『428 〜封鎖された渋谷で〜』、『文豪とアルケミスト』などを手掛けたストーリーテリングのイシイジロウ氏が、2025年4月28日に発表した“渋谷実写アドベンチャープロジェクト”。本プロジェクトは発表と同時にSNSでも大きな話題に。今回、その新たな動きとして、本プロジェクトのクラウドファンディングがスタートし、開始約1時間で目標金額500万円を達成した。
本プロジェクトは、その名の通り、東京・渋谷を舞台にした実写によるアドベンチャーゲームの制作を目指すというもの。出演者には、同じ渋谷を舞台にした実写アドベンチャーゲームである『街 ~運命の交差点~』(以下、『街』)の“雨宮桂馬”役のあらい正和さん、『428 〜封鎖された渋谷で〜』(以下、『428』)の“御法川 実”役の北上史欧さんが参加。
ゲームの内容としては、テキストベースのサウンドノベル形式で、複数の主人公がシンクロし合う群像劇として物語が展開するという。この説明を聞いて、『街』や『428』が好きな方からすれば、「『街』や『428』の続編でしょ?」と考えるかもしれないが、そうではない。
本プロジェクトは、前2作の内容とは関係のないまったくの新作であり、それをイシイジロウ氏が大手ゲームメーカーと組まずに、個人のプロジェクトとして立ち上げたものになる。
では、なぜイシイジロウ氏は個人として動いたのか。そして、クラウドファンディングを行うのか。本プロジェクト立ち上げの経緯とその理由、そして新作で目指すものを、イシイジロウ氏、本作で脚本を務める北島行徳氏(代表作:『428』、『タイムトラベラーズ』、『閃乱カグラ』シリーズなど)にうかがった。
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合わせて、本作の出演者であるあらい正和さん、北上史欧さん、本作のスタッフとして関わる箕星太郎氏(代表作:『ラブプラス』)、飯野歩氏(代表作:『428』撮影・演出)、麻野一哉氏(代表作:『街』総監督)、坂本英城氏(代表作:『428』音楽)のコメントもお届けする。
なお、今回のインタビューが行われたのは、渋谷近くの池尻大橋にあるデザイン事務所兼会員制バーの“ea”。ここは北上史欧氏が店主として運営しており、スパゲッティナポリタンなども注文できる。会員制のため、会員の方の紹介がないと入れないが機会があれば訪れてみてほしい。
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bar ea
営業時間 月~金19時00分~25時00分
※会員制
渋谷実写ADV:イシイジロウ氏&北島行徳氏インタビュー
イシイジロウ氏
本プロジェクトの発起人。ストーリーテリング代表。代表作は、『428 〜封鎖された渋谷で〜』、『文豪とアルケミスト』、『タイムトラベラーズ』、『3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!』など。(文中はイシイ)
北島行徳氏(きたじま ゆきのり)
シナリオライター、小説家。ジンテーゼ代表。代表作は、『428 〜封鎖された渋谷で〜』、『タイムトラベラーズ』、『3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!』、『閃乱カグラ』シリーズ、『逆転裁判5』、『ファイナルファンタジーブレイブエクスヴィアス』など。(文中は北島)
「続編を誰かが作るなら、プロジェクトを止めてもいい」
ーー今回のプロジェクトの成り立ちから教えていただけますか? イシイさんの中ではいつから構想があり、いつから動いていたのか。
イシイ
しっかり動いたのは、じつはけっこう最近なんですよ。ただ、(実写アドベンチャーについては)いつかやらなきゃなとはずっと思っていました。僕はいま58歳で、65歳、70歳といった年齢までゲームを作り続けられるかというと、体力的にも限界が来てしまうので、それまでにどこかのタイミングで引退作というか、実写アドベンチャーをやらなくてはいけないというのは考えていたんです。
あと2025年は、独立してストーリーテリングという会社を作ってちょうど10年目になるのですが『文豪とアルケミスト』などの代表作を作れたので、その節目に自分の仕事の方向性をもう一度変えてみようかと思っていたところだったんです。
ーープロジェクト始動の発表に合わせてクラウドファンディングを行うことが発表され、募集もスタートしました。改めて、クラウドファンディングを行う理由を教えてください。
イシイ
今回のゲームは個人プロジェクトのインディーゲームのようなイメージで作ることになるのですが、それでも渋谷を舞台にした実写アドベンチャーゲームを作ろうとすると、開発費は億は超えてしまいます。『街』や『428』クラスとなれば、その数倍になるわけです。今回はそこまで大規模にはなりませんが……。
一方、クラウドファンディングだけでその開発費を賄うということが現実的でなく、出資、協力をしてくれるスポンサー、会社さんを探さなくてはいけないのですが、それにはプロトタイプのゲームを見せつつ、実際にこれだけ応援してくれるユーザーさんがいるんですよ、ということを証明する必要があるわけです。
そこで、今回はそのプロトタイプを作るため、そして、これだけ待っている人がいる、ということを証明するためにクラウドファンディングをやりたい、というものになります。
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ーーなるほど。
イシイ
ですので、今回は小規模なクラウドファンディングでして、目標額は500万円にしました。
ーー現状の盛り上がりではけっこう早く達成してしまいそうですね。(編注:実際に開始後約1時間で達成となった。)
イシイ
もしそうなったらありがたいと思いますが、やはり皆さんの応援、お客さんの熱を可視化するというのはとても大事なんです。たとえばSNSの反響がすごいというのはもちろんありがたいのですが、実際にお金を出す段階になると反響が途絶えるということもよくあるお話で。発表時のメッセージにも記載しましたが、そこの確信が取れないと、メーカーさんからは「新しいお客さんを取る必要があるので、新しいものを作りましょう」とか「有名俳優を使いましょう」といったプロデュースが起きてしまう。
今回のクラウドファンディングでは、「こんなにこのプロジェクトを待っているお客さんがいますよ」という確認をして、それをスポンサーやクライアントにプレゼンテーションをしたい、ということなんです。
ーー週刊ファミ通で以前にあった好きなゲームを選ぶ"読者が選ぶTOP20”のコーナーで、『街』がずっと上位に君臨していたり、『428』も続編を望む声は多かったけれど、それも30年、20年前の話ですからね。その可視化が必要ということは、とてもわかります。実際に今回のプロジェクト始動を発表して、SNSでは大きな反響があったかと思いますが、いかがでしたか?
イシイ
とてもありがたいですし、あれくらいの反響、熱をいただけるくらいのファンの方がいるだろうと思っていたので、うれしいというか、仮説が証明できた感覚ですね。とくに、今回のクラウドファンディングサイト“うぶごえ”の担当者の方が驚いていました。
ーー「こんなに反響が来るのか」と。
イシイ
そうですね。あとは熱の質が違うと。うぶごえさんの場合、盛り上がるクラウドファンディングの場合、すでにほかのプロジェクトを応援したことのある方が、さらに別のプロジェクトを応援するということが多いようなんですが、今回の場合は、新規にうぶごえさんに登録する方がとても多いようなんです。つまり、これまでクラウドファンディングをやったことがない方が集まっているとのことで、これはすごいことだと驚かれていましたね。
ーーそれはいい話ですね。北島さんのところにも反響はありましたか?
北島
そうですね。とてもいい反応をもらいましたが、『428』の続編が出るかのような反応をくださる方も多くて……。
イシイ
そこはちゃんと話したほうがいいですよね。今回作るものは、『街』や『428』の続編ではないと。
ーー『街』や『428』の出演者やクリエイターさんが関わってはいるものの、それとはまったく別の作品として、渋谷を舞台にした実写のアドベンチャーを作るということなんですよね?
イシイ
そうです。続編ではありません。著作的には完全に独立した別の作品になります。渋谷を舞台にした群像劇という点は同じです。スタッフやキャストも一部同じ人が関わるので連続性を感じる点もあるかもしれませんが、『街』や『428』と同じキャラクターではありませんので、ご了承ください。
ーーちなみに、『街』や『428』のパブリッシャーであるスパイク・チュンソフトとは、本プロジェクトの話はされているんですか?
イシイ
はい。続編ではない、別作品としてクラウドファンディングを行います、というお話は事前に行っています。
ーー『街』や『428』の続編を待っている人からすると、同じ渋谷を舞台にした実写アドベンチャーということで、そういう印象を持ってしまいそうですよね。
イシイ
はい。ですので、お客さんにはまず誤解を招かないようにしないとなと。あと、『街』についてお話ししますと、僕は『街』PSP移植版の監修、プロデュースには関わっていましたが、あくまでも『街』は麻野さん(麻野一哉氏)の作品で、『街』については自分事として話すことなどできない立場です。
でも、お客さんから『428』といっしょに『街』についても聞かれるんですよね。「続編待ってます」って。『428』は『街』の続編ではありませんが、『街』があってこその作品でありますし、しかもどちらの続編も20年、30年と作らないのであれば、両方のタイトルのファンへの恩返しという気持ちも込めて、私たちに続編は作れませんが、北上さんだけでなく、あらいさんにもお声がけをして、おふたりといっしょにまったく新しい実写アドベンチャーを作ろう、ということになったんです。いまからでも、みんなが待っている続編を誰か作ってくれるのならプロジェクトを止めてもいい。
ーーなるほど。プロジェクト発表時に公開されたメッセージの中に、「いくつかのゲーム会社さんと、プロジェクトの立ち上げについて真剣に話し合ったこともありました。」とありましたが、実際に形になりそうなものもあったのでしょうか?
イシイ
「『428』のような実写アドベンチャーゲームを作りませんか?」とお声がけをいただいて、北島さんといっしょにお話が進んだこともあります。ただ現在こうやって世の中には出ていないということで、途中で頓挫してしまったんですね。皆さん、『街』や『428』が好きで「やりましょう」と言っていただいたんですが、実際に開発に着手しようと現実的に詰めていくと、前述のようなコンセプトとのズレが出てきてしまって。でも、個人的にはとても理解できるんです。『街』や『428』が当時100万本といったヒット作になっていればそのままシリーズ化されていたでしょうし、そうなっていなかったからには、テレビや映画の人気俳優に頼ったり、新しいユーザーを獲得するための施策を載せたくなると。
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ーーそういったズレが大きくなって途中で止まってしまうわけですね。『街』も続編の構想は発表されていましたが、実際に出ませんでしたし。だからこそ、今回イシイさんは個人のプロジェクトとして動く、という選択肢を取ったと。
イシイ
はい。今回はやはり小規模であるということがポイントなんですよね。たとえば10万、20万といった限られた数のお客さんに向けてだけ作ろう、というのは大手メーカーとしてはなかなかできないと思うんです。そこに尽きますね。
僕も、これまでにいろいろな企画を考える中で、お客さんを固定して「このファンの方だけに応えるように作ればいい」といった企画はあまりやったことがないんです。やはり新しいお客さんを呼びこもうとか、新しい市場を開拓しようということが当たり前ですし。ただ、『428』と『街』のような作品を20年、30年待っている方々に向けるのであれば、それは違うんじゃないか、と。
ーー求められている延長線上にあるものを実現化するという。
イシイ
そうなんです。クリエイター目線として何かを伝えよう、新しいものを作ろうということではなく、自分も『街』や『428』のファンであると考えたときに欲しいもの、遊びたいものを作ろうという気持ちですね。
ーーなるほど。それはインディーゲームに近い発想というか、自分がユーザーとして遊んだゲームに似た新作を作りたい、その精神的続編を作りたい、というインディーゲームクリエイターが海外も含めて多くいますが、そういったイメージのように感じます。
イシイ
そうかもしれません。ですから、このプロジェクトにおいては、「自分は『428』のクリエイターだ」というようなプライドはなくて。発売から20年近く経っているので、『街』はもちろん、『428』に対しても僕もファンのひとりとして、実写アドベンチャーの新作を待っている人と同じ気持ちになれるんじゃないかと思っているんです。
ーーユーザー目線になるんですね。
イシイ
これは、うぶごえの方にも言われましたね。今回のプロジェクトの相談をしたときに、「イシイさんの言っていることはクリエイターじゃない。ファン目線で語っていますよ」と。それを言われて腑に落ちました。
ーーああ、言われて気づくと。
イシイ
そうなんですよ。ファン代表です。正直僕が作らなくもいいんです。誰も作らないからファン代表として腰を上げた。
ーー作り手だった人が。
イシイ
20年近く経つと、作り手だった気持ちを忘れて「ああ、いい作品だな」って思うんですよね。自分が関わったことと関係なく、人にオススメしますから(笑)。プレイしていても「北島さんいいシナリオ書くなー」って思いますし、北島さんに「この演出、誰が考えたの?」って聞いたら……。
北島
「イシイさんですよ。わざと聞いてるんですか」って(笑)。
イシイ
ホントに忘れてるんです(笑)。
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ーー(笑)。今回のプロジェクトについて、イシイさんから北島さんにお話が行ったとき、最初はどのように思われたんですか?
北島
最初は、わりと「どうします? やります?」くらいのテンションでしたよね。
イシイ
北島さんはもともとお忙しいですし、現状のプロジェクトで半年動けないといったこともありますし、何よりインディーに近いプロジェクトだから、いきなりお金を払えるわけではないんですよね。もともと予算があって、「これだけお支払いするので、この期間をください」といった相談ができればいいんですが、そういうことではないので、まず「余裕あります?」みたいな探りから……。
北島
そうそう。最初は高いテンションではなくて、「何か書きたいことあります?」と。
イシイ
今作は僕もファン目線で「こういうメッセージを入れたい」、「作りたい」という発想ではなく、「プレイしたい」、「その作品を見たい」という考えかただったので、北島さんが書きたいものがあれば、そこにファン目線で乗っかれるかも、というイメージでしたね。
北島
初めはそうだったんですよ。それが、そのあと数週間したら、急にイシイさんのテンションが上がってきて。
イシイ
北上さんとあらいさんが渋谷のスクランブル交差点に立っているビジュアルを思いついたんですよ。あのビジュアルが浮かんでから、テンションも上がって(笑)。
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プロジェクト発表時に公開されたビジュアル。
北島
そこからですよね。先ほどお話もあったような、「実写アドベンチャー作りましょう」というお話をいただいて途中まで進んでダメだった、といったときとはまったく違うテンションになって。仕事のやり取りをしているイシイさんと、このプロジェクトの話をしているイシイさんでは熱がまったく違う。どれもお仕事なんですけど(笑)。LINEでやり取りをしていても、どんどん来る。
イシイ
送ったそばから思いつくから、話題が片付く前に連続で送っちゃう(笑)。
今回のクラファンはプロトタイプ制作のため。出演者募集は将来的に
ーー今回のクラウドファンディングで、まずはプロトタイプの制作からという話になると思うのですが、もしこれが達成できなかったら開発しない、ということもありえるのでしょうか?
イシイ
そうですね。今回のクラウドファンディングは達成するかしないかのオール・オア・ナッシングという形式になりますので、達成できなければお金をすべてお返しし、500万という目標を達成すればプロトタイプを制作して、各所へのプレゼンテーションを行うということがお約束になります。
ーーなるほど。それでどこかのメーカーに対して、パブリッシング(ゲームの発売元)や協力を働きかけると。そこで大手ゲームメーカーが関わるということもありえるわけですよね?
イシイ
はい。プロジェクトが成立したうえで協力していただけるということになりますし。
ーーたとえば、スパイク・チュンソフトも?
イシイ
それはもちろん。ご興味を持っていただけるのであれば、ぜひというイメージです。
ーーなるほど。
イシイ
あと今回のようなインディーゲームの形式になると、パブリッシャーの募集だけでなく、いろいろな面での出資という形もありえると思っていますので、幅広くオープンに募集をしたいと思っています。
ーーでは、現状ではパブリッシャーもデベロッパーも決まっていないんですね。
イシイ
はい。Steamなどであれば個人のパブリッシングもできますし、家庭用ゲーム機もダウンロード専売などであればできるかもしれませんが、家庭用ゲーム機のパッケージ版を出すといったことになると、何らかの座組みや協力を募ることが必要になるかなと思います。あとは、ワールドワイドの展開ですね。多言語版は言語のローカライズだけでなく、発売の審査などもありますので。
ーー『428』や『街』は海外のファンの方もいらっしゃるんですか?
イシイ
『428』は英語版があって、コアなファンがいらっしゃいますね。すでに英語版も作ってほしいというリクエストもいただいています。そういった声にも応えたいと思ってはいますが、やはりクラウドファンディングの成功次第になると思います。まずは日本語版からになりますし。
ーーたとえばクラウドファンディングの達成度によって、プロトタイプもよりリッチになるといった影響があるのでしょうか?
イシイ
それもあります。ただ今回は、金額よりもお客さんの数が重要かなと思っています。そんなに高いリワードも用意していませんし、多くの方がこのプロジェクトを待っていることを証明できることが大事で。僕も10年くらい前から、いろいろなクラウドファンディングに参加していますが、最近は応援というより先行予約販売のような内容が多くなっているんですよね。
でも、今回のプロジェクトでは金額は少なくとも、多くの方が応援していただける、待っていただけるということを可視化できるようにしたいと思っています。
ーーではリワードは、どんな内容になるのでしょうか?
イシイ
プロトタイプ版の映像がもらえる、というものと、プロトタイプ版のスタッフロールに応援クレジットを入れることができる、というのが基本になります。あとはエコロジーをモチーフにした、新しいキャラクターのTシャツ、北上さん&あらいさんのメインビジュアルのポスター、といったものですね。プロトタイプ版の応援クレジットは、その先に本編の制作が実現した場合には、本編にも同じクレジットを入れさせていただく、ということはお約束します。
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こちらがエコロジーをモチーフにした、新しいキャラクターのTシャツ。
ーーそういうリワードになるんですね。イシイさんが、Xでリワードの内容を募集されていたときには、出演権を望む声が多くあったように思います。
イシイ
たくさんいただいて、それはとてもありがたいお話なんですが、今回のクラウドファンディングでは達成をしてもプロトタイプしかお約束ができないので、今回のリワードには出演権は入れないことにしました。本編も含めてのクラウドファンディングにして、出演権を募集するということもできなくはないんです。でも、クラウドファンディングは制作中止といった事例もありますから、いきなり高額を集めるのは避けたいなと。僕自身がお約束できるところからスタートしたいと思っていますので、まずはプロトタイプのお話にして、出演権などはその先にご用意したいなと。
ーーなるほど。その先にクラウドファンディングで出演権を募集するかもしれないし、クラウドファンディングではない別の形での募集かもしれないし。
イシイ
そうですね。皆さんから「出たい!」という熱い気持ちはいただいていますので、何らかの形で実現したいと思っています。ただ、さすがに主人公クラスとかは難しいかな(笑)。
ーー先日のプロジェクト発表に合わせて、北上さんとあらいさんの出演が発表されていますが、このプロジェクトはおふたりありきでスタートされたのでしょうか?
イシイ
北上さんとあらいさんのおふたりの出演OKがもらえない限りは、今回のビジュアルが実現できませんでしたし、あのビジュアルがなければクラウドファンディングをやるということはできなかったと思います。やはりファンとしては、各作品の顔とも言えるおふたりが実写アドベンチャーで共演するということは夢のような状況ですから。
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あらい正和さん(写真左)と北上史欧さん(写真右)。
ーーそのほかの出演者の方は、ある程度決まっているのでしょうか? たとえば、『428』亜智役の中村悠斗さんもSNSでいろいろと反応をされていましたが……?
イシイ
ほかの出演者については、5月28日以降、クラウドファンディング期間内で随時発表していこうと思っていますので、楽しみにしていてください。あとは4月28日から追加で発表になったのはスタッフですね。『街』の麻野さんにシナリオ協力をしていただくことになりました。
ーー出演者だけでなく、スタッフでも『街』の方が参加すると。
イシイ
はい。具体的な関わりかたについては改めてお伝えすることになると思います。あとは、『428』作曲家のノイジークロークの坂本さん(坂本英城氏。代表作:『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』など)と、『街』や『428』には関わってはいませんでしたが、箕星太朗さん(代表作:『ラブプラス』など)にも参加していただきます。
ーー箕星太朗さんは驚きですね!
イシイ
以前からお付き合いがあって、『428』をとても気に入ってくださっていて、「実写アドベンチャーを作るのであれば絶対に参加したい」と。今回は、アートディレクターとしてゲームのインターフェースやエコロジーモチーフのキャラクターのデザインに加えて、ポスターなどのデザインもお願いしています。
シナリオは当て書きで『428』の1.5~2倍に
ーー現状の想定されているゲームの内容などもお聞きしたいのですが、たとえばシナリオやゲームの中身についてはどれくらい考えていらっしゃるのでしょうか?
イシイ
ゲームの中身は本当にこれからです。とくにシナリオについては、今回は北島さんに当て書き(編注:演じる俳優に合わせてセリフや表現を書くこと)をしていただこうと思っています。今回は参加していただける役者さんが決まってからの動き出しになるのと、ファンが求めることを考えると、当て書きがいいなと。
ーー今回は当て書きになるんですね。
イシイ
はい。そこは『428』と違うポイントですね。あとはザッピングを使った群像劇のパズルというのも決まっています。この20年、『街』や『428』ほどに細かい群像劇パズルはほかに出ていないので、そこについてはしっかり作り込みたいなと。
ーーそれは、特定の主人公を進めているとシナリオロックがかかったり、誰かの選択肢が別の主人公の行動に影響したりするといったパズルでしょうか?
イシイ
まさにそういうイメージです。
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※画像はプレゼンテーション用のプロトタイプのもの。
ーー群像劇で主人公になる人物の数などは想定はありますか?
イシイ
いえ、なんとなくのイメージはありますが、まだ決めていません。ただ、北島さんと「ボリュームで勝負したいね」とは話しています。
北島
そうですね。『428』の1.5~2倍くらいのボリューム。
イシイ
『428』の2倍だと『街』くらいのボリュームになっちゃいますね。しっかり書こうと思っています。
北島
ただ、そのぶん、ボーナスシナリオはないと思います。
イシイ
現状はボーナスシナリオは想定していませんが、今回のクラウドファンディングの応援次第かもしれません。あとは、どなたにお願いするか。
北島
書きたいって人が出てきてくれればね。
ーーなるほど。ボリュームがそこまで増えるというのが見えているということは、プロットと言いますか、シナリオの流れはなんとなく想定しているものがあるということですか?
北島
そうですね。なんとなく。それくらいのボリュームになるであろう、というものは考えています。
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イシイ
逆に撮影は自主制作に近い作りかたになりそうです。クオリティーを落とすということではなく、『428』でも撮影・演出をしてくださった飯野歩さんに今回も撮影をお願いするのですが、最近は飯野さんが少数で長編映画を撮るといった取り組みをされているので、そういった少人数編成の撮影でメドが立った、ということも、今回のプロジェクトに踏み切った理由のひとつです。
ーー最近は、スマートフォンで撮った映画なども出てきていますよね。
イシイ
そうなんですよね。映画スタッフの規模となるとどうしても大きくなるのですが、僕自身もここ10年で自分で映画を撮ったことで、小規模で撮影をするノウハウも溜まってきたので、飯野さんといっしょにいいものをやりたいと思っています。
ーー『街』は1990年代の渋谷を切り取ったもので、『428』が2000年代の渋谷を切り取っていて、それぞれ渋谷の記録としても貴重なものになっていますが、今回は2020年代の渋谷を切り取ったイメージになるのでしょうか?
イシイ
はい。スクランブルスクエアとか、新しくできたサクラステージとか、そういう場所も使いたいとは思っています。ただ、『街』や『428』から引き続き出演していただく方々は、年齢的に熟年の世代に入ってきていますので、そういった大人のキャラクターとしての視点で描くとすると、渋谷の新しい部分だけでなく、渋谷の古くから残っている部分も描く必要があると思っています。
あとは、やはり『街』、『428』のファン目線で作る作品となると、そのプレイヤーの世代感というものも反映したくて。そういう意味ではサクラステージなどの新しいビル、新しい渋谷に対してなじめない、といった視点が出てくる渋めのシナリオも考えています。
ーーだいぶ大人向けのシナリオもありそうですね。
イシイ
新しい渋谷と古い渋谷、そのふたつをテーマに、人間も新しい世代、古い世代という話が出てくると思います。可能なら渋谷区さんの協力も得て、古い時代の渋谷の写真も使いたいですね。いまなら合成もできますし。
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※画像はプレゼンテーション用のプロトタイプのもの。
ーー最近の渋谷は再開発も活発ですし、コンプライアンスの高まりもあって、撮影許可がたいへんそうなイメージがあります。
イシイ
映画規模の撮影になるとたいへんだと思いますが、今回はインディーとしての小規模撮影になるので、撮影許可が必要なところとそうでないところをうまく使い分けて撮影できるんじゃないかと思っています。あとは、グリーンバックのような合成技術も低コストで使えるようになりましたし、そういった技術も使おうと思っています。
ーーなるほど。『428』のときはたくさんの人が倒れるシーンの撮影がたいへんだったとお聞きしています。
イシイ
北上さんがいまでも話す語り草ですね(笑)。パルコ前に血だらけのメイクをした人が何人も倒れて。
北上(撮影場所のBARの開店準備をしながら)ホントですよ。休日の早朝から。当時ハロウィンの文化もなかった時代に。いまだったらSNSですぐ拡散されますから(笑)。
ーー(笑)。では、いま取材をさせてもらっているこちらのお店も渋谷の近くですから、ゲーム内に登場したり?
イシイ
使わせていただけるんだったら、ぜひお願いしたいと思っています。北上さん演じるキャラクターの秘密基地に。聖地巡礼にもなりますし。
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実現したらゲーム業界の一端が変化する
ーー本プロジェクトの今後についてもおうかがいします。まずは今回のクラウドファンディングの成立を目指すことになると思いますが、それ以降の展開などは決まっていますでしょうか?
イシイ
まずはクラウドファンディングの反響やプロトタイプを持ってプレゼンをし、開発決定を目指さなければいけない、という状況ですね。それが決まらないと、その先のお約束もできませんし。ただできることならば、少しでも大きい反響、熱のある状況を可視化して、開発規模がより大きくなるように、また開発者に決定権限がある開発体制を目指したいと思っています。
ーーそのためには、多くの方の応援が必要ということですね。今回のクラウドファンディングが成立して、プレゼンもうまくいって、実際に開発がスタートするとなった場合、発売時期はどれくらいになると想定されているのでしょうか?
イシイ
開発期間として3年くらいはかかるだろうと予想しています。昨今のゲーム開発と比べるとそこまで長くないのかもしれませんが、少人数の編成ですし、シナリオ優先でシナリオには絶対に1年はかけたいと思っていますので、じっくりと作りたいと思っています。
ーークラウドファンディングが成立したら、という前提になりますが、プロジェクトの情報発信は継続的に行われる予定でしょうか?
イシイ
発信したいと思っています。ただ、僕自身は制作が始まったら外を向かなくなるタイプなので、発信するためのチームを作らなきゃいけないなと。
ーー今回のプロジェクトの発表にまつわるプレスリリースの配信に加えて、今回のインタビュー取材のセッティングも、すべてイシイさんがおひとりで調整されていますよね。とても驚きました。
イシイ
プロジェクトが成立して予算がついてきたら、宣伝チームの運用なども必要になると思うんですが、クラウドファンディングが終わるまではこのスタンスかなと思っています。
ーークラウドファンディングが成立して、パブリッシャーが決まれば、そのあたりは別の方にお任せできると。
イシイ
そうなんですが、とはいえ、僕自身がいろいろ動く必要があるのは変わらないと思います。個人プロジェクトですし。
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ーーなるほど。今回、最初の発表で多くのお客さんから「応援したい」という声があって、クラウドファンディングへの参加もあると思うんですが、それ以外に何らかの応援する方法などはあったりするんでしょうか?
イシイ
やはりSNSへの書き込みや友人・知人に伝えていただく、といったことがとても助かりますね。『428』のときもそうだったんですが、発売後に「『街』みたいなゲームがまた出るって知らなかった!」とか「知ってたら買ったのに!」というお声をいただくことが多くて。どれだけ情報発信をしても行き届かないということはありますので、『街』や『428』のようなゲームを待っている方でこのプロジェクトを知らなかった、という人がなるべく減るように、まわりに伝えていただきたいと思っています。
ーーでは締めとして、本プロジェクトを楽しみにしている読者へ向けて意気込みをお聞かせください。
北島
まだまだ漠然とはしていますが、書きたいものがだんだんと見えてきていますので、それがしっかりとした形になるように、ぜひ皆さんの熱で実現させていただければと思います。
イシイ
ファンの熱でものを作るという座組自体はそれなりにあるものだったりしますが、今回の場合は、プロジェクトの中心にいるのが実際にものを直接作る僕ですし、僕にとっても理想的なプロジェクトだなと感じています。
今回、クラウドファンディングのメッセージに「共犯者」という言葉を使っているのですが、その表現がとても正しいのかなと。ファンの皆さんにいっしょに共犯者になっていただいて、プロジェクトを実現する。これでファンが喜ぶものが実現できれば、ゲーム業界の一端が変化するんじゃないかと思っています。ファンの熱からでもこういったことが可能なんだ、ということを証明するチャンスでもありますので、ぜひ皆さんいっしょに参加して共犯者になってください。
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渋谷実写ADV:出演者&スタッフコメント
出演者:あらい正和(代表作:『街 〜運命の交差点〜』雨宮桂馬役)
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ファミ通様、ご覧になられている皆様、いつもありがとうございます。この度始動いたしました『渋谷実写ADV』は、『街 ~運命の交差点~』そして『428 〜封鎖された渋谷で〜』を凌駕する作品にしたいと思っております。
もちろん皆様の応援があってこそ成されるものです。今だから出来る、今しか出来ない作品だと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
出演者:北上史欧(代表作:『428 ~封鎖された渋谷で~』御法川実役)
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『428』の現場に参加していた頃、僕は33歳でした。御法川実という男はご存知の通り、エキセントリックで色気があり、大変魅力的な男。彼とがっぷり四つに組める日々は「このままずーっと続けばいいのに!」そう思いながら渋谷を走り回っていた事を覚えています。
あれから20年。また、あのシビれる空間に身を投じれるチャンスをいただいてしまいました。さあ皆様、一緒に刮目しましょう! これから渋谷で起こる大事件を。
アートディレクション:箕星太郎(代表作:『ラブプラス』)
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実写アドベンチャーゲームに箕星太朗?
おいおい! 美少女が出てムフフなゲームじゃないだろうな? と突っ込まれている方もいらっしゃるかもしれません。
イラストを描く前、ゲーム業界での初期はUI(ユーザーインターフェース)デザイナーだったのです! 当時から進化した今の実写ADVデザインを生み出せるようにチャレンジします!
このプロジェクトに参加できるのは名誉な事なのですが、制作者になると、プレイ前に結末を知ってしまう事だけが残念です。
撮影・演出:飯野歩(代表作:『428 〜封鎖された渋谷で〜』撮影・演出)
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『428 〜封鎖された渋谷で〜』の撮影をした際、ファミ通のエンターブレインさん(当時)の編集部にて撮影させてもらった事を思い出します。
実際の編集部の渦巻くエネルギーと、ごった煮の出演者が代わる代わる登場してガンガン撮影していく様子はまさにカオス。御法川役の北上さんの演技のボルテージの上がりようも懐かしい思い出です。
今回のイシイ監督の頭に、また熱を持って、感情高めて、爆発するような瞬間があらんことを!
シナリオ協力:麻野一哉(代表作:『街 〜運命の交差点〜』総監督)
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『街』は当時としては予算も時間も膨大で、とにかく疲れ果てました。ありがたいことに「続編期待のソフト」として、長い間、ファミ通さんにのせてもらってましたが、作らないまま時が流れ、やがて、イシイくんが「渋谷の実写のノベルゲー」の続編として『428』を作りました。
さすがにもう終わりだと思っていたら、また作るという。
「マジか!?」という気持ちとともに、微力ながら協力しますのでよろしくお願いします。
音楽:坂本英城(代表作:『428 ~封鎖された渋谷で~』音楽)
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イシイジロウさんとは多くの作品でご一緒させていただいてきましたが、原点は2008年にリリースされた『428 〜封鎖された渋谷で〜』です。いまでもアドベンチャーゲームの金字塔だと思っているし、今後これを超える感動を味わえる作品と出会えるのか、と不安を感じるのほどの名作だと思っています。17年の時を超え、当時の主要メンバーが集結して新たなプロジェクトが発足することに私がもっとも喜びを感じている自信があります。鍵盤に向かうのが今から本当に楽しみです。
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