
本作は『真・三國無双』シリーズの原点回帰を掲げ、シリーズの持つ“一騎当千の爽快感”などの魅力はそのままに、より“三国志”のドラマを濃厚に描くなどの、これまでのナンバリングタイトルとは一味違った体験を楽しめる意欲作だ。
本記事では製品版をクリアーまで遊んでの、プレイレビューをお届けしよう。
赤壁の戦いまでを、濃密に!
『真・三國無双』シリーズは基本的に物語はステージベースで進行し、戦闘前のムービーシーンなどを挟みつつ、会話劇よりもバトルステージ中でのドラマがメインとなっていることが多かった。本作は物語も非常に重視されており、アクションのみならずドラマ性もこれまで以上に楽しめた。
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ユニークなのが、序盤はある程度リニアに進んでいく(具体的に言うと、董卓軍との戦いまで)が、ゲーム中盤からはそれまでに出会った英傑たちである曹操、孫堅、劉備の3陣営からプレイヤーがひとつを選び、物語が進んでいく点。
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そして各陣営の目線から歴史を歩み、3陣営の決戦となる“赤壁の戦い”までを3ルートで楽しめる。歴史が大きく変わることはないが、細かな部分で歴史ifのような分岐も用意されているので、くり返し遊べるタイトルとなっている。
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ただ、やはり“赤壁の戦い”で終わってしまうのがすこし残念。題材は“三国志”だが、物語としてはここから“三国”が始まる、言わば序章のような立ち位置で物語は終幕する。ゲームを始める前からわかっていたことではあるが、「早く続きが見たい!」と思ってしまうのは高望みだろうか。
とはいえ、序章から最後まで1ルート遊ぶだけでも、ボリュームは約30時間と多め(※筆者の場合)。このクオリティーと濃密さで三国志全体を描くとなったら、さすがに無理だっただろうと納得できた。
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無名の英雄が降り立つ
主人公は記憶はないが、平和な世界を目指す志だけは覚えており、武術にも長けた謎の青年。物語を進めていくことで、過去や素性などが明らかになっていく。
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しかし、本作の主人公は存在感がバッチリと感じられたのがとても好印象。武将たちとの交流もするし、合戦で活躍すれば褒めてくれる。ただの武力要員としてだけではない、人として頼られていく過程が描かれていく。セリフはないが、ある程度主人公の感情も感じ取れるように作られており、終わってみると「キャラクタークリエイトではなく、彼が主人公でよかった」と個人的には感じられた。
プレイヤーの手によるところもあるが、基本はあらゆる陣営の形勢に関わるほどに活躍するため、「英雄すぎやしないか?」と、三国志ファンであればあるほど感じるかもしれない。そこはアクションゲームであることや、『真・三國無双』シリーズであることでなんとなく咀嚼できるかも。ただ、主人公の記憶を取り戻していったときに、彼が持つ独特の“英雄感”についてはきっと納得できるはずだ。
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大陸地図から始まる物語
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探索要素もあるが、探しもの自体は“霊鳥の眼”と呼ばれるガイドシステムがあるのでさほど難しくはない。また、“絶対に集める必要がある”ものはごく一部のストーリーに関わるものだけなので、オマケ的な遊びに留められている。
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とくに物語後半になるにつれてシリアス度がどんどん増していく。そういったプチ情報や、種類が多すぎるダジャレを言いまくる兵士たちの存在が少しだけ緊張感をやわらげてくれた。
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やり込みがいのある育成要素
主人公は武器を自由に選択して使用可能。各武器種には“習熟度”があり、これが武器のレベルとなっていて、使い込むごとに新たなアクションなどが解放されていく。この習熟度の合計値が“境地レベル”と呼ばれる、いわゆる主人公のレベルとなる。武器の習熟度は高くなるほど上がりにくくなる(必要数値が多くなる)。
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ポイント:全武器種をまんべんなく使おう!
スキルは、一定数の敵を倒すなどの活躍で手に入る数値“武功”を消費して習得していく。武功は戦闘でも得られるが、どちらかというと武将たちから貰えるミニクエスト“修練”で得ていく。
装備品もいくつか存在するが、基本的に頻繁に変更するのは武器だけでよく、成長要素で意識することは各武器を使いわけることと、修練を達成することだけでいい。といったところで、成長要素は多数ありながらもシンプルなシステムにまとまっていて、アクションに集中できるような作りだと感じられた。
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シリーズ屈指の完成度を誇るアクション
本作は一般兵の表示数がものすごく多く、シリーズ屈指の登場数を誇る。それでいながら、本作の敵兵士はかなりやる気に満ちていて攻撃頻度はとても高い。
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“一般兵を蹴散らせる一騎当千の戦い”と、“武将との手に汗握る戦い”をバトルアクションと両立させるのは、“無双”と名の付くタイトルはいずれにしてもここの調整が難しいはず。本作はそこがしっかりと両立されており、一騎当千の爽快感も武将との骨太なバトルも同時にバッチリと楽しめる、進化した“無双アクション”の真髄を感じられた。
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ちなみに、物語の中で、張角などの大物を相手とする場合、ゲームらしいボスステージになっている場合がある。ここもおもしろいところで、いわゆる“死にゲー”とまでは言わない……のだが、『真・三國無双』シリーズを代表する鬼神・呂布との強制戦闘を強いられる場合に限っては、完全に“死にゲー”で驚いた(笑)。アクションは苦手だけど『真・三國無双』シリーズが好きな人でも、難易度選択があるのでご、ご安心…を……でも呂布だーッ!
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ポイント:収撃の使いどころが鍵!
敵武将は強さや戦意などで変わる“外功”というアーマーのようなものを身にまとっている。“外功”をまとっていると基本的に攻撃を与えても敵がひるむことはなく、通常攻撃でダメージを与える機会が少なくなってしまう。
敵は攻撃の終わり際などに白く光るので、その隙を攻撃すると一定時間怯むようになり、そのあいだに攻撃すると“外功”も減っていく。また、“武芸”や“無双乱舞”のヒットなどでも“外功”は削ることが可能だ。
“外功”をすべて削ると大ダメージを与える、もしくは倒し切れる場合にトドメの一撃を放つ“収撃”を決められる。この“収撃”がおもなダメージソースで、敵武将を倒すための鍵となっている。いろいろとアクションはあるがすべて使いこなす必要はなく、狙うことは“収撃”にまとまっているのもとっつきやすい部分だ。
なお、トドメの一撃ではない“収撃”は、対集団戦での鍵にもなっている。大ダメージ版の“収撃”は、広範囲の敵を巻き込んで高威力の攻撃を仕掛けられる。しかも発動中は無敵で、攻撃をガードされることはない。複数の武将を相手にしているときは、“収撃”を連続で決めるチャンスでもあり、敵の大軍団をひとりで打ち崩す、独特の爽快感を味わえるのだ。
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敵の数がものすごすぎる!
“大軍団”に属する敵はいずれにしてもやる気に満ちており、ひとりで倒すのは困難。味方の軍団と連携して攻めることが攻略の基本となる、軍団と軍団のぶつかり合いを描いたようなシステム。ただ『真・三國無双』シリーズなので、もちろんひとりで挑むことも可能。
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逆に阻止できないと窮地に立たされてしまう。不利な状況を武将の働きにより逆転するような戦場を描きつつ、バトルアクションとしてもメリハリが効いているシステムだと感じた。
とくに終盤は大軍団どうしで大戦法の阻止と成功が何度も起きるような激しいぶつかり合いが描かれている。これがものすごい臨場感かつ、バトルアクションとして忙しすぎておもしろい!
極まるとあまりにも兵士が多く、敵味方の一般兵と武将が画面いっぱいに表示されるので、もうハチャメチャ。ゲームがエラーを吐いて落ちるのではないかというレベルで超絶激しいゲーム画面となるのが、個人的には大興奮だった。
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際立った“タクティカル”要素
本作ではそこに原点回帰を目指しており、ステージが始まればいきなり総大将へ突っ込むこともできるし、味方をとにかく支援する、ひとりでコツコツ拠点を落とすなど、戦場での立ち回りはとても自由。
ステージごとにイベントはたくさんあり、戦況に応じて驚くような反応が返ってきたり、はたまた思わぬ大苦戦を強いられたりなど、プレイするたびに驚いた。とくに一度クリアーしたステージを別の遊びかたで挑戦してみると、さらなる発見があるだろう。
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アクションが得意な人はとにかく突っ込んでひとりで活躍すればいいし、イベントを楽しみたい人は各指示に従ったり、味方の援護に回ったりするのがオススメだ。とはいえ、敵味方の士気の変動は拠点の制圧のほか、イベントでも大きく変動する。奇襲や敵の作戦阻止など、イベントの成功有無で戦局が左右されていくため、基本はイベント達成を目指したほうがいい。
なお、イベントがたくさん用意されているのはメインとなる合戦ステージで、中規模ステージ“任務”などは汎用的なセリフがほとんど。とはいえ立ち回り自体の自由度は変わらない。
ただ、後半になるにつれてゲームは難しくなり、味方武将たちが頼りなくなっていく。敵が全体的に強く、ピンチになった味方武将は敗走してしまうので、必然的に助けに行かなければならない。とくに総大将など、敗北条件になっている武将は敗退しやすい印象だった。ミニマップに苦戦の“汗マーク”が出ている味方は、率先して助けたほうがいい。
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ポイント:戦法を駆使しよう!
“戦法”の中には“特効”という、条件を満たすと敵の戦意を下げる、ようは弱体化させられるものがあり、これが非常に強力。敵の戦意を下げるには、イベント達成などが条件になっていることがほとんどだが、シチュエーションさえ満たせば自発的に敵を弱体化できるのだ。
条件は比較的緩く、“騎馬突撃”なら遠くから発動するだけでいい。弓を放つ“斉射”は敵より高い位置から放てば効果を発揮するのだが、戦場のちょっとした起伏差でも成功扱いとなるので、使いどころは多い。
『真・三國無双』シリーズの初期ナンバリングではおなじみの護衛兵要素だが、本作ではカスタマイズ要素はない。本作の護衛兵は敵集団に当たれば即全滅も当たり前のように倒されるので、そこまで愛着を持たないほうがいいだろう。そのぶん、拠点に行けば補充できる仕組みになっている。
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三国志感の増した武将たち
いずれも仲が深まれば固い信頼関係を結べるようになり、ちょっと気恥ずかしくなるようなイベントもある。
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随行武将たちはもちろんほかの武将たちよりも物語が多く用意されているのだが、そこはおもにメインストーリーに関わる部分。仲のよさで言えば、ほかの武将たちも随行武将と同じくらい仲よくなれる。
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おそらくそこは周回プレイを意識した要素で、あのときなぜこうなっていたのかは、各陣営を通すことで全体の物語を楽しめるようにしているのだと感じた。
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『真・三國無双』の歩む、もうひとつの道
また、本作はバトルBGMがものすごくいい。『真・三國無双』シリーズはBGMの秀逸さも特徴だが、本作ならではの曲や、シリーズ作品のアレンジBGMが多数収録されているなど、シリーズファンを喜ばせてくれる。メニュー画面を戦闘中に開けば、落ち着いたバージョンにシームレスに移行するなどの試みもおもしろいので、ぜひ拝聴あれ。
数多の挑戦が取り入れられた本作ゆえに「大丈夫だろうか」と思っている人は、アクションやRPG要素、キャラクター性については間違いなく楽しめると思うので、ご安心を。いちばん不満にあがるであろう意見として、いままでのように各武将の視点から楽しみたいという人の気持ちもわかる。ただ、遊んでみると「ああ、これはオリジナル主人公を操作するゲームじゃないと作れなかったな」といった魅力にあふれているので、そこを噛みしめながら遊んでみてほしい。また、これまでとは異なる目線から、好きな武将たちと活躍を楽しんでみてはいかがだろうか。
そしてまだ『真・三國無双』シリーズを遊んだことがない、三国志を知らないという人たちには、間違いなくオススメできる1本となっている。この“無双”のスタイルが、今後の新機軸となるのか。いちファンとしてもどう評価されるのか気になるところだ。