『ヘル・イズ・アス』超先行レビュー。陰鬱な世界とクリーチャーの蠢きが精神をガリガリ削るアクションアドベンチャー。セミオープンワールドでの謎解きは絶妙な難度

byタワラ

『ヘル・イズ・アス』超先行レビュー。陰鬱な世界とクリーチャーの蠢きが精神をガリガリ削るアクションアドベンチャー。セミオープンワールドでの謎解きは絶妙な難度
 3gooより2025年9月4日にプレイステーション5版が、9月5日にSteam版が発売予定の『ヘル・イズ・アス』(Hell is Us)は、セミオープンワールドを採用した三人称視点のアクションアドベンチャーだ。内戦により荒廃した世界を舞台に、おぞましいデザインのクリーチャーと交戦したり、謎解きや探索が楽しめる。

 ナビが充実している昨今のゲームとは真逆の、マップやクエストマーカーのない探索システムも本作の特徴。プレイヤーの判断力や記憶頼りで進む場面もあり、世界観に没頭できるデザインになっている。

 今回、発売に先駆けて本作の冒頭部分をプレイする機会を得たので、プレイリポートをお届けしていく。
広告

精神がガリガリ削れていく敵のビジュアルが最高に不気味

 まず注目したいのは、不気味なクリーチャーのデザインだ。人に近い形だが、顔と胸にポッカリと穴が開いている。ゾンビや怪異とはまた違った恐怖を演出し、本能的に避けたくなる外見だ。 

 見ているだけで精神がガリガリと削られていきそうな外見に加え、人間の悲鳴のような金切り声で叫ぶのでなおのこと気味が悪い。
[IMAGE]

 また、見た目だけでなく動きも特徴的で、まるで数フレーム飛んだように急にポーズが切り換わる不気味なアクションをしてくる。

 残像を残しながらポーズを切り換えて攻撃してくるので、慣れるまでは戦闘にも苦労させられた。この急激に接近してきたり、予測不可能な動きをしてくる点も含めて、敵の不気味さが際立つゲームだ。
[IMAGE]

 また、クリーチャーは現代兵器が一切通用しない設定で、主人公が初対面で拳銃を撃った際も、身体を銃弾がすり抜けていく描写がある。近代兵器の類は通用せず、特殊な武器でのみ倒すことができるようだ。

 この不気味な敵が何者なのか、その正体に迫っていくのも物語の見どころになるだろう。
[IMAGE][IMAGE]

 本作は内戦で疲弊した国を舞台にしており、生存者より死体と出会うことのほうが多いのだが、それでもNPCとの交流も用意されていた。

 道中で出会う人々はつぎに進むべき道を教えてくれるほか、一般知識として世界観についても話してくれることがある。これらの会話は必ずしもゲーム進行に必要ではないが、より深く没入するためには詳しく聞いておくべきだろう。
[IMAGE][IMAGE]

 また、音声データや研究資料なども豊富に配置されていた。これらのアーカイブを読んでおくと、後々のストーリーをより楽しめるようになる。怪物の正体も含めて、「これってもしかして……」と考察しながら進められるので、中盤以降のストーリーへの期待も高まった。
[IMAGE]

追い込まれても一発逆転を狙えるアクションの仕組みがユニーク

 プレイパートでは探索と謎解き、そして敵との戦闘が楽しめる。戦闘はいわゆる“死にゲー”ほどではないが、ややハード寄りで骨太なアクション。

 敵との間合いの詰めかたや複数同時に相手取る場合の立ち回りなど、状況を読みつつ戦っていくことになる。基本のアクションはモーションの早い通常攻撃、高威力の強攻撃に加え、回避やガードも行える定番の形だ。
[IMAGE]

 今回プレイした範囲ではシンプルな直剣のほか、左右それぞれの手に持つ斧も登場した。武器種によってかなりアクションのテンポも変わる印象で、直剣は手堅い動きで、斧はスピーディーにガンガン攻めていくようなスタイルになる。

 強攻撃を長押しすると使えるチャージ攻撃のモーションも武器によって異なるため、序盤以降に登場する武器にも期待したいところだ。
[IMAGE]
チャージは武器が光り、周囲に煙を巻き起こす演出がカッコイイ。
 実際に戦闘をしてみると、敵1体であればほぼノーダメージで勝てるが、3体以上まとめて相手にすると難しくなってくる。

 敵が4体以上押し寄せてくる場所もあったので、できる限り1対1で戦える環境をキープする立ち回りも重要になりそうだ。1体なら怖くないが、複数の敵に囲まれてボコボコにされるバランスは、ソウルライクでよく体験する感覚に近い。
[IMAGE]
不気味な動きで複数が近づいてくると怖くて逃げだしたくなる。
 敵の動きが読み取りにくいというのも、本作で印象的な部分のひとつ。アクションゲームでは、初見の敵でも何となく敵の動きから回避・ガードのタイミングを見極められるものだが、本作ではそれが通じないことがあるのだ。

 敵がフレームが飛んだような動きをするのもそうだが、身体の形を変えて攻撃してくることもあり、戦闘中に「なんだそれ!?」と困惑させられる軌道で攻撃を仕掛けてくる。理不尽なほどではなく、慣れれば対処もできるのだが、どの敵も初見時には驚かされること間違いナシ。

 今回はボスに該当する強敵が登場しなかったが、各種アクションや敵のモーションから考えるに、ボス戦もかなり熱い戦いになることが期待できる。
[IMAGE]
シンプルな人型だけでなく、体内から結晶体のようなものが飛び出してくるユニークな敵も登場する。
 ちなみに、アクションゲームでは欠かせないパリィのシステムも用意されていた。敵の攻撃に合わせてガードすると、心地のいい金属音とともに敵が怯み、強力な攻撃を仕掛けられるようになる。

 パリィは大ダメージを狙えるだけでなく、ピンチから脱却できる起死回生のチャンスにもなり得るので、積極的に狙いたくなるのもいいところだ。
[IMAGE]

 本作はリスクを取ってパリィを狙ったり、連続して攻撃を仕掛ける積極的なスタイルだと戦いやすい要素がいくつか盛り込まれている。

 そのうちのひとつが、敵に与えたダメージに応じて自身のHPを回復できる、治療パルスのシステムだ。いわゆるリゲインに近いもので、HPが減っていても攻めの姿勢を崩さなければ、そのままHP回復のチャンスが訪れる。

 ただし、治療パルスは連続攻撃を仕掛けたり、パリィで大ダメージを与えないと使用できない。いつでも回復できるわけではなく、タイミングは意外とシビアだ。逃げながらチクチク攻撃をしても治療パルスは使いにくいため、パリィでの大ダメージや、連続攻撃を狙う攻めの姿勢がとにかく重要になる。
[IMAGE]
ダメージを与えると自身の周囲に淡い粒子が出現。HPバーの回復できる範囲が白くなる。
[IMAGE]
この状態で治療パルスを発動すると、HPが回復。戦闘で負ったダメージをなかったことにできる。

 プレイヤー側にとって便利な回復が用意されている反面、ダメージを負うほど不利になる仕組みなのも、戦闘の難しい点であり、そしておもしろいポイントだ。

 画面左上には赤いHPバーと緑のスタミナバーが並んでいるのだが、このスタミナはHPと連動している。ダメージを受けてHPが減れば減るほど、スタミナの上限値もいっしょに減らされてしまうのだ。
[IMAGE]
HPが半分削られるだけでも、スタミナ的にはかなりきびしくなる。
 つまり、瀕死になるほど回避やガードも難しくなり、ジリ貧になっていく。しかもスタミナが0になると動きが鈍くなる仕組みなので、逃げることもままならない圧倒的に不利な状況。

 HP全快のときと同じ感覚で回避や攻撃をしていると、すぐにスタミナ切れを起こしてしまうため、スタミナ管理がとにかく難しいのだ。だが、この絶望的な状況に追い込まれるからこそ、パリィで一発逆転を狙うのが最高に気持ちいい。

 ピンチの状況にこそ冷静に攻撃を続けるスタイルが輝くバトルシステムは、高難度アクションが好きな人にも刺さる部分になるだろう。

 ちなみに瞬時にHPを回復できるアイテムも入手できたが、これらが大量に手に入る物なのかは不明。もし回復アイテムが潤沢に持てるのであればまた戦闘バランスも変わりそうだが、所持制限があるのであれば、治療パルスを活かした攻めのスタイルが重要になりそうだ。
[IMAGE]

 戦闘ではドローンによる支援も受けられるのだが、こちらも戦闘の難易度に大きく関わりそうな要素だった。

 ドローンは敵一体の注意を引き付けるといったモジュール(スキル)をセットでき、戦闘中任意のタイミングで使用できる。今回はひとつのモジュールしか使えなかったが、メニュー画面を見る限り4つまでセット可能。

 武器との相性も含め、ドローンにどのモジュールを付けるかのカスタマイズで戦闘スタイルにも変化が出てきそうだ。
[IMAGE][IMAGE]
敵が2体同時に出現しても、片方をドローンが足止めしてくれるので便利。
 そのほかにも、防具や遺物という装備も登場するようで、カスタマイズの幅は広くなりそうな印象。発動型・永続型の遺物があるようなので自分好みの調整ができそうだ。
[IMAGE]

 今回プレイした範囲では使える装備や登場した敵の数も少なかったのでまだ未知数な部分はあるが、ボス戦や装備の数によってはかなりの良作になりそうな予感がしている。HPが減ると使えるスタミナ量も減少するシステムや治療パルスの効果など、ユニークな要素が盛り込まれているので、この要素を存分に活かせる強敵の登場にも期待したい。

マップやクエストマーカーのない世界を自力で踏破していく

 バトル以外で印象的だったのが、本作はあえてナビゲーションを最小限にしている点だ。 

 本作にはマップであったり、つぎの目的地を示すクエストマーカーなどが一切表示されない。そんな状態で広いエリアを自力で探索することになる。

 頼れるのは自分の記憶と、キャラクターとの会話でもたらされるヒントのみ。“風鈴を探せ”、”西に向かえ”といった情報をもとに探索していくため、うっかり会話を飛ばすと迷ってしまうこともある。
[IMAGE]

 森の中での移動時はコンパスを使って方角を確認しつつ進んだりと、昨今の1から10まで手引きしてくれるゲームとは真逆を行くストロングスタイルだ。

 マップやナビがないからこそ、キャラクターとの会話に集中して、注意深く進んでいくことになるため没入感は高まる。この設計が最終的にどのようなゲーム体験をもたらしてくれるかは未知数だが、序盤をプレイした限りではストレスになることはなかった。
[IMAGE]

 ちなみに、エリアは一本道ではなく寄り道もそこそこ用意されている。山の中で鍵のかかった箱を見つけたのだが、たとえ鍵を見つけることができても、もう一度箱のある場所に戻ってこられるかは自信がなかった。

 自分の頭の中でマップを描ける人であればスムーズにいけそうだが、筆者のような方向音痴の人は探索に時間がかかるかもしれない。
[IMAGE]

 寄り道をする理由も十分にあり、本筋とは関係ないエリアを探索していると、武器にセットできる象形文字というアイテムを入手できた。この象形文字は武器に追加効果を付与できるようなので、探索をすればするほど、装備のカスタマイズの幅も広がっていきそうだ。
[IMAGE][IMAGE]
象形文字は複数セットできる。
 また、道中には謎解き要素も配置されている。壁に描かれた絵や文章をヒントに、石像を動かして扉を開くといった要素になっているのだが、絶妙な難易度だった。

 数十分悩むほどではないが頭をひねる必要はあり、解けるとちょっとうれしい。そんな塩梅の謎解きが時折挟まるため、緊張感のあるアクションバトルの後のちょうどいい休憩になる。
[IMAGE][IMAGE]

 ステージのロケーションも、陰鬱とした雰囲気がよく味わえる見事な作り込みだ。軍のキャンプや塹壕があったりと、内戦で疲弊した跡を目の当たりにすることになる。先に進んでいくと大量の死体が大穴に雑に投げ捨てられていたりと、人の業をまざまざと見せつけられる気分だ。
[IMAGE][IMAGE]

 手応えのある戦闘システムや世界観の作り込みの深さなど、こだわりの強さが感じられる『ヘル・イズ・アス』。高難度のアクションゲーム好きの人はもちろん、ビジュアルに惹かれた人も楽しめるゲームになっている。

 発売前のタイトルなのでまだ詳細が分からない部分もあるが、現時点での手触りは良好なので、今後の展開にも注目していきたい。

『ヘル・イズ・アス』

  • 発売日:2025年9月4日
  • 対応プラットフォーム:プレイステーション5、PC(Steam)
  • 価格:パッケージ版/6580円[税込]、ダウンロード版/7480円[税込]
  • ジャンル:アクション・アドベンチャー
  • 発売元:3goo
  • 開発元:Rogue Factor
  • 対象年齢:CERO 15歳以上対象
  • 備考:PC版はダウンロード専売でNaconより2025年9月5日発売、価格は6580円[税込]
この記事を共有

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります