そこで! 『美味しんぼ』を愛して止まないファミ通ライターが、アニメ版『美味しんぼ』のエピソードの中からとくに注目してほしいと考える、まさに“究極のエピソード”をピックアップしてご紹介!
第1話:究極のメニュー

冒頭から、士郎のグータラな一面が存分に楽しめるし、好みのタイプは少年隊のヒガシ(東山紀之さん)と豪語するフレッシュなゆう子の姿も見逃せない。
究極の食文化を後世に伝えるための企画、“究極のメニュー”の担当を決めるため、水と豆腐を食べ比べてその違いを説明するなんて無茶なテストを実施する東西新聞社。しかも昼休みに料亭に呼び出しておいてこれである。時間外手当を出してほしい。
そのテストを難なくクリアーする士郎だが、とにかく態度が悪い。初期の士郎はまるで狂犬のように尖った性格をしているので、そのあたりにも注目して観ていただきたいところだ。

第1話はエピソードも盛りだくさんで、アイキャッチを挟んだBパートでは、さっそく士郎の鋭敏な味覚と美食に関する知識が披露される。フォアグラよりうまいあん肝を食べさせるというが、筆者はフォアグラを食べたことがないので、フォアグラよりうまいあん肝を想像することができない。悔しい。
起承転結が完璧で、1話分の視聴時間ながら、まるで島高部屋のちゃんこ鍋のように大ボリュームな内容。

第25話:ハンバーガーの要素

美食倶楽部で働く宇田は、美食とは一部の人間だけのものではなく、誰でも味わう権利があると考える。そのため、老若男女問わず味わえるハンバーガーショップを開きたいと雄山に意見した。雄山はハンバーガーのことを「味覚音痴のアメリカ人の食べ物」と言い放ち、宇田をクビにする。もし雄山がSNSをやっていたら炎上必至だっただろう。
その後、宇田は士郎を頼り、ハンバーガーショップを開くための調査を行うのだが、「ハンバーガーは専門外なので」と衝撃の告白をする宇田。オイオイ、少しは調査してから動き出したほうが……と思うが、それほどに本気だったのだろう。うーん、でも見切り発車すぎんか。

その後、士郎の助けやらなんやかんやあって極上のハンバーガーを作ることができ、たくさんのお客さんを獲得できた宇田。宇田は作ったハンバーガーを雄山に食べてもらおうと美食倶楽部にデリバリーを届ける。
宇田は上質なパティにピッタリのバンズを用意したことで調和が取れたハンバーガーを作ることができた。最初は「売り物にならん」とひと口しか食べなかった雄山だが、改良したハンバーガーは及第点だったのだろう、無心になって完食。その後、「うまい」とは言わず、「見ろ、手が汚れてしまった」と言ってのけるまでがお約束。このエピソードでも、雄山のツンデレさを味わうことができる。

第28話:トンカツ慕情

「トンカツをいつでも食えるくらいになりなよ。それが人間偉過ぎもしない、貧乏過ぎもしない、ちょうどいいくらいってとこなんだ」

裕福になりすぎてもダメだし、貧乏すぎてもダメ。人間の本当の幸せをトンカツにたとえて語る、なんとも心に残るメッセージだ。ただ、この言葉を受け取った里井という人物は、単身海外に渡って大成功して大富豪になっているので、中橋さんの教えは守っていないことになるが、そこに突っ込んではいけないのだろう。
また、『美味しんぼ』にはさまざまな美味しそうな料理が登場するので、観れば観るほどお腹が減る。いわゆる飯テロを喰らい続けることになるのだが、このエピソードに登場するトンカツの美味そうなグラフィックは全エピソードの中でも屈屈指の出来栄えだ。出来上がりも食べている最中も、めちゃめちゃ食欲をそそる。

全エピソードの中でも、とくにヒューマンドラマとして強調されたストーリー。オチも完璧で、これぞ『美味しんぼ』と言いたくなる出色の出来となっている。観れば今日の夕飯はトンカツにしたくなること間違いなしなので、視聴する際はお気をつけて。
第62話:北海の幸

雄山(※)の名台詞と言えば「この刺し身を作ったのは誰だ!」だが、これは第20話『板前の条件』にて観ることができる。
ちなみに、マンガ版では「このあらいを作ったのは誰だ!」と言っている。「刺し身」と「あらい」、どっちを使うかで、どちらから『美味しんぼ』に入ったのかがわかるようになるので、日常生活で役に立ててほしい。
さて、雄山が登場するエピソードではツンとデレを存分に味わうことができるが、この第62話のラストシーンの雄山のセリフは、隠れた名台詞としてファンのあいだでは有名だ。
「お前がおらんで、誰が私に茶を入れる」
美食倶楽部(海原雄山が運営する高級料亭)の新人として働くことになった宮井。入れたお茶を雄山に褒められたことに喜ぶが、管理していた昆布がゴキブリにかじられてしまったことが発覚し、クビとなってしまう。

その後、なんやかんやあって雄山の許しを得ることができ、美食倶楽部に戻ることができたのだが、その時の雄山のセリフがこれ。
「お前がおらんで、誰が私に茶を入れる」

いやいや、お前がクビにしたんやろがい!
けっきょくのところ、昆布をかじったのはゴキブリではなくウニ(海で育っている時点で昆布はウニに食べられることがあるらしい)であり、雄山の早とちりであったことが発覚したのだが、まずは謝ったほうがいいんじゃないですかね……と思うが、そこで謝らずに上記のセリフを言うあたりが、至高のツンデレたる所以なのだろう。
本当は謝りたいけど、素直になれないの。
第98話:ほうじ茶の心

士郎の母は体が丈夫ではなく、子どもを産むと死期が早まると言われていたが、雄山の血は後世に伝えなくてはいけないと、なかば強引に士郎を産んだというエピソードが原作マンガ版には登場している。
雄山は士郎の母が亡くなる前に芸術家として大成するためになりふり構わずに活動しており、それが士郎の目には母と自分をないがしろにしていると映った……というのがことの真相なのだ。

エピソードとしては自分で焙じたお茶を入れるだけの内容だが、士郎の重要なバックボーンを知ることができるので、ファンなら必ず観ていただきたい回となっている。
ちなみに、士郎は母の死後、雄山の陶芸作品を全部破壊して家出をしている。雄山の作品は当時から何千万円もの価値があり、被害総額は何億円に登るかもわからない。器物破損なのでふつうに捕まるレベル。筆者は法律には明るくないが、家族間でも損害賠償が請求されるのではないだろうか。
それを勘当程度で許してくれるのだから、雄山は士郎のことをしっかりと愛していたのだと予想できる。本当にツンデレなんだから。



















