ごく簡単に評するなら“『P5』をスマホでも遊べるようにしたゲーム”で、興奮した筆者たちは「シリーズファンはうれしいのでは!?」と鼻息荒く魅力をこれまで紹介してきました。
というのも、『P5X』は“心のダンジョンを冒険する学園ジュブナイルRPG”として、単純におもしろいのです。ジュブナイルとは、“少年期の”、“少年少女向けの”といった意味合い。ざっくり言うと“若者ががんばる作品”でしょうか。
筆者は『P5X』をプレイするにつれて「『ペルソナ』ファン以外の人にも遊んでほしい!」という“欲望”がわいてきました。そこで、シリーズ未経験の方に向けて、本作の魅力を改めてお伝えしていきます。
基本無料で本格的な学園ジュブナイルを!
現代日本の街を舞台に、若者を中心とした登場人物たちが学生生活や日常の身近な出来事を経験しながら、不可思議な噂や都市伝説など、オカルティックな事件に立ち向かいます。
心理学におけるpersona(ペルソナ)は、“社交の顔”や“仮面をかぶった人格”といった意味の言葉で……という説明はいったん置いておき、筆者を含め、多くのゲーマーを虜にしているこのシリーズは、“学園ジュブナイル”というジャンルでも呼称されています。
まだ青さの残る若者たちが、苦難を通じて大人になっていく。筆者もそうなのですが、人間関係の構築や成長していく過程が緻密に描かれるジャンルに強烈な魅力を感じる人は多いはず。とくに学園を中心にしたジュブナイルものは、『ペルソナ』シリーズ(筆者は『3』から入ったクチです)をはじめ、『九龍妖魔學園紀』、『FF8』……など、さかのぼると名作がたくさんあります。
こうした作品をずっと推しており、常々いろいろな人に遊んでほしいと思っているわけですが、基本プレイ無料のタイトルで学園ジュブナイルを扱った作品は、なかなか見つかりませんでした。
その点、『P5X』は青少年の内面を深く描いた『P5』の魅力を色濃く受け継いだ作品。昼はごくふつうの高校生、放課後は悪人の心を盗む“怪盗”として、二重生活を行うことになります。法で裁かれない悪に立ち向かう義賊の要素(ピカレスクロマン)が入り込むことで、日常と非日常がお互いを引き立てるような刺激的な設定となっています。
10代の苦悩、衝突や克己を描いた物語は、大人になった我々の心の奥底を刺激します。そこから溢れ出す感情こそまさに、学園ジュブナイルがもたらすカタルシス。基本プレイ無料だからといって、その物語の構造は変わりません。
むしろ“ソシャゲ”であることを忘れてしまうほど、家庭用ゲームさながらのプレイ体験が待っているのです。
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学生生活と怪盗活動、そしてリアルの三重生活を始めてみないか
まず、本作において“立ち向かうべき敵”として登場するのは、逮捕スレスレの迷惑行為をくり返す“ファントム”と呼ばれる人々。
“ぶつかり男” のような小悪党が主人公たちの目の前で好き勝手したうえで、なぜか捕まらないというモヤっとする状況が訪れます。ある日、この異常な世界で、“ペルソナ”を得た主人公は、正義の心をもって悪党を改心させる決心をします。
“心の怪盗”として、いっしょに抗う仲間を得ながら世直し。最初のうちは、現実の社会でも起きている身近な問題が解決すべき事柄として突きつけられます。非現実的な巨悪ではないため、プレイヤー自身も動機にしやすく、ストーリーへの没入感の高さに結びついています。
仲間とは世を忍ぶためのコードネームで呼び合い(主人公は“ワンダー”)、悪党にはクライマックスでオタカラを盗むための“予告状”を送り付ける。この怪盗団のノリは痛快そのもの。
もうひとりの自分として、ともに戦ってくれるペルソナも盛り上がりに欠かせません。「ペルソナ!」と叫んで召喚するその描写は、ビジョンも相まって、少年漫画的なワクワク感がたまりません。なお、基本的にペルソナはひとりにつき1体ですが、主人公は複数のペルソナを扱える特別な素養を持つ、という設定もあります。
敵が倒せなくなったとき、先に進めなくなったときに、スタミナを消費する周回コンテンツで仲間・武器を鍛えたり、日常パートの都市生活に戻ってくることになります。育成をする→物語を進める→詰まったら育成をする、という感じで進めていくわけですね。
日中は学校で授業を受けたり、映画を観たり、誰かと過ごしたりする。そうした日中の行動が、“人間パラメータ”(知識・度胸・器用さなど主人公の能力を現した値)の上昇や友人との“シナジー”(親愛度のようなもの)の深化につながり、ひいては放課後の怪盗活動にさまざまなメリットをもたらします。
こうした要素に、独自の進化を遂げたプレイサイクルが導入されたことで、『P5X』はかなり継続して遊びやすいタイトルへと仕上がっています。
本作はソシャゲ的な運営型のタイトルとして、育成用の周回コンテンツや日常パートでの行動にそれぞれスタミナ(体力/行動力)を採用。これらは時間経過で回復するか、アイテムを使って増やすことができます。
毎日更新されるデイリーミッションもあり、ログイン→デイリーコンテンツ消化をするための“日課”がプレイに入り込んでくるわけですが、必要な所要時間はだいたい10~20分程度とかなり軽い部類。時短要素として、スタミナや行動力を一気に消費する(消費した分の報酬が上乗せされる)選択肢も用意されています。
そのため、ふだんの生活が忙しい人でも、オートバトルを使えば体をあまり占有されることなく遊べる仕組み。リアルの日常に溶け込んだデザインに調整されていると言えます。
当然ですが、スタミナや行動力を使わないことは、いくらでも堪能できます。メインストーリーの進行自体はスタミナを必要としないので、隙間時間にコツコツとスタミナを消費して育成し、休日に腰を据えてプレイ、というスタイルにも対応。パレスの攻略に差し迫った期限などは設けられていないので、自身の可処分時間に合わせて遊べるのはうれしいところです。
個人的には、渋谷や新宿などの作り込まれた街並みを練り歩くだけでもコンテンツとして成り立つと思うので、実装されている“フォトモード”を駆使して遊ぶような、都市シミュレータ的な楽しみ方もおすすめです。
『ペルソナ』サウンドも全身で浴びてほしい
もし少しでも興味があるのなら、最初は『ペルソナ』シリーズの体験版と考えてもいいかもしれません。気楽に始めてみると、『ペルソナ』らしい魅力を存分に感じてもらえると同時に、ひとつのRPGとして丁寧に作り込まれていることも理解してもらえるはず。
余談ですが、シリーズに触れたことない人は、とりあえず始めて『P5X』の優れたサウンドに包み込まれてください。『ペルソナ』シリーズは、かねてよりボーカル入りの楽曲が多く採用されています。オシャレかっこいいサウンド面のよさは、もちろん本作でもしっかり味わえるので……とりあえずダウンロードして、オープニングを観て。そしてとりあえず最初のバトルだけ戦って。そしてとりあえず最初のダンジョンだけでもクリアーしてください。本当に曲がいいので、作業用BGM装置と考えても非常に優秀です。