルチプレイの感覚を味わってほしいところから生まれた要素。

 また、おなじみのフレーズ“一狩りいこうぜ”が生まれたのもこのとき。もともとは広告代理店でのコンペティションで発案されたもので、このフレーズを見て即座にプロモーションの方向性を決めたほどインパクトがあったそう。
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 2009年には、ナンバリング新作の『モンスターハンター3(トライ)』が発売。当時、すでに据え置き機チームと携帯機チームの2チーム構成で開発が進められていた。
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 本タイトルで、もっとも大きな新システムが“水中戦”だ。導入理由としては、川を渡るアプトノスを見て、自分たちも水中に入りたいなど、ユーザーからの要望が多かったことなどが挙げられる。

 しかし、水中は設地面がないためか、プレイヤーが距離間をつかみにくく、プレイヤーに求める操作難度と、開発面における制作難度の両方が上がることになってしまった。そのため、きちんと遊びとして成立しなければ水中戦自体を切ることも視野に入れて開発していたとのこと。
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 開発の頑張りもあり、水中戦は実現。結果的に開発側がやりたかった“立体的なアクション”につながる実験として、大きな意味があったと辻本氏。一方で、新武器種スラッシュアックスを追加したと同時に双剣、ガンランス、狩猟笛、弓の4種を削減してしまった背景もあり、それが本タイトル及びシリーズ全体でも大きな反省点となっているようだ。
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 翌2010年、一風変わったスピンオフタイトルの『モンハン日記 ぽかぽかアイルー村』が発売。女性ユーザーをターゲットとして強く意識しているほか、一般層にもゲームを近い存在に感じてもらうべく開発された。

 ちなみに、本タイトルには著名占い師であるゲッターズ飯田氏による占いが導入されているのだが、数十年分が貯蓄されているらしく、いま現在占ってもきちんとした結果が出てくるという。
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 続いてのタイトルは、2010年に発売された『モンスターハンターポータブル 3rd』。ポータブルシリーズの集大成であり、シリーズ初の和の世界観が採用されているのが特徴。累計で490万本を売り上げたが、辻本氏個人としては500万本を目指したかったという。メインモンスターのジンオウガはシリーズモンスターの人気投票で1位を取るほどの人気で、さまざまな面で変革を残すタイトルとなった。
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 男性と女性ユーザーの両方に手に取ってもらえるよう、“かっこいい”と“かわいい”を揃えたデザインになっている。カップルや夫婦でも遊びやすいように、という思いも込められているそう。

 また、本タイトルには温泉が出てくることから、長野渋温泉とのコラボも実施していた。温泉全体のデコレーションに加え、携帯機を持ち寄って遊べるスペースも設けるなど、コミュニケーションの場としても機能していたイベントだった。
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 と、同時期に『モンスターハンター4』が開発されていた。が、制作は難航しており、発売が約1年ほど遅れるのがすでに見えていたという。
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 そんな中、何か違うタイトルを出さねば……と生み出されたのが2011年発売の『モンスターハンター3(トライ)G』。ニンテンドー3DSで初のシリーズタイトルとなり、立体視機能も実装。外部開発会社であるエイティングとの共同制作タイトルであり、これには社内の中心スタッフが『モンスターハンター4』の開発に関わっていたためという理由もある。

 当初は『モンスターハンター3(トライ)』の移植をベースに、モンスターを1体追加できれば……くらいのイメージで開発が進められていたそうだ。
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 だが開発が進むうち、複数の新モンスターや新システムの追加、さらには拠点やG級ランクの追加など、移植どころか新作相当の内容になるのが見えてきたという。
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 当初は移植ベースだったため、企画段階では『モンスターハンター3(トライ)3DS Edition』というタイトルで、内容が濃くなるにつれて『モンスターハンター3D WORLD』というタイトルに変更。しかもロゴまで完成していたが、新作相当の内容になるならタイトルは変えようという判断になり、発表1ヵ月前のタイミングで『モンスターハンター3(トライ)G』に。ロゴも作り直すことになった。結果、当初の想定を大きく上回る260万本というセールスを記録している。
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 2013年、ニンテンドー3DSにてナンバリング新作の『モンスターハンター4』が発売。『モンスターハンター3(トライ)』の水中戦で培われた立体的アクションを、地上での立ち回りで応用する第一歩となったタイトルだ。さらに新武器種として操虫棍、チャージアックスの2種が追加され、以降のシリーズはすべて14武器種で展開されている。
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 ここで開発初期コンセプト動画へ。2011年開催の“ニンテンドー3DSカンファレンス 2011”でサプライズ公開されたものとほぼ同等で、ティガレックスに追われるハンターが立体的なフィールドを自由自在に駆け巡るといった内容。

 『モンスターハンター4』で目指す高低差のあるアクションがどんなものなのか、モンスターが立体的な地形にどう対応するかを社内でイメージ共有することも考慮に入れて制作された映像だ。実際に『モンスターハンター4』では高低差を使った攻撃やアクションが多く導入されてもいる。
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 翌2014年には、シリーズ生誕10周年を迎えた。アパレルコラボなどさまざまな展開が始まり、シリーズの枠自体が広がっている。
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 同2014年には『モンスターハンター4』のアップグレード版である『モンスターハンター4G』も発売。『モンスターハンター4』は海外版発売がなかったため、本タイトルにて大きな海外展開に挑戦したこともポイントだ。海外への意識が高まり始めたタイトルでもあった、と辻本氏は振り返る。
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 続いては、『モンスターハンタークロス』が2015年に発売。当初はこういった形でのタイトルではなく、ほかの部署で開発していたものを急遽方針変更によってコンシューマー部門で開発することになったのだという。
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 内容自体をいちから見直し、テーマを“お祭り感”に設定。シリーズ10周年のタイミングも重なり、豪華な企画になっているとのこと。

 新システムとして導入されたのは狩猟スタイル。当時、多くのプレイヤーが独自のプレイスタイルで遊んでくれていることも考え、プレイヤー自身が自分のプレイスタイルをより突き詰められるようなシステムを盛り込んだ。自分の好きな武器種に、狩猟スタイルと狩技を組み合わせ、自分好みのプレイスタイルで遊べるという方向性は、企画段階からすでに決まっていた。
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 シリーズの幅を広げたいということで開発された、2016年発売の『モンスターハンター ストーリーズ』。RPGタイトルは、シリーズでは初となる。

 『モンハン』でもっともスポットが当たるキャラクターはモンスターである、と辻本氏。モンスターをクローズアップしつつ、アクションが苦手な人でも遊べるRPGジャンルの『モンハン』を作りたいと考えはずっとあったものの、なかなか立ち上げが困難な状態が続いていたという。後に大黒ディレクター(大黒健二氏)と出会い、完成にいたったが、ゲーム制作において人との出会いは本当に大切だと辻本氏は振り返る。企画考案から発売まで、じつに8年ほどかかっているそう。
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 本タイトルには、アクションの『モンハン』ではできない、RPGならではの企画が多く盛り込まれている。プレイヤーが従来のハンターという立場では、どうしてもモンスターを近くに感じられないと考え、新たにライダーという存在が生み出された。

 現在は続編の『
モンスターハンター ストーリーズ2』も発売され、シリーズ累計売り上げで300万本を超えるほどに。また、『モンハン』本編の未経験者が多く、新たなファン層の獲得にもひと役買っている。
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 2017年は、『モンスターハンタークロス』のアップグレード版『モンスターハンターダブルクロス』が発売されている。お祭り感とプレイスタイルの追及は引き継ぎつつ、モンスターや狩猟スタイルの追加など、より豪華さを増した内容になっている。累計販売本数は、シリーズ初の500万本を突破。

 同タイミングで、海外イベントへの出展や現地ファンとのコミュニケーションも積極的に。海外ファンのコミュニティも増加し、今後のグローバル展開にも好影響を与えたとのこと。

世界を見据えた戦略――グローバルで広く展開される『モンハン』

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 辻本氏が、シリーズとして大きくステップアップするにつながった作品とするのは、2018年に発売された『モンスターハンター:ワールド』。“据え置き機によって最高品質の『モンハン』を作る”、“全世界同日発売”をテーマに、これまで以上にグローバル展開を意識したタイトルだ。

 立体的なアクションとフィールドのさらなる進化、モンスターどうしの干渉や環境利用など、『モンハン』の世界を感じてもらいつつ止まらないアクションが楽しめることを目指して制作された。
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 企画当初に決まったコンセプトの多くは、製品版でもほぼ実現。ここで、開発中の映像と製品版の映像の比較が流された。グラフィックに差異はあれど、ハンターが行っているアクションや各種要素に違いはほとんど見られなかった。開発段階での完成度がいかに高いかが見て取れる。初期に作られた要素も、すべて実現できているそうだ。
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 『モンスターハンター:ワールド』制作時は、AAAタイトルを目指すため、自分たちがそれまでやれていなかったことを見直そうという流れがあった。とくに全世界同日発売に関しては、これまでのシリーズでは達成できておらず、それはローカライズに時間がかかってしまうからだという。スケジューリングの見直しはもちろん、開発全体で、何としても達成するぞという意気込みが大切だと辻本氏は語る。
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 海外でのフォーカステストも実施されている。ここでさまざまな意見を聞き、開発が考えている『モンハン』の当たり前をいちから見直そうというのが狙いだ。もちろん必要なものは残し、変えるものは変えていく取捨選択を、フォーカステストを経て熟考したという。

 それまでの『モンハン』にあった、回復薬を飲んでのガッツポーズも、フィールドがシームレスになった関係でゲーム性そのものがスピーディなものに変化したため、硬直時間を撤廃し、より止まらないアクションを目指すということになったようだ。
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 フォーカステスト後に変更された点でもっとも大きな要素は、モンスターのダメージ表記であるという。それまでの『モンハン』ではモンスターのダメージの体力ゲージも表記していなかったが、これはモンスターの状態(疲れ、瀕死など)や状況を見てプレイヤーに判断してほしいという考えがあったからだ。しかし、フォーカステストで自分の攻撃が効いているのか否かがわかりにくいという意見が挙がり、アクションゲームとして重要な攻撃の“成功と失敗”を感じ取ってもらえていなかったと判断。

 最終的にモンスターの体力ゲージは出さない方向で固めたため、状態を見て判断してほしいという大事な部分は残しつつ、プレイヤーの攻撃の成功と失敗はわかりやすくなったので、このタイミングで導入してよかったと辻本氏は当時を振り返った。
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 ここまで大きなことをすると開発費が気になるが、当然と言うかなんと言うか、当時のカプコンで過去最大規模。グローバルの拡大を目指すなら……と、会社としてもバックアップはしてもらえたが、そのぶんマイルストーンごとでの説明をより密に行う必要もあったそうだ。
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 プロモーション展開も、それまでとは変化している。以前は完成直前に各販社や販売部門などにゲームを見せて戦略を組んでいくというやりかただったが、『モンスターハンター:ワールド』からは開発途中でグローバルの各販社と連携を取ってグローバルで売るための戦略を組む形になっている。タイトル名やイメージイラストひとつ取っても、各地域の意見を聞きながら作ったほど、コミュニケーションを密に取りつつ開発を進めたという。

 情報の出しかたにも気を遣っている。グローバルで同タイミングの情報出しはもちろん、各グローバルイベントでの情報発信も心がけて、日本、アジア、欧米での情報の切り分けも行った。

 また、『モンハン』シリーズでは、開発初期の段階で各種出展イベントや体験版、ベータテストなどの予定を決めてしまう。そうすることで、緊急な作業が発生することを防げるそうだ。
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 各地域のメンバーとのコミュニケーションも強化している。各地域へプレゼンに行く際は、ディレクターを始めとした開発メンバーが直に行う。海外での出展イベント時も開発メンバーが現地へ赴き、プレイしている人の反応を間近で見るといった施策にも積極的だ。

 各地域のユーザーの声も、コミュニティマネージャーから開発へ届くようにしている。『モンスターハンター:ワールド』時点ではコミュニティマネージャーは5名だったが、『
モンスターハンターワイルズ』のタイミングでは9名ほどに増員しているそう。
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 『モンスターハンター:ワールド』発売前の海外展開スケジュールも公開された。欧米やアジアを始め、各地域で積極的にイベント出展やメディアツアーなどを行っている。
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 周知の通り、『モンスターハンター:ワールド』からはタイトル名からナンバリングが廃止されている。『モンスターハンタークロス』などの反応も見つつ、今後海外でも手に取ってもらいやすくするため、正式にナンバリングを外すことを決定したという。グローバルのタイミングでプレイしてくれる人が多くなるであろうことを想定すると、ナンバリングが付いているとどうしてもハードルが高くなるであろうという考えだ。

 そういったさまざまな施策の結果、『モンスターハンター:ワールド』は全世界で2850万本を超えるセールスを記録している。
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 2019年にはシリーズ15周年を迎えた。多くの周年イベントが催されたが、同時に海外でのイベント開催やコラボレーションが増えてきた時期でもある。
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 同2019年には、『モンスターハンター:ワールド』のアップグレード版、『モンスターハンターワールド:アイスボーン』が発売。これまでのアップグレード版はパッケージで発売されていたが、本タイトルからはデジタルが普及してきたこともあり、エキスパンションとしてリリース。その際、最上位クエストの“G級”も、海外では意味がわかりにくいという意見が多かったため、“マスターランク”に変更されている。
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 『モンスターハンター:ワールド』のときと同様、グローバルでのコミュニケーションはしっかりと継続されており、それが売り上げにもつながっている。

 続いて登場したのは、2021年に発売された『
モンスターハンターライズ』。『モンハン』が広がったきっかけである携帯機に、どうしても『モンハン』を提供したいという思いから開発が決定。より立体的でスピーディなアクションを目指すため、翔虫(かけりむし)やオトモガルクといったシステムを導入している。
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 『モンスターハンターライズ』は、開発途中までは過去シリーズのような各エリアでロードが挟まるマップが採用されていた。しかし、『モンスターハンター:ワールド』発売後に急遽シームレスマップへ変更。急な作り変えゆえにどうしても捨てなければならない要素があったほか、作業量自体もとんでもなく増加したが、結果的には変更してよかったと辻本氏。また、このタイミングで環境生物(ヒトダマドリ)を集めてステータスをアップさせるというアイデアが生まれてきたという。
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 翌2022年に、『モンスターハンターライズ』のアップグレード版『モンスターハンターライズ:サンブレイク』が発売。以前の携帯機タイトルをプレイした人が多く遊んでくれているタイトルであり、過去作からの動線を作ってくれたタイトルとして、このタイミングで出せて本当によかったと辻本氏は振り返る。
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 2024年には、ついにシリーズ生誕20周年を迎える。過去の周年企画を大きく上回る展開ができ、シリーズ作品としてもすごく大きくなってきたことを実感できた年だったと語った。
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 そして2025年、シリーズ最新作の『モンスターハンターワイルズ』が発売。タイトルの由来にもなっている、野性的で荒々しい世界や生態系を描き、集中モードなどでさらなるアクションの深みを目指して開発された。

 ここで、本タイトルの初出開発動画が流されたが、こちらは残念ながら撮影禁止。内容は、荒々しい生態系や群れの実現度の検証を行ったテスト動画だ。デザイナーなどもあまりいない時期で、当時使えたモデルなど使って作られていたそうだが、肉食モンスターの群れと草食モンスターの群れがぶつかり合う様が確認できた。
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 『モンスターハンターワイルズ』ではフィールドがかなり広くなったこともあり、セミオートでの移動手段である生物、セクレトが導入されている。『モンスターハンターライズ』のオトモガルクも騎乗できる存在だが、オトモガルクはより狩りのサポートに特化、セクレトは移動に特化している。各タイトルのシステムに応じて、使いかたやキャラクターの設定も変えている。
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 シリーズ最速で1000万本のセールスを記録。現在もタイトルアップデートなどで運営を行っている。
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 シリーズ21年目を迎えた『モンハン』シリーズ。今後も初代からのテーマを忘れず、進化とチャレンジを続けていけたらと辻本氏。ゲーム以外の展開も積極的に行っていき、グローバルでの認知拡大を目指していきたいと締めくくった。
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集計期間: 2025年08月11日12時〜2025年08月11日13時