『風来のシレン6』はスタッフごとの「自分の思っているシレン」へのこだわりをぶつけあって制作。Steam版がめちゃくちゃ売れたらまたDLCが登場する可能性も!?【総括インタビュー】

『風来のシレン6』はスタッフごとの「自分の思っているシレン」へのこだわりをぶつけあって制作。Steam版がめちゃくちゃ売れたらまたDLCが登場する可能性も!?【総括インタビュー】
 “原点回帰”をコンセプトに、14年ぶりとなる新作として2024年1月25日に発売された『不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録』(以下、『シレン6』)。2024年9月と10月には有料ダウンロードコンテンツ(DLC)“plusパック”の前後編が追加され、12月にはPC(Steam)版が配信開始されるなど、2024年を通じて大いに盛り上がるタイトルとなった。

 大型アップデートも一段落したこのタイミングで、
『シレン6』開発陣にインタビューを実施。プロジェクトマネージャーの篠崎秀行氏、ディレクター・アートディレクターの櫻井啓介氏、キャラクターデザインの長谷川薫氏の3名に、『シレン6』開発秘話や全体の振り返り、今後の予定などをたっぷりと伺った。
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篠崎秀行 氏しのざき ひでゆき

『風来のシレン6』プロジェクトマネージャー。

櫻井啓介 氏さくらい けいすけ

『風来のシレン6』ディレクター・アートディレクター。

長谷川薫 氏はせがわ かおる

『風来のシレン6』キャラクターデザイン。

開発の想いがきちんと届いて、新旧ファンどちらにも遊んでもらえたのがうれしい

──まずは先日Steam版が発売されたばかりですが、プレイヤーの反応や初動の手応えはいかがでしょうか?

櫻井
 Steamでの発売を待ってくださっていたユーザーさんが多く、その方たちにしっかり届いたと思います。Switch版ほど急激な盛り上がりはありませんが、確実に配信が増えたなと。

篠崎
 国内Steam売上ランキングの1位になっていましたね。集計期間的にまだ具体的な数字は届いていませんが、手応えとしてはとてもいいと感じています。

──これまで『シレン』シリーズはSteamでの販売にそこまで積極的ではないのかなと思っていましたが、実際にやってみていかがでしたか?

櫻井
 おっしゃる通りに慣れていないところがあって、販売戦略としては後手に回ってしまいました。

篠崎
 開発側としてはミドルウェアを使っていたので、PC版だからといって大きな追加開発が必要だとか大きなバグが出たといったことは無くスムーズでしたね。

──今回の『シレン6』の発売からここまでの過程といいますが、道のりをどう思っていますか?

櫻井
 開発としてはまさしく大成功ですね。いきなりお金の話にはなってしまいますが、開発には約3年かかっているのですが、そのぶんの開発費をペイできるくらいの売上は達成して、予算的にもリクープできました。

篠崎
 『シレン』シリーズはこれまで初動型のゲームではなかったので、制作当時は息長く“定番のゲーム”として売れてくれればいいなと思っていたのですが、予約を含め初動が予想を遥かに超えてよかったので、そのおかげで有料DLCを作ることもできました。もともとDLCを作るつもりはなかったのですが、「ユーザーがこれだけ遊んでくれているのだから、我々も何かお返ししなければいけない」となりまして。
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──『シレン6』発売からDLCの発売まで半年程度でしたが、よく短期間で製作できましたね。

櫻井
 もともと無料アップデートを配信する予定はあったので、そのためのチームだけは残っていましたが、ほかスタッフにも声をかけて再集合しましたね。

篠崎
 発売から数ヵ月はバグが見つかるものなので、その対応をするための予算は確保していたんです。それを使ってちょっと大きめなシステムアップデートを入れて、みなさんに満足していただければと思っていたら、一気にドンと売れたので……。であれば、より難しいダンジョンも含めてもっとしっかり作り込んでも楽しんでいただけるのではないかと思って、予算づくりから始めました。

──販売本数について最初に発表されたタイミングでは、“シリーズ最速20万本”とありましたが、現在はどれくらいの売り上げなのでしょうか?

篠崎
 現在は30万本を超えています。パッケージ版とDL版がだいたい半々くらいですね。従来のファンはパッケージ版を購入いただいた方が多く、新規の方はDL版が多いのかなという感触です。

──遊んでいるプレイヤーは、シリーズをやり込んでいるいわゆる“シレンジャー”が多いのか、新しく始めた人が多いのかわかるものなのでしょうか?

篠崎
 具体的な数字があるわけではないのですが、いろいろなツテを使って確認した限りは昔からのプレイヤーが多いという印象です。ただ、『シレン5』から始めたという人はそこまで多くなくて、『6』で久々にシレンを買ってくれた方が多いのではないかと思っています。XのポストでもSFC以来、64以来のシレンだという方もよく見かけました。

──では昔触れていた方が多かったと。

櫻井
 夏ごろに製品アンケートを取った際は、過去にシリーズをプレイしていた人が多かったです。ほかのタイトルに比べてアンケートの回答率がとてもよくて驚きました。

篠崎
 アンケートの最後にフリーコメント欄があったのですが、「こうしてほしい、ああしてほしい」といった機能要望とか、開発への意見がたくさんいただけてうれしかったです。

櫻井
 すべて目を通させていただきました。

篠崎
 ファンの方の熱量が高くてありがたいです。

──ちなみに、国内外の売り上げ比率はいかがでしょう?

篠崎
 国内が9割以上です。

──それはすごい!

篠崎
 ほかでは類を見ないですよね。ただ、逆にいえば海外が弱いというのが課題でもあり、ほかのソフトが世界で100万本達成とかを見ると、『シレン』も世界でも売れたらな……と思ったりしました。

──それであればSteam版を出す意義は大きそうですね。シレンシリーズとして30万本はトップクラスなのでしょうか?

篠崎
 本数だけで言えば初代のSFC版がもっとも多いですね。時代というのもあると思いますが。

櫻井
 とくに過去作は何度かリメイクもしていて、その累計もあるので数が多くなりがちです。ですが、初動としては本作が間違いなく最速でした。

──開発時の最初の目標は達成したと。

櫻井
 ナンバリングとしては14年ぶりに出すということで、恐怖といいますか、ユーザーさんに届くか大丈夫かなという気持ちがありました。でも、きちんと思いが届いて遊んで頂けたというのが何よりうれしいです。

長谷川
 先ほども少し話がありましたが、かつてシレンをやっていた方々が戻ってきてくれたのもうれしいですね。

篠崎
 作品の見た目やシステムなども原点回帰をし、昔プレイしていた人たちに届いてほしかったので素直にうれしかったですね。Switchならば家庭に1台はあることが多いので、初代のころは小中学生だった方も手に取りやすかったのかと思います。ゲームから遠ざかっていたけど、Switchならば子ども用に一台ある、という方も多かったりするのかなと。

──先ほどアンケートでユーザーさんからの声がとても多かったとありましたが、ユーザーの声は想定通りだったのか、逆に想定してなかったものでしたか?

櫻井
 大体は想定通りかなと思っています。最初は引っかかるけど、慣れてくるとうまくいくようになるみたいな。

篠崎
 私たちがここはストレスに感じるだろうなというポイントも含めて、割と想定通りだったかなと。いいところもあるけど悪いところもあると認識しているポイントもあったので、基本的には考えていた通りになったという印象です。

──昔のシレンはもう少し難度が高く、ダンジョンもきびしかった印象がありますが、本作はつまずきポイントがありながらも、うまいところに難易度を設定しているなと感じました。壁はあるけれど、ちゃんと乗り越えられる難度設定になっているといいますか。

櫻井
 「早いうちに倒れてほしいよね」っていうのは開発の意図といいますか、倒れることを恐れずに経験してほしくて。過去作を知っている人でも初見ではやられるが、ちゃんと知っていれば抜けられる難易度ということでバランス調整をお願いしていました。

──ユーザーの意見としてダンジョン80階など後半までいけばそのままいけちゃうという声が多かったですが、これは意図的なのでしょうか?

櫻井
 ほかのインタビューでも答えているのですが、僕らは“ウイニングラン”という表現をしていて、そこまでがんばったのだから後は即降りしてクリアーでいいのかなと。あとは1ゲームがとても長くて、5時間~6時間も走ったのならせっかくだしクリアーしてもらいたいなと思っていて。“とぐろ島の神髄”はそのようなイメージでした。
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シレンは純粋なヒーローではないので、いいヤツにも悪いヤツにも取れるデザインを意識した

──長谷川さんはキャラクターデザインとして本作に関わっていますが、プレイヤーの声をどう見ていましたか?

長谷川
 とくに批判的な意見もなかったので安心しました(笑)。
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──本作のデザイン面で意識したことはありますか?

長谷川
 ゲームとして見やすい、シンプルでおぼえやすいキャラクターにすることを心がけていました。また、演出として顔窓が出るので、衣装や全体のシルエットだけでなく、顔の個性をしっかりつけたいなと。みんながみんな整ったきれいな顔だと同じようになってしまって印象に残らないので、ちょっと崩してでもわかりやすいキャラクターにするようにしました。

 あとシリーズが新しくなるたびに思うのですが、主人公はシレンですが、その絵を見た時にどのナンバリングかわかるようにしたいとはどの作品でも思っています。
『6』に関してはいまどきのイラストにする手もあったですが、最後のシリーズになるかもしれないという覚悟も含めて、シレンらしさだけを意識してデザインに取り組みました。

 シナリオを読み込んでいると物語に気持ちが入り過ぎてキャラデザインがリアル寄りになってしまうんです。世界観的には馴染むかもしれませんがアイコン的な役目が薄れてしまうので、最初に浮かんだイメージは全部没にしてみました。結果的に新しい引き出しも出来たような気がします。あと、(
『シレン6』開発当初は)ひとつのキャラクターにつき複数の案を出してみんなに選んでもらっていたんですが、だんだんつかんできて途中から自分がいいと思えたデザインをひとつだけ提案するように変えていきました。
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──今回のシレン、かっこいいですよね。

櫻井
 ワイルドですよね。

長谷川
 本当はちょっと悪いヤツというか、風来坊寄りのデザインにしようかなと思ったこともあります。シレンって別に正義のヒーローではないんですよね、泥棒したりだとか(笑)。でもプレイヤーにとっていいヤツにも悪いヤツにもなるので、どちらとも取れるようどちらかに寄せすぎないようにはしました。

──今回描いた中で一番印象に残っているキャラクターは誰ですか?

長谷川
 忍者のセキです。村娘の姿と忍者の姿があり、普段はやさしい顔つきをしているが、マスクをつけると眉毛が見えなくなって、目だけになって冷たい顔になる。これはいいアイデアだなと思って。言われないと気づかないと思いますが(笑)。
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──おふたりはいかがですか?

櫻井
 竜海シレンがバズりまして。珍しいなと思いつつプレイしていましたが、まさかあそこまで反響があるとは……。
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篠崎
 僕はタコぎんが好きですね。ネーミングがダジャレであったり、デザイン的にはあまりシレンっぽくなかったり。
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長谷川
 最終的にみんなで落書きしながら決まったデザインですね(笑)。

櫻井
 マムルやチンタラに並ぶマスコットになってほしいという思いも込めています。

──モンスターのデザインも長谷川さんがされているのですか?

長谷川
 本作の新規モンスターはほかのデザイナーが担当しています。おなじみのモンスターたちも私だけでなく社内のデザインスタッフでアイデアを出し合って考えています。
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──長谷川さんは書いたイラストがどうゲームに反映されるかまで関わっていらっしゃるのでしょうか?

長谷川
 3Dキャラモデルの監修にも携わっています。

──イラストをゲーム内に落とし込むことによるギャップや満足度などについてはどう考えているのでしょうか。

長谷川
 頭身の高いキャラクターをデザインしていても、つねにゲーム内のデザインを意識しているので、ギャップはあまりないですね。デフォルメすると細かいところがわからなくなるので、わかりやすくなるようワンポイントで髪の色を変えるなど色々しています。理想は子どもが簡単に真似できる、ドラえもんのようなキャラクターを作れればいいなと思っています。

──グラフィックのテイストみたいなものはどうやって決めていったのでしょうか? もっとリアル寄りにすることも、逆にもっとデフォルメすることもできたと思いますが。

櫻井
 3Dで作るにあたって頭身をどうするかという問題が最初にあって、2頭身だと子どもっぽすぎるし演出がコミカルになりすぎるという話になり、「じゃあどこまで頭身を上げるか」という議論がありました。最終的には『アスカ見参!』のエンディングムービーくらいの頭身がいいんじゃないかという話になって、そこからミニチュア風に作り込んでいきました。

篠崎
 『シレン3』(2008年/Wii)で高い頭身もやっていたのですが、ディティールやモーションが若干わかりづらいところがあったかと思います。それよりも「見た目がシンボリックで、ゲームとしても動かしやすい姿のほうがいいよね」となって、いまの形になっていきました。

──久々のナンバリングの描き下ろしとなりましたが、その点はいかがでしたか?

長谷川
 とても久々で、シレンの仕事はやっぱり楽しいなと(笑)。

篠崎
 『5』とかでも販促用のイラストなどをちょこちょこ描いてもらってはいましたが、完全に新規ではなかったですよね。

──イラストと世界観は切っても切れないものだと思いますが、世界観の構築についてはどこまでタッチされていたのでしょうか。

長谷川
 謎掛けみたいな絵や文字が冨江(シレンシリーズのシナリオを初代から手掛けているシナリオライター・冨江慎一郎氏)から上がってくるので、それをどうゲーム画面に映すかイメージする作業をしていました。とぐろ島の設定も、大蛇がとぐろを巻いている上にたくさん街があって、ヘビの頭にボスがいる。そして実はヘビは海に沈んでいてちょっとだけ出ている。そういったイメージや設定が来るので実際に絵にしていくのが僕たちの仕事ですね。

 冨江が突拍子もない設定をいっぱい作ってくるので、いざ3Dにしたらとてもうさんくさいとぐろ島がいっぱいできちゃいました(笑)。でもヘビって1本の胴体でつながっているので、今回のシレンの旅路のイメージにはピッタリだなと感心したものです。
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──ちなみに、開発期間はどれくらいかかったのでしょうか?

篠崎
 2020年から21年の頭くらいから開発をはじめたので、3年ぐらいでしょうか。

──それは予定通りに……?

篠崎
 これが驚くことにぴったりなんですよ。「24年の1月に発売したい」と開発スタート時から決めていて、まさにその月に出せたので、マーケティングチームにも褒められました(笑)。

──それだけピッタリだと、予定通り開発が進み、発売時点で開発陣としても自信のある、満足の行く出来に仕上がっていたということなのですね。

篠崎
 入れたいと思っていたものが100%全部入れられたわけではないですが、満足行く部分は全部入れられたなと思っています。

熱狂の祭りは“いじわるなタイミング”で起こるようになっていた!? 『シレン6』の新要素をまるっと振り返り

──ここからは本作の新要素について振り返っていきたいと思うのですが、プレイヤーに受け入れられたものや、逆に改善や反省の余地があるなと思ったものはありますか?

櫻井
 先ほどの通り、ユーザーの反応についてはおおむね想定通りだったと思います。中にはもうひと捻りはあってもよかったなというものはありますが。あと開発時に(1ターンを時間制限なくじっくり考えられるシレンにおいて)“熱狂の祭り”のようなリアルタイム性のある要素を入れてもいいのかと迷いはしましたが、いい感じに焦りが生まれつつ、うまくやれば美味しい要素なので、好意的に受け入れてもらえたかなと思いました。
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──言える範囲で構わないのですが、あれはどういう仕組みなのでしょうか?

櫻井
 毎回抽選があって、いじわるなタイミングで発生するように仕込んでいます(笑)。冒険の中で“ハプニングを起こそう”というのが大前提だったので、たとえばフロアを去ろうとした時とか、後ろ髪を引くようなタイミングで出るようにしています。

──デッ怪についてはいかがでしょうか?

櫻井
 想定通りにフロア探索をするだけになってほしくなかったので、いい感じにルート選択を迫りつつ、全部の部屋を回るとボーナスになるのも受け入れてもらったので、いい落としどころかなと思っています。

篠崎
 じつは、全部回ったら道具が落ちるというシステムは開発でも最後のほうに入れたんです。“いつもと違うフロアのまわりかたをしてもらう”というのがデッ怪を作ったときのコンセプトだったんです。でも、テストプレイの際に「プレイヤーにとってマイナスしか感じない」という意見が多くて。何かしらプラスの要素を入れられないかと議論した結果、自由にフロアを回れない状況で全部回ったらご褒美が出る……という形になりました。

──初見のインパクトはすごいですよね。

篠崎
 開発としてはそこまでデッ怪を押していたわけではないですが、宣伝としては、ひと目でわかる新要素を押したいと。
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──ドスコイ状態はとてもいい要素として受け取っているユーザーが多い印象です。

櫻井
 ドスコイは満腹度のマンネリ化、満腹度に影響する何かというところで考えていきました。前作のスーパー状態は発動条件など初めてプレイする人にわかりづらく、改善したかったというのもあるので、初心者向けにもわかりやすく満腹度を上げるとドスコイ状態になるというものに決まりました。

──ドスコイ状態はかなり強力で、攻略の要にもなりますよね。プレイヤーの使いかたとしては想定通りでしたか?

櫻井
 罠を壊せるのはやりすぎだったのかなと思いつつ(笑)。でもダンジョン攻略の新たな主力となるのは意図通りかなと思っています。

──ちなみに、プレイヤーのクリアー率みたいなものや、どこまで遊んでくれたのかっていうのはわかるものなのでしょうか?

櫻井
 ユーザーさんが見えるのと同じ、ダンジョンごとのクリアー率とかは我々も見ています。

篠崎
 母数のデータがあって、その中で何人クリアーできたのかという情報くらいですね。

──とぐろ島の神髄はどれくらいなのでしょう?

櫻井
 全体(約30万人)の30%くらいがクリアーしています。

篠崎
 思ったよりクリアーしているなというのが正直なところですね。

櫻井
 ただ、とぐろ島は全体の8割なんですよね。2割の方は本ストーリーのクリアー前に諦めてしまった。これは課題かなと思っています。
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──ストーリークリアー後にダンジョンが一気に開放されますが、どういうプレイ傾向の人が多いのでしょうか?

櫻井
 やはり魃の砂丘とか水龍の洞窟といったストーリーダンジョンにそのまま挑む方が多めですね。

──全体のストーリークリアーペースとしては早いほうだったのでしょうか?

篠崎
 1~2ヵ月でやりきったと感じるユーザーが多かったのかなと感じていまして。ですので、発売から約3ヵ月後の2024年4月くらいにアップデートを実施して、新しい要素を遊んでもらおうかなと思いました。

──プレイアブルキャラクターを追加しようといった要素ははじめから?

篠崎
 御神木モードはもともと予定したアップデートの中に含めていたので、その時点でプレイアブルキャラクターを変える仕組み自体は準備していました。

──では予定外にあとから「これもやろう」と決めたものはどれなのでしょうか?

篠崎
 新ダンジョンの16個は全部あとから決めました(笑)。

──全部ですか!?

櫻井
 4月くらいからDLCを出そうとなって、そこで考えはじめました。

篠崎
 じつは当初アップデートは複数回に分けず、丸ごとドンと出す気でいたんです。それをいろいろな事情はあったのですが、複数回に分割することになり、アップデートのボリュームバランスを考えていきました。さらにそこから有料DLCを作ることも決まったので、より多く中身を考えていった……という流れです。

 あとはユーザーの声を受けていく中で“装備品かけ”や“後から名付け”といったものや、ユーザーから求められたモノ、限られた制作費の中で最大限お返しできることはなんだろうと考えながら制作していきました。また、本編のみを買った方にも楽しんでいただけるようにしたいと思っていたので、有料部分と無料部分を区分けは慎重でしたね。

──4月にやろうと決めて、数ヵ月で実装したわけですよね。すごいスピード感です。

篠崎
 2024年4月にアップデートして、それが終わったら僕自身はつぎの作品開発に行くかなと思っていたら、蓋を開けてみたらまさか1年間ずっとシレンをやることになるとは思っていませんでした。

櫻井
 すごくありがたい話だったので、ユーザーのみなさんにできるだけ還元したいなとずっと思っていました。ですので、要望のあるシステムや修正などをずっと加えていった形です。

篠崎
 おかげさまで販売時を100%とすると、いまはより完成度の高い120%のものになったと思っています。本当にありがとうございます。

──長谷川さんはDLCには参加されていたのでしょうか?

長谷川
 販促物の作業とかくらいですかね?

櫻井
 特典の壁紙を発注した記憶があります(笑)。

篠崎
 宣伝に長谷川をたっぷり使わせていただけたので、とても贅沢だなと。

長谷川
 (発売やアップデートが配信されるたびに)毎回これで終わりだなと思っていたので、また依頼が来てうれしかったです。Steam版発売の時はカウントダウンの依頼がこなかったので、「やらなくていいの?」って聞きにいっちゃいました(笑)。

──スタッフのみなさんの熱意がすごいですね。

篠崎
 物事を言い合いながらできた、いいチームだなと思います。「自分の思っているシレン」っていうこだわりがスタッフそれぞれにあって、それを櫻井がみんなの納得する形にしていった。改めて振り返って、そう感じています。

──ルート選択を採用した理由についてはいかがでしょうか?

櫻井
 シナリオで別ルートが解放されるというシステムは、「倒れるたびになにか解放されるほうがうれしいよね」という発想から生まれました。同じダンジョンをくり返すと飽きちゃうなというのもあるので、本ルートとは違った稼ぎや息抜きにいいなと考えて、プレイヤーの行動にアクセントとして設けました。
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──とぐろ島では3つありましたが、この数についてはどう決めたのでしょうか?

櫻井
 30階ダンジョンなのでそこまで細切れにもできないので、3つぐらいがちょうどいいかなと。

篠崎
 プレイヤーの状況によってどっちに行くかがいいのか選べるのがいいのかなと。

──救助システムについてはいかがでしょうか? 自分救助や奥義といった新システムもありました。

櫻井
 自分救助ができるようになったことにびっくりされたユーザーは多かったようです。

篠崎
 救助で稼ぎはしてほしくないとは思いつつ、でももっと積極的に救助はしてほしい動機づけという意図から奥義は考えていきました。実際に救助されている回数については、こちらの想定よりも遥かに多かったですね。ただアンケートで「救助で道具がほしい」とか、「ポイントがもっとほしかった」という意見が来るのも想定はしていました。

──それでもみなさんちゃんと救助に向かってくれているのですね。

篠崎
 「98階を救助してもらった」というポストを見たこともあるので、奥義を駆使してクリアーしたのかなと想像すると、とてもうれしく思います。

──パラレルプレイについてはいかがでしょうか。公式でもキャンペーンの一環として行っていましたよね。

篠崎
 ニコニコ動画さんのイベントでRTAをやってもらうなど競技としての側面も増えていたので、そういうときにダンジョンの仕組みがみんな違う中でプレイすると“不公平感があるな”と思っていたんです。

 競技シーンでは全員同じ状況でスタートできる仕組みがあったほうがおもしろいんじゃないかなと思いまして。本当は前作の
『5+』で入れようと思っていたのですが入れられなかったので、今回持ち越して完成したものが『6』に入ったという流れです。ほかのスタッフからも「リレーのように継続して遊べるようにしたらおもしろいんじゃないか」とか、いろいろと意見をもらっていまの形になりました。

 同じダンジョンを同じコードで遊べるという仕組みだけ用意して、後の使いかたは遊ばれる方たちが自由に楽しんでもらえればいいなと、あまり制限をかけずに自由な遊び方ができるようにしました。
──RTAのお話が出ましたが、シレンのユーザーのコミュニティについてはどのように感じていますか?

篠崎
 個人的にはもうちょっと盛り上がってほしいなと(笑)。YouTuberさんやVTuberさんがいっしょにプレイする企画などは見せてもらっていたので、そのような企画がもっと増えてくれればいいなと思っています。

──続いて神器についてもお話をお聞きしたいのですが、神器がきたときの高揚感みたいなものはみなさん感じたと思います。中身の振り分けというか、バランスの意図などをお聞きできればと。

櫻井
 かなり初期にプレミアムとレアみたいな装備のグレードを用意したいとなりまして。青は強化値が高くて、金は印がいいみたいな方向性にしようとなりました。変な印が入っていたり、銀封印されていたりとかはありますが、総合的には使える武器として、プレイヤーに取捨選択で悩んでほしいという意図がありました。バランスとしてはある程度おいしくしておこうという感じになっています。

──かなりいい能力の印がありつつ、でも「なんでこれが付いているんだ!」みたいな印もありつつ(笑)。そのあたりは狙い通りなのですね。

篠崎
 最強にしてしまった武器って変えないじゃないですか。それを変える取捨選択が生まれるほうがおもしろいんじゃないかというのがキッカケですね。

──ここまで振り返ってきて、新要素が本当にたくさんありましたが、システムが足を引っ張っているわけではなく、すごくいいバランスで要素が入っているなと思っています。このバランス感はみなさんでディスカッションされた結果なのですか?

櫻井
 それもありますし、ダンジョンのシステムは喧嘩しないように入れようという方針がありまして。あとは「いいも悪いも両方の使いかたがあるものを入れていこうね」っていうのが共有意識としてありました。

Steam版がめちゃくちゃ売れたらまたDLCという可能性も!?

──今後のお話についても伺っていきたいのですが、まず作中でアスカとの出会いのシーンでシレンとコッパが記憶喪失になっていたようなイベントがありましたが、この詳細を描く予定はあるのでしょうか?

篠崎
 話としては冨江の頭の中にはあるらしいです。

長谷川
 すごい昔からプロットだけはあるんです、かなりまえに見せてもらいました。

櫻井
 シレンが歩んだ物語についての時系列なども作られているので、冨江もずっと「どこかでやりたい」と言いつつ、いつになるのか……(笑)。

──開発のみなさんとしては『シレン6』はひとまずフィニッシュしたという感じでしょうか?

篠崎
 いったんフィニッシュしていますが、DLCの例もありますので、Steam版がめちゃくちゃ売れたらまたDLCという可能性もあるのではないかと思います!

櫻井
 ユーザーからの声をこっそり聞いて、怒られない程度にこっそり直すかとかはあります。

──この先のシレンをどうしていきたいか、具体的なものはまだないかもしれませんが、こうしていきたいな、こうなっていきたいなというものがあれば。

櫻井
 まだまだ「プレイして挫折して手放した」という声が僕らの耳に届くくらいにはあるので、救済というわけじゃないですが、そういったユーザーも拾い上げる策は今後も入れていかないといけないなとは思っています。

長谷川
 “初代『シレン』のきびしさに戻す”というコンセプトは合っていたんだなと、ユーザーの反応から確信が得られました。後は見た目でもっと改善できるところ、アイコンやUI(ユーザーインターフェイス)などがもっと親切にできるなとか、絵だけでわかるようなシステムも必要なのかなとか、そういう今風なとっかかりも必要なのかなと思っています。個人的には(『シレン』シリーズ20周年なので)20年後のこばみ谷に行くようなやつができればいいなと思っています。

篠崎
 個人的には次も作りたいというのがありつつ、いい意味で期待を裏切らず、いい意味で期待を裏切る作品が求められているというのも感じています。今回は原点回帰が受け入れられましたが、逆にまだやっていない“原点”もいっぱいあるので、今回は大成功としつつ、それ以外のシレンも見せられるよういろいろ考えるフェーズにあると思っています。

──ちなみに、30万本も売れると会社から「『7』も作っていいよ」とオーケーが出たりするものなんでしょうか?

櫻井
 実際は提案や企画しだいかなと思っていますね。本作を作るにあたってシリーズ全体を振り返った時に、ハードウェアが進化するのに合わせて進化してきた作品だなと気づいたので、新ハードの機能を使って“新しいシレン”を作れたらなと考えています。

──楽しみにしています。ありがとうございました!
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