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デッキ構築型ローグライト『ANTHEM#9』開発者インタビュー。これがデビュー作ってマジ?「ゲームが上手くなくても楽しめる作品を作りたい」そこから生まれた色鮮やかな世界【BitSummit the 13th】

byヒゲメガネ長谷部

更新
デッキ構築型ローグライト『ANTHEM#9』開発者インタビュー。これがデビュー作ってマジ?「ゲームが上手くなくても楽しめる作品を作りたい」そこから生まれた色鮮やかな世界【BitSummit the 13th】
 2025年7月18日~7月20日まで京都・みやこめっせで開催されるインディーゲームの祭典“BitSummit the 13th”(ビットサミット)。

 本記事ではビットサミット・集英社ゲームズのブースでプレイアブル出展をしていた『
ANTHEM#9』の開発者“koeda”氏(文中:koeda)と、集英社ゲームズで同作のプロデュースをしている森田 航氏(文中:森田)へのインタビューをお届けしていく。
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写真左:森本氏、写真右:koeda氏

「自分でも楽しめるゲームを作りたい」という想いから生まれたデッキ構築ローグライト

――まず、本作の開発コンセプトからお聞かせいただけますでしょうか?

koeda
 開発コンセプトと言っていいのかはわかりませんが、自分でも楽しく遊べてクリアーできるローグライトを目指して開発しています。

 数年前、デッキ構築型ローグライトのゲームにすごくハマっていろいろなタイトルをプレイしたのですが、自分はそこまでゲームが上手いほうではないので、“おもしろいから遊ぶけど、クリアーできない”という、歯がゆい思いをすることも多かったんですね。

 それで、あまりゲームが得意ではない自分でも楽しく遊べて、ちゃんとクリアーもできるデッキ構築型ローグライトを作りたいと思って、この『ANTHEM#9』の開発を始めました。かねてよりゲームを作りたいと思っていましたので、それもまた開発を後押ししたきっかけとなっています。

――いま「ゲームを作ってみたいと思っていたから、開発を始めてみた」というお話がありましたけど……。まさか『ANTHEM#9』がデビュー作ですか……?

koeda
 そうですね、そうなります(笑)。

――以前からプログラミングをされていたりとかは……?

koeda
 本業の会社で数年間プログラミングに触れる機会があったので、ベースはあった状態でした。ただ当然ながらゲーム開発をできるレベルではなかったので、Unityの専門書や入門書を買って勉強しましたね。

――正直なところ、「嘘だろ……」という感想しか出てこないですね。手触りもよく、演出も気持ちよく、ゲームそのものもおもしろくて。何かしらゲーム開発に携わっていた方なのかと思っていました。

koeda
 ありがとうございます! きっとそれは、集英社ゲームズさんの監修のおかげだと思います。

森田
 ある程度の監修はしていますが、企画に応募してもらってから話を聞き進めている時点で、もうすでに『ANTHEM#9』のベースはできていて、テンポのよさや、リズムの心地よさはほぼ完成した状態でしたよ。私たちが行ったのは、当時のバージョンからいいところをどんどん尖らせて、細かいところをブラッシュアップするお手伝いくらいです。

koeda
 自分は本当にゲームが大好きで、いろいろなゲームをプレイしてきたので、知らず知らずのうちに「こうしたほうが楽しい」という知識が溜まっていたのかもしれませんね。

 でも集英社ゲームズさんは、自分ひとりではできなかった、第三者視点からのアドバイスやブラッシュアップのアイデア提供をしてくださるので、『ANTHEM#9』がここまでこれたのは集英社ゲームズさんあってのことだと思います。

――具体的に、集英社ゲームズさんとタッグを組んでからどのような点をブラッシュアップしたのでしょうか?

koeda
 演出面は開発当初から大きく変わっています。当時はもっと演出が入っていて「おもしろいし気持ちいいけど、それがテンポの悪さも生んでいた」といった状況でした。短いプレイなら楽しいけど、長くプレイしていたらゲームプレイの支障になるといった感じだったんです。森田さんにはそういった点を見つけて調整のアドバイスをもらっています。
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企画書の段階から輝きを放っていた一作。色鮮やかなデザインはSNSウケ狙いから生まれた個性?

――ちなみに、『ANTHEM#9』の開発を始めたのは何年くらい前になるのでしょうか?

koeda
 開発を始めたのはだいたい4年くらい前ですね。そして集英社ゲームズさんから開発サポートを得られるようになったのは2年前、“集英社ゲームクリエイターズCAMP”のコンテストイベント“GAME BBQ vol.2”で大賞を受賞してからになります。

――では、koedaさんと森田さんはそこそこ長いお付き合いになるんですね。受賞後のエピソードでなにか印象に残っているものはありますか?

koeda
 ゲームとは関係ないのですが、ネタにもなっているおもしろいエピソードがひとつあります(笑)。森田さん、最初の顔合わせ兼打ち合わせの場に汗だくで登場したんですよ、べつに暑かったとかでもないのに。

――なぜ汗だくに?

森田
 私はうどんが大好きで、全国のおいしいうどんを食べ歩いているのですが、koedaさんがお住まいの地域はカレーうどんが有名でして。それで、打ち合わせの前に名物のカレーうどんを食べ、気持ちを盛り上げてから仕事に臨みたかったんですよね。

 お店には行列ができていましたが、急いで食べれば余裕で間に合う時間だったので並んで食べることにしたのですが……。届いたものが想像以上にボリューミー&アツアツだったんです(笑)。

koeda
 それを急いで食べて打ち合わせの場に走ってきたから汗だくだったんですよね(笑)。当時は「うどんにそこまで本気の人もいるんだな」とおかしく思いました。

――それは忘れられない出会いですね(笑)。コンテストイベント“GAME BBQ vol.2”に応募した企画書についてもお聞きしたいです。ゲームの良し悪しを企画書だけで判断するのは難しい部分もあったかと思うのですが、集英社ゲームズさんは『ANTHEM#9』の企画書の、どういった部分に光るものを感じたのでしょうか?

森田
 まず、大量に企画書が並ぶ中で『ANTHEM#9』の企画書は斬新な色使いと画作りがなされていたので、そのインパクトは大きかったですね。過剰とも思えるほど色が使われていて、まず真っ先に目に入ってきました。

koeda
 当時、ビジュアルについては自分のなかでおおよそ出来上がっていたので、何よりもまず絵を見せる企画書にしたのが効いたんですね。

 集英社ゲームズさんに開発サポートを受ける前は、SNSを通じてゲームの開発進捗報告をしていたのですが、そのときにもっとも意識していたのは“SNSを流し見している人の手が止まるような画像を投稿すること”でした。通常であれば、UIで使用する色の数は極力抑えるのがお作法だと思います。しかし、そうしたお作法を守った行儀のよい画面ではSNSユーザーの手を止めることはできないと思ったので、当時から斬新な色使いには気を使っていたんです。

 結果、SNSユーザーだけでなく集英社ゲームズさんの目を止めることもできたので、狙いは成功してますね(笑)。
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『ANTHEM#9』ゲーム画面。ここだけでも色の使用数が多いことが伝わる。
森田
 でも、『ANTHEM#9』の企画書は見た目だけでなく中身もよかったんです。企画書の見た目こそ派手だったものの、コアシステムは堅実に設計されているし、キャラクターデザインもしっかりかわいくデザインされていました。それで「これはおもしろそうだ」となり、“GAME BBQ vol.2”のデモ無し部門で大賞をお送りすることになったんです。

――企画書の段階ですでにコアシステムもキャラクターデザインも完成していたんですね。キャラクターデザインは何かコンセプトにしているものはあるのでしょうか? “開発者の好みや強いこだわり”が入っていると感じていたのですが。

koeda
 これまでにも、何回か同じ質問をされたことがあります。「このキャラクターからは開発者の“ヘキ”を感じる」って(笑)。でも実際にはそこまで私の好みを全開にして作ったというわけではないんです。

 『ANTHEM#9』の主人公であるルービットのベースとなるデザインは、
『VRoid』という、誰でも手軽に3Dキャラクターモデルが作れるソフトを使って作りました。「仮に『ANTHEM#9』にキャラメイク機能があったら、自分はこういうキャラを作るだろうな」という想像のもと作ったので、じつは自分の好みはそこまで反映されていませんし、強いこだわりを持って時間をかけてデザインしたわけでもないんですよね。

森田
 と言っていますけど、ルービットの中身の設定はもうガチガチにkoedaさんの頭の中で固まっているようなので、やっぱりkoedaさんの好きは詰まってると思います(笑)。

koeda
 さぁ、どうでしょう?(笑) ともあれ、そこからいろいろと修正を加わえていまのデザインになっていますが、やはりベースはあのときの『VRoid』で作ったモデルです。それがこうしてみなさんから好評をいただいているので、このキャラデザにしてよかったと思っています。
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――3Dモデルからスタートするキャラクターデザインというのも珍しいですね。通常であればまずは2Dイラストから始まり、三面図や設定資料を経て、3Dモデル制作へと進むフローになると思うのですが。

koeda
 たぶん、それが普通なんだと思います。『ANTHEM#9』のキャラクターデザインはその逆のようなフローで進みました。3Dから始まり、ゲーム中でも3Dで登場するルービットですが、じつは途中で一回2Dになっているんです。

――それは、開発途中ではルービットを2Dデザインで見せるバージョンもあったということでしょうか?

koeda
 いえ、キャラクターデザインを進めるにあたって、2Dイラストに起こす作業が入ったという感じですね。キャラクターデザインをしっかり作り上げるにあたって、一度イラストレーターさんに描き起こしてもらったんです。ビジュアルはほとんど変わっていないのですが、一度2Dデザインを経たことによって、当初のものよりもデザインとして洗練されました。

“無限ループビルド”がなくとも爽快に遊べるデザイン

――『ANTHEM#9』を開発していくうえで、もっとも苦労した箇所はどういった部分になるでしょうか?

koeda
 いちばんたいへんだったのはアイデア出しですね。ルービットは毒使いなので、毒を軸にしたビルドパターンを作るのは当然として、ほかに要素を入れるとしたらどんなビルドパターン、スキルを作っていくのがいいのか。それにひたすら悩んで頭を使いました。

 また複数のビルドパターンを作ったとしても、それぞれのビルドの特徴が離れすぎていると「この軸でビルドを組んでいくなら、異種のスキルはまったく不要」となってしまい、それはそれでおもしろさが削がれてしまいます。

 こうした状況を防ぐために、スキルの中には「毒を軸にしたビルドでも使えるし、エッジ(ナイフ)を軸にしたビルドでも使える」という、複数にまたがって使えるようなものをデザインしました。

 これは私個人の考えなのですが、ゲーム作りにおいて重要なのは“プレイヤーにどういう体験をしてほしいのか”という問への答えをブラさないことだと思っています。ひとつ軸を決めたら、その軸の周りに置く要素は軸とシナジーがなければならない。それを前提に、スキルをたくさん考えてデザインしていくのは難しかったですね。

――スキルのアイデア出しはレベルデザインも含めて難しそうですもんね。そんな中で、実装したかったけれど実現できなかったというものもあるのでしょうか?

koeda
 ひとつ、明確にありますね。無限ループです。

――ビルドが完成すれば無限に攻撃ができて、どんな敵を相手にしてもかならず倒せる。こういったタイプのゲームでは理想形、究極系のビルドパターンですね。

koeda
 言ってしまえばゲームバランスを崩壊させる要素ではありますが、ロマンのあるビルドですよね。完成させるのは難しいけれど、完成さえすれば敵なしになる、あの快感・達成感を『ANTHEM#9』にも取り入れたかったんです。

 しかし『ANTHEM#9』ではジェムという上限のあるリソースが攻撃のベースになっていることもあり、どうしても「デッキを完成させるのは本当に難しいけれど、完成できたら気持ちいい」という、ちゃんとバランスの取れた無限ループを作ることができなかったんです。

 今後のテストプレイやユーザーさんからのフィードバックで、なにかすごいアイデアが出たら実装できるかもしれませんが、いまのところ無限ループは諦めています。集英社ゲームズさんから出るゲームですし、「ずっと俺のターン!」ってやりたいです(笑)。

森田
 100コンボを軽く超える凄まじい攻撃を叩き込む、無限ループに近い強力なビルドはありますし、現状では100コンボも出せばほとんどの敵は倒せるので、ゲームとして無限ループにそこまでの意味はありません。しかしそこにロマンを感じる人は多いと思うので、なにかいいアイデアが出てくるといいですね。
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大量コンボが本作の華。ダメージ量と美麗演出で脳汁ドバドバ待ったなし!
――では最後に、開発者として推しておきたい『ANTHEM#9』の魅力をお聞かせください。

koeda
 『ANTHEM#9』は、インディーゲーム市場ではとくに人気を得ているデッキ構築型ローグライトの要素を取り入れています。このゲームジャンルは戦略性と運要素が絡み合って、非常に高い中毒性を持つおもしろいゲームジャンルなのですが、難しくもあります。そのため私のような「ゲームは大好きだけど、難しいゲームは得意ではない」という人は、このジャンルの作品を食わず嫌いしていたり、もしくは諦めてしまっていることもあるかもしれません。

 私はそんな人にも楽しんでもらえるものを目指して『ANTHEM#9』を開発し、ちゃんとその目的が果たせるような内容になったと自負しています。言ってしまえば自分のために作ったゲームではありますが、私と似た感覚を持つ人にはとくにプレイしていただきたいと思っているので、ぜひ触っていただければと思います。

森田
 『ANTHEM#9』をプレイしていていちばん気持ちいいのは、やはり大量コンボを作れた瞬間です。最大でどれくらいのコンボが出せるのか、その理論値はわかりませんが、ひたすら理想を突き詰めていけば100連を超える爽快コンボを叩き出すことも可能です。

 オシャレで華麗なビジュアルと音楽に包まれながら、コンボを突き詰めていく喜びが得られるゲームですので、少しでも気になるようであれば、ぜひ一度手にとって最大コンボを目指してみていただきたいです。リリースに向けて着実に開発を進めていますので、楽しみにしていてください。
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