『オーバーウォッチ2』新ヒーロー“フレイヤ”は初代『OW』のボツ案だった。パークはシーズン9の反響から生まれ、スタジアムの実装は戦略性をより高めたかったから【インタビュー4本】

by猫塚きてぃ

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『オーバーウォッチ2』新ヒーロー“フレイヤ”は初代『OW』のボツ案だった。パークはシーズン9の反響から生まれ、スタジアムの実装は戦略性をより高めたかったから【インタビュー4本】
 Activision Blizzardのヒーローシューター『オーバーウォッチ2』(OW2)。日本時間2025年2月13日3時に、“オーバーウォッチ 2:スポットライト”と題したライブ配信イベントが実施され、さまざまな最新情報が発表された。

 ラウンド制の新モード“スタジアム”やパークシステム、ダメージロールの新ヒーロー“フレイヤ”などについて、各開発者にグループインタビューを実施。開発経緯や裏話などをたっぷりと訊いたので、ぜひチェックしてほしい。
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※インタビュー中に出てくる名称やゲーム内容は開発中のため、リリース後に変更になる可能性がある。

Kenny Hudson氏

『オーバーウォッチ2』ヒーロープロデューサー。

Jude Stacey氏

『オーバーウォッチ2』シニア・ナラティブデザイナー。

Alec Dawson氏

『オーバーウォッチ2』リードゲームプレイデザイナー。

Dylan Snyder氏

『オーバーウォッチ2』シニア・ゲームデザイナー。

Dion Rogers氏

『オーバーウォッチ2』アートディレクター。

Gavin Winter氏

『オーバーウォッチ2』シニアシステムデザイナー。

初代『オーバーウォッチ』のボツ案から生まれた新ヒーロー“フレイヤ”。つぎに登場する新ヒーローはメイン武器に注目

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――まず新ヒーロー“フレイヤ”が、どのような能力か説明をお願いいたします。

Kenny
 フレイヤは機動力が高い、動きが多いヒーローとなっています。まずメイン武器はダメージを与える2種類の弾を発射できます。セミオートのクロスボウから連射ができる弾、そして連射性はありませんが爆発的な火力を持つ弾が使えます。機動力の高さと相まって、熟練プレイヤーほどダメージを出せるかと思っています。

Jude
 じつはフレイヤを使用する上で求められる“ショットの精密さ”は、彼女のストーリーにも繋がっているんです。彼女は元々オーバーウォッチのメンバーであり、現在は賞金稼ぎとして生活しているヒーローです。物語的にも自分の射撃の精密さと同じような性格が表現されています。

――クロスボウ、元オーバーウォッチメンバー、賞金稼ぎ、デンマーク出身……とフレイヤにはさまざまな新要素が詰め込まれているように感じました。フレイヤはどこから制作されたのでしょうか?

Jude
 フレイヤは新しい要素が多いのですが、じつは彼女のビジュアルはボツ案のひとつだったんですよ。何か新ヒーローの案はないと過去の資料を漁っていたところ、『オーバーウォッチ』時代に採用されなかったコンセプトアートを見つけて、そこから作り始めたのが彼女でした。

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Kenny
 コンセプトとしては、これまでに救助隊の話がなかったこともあり、今回は救助隊にスポットを当てたいと思っていました。彼女は、オーバーウォッチに所属していたころは人を探し出すことを仕事としていて、いまも賞金稼ぎとしてですが“お金を積めば誰でも探す”といった設定になっています。

 また、今回の武器はクロスボウといったアーキタイプということもあり、もっと物語に深入りできると考えました。この案をJudeさんに投げかけたところ、すばらしい物語を作ってくれましたね。

――アビリティに関して、垂直ジャンプと横軸のブリンクといったシンプルながら使いかたが幅が広いと感じています。なぜこのようなアビリティにしたのでしょうか。

Kenny
 ブリンクやジャンプをクロスボウの発射にどうにかして連動できないかと考えました。攻撃を避ける理由を与えるため、ブリンクをすると右クリックのクールダウンが早くなるようにした結果、いい感じにシナジーが生まれたんです。コンセプト的にもひと呼吸おいて、大ダメージを与えるといったヒーローに仕上がったと思っています。

――フレイヤはシーズン15でパークと同時に実装される新ヒーローとなっています。パークのひとつに攻撃をすると敵の位置を表示するものがありましたが、この能力にも物語や彼女のバックグラウンドを詰め込んでいるのでしょうか?

Kenny
 パークに関してはヒーローの設定や物語に繋げたいという考えが根本にあります。パークはゲームプレイを向上させるだけではなく、ヒーローの物語をより深いものにしていきたいという意味も込めて作っています。フレイヤの場合は、戦場の敵が見えるということは、“誰でも探し出せる”という彼女のすごさを物語るのに適していると思い採用しました。

Jude
 今回は新ヒーローとパークの開発を同時に作業しているため、まだまだ調整をする可能性はあります。

――同じダメージキャラクターであるファラやエコーと比較した際に、異なるポイントをお聞かせください。

Kenny
 フレイヤのジャンプは、右クリックを使用するタイミングがかなり重要になってきます。たとえば、ジャンプをして0.5秒後に右クリックで攻撃すると、攻撃中は慣性が少し和らぐのですが、その慣性が攻撃後も持続するんです。相手にとっては「この移動中のどのタイミングで攻撃してくるか」、「撃ったあとにどれだけ遠くまで行くか」ということを考えさせることができるのです。そのため、使うタイミングなどの必要なプレイスキルが高くなっていきます。

 また、縦方向の移動もあるので、使用するタイミングをコントロールすることがすべてです。ファラと比べると、移動が早く長いかもしれませんが、それは予測できる範囲内になってしまいます。フレイヤは攻撃のタイミングとブリンクを織り交ぜることにより、より難しくなっていると考えています。

Jude
 アニメーションもかなり違いますしね。コードネームである“ウィンドダッシュ”の名に恥じないよう、自分が有意義な位置に行くために駆け抜けてダッシュしていくような操作感を意識しました。エコーはふわふわと浮いているような感覚、ファラはロケットブースターのような感覚なので、ふたりと比べてみても操作性がちょっぴり違うかもしれません。
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――開発視点でフレイヤと相性のいいヒーローはいますか? 設定や世界観において関係深いヒーロー、掛け合いがあるヒーローもいれば教えてください。

Kenny
 プレイ面では、相手の足を止めたり、スロウ効果を付与できるアビリティを持つジャンクラットやハザードなどが相性はいいと思います。敵にスロウが入ることによって、大ダメージを与えられる右クリックが当たりやすくなるため、シナジーを発揮できるはずです。

Jude
 物語はこれから掘り下げていく予定です。現段階で言えることとしては、昔のオーバーウォッチメンバーであるアナやソルジャーらとの掛け合いから、彼女がどういった人間であったかを垣間見ることができます。そして、現在はどういった人間になってしまったのか、彼女が元オーバーウォッチメンバーへの想いなども見えてくるはずです。

――初代『オーバーウォッチ』のボツ案から生まれたというお話がありました。新ヒーローを構想する際、キャラクター性や物語はどういったポイントから制作が始まるのでしょうか?

Kenny
 新ヒーローに関しては、あらゆる要素がきっかけになることが多いです。大まかに考えると3タイプのきっかけがあります。ひとつ目は美術チームがすばらしいコンセプトアートを作成してくれること。

 ふたつ目は、ストーリーデザイナーがいい物語を作ってくれて、それにまつわるキャラクターを作るとき。そして3つ目は、ヒーローデザイナーがめちゃくちゃかっこいいアビリティを作り、そのアビリティが中心になるときです。そういったひとつのきっかけから始まることもありますし、まれに3つ全部が当てはまるキャラクターも現れます。

 フレイヤの場合は、すばらしいコンセプトアートがあったのがきっかけでしたね。同時に右クリックのユニークなアビリティを作り出したので、そのふたつを軸にして制作していきました。今回は、昔のオーバーウォッチメンバーをもう少し深掘りしたいという考えもあったため、昔のオーバーウォッチ出身で現在は一匹狼キャラというのが、いま伝えたい物語とマッチしていた点も大きいです。

――新ヒーローはどのような人に使ってほしいですか?

Kenny
 エイムがいいプレイヤーが使用することで自分のプレイをさらに向上させていくと思います。彼女は中距離~長距離が得意なヒーローのため、自分のショットに自信がある方に使っていただきたいです。フレイヤを使う場合は、おそらくカウンターとしてフランカーのヒーローが多くなると思います。
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――つぎのヒーローに関してですが、なにか少しヒントをいただけないでしょうか?

Kenny
 詳細はまだ言えませんが、左クリックのメイン攻撃はおそらく気に入ってくれると思います。

Jude
 ビジュアル的にも新しい地域を開拓していますし、新たな物語が展開されるのでぜひご期待ください。
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パークはシーズン9の反響を見て実装。アビリティの能力を変えるパークに注目

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――『オーバーウォッチ』にいまパークシステムを実装する意図を教えてください。

Alec
 パークシステムについては、約1年ほどから前から考えていました。実装理由としては、シーズン9のときのパークシステムに似た要素の反響がかなりすごかったからです。あのときの仕様はパークシステムに比べると微々たるものでしたが、同じようにプレイヤーのみなさんにプレイの幅に選択肢を上げたい、戦略的深みをより出したいということで採用しました。

――ただでさえヒーローが多い中で、それぞれのヒーローのパークを制作するのは調整も含めて大変だったかと思います。パークを導入する上で、いちばん苦労された点があれば教えてください。

Alec
 いちばん苦労したのは、やはりパークの数です。ヒーローの数を考えると、約170個のパークを作る必要がありましたので……。そのほかでは、プレイヤーに『オーバーウォッチ』が変わったという印象を与えつつ、パークが有意義なものであることに調整していくのが難しかったです。これまでの『オーバーウォッチ』のイメージを少し崩さないといけなかったのですが、没入感や新しい一面を魅せられると感じています。

――170個ものパークが追加されたことで覚えることが増え、初心者が少々入りづらくなったように感じます。そのあたりはどのようにお考えですか?

Alec
 たしかにパークシステムの導入により、ゲームは少し複雑になったかもしれません。ただ、開発としてはとっつきやすいゲームを目指しています。パークシステムで言うと、パークを選ぶタイミングが2回、それも2択から選ぶという形にしており、極端に複雑にはしていません。

 今後、登場する新ヒーローに関しても、このシステムにより単純化するのではないかと思っています。多くのことをできるようなヒーローを作るではなく、能力はパークで補えるので、これからの新ヒーローはもっと尖った性能のものを出してもいいかなとも思っています。
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――パークシステムは、ヒーローを変えて、また使っていたヒーローに戻すとパークが変更できない仕様になっていました。柔軟に変更できないようになっているのはなぜでしょうか?

Alec
 試合中に「このヒーローはこのパークを選んだから、このように戦ってくる」という認識をプレイヤーにインプットさせる必要があると考えました。パークをいちいち変えることができると、情報が変化していってしまい戦略も練れません。つねにイタチごっこをするのではなく、相手が取った戦略に自分が戦略を変えるといった流れを作りたかったんです。

――パークシステムに慣れていないこともあったかと思いますが、レベルアップしたことに少し気づきづらい印象がありました。控えめなデザインにした理由を教えてください。

Alec
 UIに関しては、現在進行形で最適な位置を探しています。地味すぎても困りますし、ゲーム画面を阻害しすぎても困ります。塩梅を取るのが難しいので、調整の参考にさせていただきます。

 PCでは、デフォルトでAltキーを押しながらパークをマウスのクリックで選択できますが、キーバインドで3、4のキーで選択できるようにもしています。今後もプレイヤーの皆さんの意見を聞きながら、調整していく予定です。

――170種類以上のパークが存在しますが、開発者目線でいちばんインパクトのあるパークはありますか?

Alec
 インパクトが強いものを挙げるとすると、アビリティの能力を変えるパーク全般です。たとえばオリーサのバリアですね。リーパーに関しては、右クリックの新しいアビリティすら増えるわけですし、そういったヒーローの挙動がガラッと変わるパークは目につきやすいと思います。
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――パークは、既存ヒーローの新たな能力を考えることになったかと思います。それぞれどのようなアイディアから制作されたのでしょうか? 具体的な制作期間も教えてください。

Alec
 パークは2024年頭ぐらいから開発していました。夏ぐらいには数名しか完成していなかったのですが、9月ごろから本格的に全ヒーローのパーク制作が動き始めました。

 メジャーパークはとにかくインパクトを感じてほしいという想いから作っています。ゲームプレイに大きく関わってくる要素ですし、「使ってみたい」と思うようなパークを用意することがいちばん大事ですしね。パークを作るときにはルールを設定して制作していましたが、その中でもプレイヤーがパークの存在を感じ取って、使ってみたいと思わせることに重きを置いています。

――先行プレイでダメージロールのヒーローを使用したあとに、マーシーを使うとかなり経験値ゲージの貯まりが遅く感じました。とくにリザレクションを使用してもほぼゲージが進まない印象です。ロールやキャラクターによって経験値の貯まり具合は変わったりするのでしょうか?

Alec
 経験値の溜まりかたは各ヒーローによって異なります。根底にあるのは、アルティメットを使用したときの進み具合です。アルティメットを使ったときに経験値が早く貯まることによって、試合がどのように変化していくかを重点的に調整しています。

 現状では調整が必要なヒーローもいると思いますし、マーシーもそのひとりである可能性があります。実装後に経験値の貯まりやすさも調整していく予定です。

――『オーバーウォッチ』のプレイヤーは熱心な方が多く、パーク実装後に議論が起き、メタ化していきそうな印象があります。開発者視点で、メタ化を想定しているのか、それとも驚くような戦術が生まれるかを期待しているのでしょうか?

Alec
 今回はさまざまなことが新しいため、まずはすべてのプレイヤーが学び直す時間があるかと思います。そのため、メタについてはまだ先の話になると考えています。

 念頭に置いておきたいのは、各ヒーローの強さはパークによって決まるものではないということです。ヒーローの基礎があって、そこに追加するようにパークがあります。パークがすべてではありません。今後、バランスを調整したり、古いパークをローテーションしたり、すべてのパークをガラッと変えたりと、ゲームをつねに新鮮な気持ちで楽しめるように考えています。そのため、テンプレ化することは現状は考えていません。
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――今後、パークが実装されたことで、各ヒーローの調整項目が増えるかと思います。そういったことで、ゲームのバランス調整や新ヒーローの実装期間が伸びることはあるのでしょうか?

Alec
 新ヒーローの追加スケジュールに変更はありません。バランス変更に関しても、シーズンの最初と中盤に行う予定です。まずはパークシステムをプレイヤーの皆さんに色々経験してもらうことが大事なので、現状は急激に変えることはないと思います。まずは皆さんに盛り上げてもらって、のちに調整していく予定です。

――実際にプレイしてみて、強すぎるパークなどもなく、いいバランスだった印象です。今回はVCを使用していませんでしたが、VCを使用して密に連携が取れるとして、シナジーのあるパークも考えられているのでしょうか?

Alec
 そのような戦略的なプレイは開発側も逆に見たいと思っています。パークはあくまで自分の使用するヒーローに作用するものですが、ほかの味方にも作用するようなパークも用意しています。そこでメタが固まる、高すぎるバーストダメージが出るなど、過度にオーバーパワーで問題視されるまではみなさんには考えてほしいと思っています。

――マイナーパークとメジャーパークを分けた理由を教えてください。

Alec
 ふたつの段階を踏むことによって、プレイヤーがイメージしやすいと思ったからです。マイナーパークの場合は、ちょっとしたアップグレードで大きくゲームが変わらないもの。メジャーパークはチーム構成や作戦、自分のプレイスタイルが固まってきたときに、選択を決められるようになっています。自分のゲーム中の行動にもっと重みをもたせるように設計しているのです。

 ちなみにメジャーパークはアルティメット関連に能力を付与する効果をあまり入れていません。アルティメットが活躍するのは試合終盤になるので、そこに大きな変化を加えてしまうとよくないと考えました。プレイヤーがなにを求めているのかを重要視しながら制作しています。

『オーバーウォッチ』にもっと戦略性を持たせるための“スタジアム”。ヒーローを限界突破させるロマンを感じてほしい

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――オーバーウォッチにラウンド制を導入するというのは、かなり斬新なアイディアだと感じました。スタジアムを実装する経緯を教えてください。

Dylan
 まず意図的に戦略を組んで戦うといったモードを追加したいという想いがありました。そのように考えた時に、武器庫で買い物をしていくのがいいと考えました。その要素を『オーバーウォッチ』の物語に組み込むにはどうしたらいいか、どういった設計にすればいいか。考える時間を与えつつ、長期的な戦略性を練るにはどうするか考えた結果、ラウンド制になりました。

Dion
 物語的にはヒーローを限界突破させるようなロマンがあります。「こいつを最強のヒーローにさせるぞ! でもあと2ラウンド必要なんだ……」といった時間をかけて最高の性能にするといったロマンを持たせるためにラウンド制は必要でしたね。

――スタジアムは三人称視点がデフォルトですが、一人称視点から変えた経緯を教えてください。

Dylan
 美術的に「ヒーローの姿が見えるからいい!」という点がまずあります。開発的にはヒーローのアビリティをより高みまで成長させていったとき、三人称視点のほうが絵になる点が大きかったです。試合の終盤にプレイヤーたちが育てあげたヒーロー同士が対決するシーンは、カオスでダイナミックになるんですよ。そのため一人称視点より三人称視点のほうが受け入れられると考えました。

 これまでの
『オーバーウォッチ』では、要所要所で三人称視点がありました。たとえばラインハルトで盾を構えたときや、ジャンクラでアルティメットを使用したときなど、大事なシーンで入れています。それと同様の見せかたとして導入しました。

Dion
 美術チーム全員が、「やっと私たちのキャラモデルをみんなが見れるようになったぜ! やったー!」と言っていました(笑)。いままで見られていなかった血と汗と涙の結晶がやっと画面に現れます……。
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――最大7ラウンドとなっていますが、このラウンド数にした理由はありますか?

Dylan
 かなり試行錯誤した結果、7ラウンドになったんですよね。最初は最大5ラウンドで試していたのですが、1から強いヒーローを作成するにはラウンドが足りなかったんです。そこで7ラウンドにしてみたらバシッとハマりました。

 今回の先行プレイではマッチメイキングがなかったので、マッチに偏りがあったかもしれませんが、リリース後はスキルマッチで7マッチまで伸びることが多くなるかと思います。FPSは長くプレイすると疲れるのでその点を意識して、長すぎず、短すぎず、そして最後には満足感を得られるような設計にしました。

――シーズン15でパークが追加され、シーズン16ではコロシアムが追加されます。実装時期が近い気がしますが、たまたまタイミングが被ったのでしょうか?

Dylan
 『オーバーウォッチ』では、1年に1回大きく仕様を変えたいと考えています。それは2月に行っていることが多いです。

Dion
 今年はそれがパークシステムにあたります。コロシアムに関しては、2年ほど開発をしてきて、たまたまシーズン16で実装することになりました。スタジアムチームはヒーローチームと緻密に連携を取っていて、ヒーローチームからの意見ももらいました。自分たちのアイディアに自信は持ちつつ、ヒーローチームのアイディアも取り入れ、スタジアムモードをよくするために開発してきました。

――購入システムがあるほかゲームと違って、オブジェクトなどでお金が増えない分、勝っているチームが勝ち続けてしまうように思えます。カウンタープレイや逆転要素などは考えていますか?

Dylan
 ゲームバランスは真っ先に考える要素で、スタジアムではすべてのプレイヤーが強いヒーローを作れることを大切にしました。通常プレイでは、ひとりのプレイヤーがキャリーすることは稀なので、スタジアムではそれをもう少し強調したいと考えました。

 それでもプレイング差で負け続けてしまう可能性があったため、賞金首システムを導入しました。長く生存しているプレイヤーやダメージ/回復量が多いプレイヤーが対象となり、そのプレイヤーを倒すと一気にお金を得られるといったものです。負けていても、相手のエースプレイヤーを倒すことでお金を得て、差が縮まるようにしています。

Dion
 賞金首は頭上にアイコンが出るので、非常にわかりやすいはずです。また、買い物をするときにアイテムをいつでも変更できるようにしている点も重要です。アイテムは全額バックでいつでも切り替え可能なので、強いプレイヤーを倒すためだけのビルドを作って、倒せたらまたビルドを戻すとかもできるため、そういった戦略もおもしろいかと思います。今回のプレイテストでは全貌が見えづらかったかと思いますが、UIで全プレイヤーのビルドを見ることができるので、それにあわせてさまざまな戦略を作り出してみてください。
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――ヒーローの選択に関して、1度選択してしまうと変更できない仕様上、有利/不利ピックが気になりました。たとえば自分がD.Vaを使用して、相手のタンクがザリアを選択していた場合、ヒーロー選択の時点で有利不利が発生してしまうような……。このあたりはどのようにお考えですか?

Dion
 私はラインハルトが好きなのですが、オリーサが出てくるとかなり苦しいマッチになります。そういったカウンターピックについては理解しており、スタジアムではアンチピックに対してカウンターをできるようなモードになっています。各ヒーローに対するロマンも上がるはずです。

Dylan
ザリアがD.Vaのアンチピックであることは開発陣も気づいており、じつは今回の先行プレイバージョンの次のバージョンでは修正しています。スタジアムではキャラを絞っているわけですが、これは開発側からヒーロー相性をすぐに見ることができるので、調整もしやすい利点にもなっています。

――リリース時のヒーローの数はどれくらいですか? 今後、ヒーローは増えていくのでしょうか?

Dion
 リリース時は先行プレイ時のヒーローにメイを足した、計17人が実装予定です。もちろん、ほかのヒーローも追加予定で、ゴールは通常のモードと同じヒーローリストにしたいと考えており、シーズンごとに2〜3人追加しようと考えています。
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ルートボックスが復活。前シーズンのショップアイテムが手に入る仕様に

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――ライバル・プレイについて、現在のシーズンと新シーズンでの変更点、注目してほしい点を教えてください。

Gavin
 まずはランクのリセットです。これまでのシーズン9、シーズン12でランクリセットを行ってきましたが、そのふたつと比べると大きいリセットになる予定です。このランクリセットで大きい点は、マスター以上のランクを大幅に作り直しました。マスター以上に在籍する人数を増やしたので、より上位のランクにいる人数が増えるかと思います。

 ふたつ目は、コンペティティブモードのみになりますが、合計4名のヒーローがBANをするシステムを導入します。ゲーム開始前に各プレイヤーが、BANしたいヒーローを3名挙げて投票。それらを集計し、味方チーム側と敵チーム側で2名ずつの合計4名がBANされるといったものです。
マップに関しては、コンペティティブモード専用で3つのマップから選べるようになります。選べるマッププールに関しては、おそらくあまり遊ばれていないマップになりますね。それをベースにしつつ、マップの選択数を増やして選択できるようにしていく予定です。

 3つ目は、ギャラクティックモードの武器がシーズン15の報酬として登場します。コンペティティブモードで得たポイントを使用することで購入することができ、シーズン終了後もレガシーポイントでの購入が可能です。そして、コンペティティブモードの報酬として、武器チャームが追加されます。プラチナ以上でシーズン15を終えたときにもらえ、コンペティティブモードのふたつ名と同じように、1シーズンのみ使用可能となります。次回のシーズン16にて、同じランクを保てなかった場合に、授与されたチャームは失います。

 そのほかのトピックとして、ルートボックスが復活します。無料バトルパスや有料バトルパス、チャレンジモードなど特別なミッションをクリアーした報酬として、ルートボックスが手に入ります。
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――ルートボックスが復活するとのことですが、前作との変更点などはありますか?

Gavin
 ルートボックスで1番特徴的な点は、購入不可能ということです。すなわちガチャにはなりません。

 ルートボックスの中身に関しても、多少変更されています。たとえば、バトルパスで獲得できるアイテム、現シーズンのショップで売られているアイテムは入っておらず、前シーズンまでにショップで売られていたアイテムが入っています。これにより、ルートボックスを開けることによって、前シーズンのショップアイテムを手に入れることが可能となります。

 もうひとつ大きな変更点として、ダブり(重複)をなくしました。すべてのアイテムを獲得していない限り、新しいアイテムが次々と手に入ります。ダブリが生じた時には、また別のルートボックスを購入できる通貨をお渡しする形となりますので、全部引き終わったら新たなルートボックスがもらえるようなイメージですね。個人的にはすべて引いたら、開けずに次のシーズンまで取っておくことをおすすめします(笑)。
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――ヒーローBANに関してです。Overwatch Champions Series(OWCS)での戦略性のあるBANなどがあるかと思いますが、今回のヒーローBANにはどういった意図で導入したのでしょうか?

Gavin
 OWCSとは違うようなシステムになっており、スピード重視のシステムとなっています。BANシステムは、ほとんどの場合はターン制となっていますが、導入するヒーローBANはプレイヤー全員が同時に投票する形式となっています。プレイヤーの皆さんが、どういった意見を持ってくるのか、どういった反応をしてくれるかによって、今後のシステムが変わっていく可能性もあります。

――自分が使用したいキャラクターが味方にBANされないように、先にアピールするシステムなどはありますか?

Gavin
 投票をする前に自分の使用するヒーローをアピールする時間は組み込まれています。ただ、仮に意地悪な野良パーティーと当たってしまった場合に、自分の使用するヒーローを言った直後に残りのチームメイトがあなたのヒーローをBANする可能性もあるかと……。そのため、使用するヒーローの宣言はプレイヤーに任せるとします。

――ヒーローの調整に関しての質問です。ヒーローの調整方針に関しては、TOP500のプレイヤーの使用率や勝率、ライバルプレイのデータを基に考えられていたりしますか?

Gavin
 私はヒーローチームには入っていないのですが、チームのやっていることはなんとなくわかっています。彼らは色々なことを考えて調整しています。たとえば、ヒーロー毎にプレイ機種やランク別に勝率を見ています。PC版ではそこそこの勝率ですが、家庭用機ではとても強いといったヒーローがいたらナーフします。そのため、どこかの点で頭がひとつ抜けているヒーローはナーフしやすいですね。

 そのほかだと感情的な部分もじつはあります。勝率は関係なく、コミュニティ全員が「このヒーローと対戦するのは絶対いやだ」、「このヒーローとだけはやりたくない」といった意見が多くなると、そのヒーローに調整が入りやすくなりますね。

――たとえば、ハザードとかでしょうか?

Gavin
 ハザードに関しては、新ヒーローとして登場させるときに勝率が50%以上になるように調整しています。理由は、新ヒーローということで、皆さんが遊びかたをまだ熟知していない、そのヒーローをまだ使いこなせないということを前提に置いているからです。

 そこそこ強くて、触り始めでも勝率を稼げないと皆さんが遊ばなくなってしまうので……。プレイヤーに触って欲しいがために、新ヒーローは少し強めに設定しているということになりますね。そこから皆さんの熟練度が上がっていき、「強すぎる」、「弱すぎる」といった意見が出たときに初めて調整が入っていきます。

――ランクシステムにおいて、チーム構築やマッチメイキングシステムなど、調整が難しいポイントがあれば教えてください。

Gavin
 いちばん難しい点は、各ヒーローの性能があまりにも違い過ぎている点です。ウィドウメイカーが上手いからといって、トレーサーやベンチャーが上手いわけではないですよね。

 たとえば、『Call of Duty』を見てみると、K/D(キルレ)の割合を見て、それがプレイヤーの上手さの指標になっていますよね。
『オーバーウォッチ』では、最初にMMRを決める段階で多少K/Dを使用しますが、ヒーローの性能そのものがあまりにも違いすぎているので、純粋にK/Dだけでは評価できないところがランキングシステムにおいていちばん難しいと感じています。

――6対6モードのライバル・プレイが実装されるようです。既存のライバル・プレイ、オープンキューに加えて、新たにひとつ追加される形式での実装になるのでしょうか?

Gavin
 正直に言うと、どこに入るかはわかりません。現在はテスト中ですし、すべてのプレイヤーが楽しいと言えるような状態までたどり着いていません。データも計測中ですし、最終的に決定するのは、リードデザイナーなので私が言えることはありません。

 マッチングするまでの時間も考えつつ、なにがいちばんいい選択なのか、どこに置くのがいちばんいい選択なのかをまだ考えている段階ですので、現時点でどこに表示されて、どこから遊べるようになるのかは続報を待ってください。
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――パークが追加されることで、ランクにどういった影響を与えると感じていますか?

Gavin
 大きく変わると思いますので、今回のパーク追加にあわせて、ランクをリセットすることにしています。勝敗を見てみると全体的にパークはランキングに影響を及ぼすと思います。

 パークをすべて暗記して素早く入力できるようになった上級者が、選択に時間がかかってしまう人と比べて、格段に上手くなっていくと思います。また、パークだけではなく、パーク込みの戦略を考えられる人は勝ち進んでいくと感じています。このパークシステムを上手く使いこなせた人はランクが上がると思いますし、パークに順応できない人はおそらくランクが落ちることでしょう。

――ポートレートが復活するとのことですが、初代『オーバーウォッチ』ではランクとプレイヤーレベルによって豪華になっていく仕様でした。今回、ランクのディビジョンによって外枠が豪華に変わっていくようですが、『オーバーウォッチ2』ではプレイヤーレベルがないため、ヒーロープログレッションをポートレートに使用するなどといった考えはありますか?

Gavin
 現状は、まだ考えていません。初代から『2』へ移行するにあたって、UIを完全に作り直してしまったので、適応されなかったUIが数多くあります。それを1から構築し直さなければならないので、延期される要素でもあります。

 今回のポートレート復活は、やっと作る時間ができて作ることになったので、ヒーロープログレッションは反映されませんが、いつかやってみたいなと思っています。いつできるかはわかりませんが、気長にお待ちを。
[2025年2月20日12時4分修正] タイトルの表記に誤りがあったため、該当の文章を修正いたしました。読者並びに関係者の皆様にご迷惑をおかけしたことをお詫びいたします。
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