
本作を端的な言葉で表すならやはり、“ほぼ『ペルソナ5』(以下、P5)な遊び心地”です。発表時から「『P5』をスマホで遊べるようにしたゲーム」のような評価を受けていて、この感想はプレイ開始から1時間後でも1週間後でも大きくは変わりませんでした。
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とくに筆者が注目したのは、高校生としての暮らしが楽しめる“都市生活”のシステム。カレンダーシステムが撤廃され、攻略期限がなくなったことで、『P5』とは違った種類の味わい深さが生まれていました。
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本作において“立ち向かうべき敵”として登場するのは、逮捕スレスレの迷惑行為を繰り返す“ファントム”と呼ばれる人々。 “ぶつかり男” のような小悪党が主人公たちの目の前で好き勝手したうえで、なぜか捕まらないというモヤっとする状況が訪れます。ある日、この異常が起きた世界で力を得た主人公は、正義の心をもって悪に抗い始めます。
この記事の担当編集者は「『P5』は敵が巨大だったけど、『P5X』の最初の敵は小悪党。現実にはそういうやつを許せない義侠心を持った人もたくさんいて、『P5X』で実際にどうにかできる。これは自分事のゲームだ」と言っていました。なるほど。
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現実の社会で起きている身近な問題だからこそ、解決すべきものとしてプレイヤー自身も動機にしやすい。よき市民であろうとする心がゲーム内に投影しやすく、筆者は『P5X』の世界に瞬く間に没入していくのでした。
なお、テストプレイは“どこでも遊べる”ことを重視して、iOS版でプレイしています。プレイ範囲は、最初のパレス(ダンジョン)を攻略するところまでのストーリー。記事中では極力ネタバレに配慮した表現にしています。
『ペルソナ5』から派生した“別の可能性”
人々から“欲望”という意識・概念が奪われゆく危機を背景に、心の力“ペルソナ”を発現させた主人公たちが“怪盗”として奮闘していく展開は、『P5』とリンクしていたり対比されていたりしつつも、独自のストーリーラインを形成しています。似て非なる世界、ifの世界ですね。“別の可能性”という言葉が、キーワードとして登場します。
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シリーズおなじみの不思議な部屋・ベルベットルームには、主たるイゴール(声:大塚芳忠)とコンシェルジュのメロペが待ち構え、ペルソナ使いとして覚醒した主人公をサポート。
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『P5』をまったく知らなくても問題なく楽しめる新作ですが、2作品の差異に目を向けると、新しい発見や違和感を覚えるところがあるかもしれません。“謎が散りばめられている感”に引き込まれること請け合いです。
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パーティーメンバーは、実際に怪盗団の一員として仲間になるキャラクター以外は、前述のメロペが作り出した“認知存在”として登場します。これは、主人公と出会った人物たちが“もし怪盗になったら”などのifで具現化したもの( “怪ドル”と命名されています)。この設定により、仲間が少ない序盤からも、幅広いキャラクターを編成に入れることが可能になっています。
基本はガチャからの入手とはいえ、物語の進行で仲間になるキャラクターは必ずひとり獲得できます。攻略難度に関しては、ひとつめのパレスということもあってか、必ず入手できるキャラクターを中心に組んだとしても問題なくクリア可能なバランスとなっていました。
カレンダーシステムのない『ペルソナ5』は革命だ
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そもそも『ペルソナ』とは、アトラスが誇るジュブナイルRPGシリーズ。現代日本の街を舞台に、若者を中心とした登場人物たちが学生生活や日常の身近な出来事を経験しながら、不可思議な噂や都市伝説など、オカルティックな事件に立ち向かいます。
カレンダーシステムは『ペルソナ3』で生まれ、“とある瞬間”に向けて1日ずつ進んでいくという、作劇上で重要な意味合いを持っていました。それは以降の作品にも引き継がれ、限られた時間のなかで行動を取捨選択し、自己実現を果たして仲間との絆を育む。時間が有限だから青春の輝きが増すというか、ゲームとしても尊いプレイ体験を生み出してくれています。
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ただし、その貴重な時間を儚むあまり、1日をむだにする……“無計画なプレイング”がタブー視されてきたようにも思えます。雨が降る日すら細かく記録・予測し、何日(何曜日)に誰と過ごすかを決める。ダンジョンは最小限の日数で一気に攻略する。本当はそんなことはないはずなのに、完璧な計画に沿わないと損をした気分になってしまうという、ニンゲンの業が現れるシステムでもあるのです。
ファンとすればこれも醍醐味のひとつではありますが、“時間制限があるゲーム”に苦手意識を持つプレイヤーや、できるだけ失敗したくないプレイヤーがいるのは事実だと思います。
その点で語れば、本作はカレンダーシステムを撤廃しつつ、シリーズおなじみの交流要素や自分磨きをしっかり搭載することで、気軽にかつ欲望に忠実なプレイングを可能にしています。
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ここで重要なのが、パレス(ダンジョン)の攻略には期限がないという点。『P5』では“破滅”の危機が間近に迫りすぎて、学生気分を味わいにくい瞬間もありました(主人公の境遇も“囚われ”であった)。
本作もやがて“破滅”が待ち受ける危機にはいるものの、差し迫った様子としては若干マイルドです。そのため、高校生をプレイヤーの分身として“ロールプレイング”する現代シミュレーターとしての側面が強化されています。「この世界でもっと高校生活を謳歌したい!」と思っていた筆者は願いが叶いました。
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知識・度胸・器用さなどの人間パラメータを上げ、街の人々と仲よくなり、シナジーを発生させる。互いにいい影響を及ぼす絆を育めれば、怪盗活動になんらかの形で役立つサポートを受けることができます。ふだんの生活で取るあらゆる行動が怪盗活動へとつながる、『P5』の醍醐味はしっかりと継承されていると言えるでしょう。
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言うなれば“この世界に住んでいる感”でしょうか。細かいところですが、没入感を高める要素として、主人公の普段着・部屋着の着せ替えが可能なのはうれしいところです。運営型タイトルとして通年プレイすることを考えると、季節的な変化もダイレクトに感じられる仕組みとして機能しそう。
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長期的に楽しむ『ペルソナ5』
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キャラクター育成の要素はレベル、武器、スキル、そして“啓示”と呼ばれる装備システムです。各種育成素材は“体力”(行動力とは別種のスタミナ)を消費する“怪盗活動”で多く入手できる仕組み。
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たとえば、『P5』主人公のジョーカー(最高レアリティのキャラクター)は、“呪怨”属性の攻撃が強力なアタッカー。そこで、得意な属性ダメージを伸ばす効果を持つ“妨害”のカードをセット。さらには、カードひとつひとつに“ダメージボーナス”などさまざまなオプションが付くため、よりダメージが出る組み合わせを吟味する必要があります。
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そうして育成したキャラクターたちは、“ベルベットルームの試練”をはじめとした、高いバトル評価を目指すチャレンジ要素のあるコンテンツで活躍します。キャラクターはロール(役割)や保有スキルが決められており、より高評価を得るために幅広く育て、編成を練ることが求められます。
たくさんのキャラクターが実装されているため、最初は迷ってしまいがちなパーティ編成ですが、悩むのもまた楽しい。キャラごとに“おすすめ編成”のヘルプが設定されているため、初心者も安心。序盤の指標になります。
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まとめ:ソシャゲ的な『ペルソナ5』はあった方がいい!
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懸念点として、ガチャで同じキャラクターを重ねる仕様(最大6体)の凸システムは容易ではないですし、ペルソナの合体システムは簡略化された印象でした。
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たとえば、パレスのなかには“赤い床を避けて通る”仕掛けがあります。歩くキャラクターの方向を微調整しつつ、安全な床を進まなければいけません。スマホ操作でのいわゆるバーチャルパッドを使用していると細やかには操作しにくく、慣れているプレイヤーでないとノーミスクリアが難しいです。
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このあたりはデバイス的な問題と、ゲームとしての厚みを考慮した結果、スマホプレイヤーも遊びやすいようにと意識した結果の難度設計なのかもしれません。随所に配慮が見えるから、改善にも期待が持てます。
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個人的には、かなり独特な存在感を発揮しているメロペさんや、人語を話すフクロウのルフェル(カバンの中に入る!)が気になって仕方ありません。
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『ペルソナ5: The Phantom X』はiOS、Android、PC(Google Play Games、Steam)に向けて、基本プレイ無料で配信予定。サービス開始時期については続報を待ちましょう。