発売近づくカプコン新作『祇(くにつがみ)』先行レビュー。アクションとタワーディフェンス、2要素のバランスが絶妙。“和”の世界を彩る作り込みもすさまじい。開発陣へのインタビューも掲載

byバーボン津川

更新
発売近づくカプコン新作『祇(くにつがみ)』先行レビュー。アクションとタワーディフェンス、2要素のバランスが絶妙。“和”の世界を彩る作り込みもすさまじい。開発陣へのインタビューも掲載
 2024年7月19日に発売予定のカプコンの新作ゲーム『祇(くにつがみ):Path of the Goddess』。対応プラットフォームはプレイステーション5、プレイステーション4、Xbox Series X|S、Xbox One、PC(Steam、Windows)。Xbox Game Passにも対応している。

 本作の舞台となるのは、穢れに覆われた山村。襲い掛かる異形の敵“畏哭”(いこく)から巫女を護りきる新作タイトル。ジャンルは“神楽戦略活劇”を謳い、剣舞によるアクションと、ともに戦う村人を采配するタワーディフェンスのような戦略要素が融合されたゲーム性が特徴だ。
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 発売に先駆けて、カプコン東京支社オフィスで同作の先行体験会が実施された。実際にプレイしてわかったゲームの概要や流れ、魅力などをお届けてしていく。

 さらに、先行体験会後に実施されたディレクターの川田脩壱氏、プロデューサーの平林良章氏へのメディア合同インタビューも掲載。本作の注目ポイントを語ってもらったので、ぜひ刮目してほしい。
※本稿ではPS5版のコントローラー表記で記載している。

アクション要素と戦略要素が見事に調和

 アクションとタワーディフェンスという異なるジャンルの要素が取り入れられている本作。結論から言うと、このふたつの要素がほどよく混ざり合っていて、ちょうどいい塩梅のゲームバランスに仕上がっていた。
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 アクションは敵をなぎ倒していく爽快さもありながら、複雑すぎず、気軽にプレイできてかつ気持ちよさを感じられる操作感。剣舞でズバズバと敵を切り倒すこともできるが、出現する敵の数が多く、ひとりだけで対応しきるのは難しい。

 そこで重要となるのが、村人を指揮して巫女を防衛するというタワーディフェンス要素。自分ひとりでは対応できないルートを防衛させたり、空を飛びながら進軍する敵を倒してもらったりと、さまざまな戦術で戦える。
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 アクション、タワーディフェンスのどちらにも比重が寄りすぎておらず、どちらかを疎かにすると、たちまち戦いがきびしくなる。そんなちょうどいい塩梅のバランスだと感じられた。

日本舞踏のような剣舞モーションにうっとり

 まずは、簡単に本作のゲームの流れを紹介していこう。プレイヤーは主人公・宗(そう)を操作し、穢れに覆われた禍福山の平穏を取り戻すため、巫女である世代(よしろ)とともに、さまざまな村(ステージ)を訪れて穢れを浄化していく。どんどん穢れ(敵)が現れるステージで戦いながら、舞いながら移動する世代が鳥居(ゴール地点)まで到達すればクリアーとなり、その村の穢れ全体を祓うことができる。
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 各ステージでは、昼と夜のパートをくり返しながら巫女を護ることに。

 昼のパートでは村中を探索し、穢れに拘束された村人たちを救出。特定のステージでは、敵の侵攻を防ぐ“障壁”、範囲内の村人の攻撃力と行動速度を高める“鼓舞結界”など、さまざまな効果を持つ仕掛けも用意されている。
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穢れに取り込まれた村人たちを救出。彼らを助ければともに巫女を護る戦力となってくれる。
 夜のパートでは、鳥居から出現する畏哭たちから巫女を護る戦闘パートが展開。主人公の宗のアクションや村人たちへの指揮で次々と現れる畏哭たちを倒していく。
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 この昼夜のパートをくり返し、ステージのクリアーを目指すのが基本の流れだ。昼は準備フェーズ、夜は戦闘フェーズとイメージするとわかりやすいだろう。

 畏哭との戦いでは、プレイヤーは主人公の宗を操作し、剣を使ったアクションで敵を攻撃していく。アクション自体はシンプルで、□ボタン、△ボタンの組み合わせでさまざまな攻撃がくり出せるものになっている。□ボタン→△ボタンでは高くジャンプしながらの斬り上げ、□ボタン→□ボタン→△ボタンでは前方に対して薙ぎ払う剣戟をくり出す、といった具合だ。
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□ボタン→△ボタンの斬り上げ攻撃。
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□ボタン→□ボタン→□ボタン→△ボタンでは前方に移動しながら攻撃する。
 注目したいのは、宗の攻撃モーション。ムダのない動きで剣を振るうのではなく、日本舞踏のような動きで剣戟をくり出すようになっているのだ。キャラクターの動きが軽快で、単純に攻撃をしているだけで気持ちよさが感じられる。
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踊りを舞うかのような攻撃モーション。
 攻撃以外にもジャンプや回避、防御などのアクションが用意されていたが、複雑さはまったく感じられなかった。アクションゲームが好きという人ならすぐに感覚をつかめそう、という印象だ。

 流れるように敵を斬っていく様は爽快。アクションゲームとしてはシンプルな操作性で、プレイフィールは爽快に感じられた。
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後半のステージを体験したときは、弓による攻撃も可能だった。ゲームの進行具合に応じてアクションが開放されていく仕組みだろう。

村人は弱すぎず、強すぎない

 ただし、主人公ひとりでは大量に出現する畏哭に対処しきれない。ともに戦う村人たちに指示を出すことも重要になるのだ。指示といっても、基本的には村人の立ち位置を指定するだけ。配置した場所で村人たちが自動で攻撃を行ってくれる。こちらもアクション同様、仕組み自体はシンプルだ。
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いつでも村人の配置を変更できる。円は村人の攻撃範囲を示している。
 村人には付ける面によって職業の力が与えられる。今回の先行プレイでは、以下の7種の職業が確認できた。

【村人の職業】

  • 杣人:手斧による近接攻撃で敵を攻撃。小型の地上型畏哭に強い。攻撃は素早いが攻撃範囲が狭く、威力も低い
  • 弓取り:弓矢による攻撃が得意。小型の浮遊型畏哭に強い。中距離射程で攻撃は素早いが威力は低め
  • 修験者:魔を捕縛する術が得意。周囲に結界を張り、結界に触れた畏哭の動きを一定時間遅くする
  • 物盗り:隠された宝の発見が得意。昼間に怪しい場所に配置すると宝箱を掘り起こしてくれるが、夜の戦闘には参加できない
  • 槍使い:槍による近接攻撃が得意。中型以上の地上型畏哭に強い。攻撃は遅いが威力が高い
  • 角力:巨大な体躯を活かした接近戦が得意。耐久力が高く、周囲の畏哭を引き付けられる
  • 巫術師:他者を癒す巫術が得意。癒しの舞によって周囲の村人の体力を回復させる
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 職業ごとに異なる特徴があり、戦場の地形や出現する敵などに合わせて配置を変えていくのが基本だ。村人の職業は戦闘中でも変更でき、出現する敵に合わせて臨機応変に対応することで、より効率よく敵が倒せるようになっている。職業の種類だけでなく出現する敵の種類も豊富で、それらを考慮して戦いをくり広げる。たとえば空を飛ぶ畏哭が通過しそうなルートには弓取りを配置したり、たくさんの畏哭が出現する鳥居の近くに角力を置いて迎え撃つなど、戦術が思い通りにハマったときはめちゃくちゃ気持ちがいい。
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村人の配置の変更や配置を変更する画面では、時間が停止。じっくりと戦略を練って指示が出せる。
 ただし、制限なく村人の職業を変更できるわけではない。村人に職業の力を与えたり、職業を変更したりするには、敵の討伐時、昼パートでの探索時などで手に入る結晶が必要になる。職業によって必要な結晶数が異なり、強力な力を持つ職業ならそのぶん、必要になる結晶の数も増えていく仕組みなのだ。
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深く考えず職業転向をくり返すと結晶が不足しがちに。
 限られたリソースをいかに活用し、どのように防衛をしていくかを考える。そんなタワーディフェンスらしい戦略性が楽しめるのだが、「このルートは村人たちに任せて、自分は別ルートの敵を倒す」、「基本は自分だけで敵を倒して、さばききれなかった敵を村人たちに対応させる」など、タワーディフェンスやリアルタイムストラテジーの要素だけでなく、自分のアクションも考慮して戦術を組み立てられるのがおもしろいポイント。アクションとタワーディフェンスのふたつの要素がうまく絡み合っていて、戦略の幅が格段に広がっている。
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櫓の上に弓取りを配置。村人の職業に適した配置場所を決めるのも重要だ。
 これは、アクションとタワーディフェンスというふたつの要素のバランスが取れているからこそ。プレイヤーのアクションだけで敵をさばききるのが難しく、村人だけでは敵の侵攻を食い止められない。どちらが欠けても勝利するのが難しい、絶妙なバランスに仕上がっているのだ。
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ともに戦う村人は弱すぎず、強すぎない。油断していると敵がすり抜けることも多かった。
 ステージの種類もさまざまで、主人公が霊魂となって村人への采配だけでクリアーを目指すものや、船の上で全方位から押し寄せる畏哭と戦うものなど、特殊な状況下での戦いも体験できた。今回の先行体験会は短時間のプレイであったが、そのプレイの中でも「こういう戦法も有効そう」とさまざまな戦術が考えられた。

 同じステージでもプレイヤーによってまったく攻略法になりそうで、自分でプレイするだけでなく、プレイ動画を視聴するのも楽しめそうだ。
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主人公が霊魂状態となり、村人への采配だけで勝利を目指すユニークなステージ。通常ステージよりも指揮できる村人の数が多く、こまめに村人の位置を変えるのが結構忙しい。
 なお、各ステージでは鳥居までの霊道を引き、世代を導くことでクリアーとなるが、霊道を引くにも結晶が必要になる。夜の畏哭との戦いに備えて村人の職業を変えておくか、はたまた最速クリアーを目指して戦力の備えは最低限にして世代を進ませるかもプレイヤーの自由。

 各ステージには制限時間はなく、着実に戦力を整えながら進められるので、アクションやタワーディフェンスが苦手という人でも存分に楽しめる作りになっている印象だ。
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先行体験会では、クリアーを急ぐあまり、巫女が鳥居に到達する直前に夜になり、鳥居の前に巫女が陣取るというハプニングも。筆者のようにならないよう、焦らずにプレイしてほしい。
 また、村の穢れを浄化するステージ以外にも、強大な力を持つ、いわゆるボス的な存在と戦うステージも用意されている。このステージでも村人たちの職業を変更・配置を変更しながら戦うことになる。ボス達の体力は非常に高く、攻撃も強力。受けるダメージが多い分、こまめに村人たちの位置を変更したり、確実に敵の攻撃を回避したりといったことが重要になるだろう。
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登場シーンもかっこいい。
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今回の先行体験会では深く触れられなかったが、さまざまなパターンの敵が用意されている模様。限られた村人たちにどう職業を割り振るかも重要になりそう。

“和”の世界観を構築する作り込みに感服

 先行プレイでは、主要キャラクターである宗と世代にはセリフがないことに驚いた。補足の説明はチュートリアルメッセージのような形で表示されるが、キャラクターどうしの絡みは基本的に身振り手振りだけで行われていた。
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 世界が作り込まれていると設定も複雑になりがちだが、本作はそうではない。難しい単語がつぎつぎと出てきて物語が理解しづらい……なんてことはなく、あくまで世界の雰囲気を味わいながら物語が体験できるのだ。多くが語られないぶん、「これってこういうことなのかな?」と想像が膨らんでいく。
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 そういった世界を構築する要素は、ゲーム中のいたるところに用意されている。個人的に気に入ったのは、村人それぞれに簡単な設定が作られていること。女性との関りがなく、最近村にやってきた娘とどう接するべきかを戸惑っている村人や、嫁いできた妻の惚気話で周囲をうんざりさせている村人まで、さまざまな背景が見られるようになっているのだ。

 村人ごとにパラメータの差異はないが、この設定を見ると「この村人とこの村人はセットで使いたい」、「こういう性格だから前線で戦うのが似合っている」と想像が膨らみ、自然と村人たちへの指揮にも力が入っていく。こういった細かな作りもうれしいポイント。
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 “和”の世界を表現する要素として、本作のUI(ユーザーインターフェース)にも注目してほしい。“和”に統一されていて、そのセンスのよさはそれだけで特筆したくなるほど。なのでこれから解説する。

 たとえばセーブデータを管理する画面が御朱印帳になっていたり、魔象(装備することでさまざまな効果を発揮する、いわゆるアクセサリー)変更画面では文のような書物になっていたりと、視認性よりも“和”の世界を表現することを重視したUIデザインで、グッと引き込まれた。

 人によっては見づらく感じるかもしれないが、ここまで“和”の世界を表現するための作り込みに思わず「おぉ……!」という感服の声が出た。それぐらい惚れ惚れするデザインになっている。和風の世界観が好きな人は、たまらないんじゃないだろうか。
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刀の鍔(つば)を変更すると使用できる奥義が変わる。その付け替え画面では右上のお皿の部分に奥義解説動画が流れる。
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 ちなみに、ゲーム中にはフォトモードも存在。“和”を感じられる世界で、お気に入りの写真を撮影するのも楽しめそうで、発売後のSNSでの賑わいにぜひとも期待したいところだ。
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開発者インタビューで本作の注目ポイントを訊く

 ここからは、メディア合同で実施された開発者へのオンラインインタビューの模様をお届け。プロデューサーの平林良章氏、ディレクターの川田脩壱氏に本作のこだわりを語っていただいた。
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プロデューサーの平林良章氏(左)、ディレクターの川田脩壱氏(右)

平林良章ひらばやしよしあき

プロデューサー。『バイオハザード RE:4』や『ドラゴンズドグマ 2』などさまざまな作品のプロデューサーを担当している。

川田脩壱かわたしゅういち

ディレクター。『深世海 Into the Depths』ではディレクター兼アートディレクターを担当。

――まずは、新規IP(知的財産)となる本作の開発の経緯、舞台を和風の世界に決めたきっかけを教えてください。

川田
 本作の世界観を和風にしたのは、自分たちの強み、そして自分が日本の文化が好きということがきっかけで、開発当初からこの雰囲気でいこうと決めていました。私はよくゲームシステムと画の両方を同時に考えるのですが、タワーディフェンス要素を入れたのは、和風の世界とかみ合って、ちょうどいい塩梅になりそうだなというのが経緯としては大きいですね。

――和風の世界観とジャンルが決まったのは同時だったんですね。

川田
 はい。自分はストラテジーゲームが好きで、“神様を護る”というゲームのルールを考えたときに、タワーディフェンス要素を強めたほうがおもしろくなりそうだなと思いついていまのジャンルに着地したという感じですね。

平林
 あくまで本作は一辺倒なタワーディフェンスではありません。タワーディフェンスの戦略的に楽しむ要素がありつつ、アクションというアプローチで自分が介入する。ふたつのジャンルの掛け合わせが新しいゲーム体験を生み出すことを目指して川田が作っています。タワーディフェンスのシステムの中に介入できたらおもしろいんじゃないかというひらめきがあって、それを試した形ですね。
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――登場する“畏哭”(いこく)たちの異形さに驚くと同時に、2ステージ目のボスとして登場するかまいたちの自分の鎌が地面に刺さって慌てるという描写がすごくおもしろくて、それぞれの畏哭にキャラクター性があるなと感じました。畏哭を作るうえで、どのような点にこだわられているのでしょうか?

川田
 異形っぽさが際立つようにはしていますが、行動やパーツ単位でかわいいと感じてもらえる部分も用意しています。というのも、日本の妖怪文化はどこか愛らしい部分があってもいいかなと思っているからです。そういった部分を感じてもらえるようなものにしつつ、刺激的になりすぎないギリギリのところを狙うように意識してデザインしていきました。よく観察すると、「ここはおもしろいな」というニュアンスもところどころ入れています。

――さまざまな畏哭が登場しますが、川田さんと平林さんのお気に入りの畏哭を教えてください。

平林
 じつは、僕もかまいたちが印象に残っています。浮遊するタイプの畏哭で、鎌を象徴にしているのですが、鎌が地面に刺さった瞬間に「ここがチャンスだ!」というゲーム的なメッセージや期待感がうまくかみ合っているなと感じられるんです。近接攻撃を行う“杣人”で地上を移動する畏哭を倒していく流れから、新たに遠距離攻撃ができる“弓取り”に変えたほうがいいというシグナルとしてもアイコニックなキャラクターで、個人的にはすごく気に入っています。戦闘での攻防の部分を考えさせてくれる畏哭でもあるので、印象深いですね。
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川田
 私はいちばん最初にデザインした“餓鬼”と、浮遊しながら攻めてくる“飛頭蛮”の2体が気に入っていますね。

 餓鬼は、カメラを引いたときに映えるようなアイコン化をしています。パッと見て気持ち悪さはありつつも、シルエットとしてかわいかったり、顔をなくして下だけ出してあったり、特徴的な色を使っていたりなど、そういったところが気に入っています。
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川田
 飛頭蛮は、手の形をしているのですが、開いたら手のひらに顔があるんです。顔が開くことによって呪詛が唱えられているなど、意外性も含めて気に入っています。
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――戦闘となる夜のパートだけでなく、昼のパートも退屈しない作りになっています。昼は穢れを払うほかに穢れに取り憑かれた動物を助けたり、布陣を整えたりするなどやることが盛りだくさんですが、どの行動を優先すればいいか悩みます。

川田
 開発スタッフの中でもプレイスタイルがバラバラで、どの要素をどのタイミングでやるかは自由になっています。ほかの人のプレイを見ると人間性が出ていて、自分のプレイとまったく違っていておもしろいんですよ。それくらいの幅を持たせています。ある程度ステージを進めもらうと自分の中で「このスタイルの効率がいいんじゃないか」というのが見えてくると思いますので、その精度を上げていくという形で遊んでいただくのがいいかなと。

平林
 プレイヤーの皆さんにはぜひフラットな気持ちで遊んでほしいですね。

――昼のパートをリアルタイムにした狙いはなんでしょうか?

川田
 準備ができたら終わりではなく、限られた時間の中でいかに最適解を見つけていくかという心理的な部分ですね。1日ですべての準備を終わらせるか、翌日に回す感じで片づけていくかという、自分のタスクをどう管理するかというタスクマネージメント的な要素もゲームデザインとして組み込んでいます。

 あとはリアルタイムで時間が過ぎていくにつれて音楽も変わっていくので、サウンド面で焦りを生み、緊張感を出したかったということもあります。ほかにも昼から夕方、夕方から夜に、といった画替わりもおもしろいので、そういったことを踏まえたうえで、リアルタイムにしています。
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――少ない日数でクリアーする人や、時間をかけてプレイする人など、プレイヤーによってスタイルが分かれると思いますが、早くクリアーしたほうが報酬はより豪華になるんですか?

川田
 早くクリアーしたいという人、確実に進めたいという人のどちらも楽しめるように作っています。日数制限に関しては、本編をプレイしていただけるとそういう部分での楽しみも用意しています。

平林
 短い日数で先に進んでいくのも、危ない橋を渡らずにしっかりと準備を整えてから進むのも、人それぞれだと思います。我々としては宗や世代の気持ちに共感を覚えながら旅をしていただきたいと思っています。そこで日数の概念にリワードを紐づけしすぎてしまうと、クリアーまでの日数を短くすることが答えのように感じやすくなってしまいます。ですので、あえてそういう部分については、チャレンジのような要素としてたまにあるイメージと思っていただければいいかなと。

川田
 本作ではアクションとストラテジーの両方得意な人も楽しめるのはもちろん、どちらかが苦手という人でもクリアーできるような調整にしているので、時間をじっくりかけて進めていただければなと。夜に獲得した結晶はそのままつぎのステージに引き継ぐこともできるので、逆に最速クリアーをすると結晶が枯渇したままで次のステージに挑むことになります。要は、財布のお金を多めに持っていれば次のステージが楽になるかも、ということも考えられるような形になっています。このステージが苦手だから早くクリアーしたいという気持ちもあると思いますので、自分なりに考えて遊んでいっていただけたらいいなと。

――今回の先行プレイではあまり触れられなかったのですが、ストーリーや世界観についての見どころを教えてください。

平林
 本作でいちばんお伝えしたいのはゲーム体験であり、ストーリーは比較的シンプルな構造にさせていただいています。じつは、ストーリーの中にはボイスはほとんど入っていません。ここはディレクターの思いもあり、皆さんがゲームをクリアーしたときの読後感は、人それぞれであるように工夫したいなと。

 あまりにも複雑なお話で、言葉もなく物語が進むとそれが成立しません。物語の本筋としては、山が穢れに覆われ、その穢れを祓う巫女を要所まで連れ従って巫女を護るというものになっています。もちろん、物語が先に進んでいく中で、何かしらは起こります。ただ、その部分に関しては、我々は多くを語りたくないと思っています。
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 皆さんが見た画の中にあるできごと、カットシーン以外にも、この世界がわかる要素を用意しています。拠点と呼ばれる場所の中にも敵を倒していくことで絵馬が増えますし、リワードを手に入れることで絵のような部分が何枚も連なっている場所が見つけられるようになっています。それを見て、この世界で、この物語のつながりとはなんだというのを皆さんの中で構築していただければ十分かなと思っています。ですので、ストーリードリヴン型というよりは、純粋にゲーム自体を楽しんでいただきながら、ナラティブな物語を自分の中で築いていっていただけるような形を目指したストーリー構成になっています。

川田
 なぜ畏哭が襲ってきて穢れてしまうのか、儀式的なものをやっているのかという部分まではある程度はっきりと感じてもらえるようにはなっています。それよりもさらに深い部分は、皆さんでいろいろと考えてもらえるようなものを用意しています。

――なるほど。話は変わりますがUIについてお聞きします。時間が水本に移りこんだ太陽や月で表現されていたり、扇子や巻物に文字が表示されたりと、いろいろな和の要素が入り乱れたUIに魅力を感じました。ゲームの世界観を加速させるような一種の味になっていると感じたのですが、そのあたりのコンセプトをお聞かせください。

川田
 コンセプトは、「徹底して和の雰囲気で作ろう」でした。UIとして扇子がパッと開いて動くのは、UIを担当しているスタッフの発想力で賄われていたりするのですが、私たち日本人が見てもおもしろいなと感じたので、全世界のプレイヤーで日本を少しでも知っている人なら「なるほどね!」と思ってもらえるかなというところがありました。最初に扇子のUIを見たときは、このUIで多言語化はどうするんだろうと思いましたけど……(笑)。

 ほかにも絵皿や村人の配置の画面など、徹底して日本のモチーフにこだわって作っています。若干わかりにくいという意見もありますが、楽しむという意味では徹底してやりきったほうがいいなということで、思い切って突き進もうという形になりました。

――UIもそうですが、宗のデザインやアクションにもこだわりを感じました。ちなみに、村人の面と能力はどういった設定があるのでしょうか?

川田
 最初に登場する職業の“杣人”(そまびと)は、現代の人はピンとこないかもしれませんが、いわゆる木こりなんですよ。このゲームが山を舞台にしていて、山を生活する場として作っているので、山で暮らすために必要な職業、それを生業としている人たちを職業にしています。それに加えて、神として祀るという要素をプラスして、神の力を宿らせるために面を用意しています。本作では先にその力が奪われるという物語になっていますが、力の象徴、祀るべき対象物というのをテーマにして、それに対しての能力を割り振って職業を構成していきました。

 宗に関しては、詳細は伏せますが、世代との関係性を表すようなデザインになっています。アクションに関しても、儀式を行う作品なので、攻撃方法も剣術というより踊りで見せるといったニュアンスをかなり意識してアクションを組み立てていきました。
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――そういった経緯があったのですね。

川田
 戦闘中にNPCを観察していただくと、戦闘が優勢だったり、敵が攻めてこない時間が続いたりすると、踊りだしたりするんですよ。そういうところも見どころだと思います。

――踊りは実際の舞いがモチーフになっているのでしょうか?

川田
 動画投稿サイトに投稿されている動画や、地元で行われた祭りで舞いや神楽を見て、それを参考に作っていきましたが、踊りは本作オリジナルのものです。実在の舞いや神楽とまったく同じものにするのはよくないので、どういう意味合いの踊りなのかを理解したうえで、本作の世界観に合う踊りはこういう形なんじゃないかということを、アクションを作った人たちと話し合いながら分解して再構築という手順で考えていきました。

――宗の持つ刀も、敵を攻撃するだけでなく、穢れを祓うときに祓串のように使用するのが印象的でした。

川田
 宗の刀は、大麻(おおぬさ)という神主が持っている道具をうまく記号化したいなと思って作っていきました。ゲーム中で見るのがなかなか難しいのですが、刀の側面に大麻の彫りがあったりして、そこが発展するようにと考えていたりします。

――刀によるアクションは、これまでのカプコンの作品で参考にされたものはありますか?

川田
 調整していく過程で自然とこの形に落ち着いた感じですね。自分はアクションゲームもよくプレイするので、触り心地は大事にしたいなと。妙な間を持たせるよりは、触って気持ちいいと感じて、どんどん敵を倒しにいきたくなるような触り心地を目指して作っていきました。気持ちよく敵を倒していると、その隙に敵に攻め入られたりもすることもあって……(笑)。そういったことも含めて、うまくアクションをコントロールしながらステージを攻略してほしいという思いもあります。

――今回の試遊でもさまざまな村人の職業が体験できましたが、ほかにどのようなバリエーションの職業が用意されているのでしょうか?

平林
 メディアの皆さんに遊んでいただいたバージョンでは7種類の職業が用意されていて、“槍使い”が“杣人”の上位職業のような立ち位置になっていますが、まだ公開していない職業がほかの職業の上位バージョンかと言われると、そうではありません。それぞれの職業の役割をある程度散らばらせながら、戦略のバリエーションを持っていただきやすいようにしています。明確な種類数は実際にプレイしてお確かめいただければなと。

川田
 戦闘中でも戦況に応じて職業を変えることができるのも本作の特徴です。敵の種類も多く、敵側のチームワークを味合わされることもあって……。

平林
 ウェーブによって出現する敵の種類が違うので、最初に設定しておいた職業から別の職業に転向させたほうがいい、という場面もあったりして。

川田
 臨機応変な戦略が試されることも結構あるので……(笑)。

平林
 逆に言えば、職業の数が多すぎると迷ってしまいますし、役割が近しいだけだと結局上位のものしか使わなくなると思います。あくまで職業ごとに異なる役割があってこそ、その選択が楽しめるのかなと。

川田
 “役割”というのも本作の大きいテーマのひとつです。敵も1体ごとに役割を持っていて、最初に登場する“餓鬼”も最初から最後まで活躍したりして。役割をどんどん増やしていくことで複雑化を図るような作りになっています。

――序盤でも浮遊して侵攻してくる“飛頭蛮”相手には“弓取り”がいないと対処が大変ですよね。

平林
 ただ、飛頭蛮を倒すには“弓取り”がいないとできないかと言われたら、そうではありません。剣舞のコンボで通常攻撃(□ボタン)→強攻撃(△ボタン)と入力すれば、斬り上げ攻撃がくり出せるので、自身のアクションだけでひと晩を乗り越えるという人もいるかなと思います。

――村人ごとに名前が用意されていましたが、この名前は固有のものなのでしょうか?

川田
 村人の名前は固有で、ランダム生成ではありません。スタッフがプレイしているのを見ていると、「この名前の村人は絶対に相撲取りだ」と自分の中でイメージを膨らませて職業を設定しているんですよ。そういった遊びができるところも狙いとしてあります。

 マップ画面では村人ひとりひとりのバッグボーンも確認できます。名前から想像していたのとは違う性格だったということもありますので、それを確認しながらゲームを進めるのもおもしろみのひとつかなと。
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――村人たちの中でパラメータの違いはあるのでしょうか?

川田
 村人ごとにパラメータを変えると、この村人はこの職業にしたほうがいいとか、考えが一本化されると思うんです。本作では村人ごとのパラメータに違いはないので「この名前いいよね」や「この人のバックボーンが好き」など、愛情をもっていっしょに戦っていく感じで作っています。

――本作はストラテジー要素がありつつも、アクション要素も強く感じました。アクション操作の難易度設定としてはどのぐらいを目指されているのでしょうか?

川田
 アクションの使いこなしの難度としてはそこまで高くなく、カプコン作品の中でも低めに設定しています。ゲームを進めるにつれてアクションの手数が増えて、テクニカルなものも増えていきます。品質管理チームの中にはアクションゲームが苦手という人もいて、その方々からはちょうどいいという話も聞いていたので、それを軸にしてアクションを中心に楽しみたい、ストラテジーをメインに進めたいという両方のプレイヤーが楽しめるような広がりを持たせて調整しています。

平林
 アクションゲームが好きな人はもちろん、ストラテジーは好きだけどアクションは苦手という人でも楽しめるように、ボタンの操作自体は非常にシンプルにしています。ふたつのボタンの組み合わせでコンボが発動するようにしていますし、ほかのアクションもシンプルで、基本的にワンボタンでの操作になっています。ただ、アクションが好きという人にも満足していただきたいと思っているので、パリィをはじめ、遠距離での弓の攻撃、緊急回避のアクションなど、さまざまなアクションを用意しています。

 一方で、タワーディフェンス要素に興味を持っていただいている人にもアクション自体が難しくて手が付きにくいということがないように、覚えやすいシンプルな操作になっています。ここは品質管理チームでそれぞれの嗜好性のある方々に何度もプレイしていただいて、ちょっとずつ調整をしていきました。

――では最後に、ファミ通読者の方に向けてメッセージをお願いします。

川田
 今回、こういうゲームを作らせていただく機会をもらえたことをうれしく思っています。いちばん最初に本作を発表させていただいたときに、皆さんに多くの反響をいただきました。自分たちでもおもしろいゲームになったと思っているので、ひとりでも多くの方にプレイしていただいて、この絶妙な感覚を味わっていただけたらうれしいですね。

平林
 カプコンとしては完全新作IPとして皆さんにお届けする形にはなります。少しでも新しいゲーム体験に興味をお持ちの方は、ぜひ本作を手に取っていただけるとうれしいです。

“CAPCOM NEXT - Summer 2024“で新情報が解禁!

 7月2日7時から配信されるデジタルイベント“CAPCOM NEXT - Summer 2024“で、『祇(くにつがみ):Path of the Goddess』の最新情報も解禁予定だ。プレイレビューを読んで本作が気になったという人はこちらで発表される情報にも要注目だ。
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[2024年7月2日17時00分修正] 一部文言を修正しました。
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