1980年に誕生したアーケードゲーム『パックマン』が、2025年に45周年を迎えようとしている。“もっとも成功した業務用ゲーム機”としてギネス記録にも認定され、80年代に一大ムーブメントを起こした、言わずと知れたアーケードゲームだ。
これまでにもさまざまな周年企画が展開されてきた『パックマン』。45周年の目玉の一つとして探索型2Dアクション×ダーク×パックマンをテーマとしたアクションゲーム『Shadow Labyrinth』(シャドウラビリンス)が、バンダイナムコエンターテインメントから発表された。
本稿では、発表にあわせて本作のプロデューサーを務める相澤誠吾氏にインタビューし、『Shadow Labyrinth』制作のエピソードやその魅力についてお届けしていく。世界的に有名なゲームキャラクターであるパックマンの本作における活躍と、ゲーム以外の45周年企画の展開についても詳しく伺った。
相澤誠吾(あいざわ せいご)
『Shadow Labyrinth』プロデューサー。これまでに『PAC-MAN COMMUNITY』や『PAC-MAN 99』を手掛ける。文中では相澤。
シリーズ初のダークな世界観! 主人公と謎の存在PUCK(パック)の意外な関係
――『パックマン』45周年作品が決定した経緯と、制作当初の意気込みをお聞かせいただけますか。
相澤
長い間、皆様に愛されてきた『パックマン』ですが、これまで触れてこなかった人たちに向けても遊んでいただく機会を作りたいとずっと考えてきました。さまざまなコラボやアイテムを展開してきた『パックマン』ですが、やはりゲーム発のIPですので、ゲームでも誰も見たことのない『パックマン』という切り口から触っていただく機会を作りたい。そこで『Shadow Labyrinth』では、これまでにはなかったダークなコンセプトにチャレンジしたのです。
――構想当初はさまざまな案が出ていたことと思いますが、探索型2Dアクション×ダーク×パックマンというテーマの決め手はなんだったのでしょうか。
相澤
『パックマン』の要素はいろいろありますが、そのなかでも“迷路”に着目しました。探索型2Dアクションには根源的に迷路の要素が含まれていて、我々がチャレンジしようとしている“誰も見たことがないパックマン”や“ダークなパックマン”を落とし込むのにも相性がよかったんです。
――ダークな『パックマン』というコンセプトを知ったときはかなりのインパクトを受けました。
相澤
社員にコンセプトを伝えると、パックマンが捕食するシーンは非常にインパクトがあるという回答でした。「これが『Shadow Labyrinth』なんだ」と。
――キービジュアルには主人公とパックマンが荒廃した世界を進む様子が描かれています。このシーンはどのようなイメージで制作されたのでしょうか。
相澤
キービジュアルはコンセプトアーティストの幸田和磨さんに描いていただいています。1枚のアートの中にこれから探索するステージが散りばめてあって、ファンの方にはワクワクしてもらえるかと。
――地面には『パックマン』を象徴する迷路の模様もあります。
相澤
『パックマン』を感じさせる要素として入れ込んでいる形です。ほかにもイースターエッグ的な遊び要素も入っていまして、月の影や空に浮かんでいる物体などもじっくり観察していただくとおもしろい発見があると思います。
――パックマンが“謎の存在PUCK(パック)”として登場するのはなぜなのでしょうか?
相澤
それは物語に関わってくる部分ですね。謎の存在PUCKがキーキャラクターにあたりまして、PUCK自身には真の目的があります。その目的のために主人公を“8番目の剣士”として召喚したのですが、なぜ召喚したのか、PUCKの真の目的とは、戦う敵は何者なのかを考えながら楽しんでいただきたいです。
この“8番目の剣士”という存在も重要で、じつは、いわゆる人間ではないんです。そのあたりも追々明らかになっていきます。
――謎の存在PUCKは本編にどれくらい登場するのでしょうか。
相澤
PUCK自身はキーキャラクターとなりますので、物語に非常に深く関わってきます。ある目的のために剣士を召喚し、敵と戦わせているのですが、道中では剣士に指示を出して導いていくような存在です。
PUCK
8番目の剣士
――多彩なシチュエーションのイメージビジュアルも拝見しました。それらが生み出す『Shadow Labyrinth』の世界観と冒頭の物語についてもお聞かせください。
相澤
本作の舞台は、過去の戦争の遺物が残る荒廃した惑星です。主人公はそこへ8番目の剣士として召喚されました。PUCKが剣士を導いて戦わせていくのですが、剣士自身も過酷な世界で生き延びるために敵を食らい、運命を切り開いていくというのが『Shadow Labyrinth』の物語となります。
――先日公開されたSecret Level(シークレット・レベル(※))の「PAC-MAN: Circle」に出てくる敵は、『Shadow Labyrinth』にも登場するのでしょうか?
相澤
映像に出てきたハリネズミやクモ、ウツボのような敵キャラクターが、ゲーム内にも登場します。舞台となる世界の環境もさまざまです。映像同様に密林や溶岩が流れる洞窟もありまして、荒野や毒の霧が舞う花畑など多種多様なステージを用意しています。
※プライムビデオで2024年12月10日より独占配信されている、ビデオゲームの世界を舞台にオリジナルストーリーを描く大人向けのアンソロジーアニメシリーズ。――『パックマン』おなじみのゴーストのような敵も登場するのでしょうか? また、御社の他のIPから登場するキャラクターはいますか。
相澤
まだ言えない部分も多いのですが、アナウンスメントトレーラーを観ていただくとヒントが隠されているかも知れません。
――主人公は剣士、PUCKの形態に変形するとのことですが、それぞれの操作はどのようなものになりますか?
相澤
テクニカルな操作ができるのが剣士で、基本的にはこのスタイルで探索を進めていきます。ただし、PUCKの形態でないと行けない場所や解けないギミックがあるので、その場合は形態を変えるわけですね。
また、PUCK形態でないと避けられないような攻撃も用意しておりまして。その場合はPUCK形態で避けてから剣士に戻り、一撃加えると。ふたつの形態は一瞬で切り替えられるんですよ。スムーズな切り替えを強く意識して制作しています。
――『パックマン』と言えばクッキーやフルーツが欠かせないと思いますが、これらでパワーアップするようなシステムは搭載されていますか? また、ワープトンネルなどの要素はありますか?
相澤
パワークッキーを食べることでゴーストがイジケ状態になって逆転できるという要素ですよね。本作でも同じように逆転要素を用意しています。これまでプレイしていない方でも楽しめますし、知っている方もさまざまな『パックマン』の要素を体験していただける仕様となっています。
――難度はどれくらいを想定されているのでしょうか。お話を聞く限り、かなりボリュームがあるようにも思えます。
相澤
高難度好きの方にも満足していただける様にしていますが、アクションが苦手な方にも安心してプレイできるフォロー要素があります。どなたにもクリアーしていただけるようなゲームバランスを目指して制作しています。いまのところの想定ボリュームは約30時間ですね。
タイトルが決定するまでの紆余曲折とロゴに隠された意味
――『パックマン』というIPと探索型2Dアクションを融合させるうえで苦労された部分はありましたか?
相澤
いままでの『パックマン』とは異なるジャンルや世界観を生み出すことに注力しました。そのうえで『パックマン』の要素を探索型2Dアクションに落とし込むべく力を入れています。
――やはり開発チームのメンバーには『パックマン』愛が強い方も多いのでしょうか。
相澤
開発のメインメンバーは『パックマン』シリーズを中心に担当してきたチームです。タイトルを決める打ち合わせはたいへんでしたね。パックマンを入れる・入れない論争があったんですよ。これまでのパックマンタイトルは“パックマン”という言葉をつねに入れてきたのですが、今回は入れていないんですね。本当に多くの議論を重ねて、結果として入れないことになりました。その代わり、『パックマン』を感じさせる要素として迷路や迷宮を意味する“ラビリンス”を採用しました。ロゴのほうにもさりげなくパックマンを入れ込んであります。そういった経緯を経て、全員一致で『Shadow Labyrinth』に決定しました。
――ロゴ内に配置されているパックマンでこだわった部分はありますか。
相澤
通常パックマンはスタート時に左を向いているのですが、ロゴではあえて右を向かせているんですね。これにはいままで逃げる側であったパックマンが、本作では食べる側になっているという意味合いを込めています。
――『Shadow Labyrinth』のリリース時期、ハードなど、現在言える範囲で構いませんので教えてください。
相澤
45周年となる2025年発売予定です。ハードはNintendo Switch、プレイステーション5、Xbox Series X|S、PC(Steam)を予定しています。もちろんワールドワイドで展開予定となります。
――『パックマン』45周年記念におけるゲーム以外の展開はありますか。
相澤
2024年12月6日から25日まで、東急プラザ原宿“ハラカド”で『パックマン』のポップアップイベントを開催中です。14日からは『Shadow Labyrinth』の展示が追加されまして、公式Xのフォローと対象ポストのリポストをしていただくと、ご来場いただいた方へ数量限定で45周年ロゴの『Shadow Labyrinth』バージョンのステッカーをプレゼントいたします。ぜひチェックしてみてください。
今後、2026年5月までの周年期間を通じて様々な施策を予定しているので、ご期待ください。
――最後に『パックマン』45周年企画と本作を楽しみにしているファンに向けてメッセージをお願いします。
相澤
おかげさまで『パックマン』は来年45周年を迎えることとなりました。記念すべき節目の年にあたって誰も見たことがない新たな『パックマン』をお送りできればと思っています。これまで『パックマン』に触れてこなかった方にも、ぜひ新たな切り口で描かれるこの物語を楽しんでいただき、『Shadow Labyrinth』を機に『パックマン』の歴史を感じていただければうれしいです。
これまでプレイされている方は、今作に引き継がれている『パックマン』のDNAに触れ、新たな体験を味わっていただけますと幸いです。『Shadow Labyrinth』は2025年発売となりますので、ぜひ楽しみにお待ちいただければと思います。