リメイク版『ウィザードリィ 狂王の試練場』レビュー。遊びやすさと懐かしさを両立させつつも、歯応えのある探索とバトルがしっかりと楽しめる、元祖RPGの名に恥じぬ一作

byQマイン

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リメイク版『ウィザードリィ 狂王の試練場』レビュー。遊びやすさと懐かしさを両立させつつも、歯応えのある探索とバトルがしっかりと楽しめる、元祖RPGの名に恥じぬ一作
 Digital Eclipseより2024年5月23日に発売されたプレイステーション5、プレイステーション4、Xbox Series X|S、Xbox One、PC(SteamとGOG.com)用ソフト『Wizardry: Proving Grounds of the Mad Overlord(邦訳:ウィザードリィ 狂王の試練場)』。

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 本作は1981年9月に Apple II にてリリースされたRPG
『Wizardry: Proving Grounds of the Mad Overlord』のリメイク版。Apple II 版のコードをUnreal Engineに移植して制作されたり、当時のUIを表示できたりと、オリジナル版へのリスペクトを詰め込んだ一作だ。もちろん現代でも遊べるように、ビジュアル、BGM、ゲームテンポ、UIなどは刷新されているため、幅広い層のプレイヤーが楽しめる。今回はそんな本作のプレイレビューをお届けする。
●『ウィザードリィ』とは
 テーブルトークRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のシステムをコンピューター上で再現した最初期のコンピューターRPGで、パーティー内で複数のキャラクターを個別に操作できるシステムが当時大きな話題となった。
 『ドラゴンクエスト』の堀井雄二氏や『ファイナルファンタジー』の坂口博信氏など、多くのクリエイターが本作の影響を受けており、まさに『ウィザードリィ』はコンピューターRPGの父とも呼べる存在なのだ。

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■キケンだらけの地下迷宮を探索しボスの討伐を目指す
 本作の目的は国王トレボーの魔除けを盗んで、地下迷宮へと逃げ込んだ魔導師ワードナを討伐すること。プレイヤーは種族、性格、属性、ステータスなどを設定したキャラクターを生成。そのキャラクターで最大6人のパーティーを編成し、地下10階で構成された巨大なダンジョンに挑む。最深部で待ち受けるワードナを倒せばゲームクリアーとなる。

 戦いの舞台となるダンジョンは巨大な迷宮。複雑に入り組んだ通路にはトラップ、イベント、キーアイテムなど、多彩な要素が隠されており、隅々まで探索する楽しみがある。プレイヤーはそんなダンジョン内を1マスずつ進みながら、つぎの階層へと通じる階段またはエレベーターを探しつつ地下10階を目指す。

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 当然ダンジョンには多数のモンスターが潜んでおり、そのほとんどがランダムエンカウントによって遭遇する。戦闘は古きよきターン制バトル。キャラクターの職業や編成位置によって戦闘スタイルが変わるため、自分のプレイスタイルに合った最適な職業と編成を見つけるのも醍醐味のひとつだ。本作の概要説明はこれぐらいにして、さっそくレビューをしていこう。

街に帰るまでが探索! リメイク版でも慢心と油断は絶対ダメ!

 筆者はスーパーファミコン世代で、初めてプレイしたRPGは『ドラゴンクエストI・II』だ。筆者も含め周囲の子どもたちはRPGと言えば『ドラゴンクエスト』と『ファイナルファンタジー』という感じで、『ウィザードリィ』の名を聞いたことは一切なかった。『ウィザードリィ』を知ったのはかなりあとのことで、これまでプレイすることもなかった。そのため、今回がシリーズ初プレイとなる。なお、本作ではオリジナル版の難度で遊べるオプションもあるが、筆者はリメイク版の難度でプレイしている。

 ゲームを始めたら、まずはキャラクターの作成からなのだが、本作では新たにゲームを始めると、6人分のキャラクターを自動生成してくれる便利機能がある。すぐにダンジョンに挑みたかった筆者はキャラクター作成をゲームにお任せしてさっそくダンジョンへ。ちなみに本作はキャラクターの性格、職業、ステータス振りなどがかなり重要なため、ゲーム開始時の自動生成はちょっと罠! それに気づいたのはけっこうプレイしてからのことだった。皆は面倒がらずにキャラクターを作ろう。

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 ダンジョン内はとても入り組んだ構造になっていて、かなり迷いやすい。プレイヤーは一人称視点でその中を前後左右に1マスずつ進みながら迷宮の探索を行っていく。筆者は迷路があまり得意ではないため、1層目から混乱しまくり。画面の左側にミニマップは表示されるものの、あくまで“ミニ”。これだけで迷宮を探索するのはかなりたいへんだ。

 そこで役立つのが、呪文“デュマピック”。プレイヤーが歩いた部分を全体マップに書き込みつつ、現在位置と全体マップを表示する呪文だ。これのおかげで本作の探索がかなり快適に! なお当時はこのような機能はなかったため、プレイヤーは皆、紙とペンでマッピング作業を行っていたらしい。

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 そんな迷宮のダンジョンには隠し通路やイベントなど、多数の要素が盛り込まれている。これらの要素は1層目からガンガン出てくる。探索が単調になりづらく、魅力的なものが多いため、マップが複雑でもついつい探索したくなる。また本作は一部の敵を除き、ランダムエンカウント。探索していると凶暴な敵に襲われることも。

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ダンジョン内ではさまざまな発見がある。落とし穴や別の地点にワープする罠などもあるので探索は慎重に。

 本作の戦闘はターン制バトル。各キャラクターのコマンドを選んだらあとは自動で戦闘が進んでいくシンプルなシステムなので、難しいことは一切ない。ただし戦闘に大きく関わる要素として、覚えておきたいのが編成の位置だ。

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3Dグラフィックで表現されたモンスターのデザインと動きも見どころ。

 本作のパーティーは前衛3、後衛3人で構成されており、前衛は物理攻撃が可能だが、後衛は物理攻撃ができず、呪文による攻撃しかできない。また前衛は敵に攻撃されやすいという特徴もある。そのため、呪文が使えないキャラクターを後衛に置いてしまうと戦闘中にやることがなくなってしまう。逆に体力の低いキャラクターを前衛に置くと、あっという間に戦闘不能に陥る。編成する際は職業と編成位置の関係が重要だ。

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戦闘に勝利すると、敵が守っていた宝箱を発見することも。宝箱には罠が仕掛けられていることがあり、盗賊がいればこの罠を高確率で解除可能。宝箱の中にはお金や装備が入っている。

 加えて、本作では戦闘不能や特定の状態異常(麻痺など)に陥ると、そのキャラクターがパーティーの最後尾(後衛)に移動。これにより非力な後衛キャラクターが前衛へ。そこを狙われてメンバーがつぎつぎと戦闘不能になり、全滅なんてことも。ちょうどこの原稿を書く直前に、筆者はその状態に陥った。

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 全滅するとどうなるのか。街に戻される? そんな甘くはない! 全滅したパーティーメンバーはマップに取り残された状態となり、別のパーティーでその地点まで戻って回収しなければならない。当然、回収用のパーティーメンバーの育成も必須。筆者はその育成が不十分だったため、回収用のパーティーメンバーも全滅。地下迷宮には計12人ものキャラクターが筆者の到着を待っている。早く助けなきゃ・・・・・・。

 そんな悲惨な事件を避けるには“街への小まめな帰還”が重要。本作はアイテムや呪文でHPを回復できるものの、アイテムは販売価格が高くて大量に確保するのが難しいし、呪文は使用できる回数がレベルごとに決まっている。さらにダンジョン内から脱出するには1層目にある街への出入り口に毎回向かわないといけない。つまり帰る途中に襲われて全滅する可能性もあるのだ。そのため、深追いせず、小まめに街に帰還して回復を行うことがとっても大事なのだ。ちなみに各階層にあるエレベーターを使えば1層目まで一気に戻ることが可能。

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本作の拠点となるトレボー城下の街。ここにはキャラクターの作成や転職を行う“訓練所”、キャラクターの勧誘や編成ができる“酒場”、体力を回復したり、キャラクターのレベルを上げたりする“宿屋”、アイテムの売買やダンジョンで拾った装備品の識別(鑑定)を行う“商店”、仲間の蘇生などが可能な“寺院”がある。

キャラクターは自分で作成したほうがいい

 本作はレベルアップ時に獲得したポイントを各ステータスに割り振ってキャラクターを強化していくシステム。いわゆる“ステ振り”というやつだ。職業によって優先するべきステータスは異なるため、ポイントをうまく振り分けてキャラクターの方向性をしっかりと整えていくことが重要となる。

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種族ごとに初期ステータスが異なる。職業にあった種族を選ぼう。

 ステ振りはレベルアップだけではなく、キャラクター作成時にも可能で、通常よりも多くのポイントを振り分けられる。自動生成されたキャラクターはこの辺がランダムで行われているため、損をすることに。レビューの冒頭で「キャラクターの自動生成はちょっとした罠!」と言ったのはこれが大きな理由だ。

 職業のチョイスも重要で、前衛には近接アタッカー、後衛には呪文アタッカー、ヒーラー、盗賊を置くことが多い。筆者の場合は前衛3人が戦士、後衛が僧侶、魔術師、盗賊という編成でプレイしていた。戦士は力と生命力、後衛は呪文系なら知恵または信仰と素早さ、盗賊は素早さと運の強さにステ振りしている。

 とはいえ、これはあくまで筆者のスタイルであって、編成とステ振りに関してはプレイヤーによって考えかたはさまざま。何度もプレイして自分にあったものを探すのも、本作の楽しみかたのひとつだ。

 ちなみに本作に登場する職業は以下のとおり。

  • 戦士:物理攻撃で戦うアタッカー兼タンク。呪文が一切使えない
  • 僧侶:回復系呪文と得意とする魔法職で、攻撃補助も可能。不死系モンスターの呪いを解く(消滅させる)ことができる
  • 魔術師:強力な攻撃系呪文が使える。HPが極端に低い
  • 盗賊:宝箱の罠解除ができる。戦闘では姿を隠して攻撃を避ける“隠れる”と、隠れる状態を解除して敵を攻撃する“奇襲”の専用コマンドが使える
  • 侍:戦士と魔術師の特性を併せ持つ。レベルアップには通常よりも多くの経験値が必要
  • 君主:戦士と僧侶の特性を併せ持つ。レベルアップには通常よりも多くの経験値が必要
  • 司教:僧侶と魔術師の特性を併せ持つ。レベルアップには通常よりも多くの経験値が必要
  • 忍者:敵を一撃で倒せる攻撃コマンドを持つ。レベルアップによって防御力が低下する
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 侍、君主、司教、忍者はいわゆる上級職で育成がたいへんだったり、忍者に関してはややクセのある特性を持っていたりする。上位職へはステータスと性格の条件を達成していれば街の訓練場からいつでも転職が可能。転職条件はそこまで難しくないので、早い段階からメンバー全員を上級職にすることもできる。もちろん戦士から魔術師といった感じで、下級職から下級職への転職も可能。こうすることでHPの低い魔術師の弱点を補うこともできるため、育成すればするほど強くなっていくのだ。

 職業の解説でちょっと出てきた性格についても補足しておこう。性格は善、中立、悪の3つがあり、キャラクター作成時に選択可能。上位職への転職条件であると同時に装備可能な武具にも影響を与える。どうやら悪は“悪シリーズ”と呼ばれる強力な武具を装備できるらしく、性格が悪以外のキャラクターがそれを装備すると呪われてしまう。「なら全員悪でいいじゃん!」とも思ったのだが、転職のこともあるので序盤はそうもいかないのが難しいところだ。

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ダンジョン内では友好的なモンスターとの遭遇イベントが発生する。ここで“戦う”を選ぶと性格が善から悪、“逃げる”を選ぶと悪から善に変化したりする。なお性格が中立の場合は一切変化しない。

 あと悪と善は同じパーティーに入れられない! 個人的にいちばん驚いたポイントだ。たしかに相容れない存在ではあるものの、上位職のためには善と悪それぞれの育成が必要になる。性格ごとにパーティーを分けて育成しないといけないのか。おいおい、そりゃないぜ・・・・・・。この仕様についてはかなり面倒と感じたのだが、じつは抜け道があった。その方法とは以下のとおり。

  1. 編成したいキャラクターの人数に合わせてメインパーティーに空きを作る
  2. メインパーティーでダンジョンに入る
  3. 入ってすぐにメインパーティーを迷宮内に留まらせ、冒険を中断して街に戻る
  4. メインパーティーに加えたいキャラクターだけでサブパーティーを作る
  5. サブパーティーでダンジョンに入る
  6. 入ってすぐにパーティーオプションを開き、“仲間に入れる”を選択
  7. メインパーティーのキャラクターをサブパーティーのメンバーに入れる
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 たったこれだけ。本来は善と悪は同じパーティーに入れられません、というシステムメッセージが出るのだが、この方法で編成するとメッセージが出ず、問題なくプレイできる。これはオリジナル版のころからある小技で、リメイク版の本作でもそのまま使える。ありがとう、古の攻略サイトよ! 

リメイク版ならではの要素にも注目!

 本作はフル3D化やUIの調整など、さまざまな変更が加えられている。その中でもとくに大きな要素が“オールドスクール設定”と“モンスター図鑑”だ。オールドスクール設定は、オリジナル版の難度や日本語表記に切り換えられる機能で、“懐かしさを感じたい”、“当時の難しさで遊びたい”という人向けに用意されたもの。

 アイテムや呪文などの固有名詞の翻訳は、コンソール移植版とApple II 版のテキストを元に訳されたものが用意されており、自分が遊んだときと同じ環境を再現できるのもうれしいポイントだ。なおオリジナル版の難度は相当高いので、RPG初心者やシリーズ初プレイという人はデフォルトのリメイク設定のまま遊ぶといい。

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オールドスクール設定のオプションは細かく調整ができるため、自分好みに難度や表記をカスタマイズすることも。

 モンスター図鑑は遭遇したモンスターのデザインや情報を閲覧できる機能。戦闘中に“調べる”コマンドを使い、モンスターの詳細を知ることで図鑑内容が更新され、ステータスや解説文を読むことができるようになる。モンスターの解説文は、
『ウィザードリィ』シリーズの小説や『ウィザードリィのすべて』の著者であるベニー松山氏が担当している。

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 あと個人的におもしろかったのが、ボタンひとつでApple II版のUIを表示する機能だ。ワイヤーフレームで表現されたレトロなUIを手軽に楽しめる。ちょっとした機能ではあるが、あのころのアナログ感を体験したり、思い出したりしたい人におすすめ!

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リメイク版でも歯応え十分! あらゆる世代が快適に遊べるバランスに調整された一作

 コンピューターRPGの父であるオリジナル版『ウィザードリィ 狂王の試練場』を現代風にリメイクした本作。当時のプログラミングコードを移植したり、ゲームシステムの根幹をほぼそのまま引き継いだり、オールドスクール設定でオリジナル版のゲーム性を再現したりと、「オリジナル版のよさを可能な限り現代に伝えたい!」という開発のリスペクトが強く感じられた。同時にビジュアル、BGM、UI、操作性に大きな改修が加えられており、シリーズを触ったことがないプレイヤーでも違和感なく遊べるようになっている。

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 『ウィザードリィ』の特徴とも言えるダンジョン探索におけるリスク&リターンや、奥深いキャラクターの育成は現代RPGに負けず劣らずのおもしろさがあった。とくに職業の転職はやり込めばやり込むほど強くなるシステムなので、時間を忘れて楽しむことができる。

 また全滅でパーティーメンバーがダンジョンに取り残されるなど、昔ながらの要素は面倒臭いと思う反面、これがあるからこそふだんのゲームプレイ以上の慎重さが生まれるし、緊張感も味わえる。個人的にはいい刺激になった。

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 そんな
『ウィザードリィ 狂王の試練場』は5月23日発売。『ウィザードリィ』シリーズを知らなくてもRPGが好きならば、のめり込める内容に仕上がっている。気になる方はこの機会に伝説的なRPGで懐かしさと新鮮さを味わってみてはいかがだろうか。

 そうだ、仲間の回収に行かなくては・・・・・・!

『Wizardry: Proving Grounds of the Mad Overlord(ウィザードリィ 狂王の試練場)』

  • 対応プラットフォーム:Nintendo Switch、プレイステーション5、プレイステーション4、Xbox Series X|S、Xbox One、PC
  • 発売元:Digital Eclipse
  • 発売日:2024年5月23日発売
  • ジャンル:RPG
  • 対象年齢:IARC 16歳以上対象
  • 備考:Nintendo Switch版とプレイステーション5版のパッケージ版はSUPERDELUXE GAMESより2024年発売予定
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